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令和2年度広島県ニホンジカ林業被害実態等調査の実施結果について

印刷用ページを表示する掲載日2021年7月8日

 広島県では,スギ・ヒノキ等の人工林の主伐・再造林を推進していく上で,ニホンジカによる苗木の摂食等による林業被害の防止対策が重要であると考え,ニホンジカによる林業被害の実態及び効果的な防除対策の検討を行うため,過去5か年に植栽を行った事業地について,森林組合や民間事業体を対象に,林業被害実態調査アンケートを実施しました。

1 調査対象等

(1)調査対象地 : 過去5か年(H27~R元年度)に植栽を行った事業地

(2)調査方法 : 下刈作業等で調査対象地に入った際に,ニホンジカによる林業被害実態を調査

(3)箇所数 : 県内781箇所の施業地についてアンケートによる調査を実施した結果,622件の回答(回収率79.6%)

表1 樹種区分ごとの施業地数・摂食被害数
樹種区分 民有林 水源林 国有林 総計 摂食被害数
ヒノキ 271 152 49 472 68
Sマツ 146     146 32
スギ 70 23 17 110 13
コウヨウザン 32 3   35 3
その他(広葉樹) 18     18 0
合計 537 178 66 781 116

 


2 被害状況

 全樹種区分の中で,他の樹種区分に比べて被害が大きかったのは,ヒノキであった。

 摂食を受けたヒノキの植栽木の割合(本数率)は,安芸高田市,世羅町,東広島市,北広島町で30%以上であった。

 一方,スギやSマツについては,全体的に被害割合は高くなかった。コウヨウザンとその他(広葉樹)についてはデータ数が非常に少なかったため,傾向を読み取ることはできなかった。

 なお,植えている樹種に地理的な偏りがあり,それに関連したシカの分布状況にも違いがあるため,この結果は一概に樹種による被害の受けやすさの違いを示しているものではない。

ヒノキやスギなどの樹種ごとに摂食被害を受けた植栽木の割合(本数率)
 図1 摂食を受けた植栽木の割合(樹種区分別)


摂食を受けた植栽木の割合を地図に落としたもの

 図2 摂食を受けた植栽木の割合(空間統計処理)

3 摂食被害とシカ密度との関係

 シカが植栽木に与える影響を明らかにするため,シカの密度分布図と摂食被害を受けた植栽木の割合(食害なし,1~10%未満,10~30%未満,30~50%未満,50~100%の5段階)の結果を重ね合わせ,摂食被害とシカ密度との関係性を確認した。

 シカの生息密度が中~高程度の地域では,摂食を受けた植栽木の割合がその他の地域に比べて高い傾向がある。

摂食被害とシカの密度を示した地図
 図3 摂食被害とシカ密度との関係


4 対策の状況

 対策なしが8割以上を占め,次いで防護柵,食害防止チューブ,忌避剤の順で割合が高かった。

  また,シカの生息情報があっても対策を講じていない場合も8割以上を占めた。

 ○ シカの生息情報と防護対策の関係

・ 防護対策を実施していない399箇所 うち生息情報あり248箇所,生息情報なし151箇所

・ 防護対策を実施している49箇所 うち生息情報あり45箇所,生息情報なし4箇所

 【防護対策49箇所の内訳】

 (1)防護柵36箇所 うち生息情報あり32箇所,生息情報なし4箇所

 (2)食害防止チューブ12箇所 うち生息情報あり12箇所

 (3)忌避剤1箇所 うち生息情報あり1箇所

 ○ シカの生息情報      65.4%(293箇所/448箇所) ……23.5ポイント↑(対前年)

・ 獣害対策をしている    15.4%(45箇所/293箇所)  ……8.3ポイント↓(対前年)

・ 獣害対策をしていない 84.6%(248箇所/293箇所)

被害防護を地図に示した

 図4 対策の実施状況


5 対策と被害程度との関係

 対策と林業被害の関係を確認するため,実施対策と植栽木の摂食被害の程度(食害なし,1~10%未満,10~30%未満,30~50%未満,50~100%の5段階)の関連性を比較した。

 防護柵を設置している施業地では,8割以上の施業地で摂食被害程度が10%未満に収まっていることから,防護柵は林業被害の対策に効果があると考えられる。食害防止チューブと忌避剤については,データ数が少ないため,被害状況との関係を十分に分析することはできなかった。

防護対策と被害状況等の関係を示す

 図5 防護対策と被害状況の関係(シカの生息情報がある施業地のみ)


6 その他

 ニホンジカの生息区域が拡大する中,今後,主伐・再造林を進めるにあたっては,被害の程度の差はあるものの,被害の発生のおそれがあることを認識していただき,必要な地域においては防護柵等を設置するとともに,設置後の維持・管理を徹底することにより,被害の未然防止に努めてください。


7 広島県ニホンジカ林業被害実態等調査分析業務報告書

令和2年度 (PDFファイル)(8.57MB)

令和元年度 (PDFファイル)(3.4MB)

平成30年度版 (PDFファイル)(6.69MB)

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