令和4年度 イクボス同盟ひろしま広島部会の取組
令和2年度からイクボス同盟ひろしまメンバー有志により結成された組織(部会)が県内4か所で組成され、各部会がテーマを決めて活動しています。
広島部会では、「つながり・学び合い・活動する」ことをテーマに、様々な業種のメンバーで活動を行なっています。令和4年度は、メンバーが企業で抱える問題、課題を持ち寄り解決に向け意見交換や情報提供を行うミーティングや、男性育休取得促進を目的としたセミナーを開催しました。
部会の詳細についてはこちら⇒(イクボス同盟ひろしま「部会活動」状況)
令和4年度 広島部会 活動レポート
■第1回オンラインミーティング
〇日時:令和4年10月5日(水)
〇場所:オンライン
〇概要:令和4年度の活動テーマを検討する意見交換ミーティングを開催。メンバーからは、男性育休取得促進・BCP(事業継続計画)・代替要員の拡充などのテーマが上がりました。
■第2回オンラインミーティング
〇日時:令和4年11月1日(火)
〇場所:オンライン
〇概要:部会メンバーがお互いに学び合いたいテーマを持ち寄り、意見交換を行いました。女性活躍推進法の制度改正に基づく各社の動向、各社の男性育休取得状況、従業員のモチベーション向上のための取組など様々な意見交換を行いました。
■令和4年度イクボス同盟ひろしま 広島部会「男性育休推進ミニセミナー」
〇日時:令和5年1月24日(火)
〇場所:オンライン
〇概要:参加企業での実践へつなげることを目的に、男性育休をテーマとしたミニセミナーを開催。男性育休取得促進に力を入れる企業の取組事例を紹介しました。
■今年度振り返りミーティング
〇日時:令和5年2月27日(月)
〇場所:エソール広島(集合)
〇概要:令和4年度の活動の振り返りと、部会活動期間の2年間の振り返りを行いました。
令和4年度 広島部会「男性育休推進ミニセミナー」
1部では、厚生労働省が実施する「イクメン企業アワード2020」でグランプリを受賞し、日本における男性の育休取得の浸透に向けた独自のプロジェクト「IKUKYU.PJT」を運営する積水ハウス株式会社の取組事例を紹介。男性育休取得率100%を実現した背景や、取得のメリット等を紹介していただきました。
第2部では、広島県内で男性育休取得に積極的に取り組む企業の、男性育児休業取得者・取得させた管理職層が登壇。「男性育休取得率100%の秘訣」「変化に応じた改善で男性育休を実現」「上司や周りの理解と業務の透明化」「選択できる育休取得制度」をテーマにトークセッションを行いました。
【第1部】トークセッション(積水ハウス取組事例紹介)
積水ハウス株式会社 ダイバーシティ推進部 課長 木原 淳子 氏
男性育休取得促進に力を入れたきっかけ
積水ハウスが男性育休取得促進の取組に力を入れたきっかけは、社長がスウェーデンの街中で目にした、子育てをする父親たちの姿でした。スウェーデンでは男性が実質3ヶ月育休を取得することが当たり前な環境であることを知り、積水ハウスのグローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”に基づき、「社員とその家族が『幸せ』であってほしい」その思いから2018年9月に男性育休(特別育児休業制度)の運用を開始。当時は男性育休の認知が低く、平均取得日数も2日程度、出産後の短期間の休暇のような状況でしたが、社長自ら経営戦略として「男性育休完全取得(育児休業1ケ月以上の完全取得)」に取り組むことを対象者・関係者に宣言。男性育休に関するフォーラムを開催するなど、社内での意識改革を進めました。
積水ハウスの取組
男性育休の取得対象者は、3歳未満の子を持つ積水ハウスグループの従業員で、全員に1カ月以上の育児休業の取得を推進。最初の1カ月を有給扱いにし、家庭の事情や会社の都合に合わせて最大で4回の分割取得を可能にしました。さらに、取得対象者やその家族から、より柔軟な制度にしてほしいという意見が寄せられたことから、2021年から取得対象者は、出産したパートナーが必要とする期間に休業できるよう、産後8週の期間は分割回数に制限なく1日単位で取得可能、取得日の前日までに勤態システムで休業日を直接登録できるように社内制度を整備しました。
男性育休取得促進の工夫
積水ハウスでは男性育休取得促進のため、ポータルサイトを開設し、取得のフローや、ガイドブックなどを掲載するほか、家族とのコミュニケーションツールである「家族ミーティングシート」を活用しています。
家族ミーティングシートは、家族で育児休業取得の時期や、休業中の家事・育児についてじっくり話し合い、計画を立てるためのシートです。育児休業をいつ取得したいのか、なぜ取得したいのか、家事や育児の分担についてこれまでがどうだったのか、育休中、育休後はどうする予定なのかなどを話し合い、育休期間の方向性を見える化しています。
100%達成したことによる社内変化
男性育休完全取得を達成したことにより、社内変化として次のようなメリットがありました。
・1か月仕事を休むことにより、仕事の棚卸、属人化解消のきっかけになるとともに、助け合いの風土が醸成されました。
・上司が育休を取得する場合、部下への権限移譲が自然と行われ、人材育成につながりました。
・ワークライフバランスを実現することにより会社のイメージが向上し、優秀な人材確保につながりました。
・社員のエンゲージメント向上につながりました。
積水ハウス今後の取組
男性育休取得に向けて全社をあげて取り組むことからスタートし、対象者が“1か月間”育休を取得するところまでは実現できました。一方、取得者ごとの状況に合わせた育休の取得(3か月取得、1年取得など個々の家庭に合わせた育休の取得)には課題があります。今後は柔軟な取得期間も含め、より質の高い育休を目指していきたいと考えています。
【第2部】ディスカッション(県内取組事例紹介)
【企業の取組事例(1)】男性育休取得率100%の秘訣
社会福祉法人アンダンテ 理事 池田 晴美 氏
- 業種:サービス業(福祉)
- 従業員数:68名(うち男性社員7名)
(男性育休取得状況)
男性育休は2019年度から1年に1人ずつ取得し、これまでに計4名の男性社員が取得しています。
福祉業界は常に人材不足、高い離職率が問題とされている中、当社は離職率が過去3年平均で4.8%と低く、男性育休取得率も100%です。これは、“男性の育休取得率を100%とする”という理事長の決心から、男性育休取得促進の取組がスタートし、取組を継続した結果です。
(取組の特徴)
福祉業界は現場で働くスタッフが助け合って仕事をまわす必要があるため、休業する職員が出た際にその代替を務めることのできる余剰人員を1名常に確保しています。人を一人雇えばその分人件費がかかるため、経営としては厳しいのが現状ですが、この人員を確保することで、育休のみならず有給取得の際の人員補填も可能となり、有給取得率も向上し、86%を超えています。今後は、男性育休取得期間2週間から1か月取得への拡大を目指し、取組を継続して推進していきます。
株式会社ハマダ 総務部 総務・人事課 係長 松村 未来 氏
- 業種:製造業
- 従業員数:255名(男性社員の割合8割)
(男性育休取得状況)
男性育休の取得率は2019年から現在までに概ね50%程度取得ができている状態で、中には1か月間育休を取得した従業員もいます。2019年以前は、配偶者が出産した場合は就業規定で定めた慶弔休暇が2日あるので、慶弔休暇と有給を合わせて使い、約一週間休む従業員がほとんどでした。
(取組のきっかけ)
男性育休取得促進に向けた取組を始めたきっかけの一つに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響があります。行動制限がかかり、出産を控えたパートナーが里帰り出産することができないなど、これまで以上に男性が育休を取得する必要性が社内で高まりました。
(取組の工夫)
以前は育休代替の人員を派遣で補うなどしていましたが、今は社員同士で対応しています。人員的に余裕あるわけではありませんが、仕事の棚卸しや、業務改善を繰り返して多能工化を進めています。このために、業務マニュアルをつくり、誰でも作業ができるようにするなどして引き継ぎをスムーズに行えるよう工夫しています。
また、実際に育休を取得した方の声や、パパが育休に参画するメリット、配偶者の出産後の状態、パパに育児にあたり知っておいてほしい点などをまとめた独自のリーフレットを作成し、自由に持ち帰ることができる場所に設置していることも、育休取得に向けた意識啓発に効果が出ていると感じています。
【取得体験談(1)】上司や周りの理解と業務の透明化
キリンビバレッジ株式会社 西日本統括本部 九州支社 流通部 流通担当 課長 有田 和晃 氏
- 業種:製造業
- 従業員数:3,568名
(男性育休の取得期間)
私は、約半月間育休を取得しました。妻の初めての出産で、取得期間・取得時期は悩みましたが、出産直後ではなく、妻がワンオペとならないよう、義理の母のサポート終了時期を目途に産後一か月から取得しました。
(育児休業中の過ごし方)
初めての育児で、おむつの替え方、ミルクなど何をすればいいかわからないことが多く、それを調べるところから始まりました。子どもの睡眠も不規則なため、妻と交代で睡眠をとりながら、掃除・洗濯・料理等に取り組みました。夫婦で交代できるのでお互いの負担が減り、妻の体力回復にも繋がりました。育児休業中だけが育児ではないため、これからも“一緒に”育てていくという意識を持ち続けることを改めて妻と話しています。
(業務の引き継ぎ)
妻の妊娠がわかり、総務や上長へ育休取得の相談をしました。相談時にはお祝いの言葉をいただき、会社のリードのもと、取得に向けてのフローをわかりやすく説明していただいたことが心強かったです。
育休取得直前に部署異動があったため、仕事に慣れていない状態で育休に入ることになりましたが、準備を入念に行い、直属の上司へ業務を引き継ぎました。まず、動いている案件のフロー含めまとめるなど、自身の業務の透明化を進めました。育児休暇中に突発的な案件が発生してもできる限り上司が判断できる状態を作っておくことが、上司・自身含め双方にとって大切だと思ったからです。
育休に入る前に想定できる案件はスケジュールを組んでおき、お客様にも事前に育休を取得することを説明しました。育休期間中も、電話等緊急対応や社外取引における細かい調整は自分で対応することが必要だろうと覚悟していましたが、会社からの連絡はなく、上司がしっかりと業務をハンドリングしてくれていました。育休明けには、上司から仕事を引き継いだこともあり、自分とは違う仕事の進め方を学ぶことができるなど、改めて仕事を見直す機会にもなりました。
自分が取得することで、後に続く対象者の取得の後押しになったように感じています。
【取得体験談(2)】選択できる育休取得制度
株式会社広島銀行 営業企画部法人企画室 阿部 剛大 氏
- 業種:金融業
- 従業員数:3,342名
(男性育休の取得期間等)
私は、第二子が生まれるタイミングで育休を取得しました。上の子の保育園送迎のため、3週間の育休と時短勤務を行いました。
- 2つの育休取得パターン:(1)1か月程度の育児休業 (2)1週間以上の育児休業+1か月以上の時短勤務
(育休取得や時短勤務を利用する上で工夫したこと)
妻の出産月が分かった時点で上司に報告と育児休業取得の相談をしました。現在自分が持っている仕事を書き出して進捗状況を上司と共有し、仕事の優先順位を付けて、自分がやるべき仕事と、他のメンバーに任せることができる仕事の仕分けを行いました。
(育休中の過ごし方)
育休3週間と時短勤務を決めた後、私は何をしたらいいのか、何をして欲しいのかを妻と話し合いました。妻からは、産後3週間はまだ体調も戻らず出産疲れもあるだろうから育児より家事をして欲しいという希望がありました。上の子と下の子が年子ということもあり、時短勤務の間は、上の子を公園に連れ出す、買い物に連れて行くなどして過ごしました。想像以上に大変でしたが、一緒にいるからこそわかる子どもの成長をたくさん感じることができました。
【視聴者から登壇者への質問・回答】
Q.『育児=女性』という考え方の管理職に(会社として)どういう教育を実施されていますか?
- 男性育休取得促進に向けて管理職層にセミナーを開催したり、リーフレットを作成し、情報発信することで理解を促しています。
- 管理職、社員も一緒に研修を行い理解促進を図っています。
- 管理職層に男性育休に関するオンデマンド説明動画を公開し、取得促進を図っています。また、お子さんが生まれる予定の従事者に向けた説明動画も公開しており、制度を取得しやすい環境整備に努めています。
- 現在の管理職の方は、自分が子育て世代だった時に子どもの授業参観に行きたくてもいけない時代を頑張って乗り越えてきました。先人たちの土台があった上で現在の流れが訪れたことについて理解と敬意を払うことも大切だと思います。
Q.人手不足の中小企業での男性育休取得を促進するための工夫はありますか?
- 労使協議のもと、育休中の就業を認めるなど、選択肢をつくることにより柔軟に対応できるようにしています。
Q.個人に依存する業務を作らないための取組はありますか?
- 普段の仕事を定期的にまとめておく、周囲の人が何をしているかを知るために上司や同僚とコミュニケーションをとることも有効だと思います。
- 他のメンバーの仕事を知らないが故に、本人以外では代わりがきかないと思い込んでいることはたくさんあると思います。人事異動がある会社であれば、どうにもならなくなることは無いと考えています。まずは、やってみて実績を作っていくことが大切だと思います。