第3章 (1)実現上の課題
ア 調達の電子化の全国的な状況
a 情報開示関係
公共事業分野では,公共工事入札契約適正化法の施行によって,工事発注関係の情報開示が法定義務となったことに伴い,その透明化を一層進めるため,情報のホームページへの開示が急速に進行しています。
b 発注手続関係
(a)資格申請・電子入札
入札参加資格の電子申請については,国をはじめとするいくつかの発注機関の公共事業関係で始まっています。
入札システムの中枢部分については,公共事業関係での標準化やシステム開発の重複投資回避を目的として,国土交通省の関係団体によって「電子入札コアシステム」が開発され,販売が開始されています。
(b)認証基盤
受注者側の認証基盤(民間認証局)は,現在様々な認証局が設立され,その活動が始まっており,電子入札に関しては上記の電子入札コアシステムに対応した8つの民間認証局が平成15年度から本格的に活動を始める予定となっています。
一方,発注者側の認証の仕組みについては,組織認証基盤(GPKI・LGPKI)として現在整備が進められています。
(c)電子契約
現在のところ,民間商取引においても電子契約の普及はさほど進んでおらず,国や他の地方自治体でもこれを導入した事例は皆無であるため,今後の社会全体への普及状況を見極めて対応すれば良いと考えられます。
c 実施手続関係
履行途中の受発注者間の情報共有を一層進めるため,履行計画や図面などの,履行に必要な様々な情報・データをインターネット上の共有サーバーに格納し,関係者がいつでも確認・修正できる「情報共有サーバー」が提案されており,各地で実験が進められています。
成果品の電子納品についても,国土技術政策総合研究所と国土交通省官庁営繕部によって,土木・建築分野の電子納品の基準案が制定されています。
イ 発注者の状況と課題
(ア)県の状況と課題
a 情報開示関係
県では,公共事業(建設工事とコンサルタント業務)についてホームページによる本格的な電子開示を開始しています。 現在のところ,公共事業についても個別案件の入札公告や入札結果など,各発注機関が日々更新していく必要のあるものについては対象から除いており,他の調達分野については物品関係の一部情報以外はホームページ開示を行っていない状況にあります。
b 発注手続関係
発注手続について,本県では,これまですべて対面処理・紙文書のやり取りを基本として実施しており,発注手続を電子化するために新たなシステム構築が必要です。
これについて本県では次のような状況にあります。
(a)資格者制度が工事・コンサル・物品・庁舎管理の分野に限定され,資格者名簿がない分野が存在している。
(b) LAN/WAN未接続の発注機関が存在する。(県立学校・警察署等)
(c)使用している入札方式等は通常型指名競争入札と随意契約が主体であるが,多様なバリエーションが存在しその改変も頻繁
(d)発注件数では,物品等の少額発注が大部分を占めるが,その金額的な割合は低い。
(e)仕様書閲覧等に業者の来庁が必要なため,大きな移動負担を強いている。
c 実施手続関係
受注者との情報交換は対面協議を基本としており,契約に伴う多様な書類提出も持参を原則とし,電子メールについては現在のところ正規の書類提出方法としては認知していません。また,書類様式等も業界団体等の販売に委ねています。 電子納品基準についてはデジタル工事写真以外は未制定のままであり,将来の図面電子化の必須条件となるCADについては,建築関係の一部で試行的に利用を開始しているものの,その他の部署では未導入で職員の習熟も進んでいません。
(イ)県の外郭団体の状況と意向
外郭団体が行っている調達の状況と電子化に対する意向は次のとおりです。
a 大半の団体は,調達件数・調達規模ともに小さく,電子調達導入の意向も少ない。
b 調達件数は少ないものの,建設工事を発注するなど調達規模が大きい団体が少数あり,その中には電子調達に積極 的意向を示すところもあるが,システム開発・運営は県や市町村との共同化を希望している。
(ウ)市町村の状況と意向
電子調達に関する市町村の状況及び県との共同化等への意向は次のとおりです。
a 電子化の前提となる情報化基盤は,市町村で整備状況に差があり,電子調達関連事項の認知度も低いなど,全体的にまだ緒についたばかりの段階にあると判断されます。
b 県電子調達については,効率化や透明性といった本来のメリットに期待は高いものの,予算・組織・人材等の課題を抱えており,結果的に,県や他市町村等との開発・運営共同化を望む声が強くなっています。
c 共同化には,制度体系の統一が不可欠ですが,ニーズの高い公共事業関係分野の体系が県に近いものとなっていることから,特にこの分野で共同化の可能性が高いと考えられます。
これらのことから,市町村における公共調達の電子化を推進していくためには,県の支援策が重要であると考えられます。
ウ 受注者側の状況と課題
受注者に対しては,電子調達に関する状況や意向を十分に把握するため,県の入札参加資格者の約2分の1を対象に調査を行い,約半数から回答を得ました。
その結果はおおむね次のとおりです。
(ア)コンサル業者を筆頭に,情報化基盤の整備はおおむね完了しており,また,電子化に多様な期待も寄せられるなど,電子調達の推進に向けて機は熟していると判断されます。
(イ)県の取組へのニーズは,入札参加資格申請と入札情報サービスが突出している一方で,電子入札や電子納品には消極意見が見られます。習熟度を上げながらの段階的な導入が求められています。
(ウ)不安事項として,システム乱立への懸念が突出しており,また認証費用負担は,先行例程度でも県専用で過半数,市町村と共通なら約7割以上の業者が容認しているなど,共通化に対する強い要望が明らかとなってます。
このことから,市町村(及び他県等)とのシステムや認証の共通化とその普及を図った上で,段階的に導入・展開を進めていけば,受注者も含めた関係者全体での推進が可能になると考えられます。
- 電子資格申請では,県と市町村での行動受付による効率化の徹底
- 入札情報サービスは,情報集約するほどメリットが高まる特徴を踏まえ,県内の発注情報を集め開示する全分野統合検索の実現
- 認証については,業容が多角化している業者負担の最小化に向けた,全分野の認証方式の共通化