4  調査・研究の充実
 
現状と課題
 
 保健環境センター及び工業技術センター等において,大気汚染,水質汚濁等の公害,また,化学物質や廃棄物・リサイクル等についての調査・研究を行っています。環境問題の複雑化・多様化に対応するため,調査研究などの充実に努める必要があります。
 
[施策の方向]
調査・研究の着実な推進
 
施策の展開
  
 複雑・多様化する環境問題に対応するため,保健環境センターをはじめとする各分野の試験研究機関における調査・研究等を進めます。
 県立大学,国立・私立大学,独立行政法人,民間の研究機関等との幅広い産・学・官の連携を図り,互いの技術力や研究成果を活用したより高度な調査・研究を推進します。
 調査や研究,技術開発等の成果を広く公表し,利用の促進を図ります。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 試験研究機関における調査・研究[研究開発推進室](再掲)
[平成16年度事業実績]
項目 調査・研究内容 調査研究機関
大気関係 浮遊粒子状物質の発生源別寄与率の推定に関する研究 浮遊粒子状物質の発生源を推定する指標として有望な多環芳香族炭化水素類の多成分同時捕集・分析法を検討しました。また,多環芳香族炭化水素類の主要発生源の一つである一般廃棄物焼却炉における排出実態及び周辺環境濃度について調査しました。 保健環境センター
小規模事業所用脱臭システムの開発 活性炭+セラミック粉系吸着剤をSUS板に添着したガス吸着ユニットと光触媒担持シリカゲルを用いたガス分解ユニットを試作し,それぞれ別個にトルエン吸着性能と分解性能の評価を行いました。吸着性能は十分でしたが,分解性能は希望性能を下回っていました。 東部工業技術センター
水質関係 広島湾流域圏環境再生研究 1.広島湾海底泥の脱窒手法の開発
 室内試験で硝化の最適条件がわかりました。江田島湾では脱窒能は9月に高くなることがわかりました。
 マナマコの生息状況と底質の関係を明らかにしました。
2.アマモ場造成技術開発
 アマモ実生苗は,シルト分を多く含む底質で栽培すると,生長が良く,種子の発芽は播種時期に関係なく70%以上の出芽率を得る条件,実生の頂端切片培養により苗条が伸長すること等を明らかにしました。また,衛星画像による藻場分布把握の可能性と無人ヘリコプターにより,アマモ場が確認できる良好な画像が得られました。
 傾斜(10°)ブロックとスリットブロック(幅15mm)に流れを抑制する効果があることがわかりました。
 海洋中の植物プランクトンの増殖に関与する有機酸鉄等の生成量が,森林の植生タイプによって異ることがわかりました。
水産海洋技術センター
保健環境センター
西部工業技術センター
農業技術センター
林業技術センター
酸素透過膜を用いた省エネルギー型排水処理技術開発に係る調査研究 下水処理場(太田川流域下水道東部浄化センター)内の敷地を借用し,下水を用いた現場排水処理実験を実施しました。実験は遮光条件下で,筒状の酸素透過膜内に下水を通水する実験と膜の外側に下水,内部に空気を配置する実験を行い,いずれもBOD面積負荷1〜2g/m2/日で,BOD除去率90%以上,TN65%程度を処理できることを確認しました。 保健環境センター
農薬や化学肥料に偏らない栽培技術の開発 環境保全型農業における農薬や化学肥料に偏らない栽培技術を確立するため,(1)環境にやさしいネギの水耕栽培,(2)ワケギの環境に配慮した土壌管理,(3)野菜・花き類に発生するウイルスの総合防除,(4)耕種的方法を活用したカンキツ病害虫防除,(5)無袋栽培ナシの防除要否判定基準の策定,(6)水稲苗箱処理への細菌エンドファイト併用による減農薬・省力防除等の研究を実施しました。 農業技術センター
化学物質関係 ダイオキシン類による地域環境汚染の実態とその原因究明に関する研究 迅速抽出法について共通土壌試料を用いた検討により抽出効率に影響を与える要因を明らかにし,抽出条件を最適化する方法を検討しました。また,環境での発生源寄与割合を推定するための新たなプログラムを用いることで,的確な汚染原因の推定を行うことが可能になりました。 保健環境センター
廃棄物
 ・リサイクル関係
廃棄物二次資源の安全性評価に関する研究 廃棄物二次資源として有効利用が期待されている溶融スラグの長期環境安全性を評価するための試験法を提案し,県内の施設で発生する溶融スラグに適用して安全性を確認するとともに,各種元素の詳細な溶出特性を把握して有効利用促進を図るための資料を得ました。
廃棄物最終処分場の跡地の有効利用に関する研究 これまで高度利用がされていない海面埋立管理型廃棄物処分場跡地の有効利用を図るため,室内実験による粘性土遮水性の検討や,処分場内でのボーリングによる廃棄物の安定化状況調査,ボーリング井を使った現地拡散実験を行い,跡地利用における安全性の確保について基礎研究を実施しました。
食品廃棄物のエネルギー変換に関する技術開発 現在,大部分が焼却・埋立処分されている食品廃棄物は,含水率が高く,燃焼や炭化処理には余分なエネルギーを必要とします。水の除去が不要な水熱処理によりエネルギー化技術を開発するとともに,油脂分解嫌気性菌群の探索,前処理として必要な食品廃棄物の磨砕技術を確立しました。 食品工業技術センター
西部工業技術センター
東部工業技術センター
乳酸菌利用による食品廃棄物リサイクル技術 発酵飼料製造に用いる乳酸菌の選定を行うため,乳酸菌3菌株を比較した結果,当センター分離のデンプン資化性乳酸菌A305株が,増殖速度が高く,乳酸菌数・乳酸量とも良好な成績を示しました。乳酸菌数は市販ヨーグルトの約10倍と高く,極めて汚染の少ない発酵液体飼料が製造できました。給与試験では,豚の嗜好性も高く,増体も良好でした。 食品工業技術センター
ポリ乳酸樹脂の高性能化と自動車部品への適用 再生可能な資源を原料とするポリ乳酸樹脂を,射出成形し機械部品として使用するため,耐熱性に優れた成形材料を開発しました。 西部工業技術センター
有機性資源の有効活用 化学肥料の節減及びバイオマス資源の地域内循環を図る技術として,(1)飼料イネの資源循環型省力低コスト栽培,(2)牛糞堆肥の水稲連年施用効果,(3)ワケギの環境に配慮した土壌管理等の研究を実施しました。 農業技術センター
木材及び木質バイオマスの利用促進 森林バイオマスの効率的供給システムを確立するため,ヒノキ40年生林において,高性能林業機械の導入,列状間伐,全木集材という条件で集材経費の低コスト化の試験を行いました。
また,枝葉,梢端材等林地残材を現地でチップ化することで,減容化でき,輸送費の低減に効果のあることがわかりました。
林業技術センター
自然環境関係 森林類型による水源林の機能評価技術の開発 森林類型別に水源林の機能評価を行うため,安芸太田町と江田島市において,雨量,流量,森林整備,植生等に関するデータ収集と解析を行いました。
(1) 安芸太田町の流域間で見られた,流出の平準化を表す流況安定化率の差は,過去に実施された森林整備等によるものと推測されました。
(2) 江田島市では,3つの試験流域の流況曲線を比較し流出特性に差があることを見出しました。
(3) 安芸太田町と江田島市の各試験流域について,衛星データをもとに植生図を作成しました。
林業技術センター
植生の自然回復困難地における森林造成支援技術の開発 山火事跡地への植栽事業導入の優先度判定に供するため,被災地の自然植生回復状況把握や回復状況の予測に関する技術開発を行いました。
平成16年に発生した生口島東部山火事跡地の植生回復予測図と現地の状況を赤外線デジタル写真により照合し,予測精度の高さを確認しました。
林業技術センター
 
[平成17年度事業内容]
大気関係 浮遊粒子状物質の発生源別寄与率の推定に関する研究 沿道及び一般環境において,浮遊粒子状物質中の多環芳香族炭化水素類や重金属類等の濃度・組成を調査し,発生源別の寄与割合を精度良く推定する手法を検討します。 保健環境センター
小規模事業所用脱臭システムの開発 光触媒を用いたガス分解ユニットの適正スケール(適正段数)を把握し,今年度中にパイロットモデルを試作し評価します。 東部工業技術センター
水質関係 広島湾流域圏環境再生研究 富栄養化対策および環境修復のため,(1)室内実験による脱窒条件の検討と現場海域における脱窒効果検証(2)底生生物(マナマコ)を指標とした底質改善効果評価を行います。
漁場環境の改善と幼稚魚の育成の場として重要なアマモ場造成技術開発として(1)アマモ苗生産システム,(2)実生苗の定着化技術,(3)分布調査技術に関する研究およびアマモの多様性について調査します。また,森林の海洋生産性向上機能についても研究します。
水産海洋技術センター
保健環境センター
西部工業技術センター
農業技術センター
林業技術センター
酸素透過膜を用いた省エネルギー型排水処理技術開発に係る調査研究 日光のあたる条件下での処理機能評価を行うため,前年度に引き続いて現場実験を実施します。また,膜の単位面積当たりの処理機能向上のための検討を室内及び現場実験として実施します。 保健環境センター
農薬や化学肥料に偏らない栽培技術の開発 環境保全型農業における農薬や化学肥料に偏らない栽培技術を確立するため,(1)環境にやさしいネギの水耕栽培,(2)野菜・花き類に発生するウイルスの総合防除,(3)無袋栽培ナシの防除要否判定基準の策定,(4)水稲苗箱処理への細菌エンドファイト併用による減農薬・省力防除,(5)画期的殺菌法と天然素材固化培地によるバラの環境保全型養液循環式栽培技術等の研究を実施します。 農業技術センター
廃棄物
 ・リサイクル関係
食品廃棄物のエネルギー変換に関する技術開発 食品廃棄物を燃焼や炭化処理する場合,廃棄物に含まれる水を除くため,多大のエネルギーが余分に必要となります。そこで新規の処理方法として,食品廃棄物の水熱処理によるエネルギー化技術を開発します。また,油脂を多量に含み,かつ含水率の高い食品廃棄物を効率的に分解可能な微生物を検索し,この微生物を利用したエネルギー消費量の少ない廃棄物処理システムを確立します。さらに,双方の前処理として食品廃棄物の磨砕技術を確立します。 食品工業技術センター
西部工業技術センター
東部工業技術センター
乳酸菌利用による食品廃棄物リサイクル技術 効率的な発酵液体飼料化を行うための乳酸発酵処理技術(半連続発酵生産方式)を検討します。また,この方式により発酵液体飼料を試作し,飼料特性・保存性等について試験を行います。 食品工業技術センター
ポリ乳酸樹脂の高性能化と自動車部品への適用 再生可能な資源を原料とするポリ乳酸樹脂を,射出成形し機械部品として使用可能とするため,耐熱性や耐衝撃性などの性能を改善するとともに,自動車部品などへの適用,実用化を図ります。 西部工業技術センター
有機性資源の有効活用 (1)有機性資源・遊休水田の有効利用を図るために,飼料イネの資源循環型省力低コスト栽培,(2)バイオマス資源の循環利用を図るために,家畜糞ペレット堆肥の水稲と畑作物への連年施用および牛糞堆肥の水稲連年施用に関する研究を実施します。 農業技術センター
成分調整堆肥による土地利用型農作物の減化学肥料栽培技術 家畜ふん堆肥の組合せや家畜ふんと食品製造副産物の混合堆肥化による成分調整堆肥を作成し,成分調整堆肥を用いた水稲等土地利用型農作物の減化学肥料栽培を確立します。 畜産技術センター
木材及び木質バイオマスの利用促進 森林バイオマスのさらなる収集コスト低減化のため,林地残材の結束化やチップ化による減容化の効率化,チップ含水率の低減化方法を検討し,森林バイオマスの供給システムを確立します。 林業技術センター
自然環境関係 森林類型による水源林の機能評価技術の開発 森林類型別の,水源涵養機能評価を可能にし,適正な森林管理につなげる技術を開発するため,太田川水系の試験流域で森林類型区分を行い,流域別流出特性を把握します。 林業技術センター
森林再生予測に基づく松枯れ跡地荒廃林復旧技術の体系化 松枯れ跡地等の,荒廃林を対象とした復旧事業を効率的に実施するため,森林再生予測に基づいて跡地を類型化し,事業導入の必要性や,最適工法を提示する技術開発を開始します。 林業技術センター
地球環境関係 温室効果ガス排出量の算定及び取引制度の構築に関する研究 産業部門の温室効果ガス排出量を削減するための有効な手法である排出量取引制度について,県内の企業と研究会を設立し,仮想排出取引市場の制度設計について検討します。また,中小企業支援のための排出量算定支援ソフトの開発及び排出量削減技術情報の提供等を実施します。 保健環境センター
 
 県立大学における研究[大学企画管理室]
 行政,企業及び試験研究機関等と連携し,新たな技術を開発し,環境低負荷の製品を,社会に普及していくことによって,環境への影響の低減を図ります。
[平成16年度事業実績]  各県立3大学に設置した産官学連携推進窓口(コーディネーターを2名ずつ配置)を中心に産学官連携を推進するとともに,研究者人材名簿の配布及び県ホームページ掲載により企業等へ研究者情報を発信しました。また,企業との共同研究,受託研究を実施しました。
[平成17年度事業実績]  県立3大学を再編・統合した県立広島大学においても引き続き研究のレベルアップを図るとともに,産学官連携を推進し,企業との共同研究等を積極的に実施します。
 
平成17年度に講じる施策(新規)
 
 県立広島大学地域連携センターの設置[大学企画管理室]
 県立広島大学(平成17年4月開学)の地域連携センターを核として,企業のニーズと学内の研究シーズを結びつけ,産学官連携を推進し,社会や時代の要請に応えた研究の実施と,その成果の還元により,地域の活性化に積極的に貢献します。
 
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