アレロパシーにより繊毛虫を駆除
○ 発明の名称 : 繊毛虫類駆除剤,繊毛虫類の駆除方法及び水質浄化剤
○ 特許番号 : 特許第5988240号
○ 特許権者 : 広島県
保健環境センターでは,植物のアレロパシーを利用して,微細藻類の増殖を抑制する研究を実施し,数種類の植物抽出液がラン藻類の増殖を抑制することを明らかにしました。
また,水産や農業分野で問題になっている繊毛虫等による病害対策としてもアレロパシーを活用できる可能性があると考え,水産海洋技術センターと連携して繊毛虫の増殖を抑制する植物を探索する研究を実施しました。
その結果,ブロッコリー等の抽出液に含まれるスルフォラファンがスクーチカ(Miamiensis avidus)等の繊毛虫の増殖を抑制する効果を発見し(図),スルフォラファンの活用技術として権利化しました。
当センターでは,引き続き植物由来成分の有効利用に係る研究に取り組んでいます。
また,研究開発の成果を活用・事業化していただける企業様を募集しています。
「繊毛虫類駆除剤,繊毛虫類の駆除方法及び水質浄化剤」について御興味ある企業様は,下記連絡先よりお気軽にお問い合わせください。
- 窓口 : 広島県立総合技術研究所保健環境センター 総務企画部
- 電話 : 082-255-7131
- Fax : 082-252-8642
- E-mail : hkcsoumu@pref.hiroshima.lg.jp
アレロパシー
植物が放出する天然の化学物質が他の生物に何らかの影響を及ぼす現象です。
植物由来の成分 スルフォラファン (Sulforaphane)
日本国内で採取,栽培でき,生態系への悪影響が小さいと考えられる在来植物及び野菜,花卉を中心に,スクーチカ繊毛虫の増殖を抑制する効果について試験を行った結果,数種類の植物で効果を確認しました。
そのなかでも特に強い増殖抑制効果を示したブロッコリーについて,有効成分の単離・同定を行い,ブロッコリー中のスルフォラファン(Sulforaphane)がスクーチカ繊毛虫の増殖を抑制する効果を持つ物質であることを発見しました。
スルフォラファンは,イソチオシアネートの一種で,ブロッコリー,カリフラワー,キャベツ,ケールといったアブラナ科植物に広く含まれ,特にブロッコリーに多く含まれています。
スクーチカ症 (Scuticociliatosis)
原生生物の仲間である繊毛虫類は自然界に幅広く生息しており,そのうちの一部は寄生性で,水生生物に寄生します。
特にスクーチカ繊毛虫(Miamiensis avidus)は,ヒラメ,タイ及びフグへ寄生してスクーチカ症を引き起こし,感染魚を死に至らしめるため,水産養殖業者に壊滅的な被害を与えることがあります。
スクーチカ繊毛虫の駆除実験
スクーチカ繊毛虫の培養液にスルフォラファンを添加し,25℃,暗所にて培養を行いました。
培養2,4,6,8,12,16,20,24,28,36,48時間後に培養液中のスクーチカ繊毛虫の生存個体数を計数しました。
スクーチカ繊毛虫に対する駆除効果は,培地中のスルフォラファン濃度 1mg/L以上で得られました。
スクーチカ繊毛虫に対する駆除効果の発現時間は,スルフォラファンの濃度が高いほど短く,30mg/Lで2時間以内,10mg/Lで6時間後,3mg/Lで16時間後に90%以上駆除できました。1mg/Lでは28時間後まで弱い駆除効果がみられましたが,その後は増殖抑制効果のみがみられました。
図 スルフォラファン濃度とスクーチカの増殖の関係