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日本紅斑熱について

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年9月7日更新
日本紅斑熱はマダニ類によって媒介される細菌の仲間日本紅斑熱リケッチアRickettsia japonica によって起こる感染症です。野外でリケッチアを保有するマダニ類に「吸着」されることで感染します。

同じようにダニの仲間のツツガムシによって起こるつつが虫病とは臨床症状がよく似ているため,確定診断には抗体検査や遺伝子検査が必要です。

疫学

日本紅斑熱は1984年に徳島県で初めて患者が報告された,新しい感染症です。媒介動物はマダニ類で,広島県では1999年に初めて患者が確認され,現在では毎年20名程度の患者が報告されるようになっています(月別発生状況)。主に県東部の尾三地域を中心に患者が発生していますが,県西部の広島市や呉市でも患者の感染が確認されており,また,一部の患者は島で感染したと推定されているため,島嶼部も含めた沿岸地域で広く注意が必要です。(図1

患者発生地域で採集されたヤマアラシチマダニ(図2)から病原リケッチアが検出されており,広島県ではこのダニが日本紅斑熱の媒介動物であると考えられています。ヤマアラシチマダニの活動時期は3月下旬~10月下旬で,この時期に患者の発生が見られることからも(図3),ヤマアラシチマダニが媒介動物であることが推察されます。なお,すべてのヤマアラシチマダニが病原リケッチアを保有していて危険なのではなく,一部に保有しているダニがおり,それに吸着されることで感染します。

感染時の行動は農作業や森林作業のほか,山登り,散歩など様々です。住居の周りで感染したと考えられる事例もあります。

広島県における日本紅斑熱患者推定感染地域

図1 患者の感染地域

ヤマアラシチマダニ

図2 ヤマアラシチマダニ

患者の発生状況のグラフ

図3 患者の発生状況

臨床症状

2~8日(つつが虫病より短い)の潜伏期間を経て,頭痛や倦怠感,寒気などのかぜ様症状とともに急激に発熱(38~40度の弛張熱,悪寒戦慄を伴う)します。高熱の後にやや遅れてて,四肢や体幹に米粒大や小豆大の紅斑が出現します。この紅斑に痛みやかゆみはありません。なお,日本紅斑熱の場合,典型例では四肢に強く発疹が出現し,手のひらにも紅斑が見られます。つつが虫病では手のひらの発疹は見られません。
注意深く全身を探すと皮膚にダニの刺し口(図4)が見つかります(刺し口は腹部や背部,外陰部,大腿部など隠れた部分にある場合が多い)。刺し口はつつが虫病の刺し口ほど大きくありません。発熱,刺し口,発疹は日本紅斑熱の三大特徴です(つつが虫病も同様)。
検査所見では,CRP の上昇,肝酵素(AST,ALT)の上昇,白血球や血小板の減少などがみられます。

日本紅斑熱は適切な抗菌薬を用いた治療を行わないと,DIC(播種性血管内凝固症候群)を起こすなど重症化し,時には死に至る場合もあるので,早期の診断と投薬が重要です。

日本紅斑熱患者のダニの刺し口と発疹の写真へのリンク

図4 ダニの刺し口と発疹

病原診断

患者の確定診断は,ペア血清による抗体上昇の確認など血清診断が一般的です。また,PCR法により急性期の患者血液や刺し口の痂皮からリケッチア遺伝子を検出することも行われています。

当センターでも日本紅斑熱リケッチア抗原を使用した間接蛍光抗体法(図5)による血清診断やPCR法による遺伝子検査を実施しています。

なお,広島県では,日本紅斑熱と臨床症状がよく似たつつが虫病の患者も発生しているため,つつが虫病についての検査も併せて実施しています。

日本紅斑熱の抗体検出法へのリンク

図5 間接蛍光抗体法によるリケッチア抗体の検出

医療機関の方へ:検査については管轄の県保健所へ問い合わせてください。

つつが虫病・日本紅斑熱・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)患者調査票 (PDFファイル)(166KB)

治療

日本紅斑熱の治療は,早期に日本紅斑熱の可能性を疑って適切な抗菌薬を投与することが極めて重要です。治療にはテトラサイクリン系の抗菌薬が最も有効です。ニューキノロン系の抗菌薬との併用療法も行われています(βラクタム系の抗菌薬は効きません)。日本紅斑熱は重症化しやすいのでその防止のために,1日の最高体温が39℃以上の場合には,直ちにテトラサイクリン薬とニューキノロン薬の併用療法を行うことが推奨されています。
 (参考文献 馬原文彦:リケッチア感染症.最新医学;63:192-214,2008)

感染予防

感染予防にはダニの吸着を防ぐことが最も重要です。農作業やレジャーなど野外で活動する際には,以下のような対策をとります。

  • 長袖,長ズボンなどを着用して皮膚の露出を避け,すそを入れ込んでダニの付着や服の中に入ってくるのを防ぐ。長靴を履くのもよい
  • 肌が出る部分には防虫スプレーを噴霧する(効果は限定的)
  • 作業後は体や服をはたき,帰宅後はすぐに入浴して身体をよく洗う。また,衣服は放置しないですぐに洗濯する

なお,野外での作業などの数日から10日前後で発熱・発疹などが認められた場合には,できるだけ早い時期に医療機関を受診して,日本紅斑熱あるいはつつが虫病に感染した可能性があることを告げ,検査・治療を受けてください。

届出基準

日本紅斑熱は感染症法の分類で四類感染症全数把握疾患となっており,診断した医師は直ちに最寄の保健所に届け出る必要があります。届出の基準は臨床症状や所見から日本紅斑熱が疑われ,かつ以下のいずれかの方法により日本紅斑熱リケッチアを分離・検出したり,抗体を検出したものとなっています。

  • 日本紅斑熱リケッチアの分離(血液などからの病原体の分離)
  • 日本紅斑熱リケッチアの遺伝子の検出(PCR法による検出)
  • 抗体の検出(間接蛍光抗体法や間接免疫ペルオキシダーゼ法によりペア血清でIgG抗体価が4倍以上上昇するか,IgM抗体の上昇が確認されるなど)

啓発用資料

野外で活動する時にはダニにご用心! -ダニからうつる病気「つつが虫病」と日本紅斑熱- (PDF:239KB)

リーフレット:広島県のダニ類媒介感染症 ~つつが虫病,日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群(SFTS)~(PDF:1.41MB)

参考資料

関連サイト

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