山本 浩泰さん(「パティシエ・ヒロ ヤマモト」オーナーシェフ)
世界にも誇れるひろしまのフルーツ。菓子づくりを通して魅力を伝えたい。
<プロフィール>
山本 浩泰(やまもと ひろやす)さん
調理学校を卒業後、広島市内のイタリア料理店にてドルチェを担当し菓子づくりに開眼。
神戸の菓子店で働いた後、単身フランスへ。現地の名店で腕を磨いた。
在仏中にコンクール出場アメ細工部門優勝など栄冠を手にした。
帰国後、都内のホテルでパティスリースーシェフや人気店でシェフパティシエを務める。
平成23(2011)年に「パティシエ・ヒロ ヤマモト」をオープンさせた。
<インタビューの映像(概要)はこちら!>
パティシエへの道を拓いてくれた
ふるさとの人たち。
僕のふるさとは三原市で実家は寿司屋を営んでいます。しかし僕は魚が苦手でした。小学校時代から姉と一緒に食事を作ることが好きで「将来は洋食で勝負したい」と思っていました。そして高校卒業後に飲食の道へ。広島市内のイタリアンの老舗に就職してデザート担当に。しかしやってみると、これが意外と難しいんですよ。毎回仕上がりが違うんです。感覚では作れない。料理はさじ加減なんですけど、デザートは配合をきっちりしないとちゃんと作り上げることが出来ない。ここが全然違うんですね。
そこで、休みの日に尾道のケーキ教室で習っているうちに、逆にお菓子の世界にのめり込んでしまったんです。当時、お菓子のコンテストがあって、“オペラ”というコーヒーのチョコレートケーキをピスタチオに変えて出したら、いきなり最優秀賞に。その時点で、この世界で生きるしかないなと感じました。
その受賞作品を味見した店のオーナーと店長は、『イタリアンの道は辞めてケーキの本場・神戸に行け』と言うのです。本気でやるなら神戸か東京しかないといわれ、覚悟を決めて神戸へ。しかし、製菓学校などで学んだ経験がないため『経験ないんでしょ?じゃあ雇えない』と何度も断られました。
神戸時代は、この差を縮めるのに必死に食らいつくしかありませんでしたね。
ある時、ケーキの食べ歩きをしていて、神戸の北野にある店のケーキに衝撃を受けました。僕が今作っているケーキとは全く違う!なんでこんなに綺麗に出来るんだろうと。聞くと世界大会の優勝経験もある業界では有名な人物だとか。僕も『こんな風になりたい』と思ったんです。そこでお金を貯めて、24歳の時、フランスに修行に行きました。
最高峰で菓子づくりを学びたい。
夢を追いフランスへ。
フランスに行って驚いたのは、日本みたいな綺麗なケーキではないということです。そこに衝撃を受けました。味にも差があるんです。けれど、芸術性に溢れていました。ケーキにしても、デザインにしても芸術的なものが多い。
僕はアメ細工のお菓子を作るにあたって色々なものを見て作ります。例えば、アルザスというテーマのケーキを作る時は、アルザス地方まで足を運ぶ。どういうものが郷土品で、どういったものがテーマになるのかなど見て歩いて感じようと心がけます。そういった意味で、フランスの街並み自体が、芸術を育む要素のある街だと強く感じましたね。
フランスではオーナーのアドバイスも受けながら毎日細工の練習をし、1年かけて参加したコンクールで優勝。結局、その年の3つの大きなコンクール全てでタイトルを獲ったんです。自分でも若干驚きです・・・(笑)。帰国後は、自分が求めているマキシマムになるケーキを作ろうと思って、いいフルーツ、いい材料にこだわり抜いてケーキを作っています。今、それを食べたお客さんが喜んでくれることが1番嬉しいですね。
世界に出て感じたことは、ひろしまは世界から見ても意外と知られていること。これは驚きです。フランスで『日本のどこ?東京?大阪?』と聞かれて、その次には必ず『広島?』と言われます。
実際、僕は広島出身ですが、恥ずかしながら原爆ドームに入ったことはないし、宮島にも行ったことがないんです。いつかその歴史が伝えられるひろしま人になりたいですね。
若い人は、ひろしまに留まらないで、1度、世界を見て欲しいと感じています。世界に出て、もっと活躍してもいいんじゃないのかなって。その後、ふるさとに戻って経験を生かすという方法もあるのではないかと。せっかく様々な道があるのですから。
尾道のイチジク、向島のレモン。
取り寄せてでも使いたい ひろしまのフルーツ。
東京ではなかなかひろしまの特産物は手に入りません。ある時、取引しているフルーツ屋さんが、ひろしまのフルーツを送ってくれました。それが、桃、レモン、イチジクです。食べてみたら、関東で食べるよりはるかに美味しいんです。正直、知らなかったんです。尾道にイチジクの木がいっぱいあることは知っていましたが、それがこんなにも美味しいなんて。向島にあるレモンも同じです。味にしても、香りにしても、ひろしまにはフルーツはすごく良いものがたくさんあるんですよ。逆に自分でお店をやり始めて、ひろしまの魅力をたくさん知りましたね。
桃、レモン、イチジクはレベルが格段に高く、世界にも通用する食材です。これから勉強して世界にひろしまの味を伝えたいですね。もちろんこれらフルーツは、僕の店では毎年外せない食材なので、毎回取り寄せてまで使っています。店で提供すると、東京のお客さんはそれを求めてわざわざ来てくださるんですよ。『これ美味しいよね』って。凄くありがたいですね。自分がひろしま人であることに誇りを感じます。ケーキのネーミングにも広島出身の歌手の名前を付けたりしますし、いいものがあれば今後どんどん取り入れていきたいと思います。
ひろしま自体が自分にとっては帰る場所ですし、帰れる場所があるっていうのはすごく嬉しいことだと感じます。ひろしまには思い出が詰まりすぎているんですよ!
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