2  環境学習の推進
 
現状と課題
 
  地域社会のあらゆる場において,総合的で実践を伴う環境学習が適切かつ活発になされるよう,学校教育や社会教育での取組の充実,そのための指導者の育成,拠点整備などを行う必要があります。平成10年度に学習指導要領が改訂され,体験による問題解決能力の向上を目指した環境学習の充実が図られるようになりました。人間活動と環境との関わりについての総合的な理解と認識の上,環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる能力や思考力,判断力を身につけ,環境への責任ある行動がとれる態度を育成することを目的に,各学校において環境学習が行われています。平成16年度公立小・中学校における教育課程の編成状況調査によると,社会や理科などでの学習に加え,総合的な学習の時間において,環境をテーマとした学習は,約67%の公立小学校と,約60%の公立中学校において実施されています。
 県では,教職員を対象にした環境教育研修の実施や教材・プログラムの作成支援や提供を行うなど,学校における環境学習の支援を行うとともに,県民の自主的な環境保全実践活動に対して,適切な指導,助言を行うことができる「環境保全アドバイザー」等を育成しています。
 今後は,環境学習に関する情報提供,研修,交流等の拠点としての機能の充実を図るとともに,既存施設のネットワーク化を推進するなど,環境学習基盤機能の強化を図る必要があります。
 
図表 4-1-1 環境保全アドバイザー登録者数
資料:県循環型社会推進室
 
[施策の方向]
環境学習の機会の充実
環境学習のためのプログラムの整備と指導・助言等を行うことができる人材の確保
環境学習拠点機能の充実
 
施策の展開
 
(1)教育や学習の場ごとの世代に応じた環境学習の推進
 平成17年3月に策定した「広島県環境学習推進実施計画」に基づき,幼児から高齢者まで,世代に応じた環境学習を,家庭,学校,地域社会,職場などの多様な場で総合的に推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 こどもエコクラブの支援[循環型社会推進室]
 小・中学生が自主的に環境保全活動を行う「こどもエコクラブ」について,地域環境に関する具体的な取組・活動が展開できるよう,支援情報を提供するとともに,市町の協力を得てこどもエコクラブ参加メンバーの増大を図ります。
[平成16年度事業実績]  市町担当者と連携して情報提供に努め,87団体のこどもエコクラブのメンバー1,397人による活動が行われました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,情報提供に努めるとともに,県下のこどもエコクラブ合同交流会を開催します。
 
 環境保全活動・環境教育推進方策策定事業[循環型社会推進室]
 「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」に基づく国の基本方針を勘案して,環境学習の効果的な推進を図るための事業実施計画を策定しました。
[平成16年度事業実績]  地球環境対策室での協議や専門家からの意見聴取を踏まえたうえで「広島県環境学習推進実施計画」を策定しました。(平成16年度終了)
 
 中国山地やまなみ大学推進事業[地域づくり推進室]
 豊かな自然,歴史,文化に恵まれた中国山地を県民の生涯学習や環境学習,安らぎの場として活用し,持続可能な活力ある中国山地を実現させるとともに,中山間地域と都市部との交流,共生関係の構築を目指す取組を行います。
[平成16年度事業実績]  児童・生徒を対象にして,環境にふれあう総合学習楽科を実践しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,今後とも環境にふれあう総合学習楽科を実践します。
 
 子どもの体験活動奉仕活動推進事業[生涯学習課]
 子どもたちに,多彩な地域活動の機会と場を提供し,また,様々な機関との連携のもと,野外体験活動,農業体験活動,環境学習,世代を超えた交流活動など子どもたちにとってより魅力的な体験活動が行われるように,様々な取組を総合的に推進します。
[平成16年度事業実績]  体験活動やボランティア活動に関する情報を提供する「体験活動ボランティア活動支援センター」の設置推進と情報提供システムを構築するとともに,体験活動のリーダーを養成しました。体験活動,ボランティア活動支援センターを設置した市町村数(平成14年度12→平成15年度27→平成16年度28)(平成16年度終了)
 
平成17年度に講じる施策(新規)
 
 環境学習基盤機能検討事業[循環型社会推進室]
 環境問題について,総合的・体系的に学習できる広域的な環境学習拠点に必要な機能について整理したうえで,環境学習推進の基盤となる機能の構築に向けた方策を検討します。
 
 地域教育力再生プラン[生涯学習課]
 地域の教育力を活性化させることを目的とし,「地域子ども教室」「ボランティア活動推進事業」を実施します。(地域子ども教室21市町136教室,ボランティア活動推進2事業実施)
 
(2)環境学習の機会の充実
 環境学習に取り組む民間団体や事業者の増加とともに,学習や教育の機会が増加している状況を踏まえ,引き続き自然観察会などのイベントや,環境問題に関する講演会・ワークショップの開催など,様々なタイプの環境学習の機会の一層の充実を図ります。
 一人でも多くの県民が参加できるよう,県が実施する環境学習に関する情報はもとより,民間事業者やNPO団体等の行事等に関するものも含めて情報提供に努めます。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 海洋環境こどもクルーズの実施[循環型社会推進室]
 海洋から環境を見つめなおしてもらうため,第六管区海上保安本部と共催で,小学生を対象に巡視船への体験乗船や水の分析等の環境学習を実施します。
[平成16年度事業実績]  平成16年度は巡視船が使用できなかったため実施できませんでした。
[平成17年度事業内容]  身近な環境問題を盛りこんだクルーズを計画しています。
 
 環境講演会の開催[循環型社会推進室]
 ひろしま地球環境フォーラム等との共催により,地球環境等に関する講演会を開催します。
[平成16年度事業実績]  地球温暖化や環境関連法令,環境マネジメントシステム,環境と経済の好循環をテーマとした講演会を開催しました。
[平成17年度事業内容]  関係団体等と連携し,時勢に応じたテーマ,内容の環境講演会を実施します。
 
 環境保全セミナーの開催[循環型社会推進室]
 県地域事務所等で,地域住民を対象に,環境に対する関心と理解を深め,環境保全活動への意欲を高めるため,環境保全セミナーを開催します。
[平成16年度事業実績]  水生生物調査など,小・中学生を対象にした環境学習セミナーや,環境保全活動に興味のある県民等を対象に指導者養成セミナーを開催しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,環境保全セミナーを計画します。
 
 水産少年教室の開催[水産振興室]
 小学校高学年を中心に,稚魚の放流など栽培漁業の体験学習を実施し,漁業への理解を深めるとともに,資源の大切さを啓発します。また,海浜で磯の生物の採取を行い,身近な海域の環境とふれあう機会を持つことによって,海洋環境への理解を深めます。
[平成16年度事業実績]  大竹市阿多田島小学校ほか30地区で,稚魚の放流など栽培漁業の体験学習を実施し,1,619人の参加を得ました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,大竹市阿多田島小学校ほか27地区で同様の行事を実施し,漁業への理解と環境の大切さを啓発します。
 
 森林環境教育推進事業[森林保全室]
 次代を担う子どもたちの身近な森林における森林体験活動等を推進するため,行政・森林所有者・教育関係者等との連携・協力による普及啓発を実施します。
[平成16年度事業実績]  神石高原町において,高校生を対象とした,森林・林業体験活動を支援しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,高校生を対象とした,森林・林業体験活動の実施を神石高原町で計画しています。
 
 環境教育研修会の開催[生涯学習課]
 県内各地域で環境学習を推進する指導者を対象に研修会を開催し,次代を担う子ども達に,地球環境の大切さや,かけがえのない生命の価値をつかませていく取組を推進します。
[平成16年度事業実績]  県立少年自然の家,青年の家において,子どもたちの野外活動や自然体験活動を支援する指導者の養成を目的とした研修会を開催し,延べ130名の参加を得ました。
[平成17年度事業内容]  福山少年自然の家では,学校等の自然環境学習の推進のため,森の環境をテーマとした「NEEDSプログラム」を開発・提供します。
 
 環境学習推進事業[環境政策室]
 学校教育に重点を置いた環境学習を推進するため,学校における教育活動を通して学習教材を開発するとともに,この教材を活用して家庭や地域が一体となって学習するしくみづくりを行います。
[平成16年度事業実績]  地球温暖化と新エネルギーをテーマに,廿日市市立佐方小学校,呉市立渡子小学校,北広島町立大朝小学校及び府中市立国府小学校の4校をモデル校に指定して,実践的な環境学習に取り組みました。
[平成17年度事業内容]  地球温暖化と資源循環型社会をテーマに,安芸太田町立殿賀小学校,東広島市立板城小学校,三原市立小坂小学校及び府中市立国府小学校の4校をモデル校に指定して,実践的な環境学習に取り組みます。
 
 環境ホームページの運営[環境局](再掲)
→詳細は,こちら
 
(3)プログラムの整備
 家庭,学校,地域社会,職場,環境学習拠点など,それぞれの場に応じた環境学習プログラムや副読本の整備を推進します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 指導指針の提示[指導第一課]
 児童生徒に自然に対する豊かな感性や環境に対する関心等を培い,環境や自然と人間とのかかわり,環境問題と社会経済システムの在り方や生活様式とのかかわりについて理解を深め,環境保全や環境の創造を具体的に実践する態度を身に付けるための指導指針を定め,学校における環境学習を推進します。
[平成16年度事業実績]  「環境のための地球学習観測プログラムモデル校(文部科学省)」に呉市立渡子小学校が,「環境学習推進事業モデル校(広島県)」に廿日市市立佐方小学校,呉市立渡子小学校,北広島町立大朝小学校,府中市立国府小学校が指定されました。
[平成17年度事業内容]  「平成17・18年度環境教育実践モデル事業実践モデル校(文部科学省)」に安芸太田町地域の修道小学校,津浪小学校,加計小学校,殿賀小学校,猪山小学校,加計中学校が,「環境のための地球学習観測プログラムモデル校(文部科学省)」に呉市立渡子小学校が,「環境学習推進事業モデル校(広島県)」に東広島市立板城小学校,安芸太田町立殿賀小学校,三原市立小坂小学校,府中市立国府小学校が指定されます。
 
(4)人材の育成
 身近な環境調査やリサイクル活動,講習会,学習会の開催など,県民の自主的な環境保全実践活動に対して,適切な指導,助言を行うことができる「環境保全アドバイザー」等を育成するとともに,学校での環境学習を中心となって実践・指導できる教職員を養成することにより,学校・地域における環境学習の拡大を図ります。
 地域の自然資源や生物に造詣の深い人や自然公園指導員等の協力を得るなど,環境学習の指導体制を充実します。
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 環境保全アドバイザーの育成[循環型社会推進室]
 身近な環境調査やリサイクル活動,講習会,学習会の開催など,県民の自主的な環境保全の実践活動に対して,適切な指導,助言を行う環境保全アドバイザーの資質を向上させるため,情報提供するとともに,資質向上研修を実施します。
[平成16年度事業実績]  環境講演会や関連の行事について情報を提供するとともに,省資源・省エネルギーに関する事後研修会を実施しました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,関連の情報提供を行うとともに,資質向上研修や実践活動報告会を開催します。
 
 環の応援団サポーター養成支援事業[循環型社会推進室]
 廃棄物抑制などの環境学習や環境保全活動の実践を指導できる教職員を養成するための研修を実施し,学校における環境学習が拡大するよう支援します。
[平成16年度事業実績]  県内の小学校24校から27名の教職員が研修に参加し,2学期の授業で実践する環境学習プログラムを策定しました。
 また,授業での実践にあたり,必要な教材を支援しました。
[平成17年度事業内容] 引き続き,学校における環境学習を支援します。
 
 県立大学・大学院での教育・研究[大学企画管理室]
 各県立大学で環境教育に関する科目をカリキュラムに取り入れ,また環境関連の研究を実施することにより,県立大学の学生に対する教育・研究による環境問題に関する意識を醸成します。
[平成16年度事業実績]  広島県立大学で「総合科目8,地学,生物資源学部専門科目の一部」,県立広島女子大学で「環境論,生活環境学科専門科目の一部」,広島県立保健福祉大学で「生活環境科学」といった環境に関する科目を実施しました。また,広島県立大学で「環境及び生体試料のための新規高感度分析法の開発」,県立広島女子大学で「環境・生体試料分解システムの開発」,広島県立保健福祉大学で「住環境(保健サービス関連)」等の環境関連の研究が実施されました。
[平成17年度事業内容]  引き続き,環境に関する科目や環境関連の研究の実施により,学生の環境問題に関する意識を醸成します。
 また,平成17年4月に開学した県立広島大学に生命環境学部環境科学科を設置し,環境に関する教育・研究を実施します。
 
 教員研修の推進[指導第一課]
 児童生徒の発達段階に応じ,地域の特色を生かした学校独自の学習プログラムを創造することができるよう,様々な研修機会をとらえ,教員の環境に関する専門的な知識や技能の向上を図ります。
[平成16年度事業実績]  初任者を対象に,環境教育をテーマとした講座を実施しました。また,環境教育担当教員研修会,第7回全国環境学習フェア,環境教育リーダー研修,環の応援団サポーター養成支援事業へ参加しました。
[平成17年度事業内容]  新たに,10年経験者研修の講座内容に「環境教育」を組み入れるなど,引き続き,講座や研修により,教員の環境に関する知識や技能の向上を図ります。
 
平成17年度に講じる施策(新規)
 
 環境学習指導者養成支援事業[循環型社会推進室]
 「環境保全アドバイザー」や「こどもエコクラブサポーター」等の環境学習指導者を対象にした研修を実施し,指導者としての資質の向上を図るとともに,地域における環境保全への取組やこどもたちの自発的な活動を推進します。
区分 概要
受講対象者 「環境保全アドバイザー」,「こどもエコクラブサポーター」等の環境学習指導者
・県内2箇所で各30名程度
研修期間 9月〜12月
研修内容 ・環境保全に係る専門的知識の習得
・地域における環境保全活動・環境学習実践に係るコーディネート能力の修得
・実践活動報告会
(5)環境学習拠点機能の充実
 環境学習に関する情報提供,研修,交流等の拠点としての機能の充実を図るとともに,既存施設のネットワーク化を推進するなど,機能強化を図ります。
 雨水利用システム等の環境に配慮した設備を有する公共施設やごみ処理施設等の生活環境施設及び試験研究機関等を環境学習の施設として積極的に活用します。
 県立の自然公園や野外レクリエーション施設について,環境学習の拠点としての機能を強化します。(再掲)
 
平成16年度に講じた施策・平成17年度に講じる施策
 
 環境学習基盤機能検討事業[循環型社会推進室](再掲)
→詳細はこちら
 
 自然公園等施設整備事業[自然環境保全室](再掲)
→詳細はこちら
 
 びんごエコタウン環境学習機能の整備[循環型社会推進室]
 関係市町の協力のもと,びんごエコタウン構想における環境学習の拠点としての機能の整備を図ります。
[平成16年度事業実績]  平成15年度策定の「びんごエコタウン環境学習機能整備実施計画」に基づき,事業検討を行いました。
[平成17年度事業内容]  実施計画を推進します。
 
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