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平成22年広島県議会2月定例会(平成22年2月17日)

印刷用ページを表示する掲載日2011年12月1日

知事説明要旨

 本日ここに,平成22年度当初予算案をはじめ諸議案を提出し,県議会のご審議をお願いするにあたり,新年度における重点施策を中心に所信を申し上げ,議員各位並びに県民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

1 新年度予算編成の基本方針

【県政運営にあたっての所信】

   知事就任後,80日余りが経過いたしました。就任当初,私は,広島県の持つ底力を最大限に引き出し,あらゆる分野で,新たな活力を生み出すための様々な挑戦を行うことを政策理念とし,行政運営にあたりましては,「県民起点」,「現場主義」,「予算主義から成果主義への転換」の徹底を図り,県庁全体で価値観や目標を共有し,一丸となって広島県と広島県民のために全身全霊を傾注していくことを誓いました。
 こうした考えのもと,私は,「広島に生まれ,育ち,住み,働いて良かった」と心から思える広島県づくりを目指し,「人づくり」,「新たな経済成長」,「安心な暮らしづくり」,「豊かな地域づくりと真の地域主権の確立」,そして「行政運営刷新」の五つの挑戦を掲げました。
 知事就任後,短い期間ではございますが,議員の皆様をはじめ市町の方々と意見交換を行い,また,経済財政会議など様々な場面でご意見をいただく一方,予算編成をはじめとする仕事に取り組む中で,ただいま申し上げたことを,より具体化していかなければならないとの思いを一層強くしたところでございます。 

【知事就任以来の取組と今後の展開】

 さて,私は,県民の暮らしを良くしたいという思いから,率先励行の気持ちで,県政の諸課題の解決に挑戦して参りました。まずその主な取組について県議会に御報告させていただきます。
 我が国の経済は,海外経済の改善や国の緊急経済対策の効果などを背景に,景気は持ち直してきておりますが,高い水準の失業率やデフレの状況をみると,依然として厳しいものとなっております。
 県内経済におきましても,生産面では,自動車,鉄鋼,電気機械など,一部の業種には持ち直しの動きがあるものの,先行きは不透明な状況にあり,県内企業を取り巻く経営環境は,依然として予断を許さない情勢が続いているものと認識しております。
 また,県内の雇用情勢も,昨年12月の有効求人倍率が0.55倍と低水準で推移しているほか,高等学校・大学等の新規卒業予定者の就職内定率が前年同期を大きく下回るなど,極めて厳しい状況となっております。
 このため,先の1月臨時県議会におきまして,早期に県民の皆様の不安解消を図るとともに,その暮らしを守る観点から,82億円の「緊急経済・雇用対策」を盛り込んだ補正予算を編成し,今回提案しております平成22年度当初予算と一体となった15ヶ月予算とすることにより,切れ目のない対策を講じ,その効果がいち早く発現できるよう,速やかな事業執行に努めているところでございます。
 次に,県行政の運営についてでございます。
 本県が直面する課題は山積しており,これに立ち向かっていくためには,まず,広島県職員が起業家精神を持ち,創意工夫を図っていくことが,何よりも大切でございます。
 このための第一歩として,昨年12月2日に,私をはじめ,幹部職員で構成し,県政の重要課題に機動的に対応する「経営戦略会議」を立ち上げました。 
 加えて,去る1月15日には,外部の有識者に参加いただき,新たな視点で県政運営全般にご意見をいただく「広島県経済財政会議」を設置し,その第1回会議を1月25日に開催いたしました。
 今後,委員の皆様からは,県政運営の基本方針や財政健全化,行政改革,県勢発展のための施策について,大胆かつ多角的な視点でご意見をいただくこととしております。
 また,県民起点での行政を実現するためには,現場の意見や地域の課題を的確に把握し,県政に活かしていくことが大切でございます。
 このため,私自ら県内各地を訪問し県民の皆様と直接対話する県政知事懇談「湯崎英彦の宝さがし」を開始し,これまで,北広島町及び三原市において,貴重なご意見を伺うことができました。来年度末までには,できる限り県内全ての市町において実施したいと考えております。
 このほか,マニフェストに掲げた「広島版『産業革新機構』」の設立による新たな成長産業の育成や,「瀬戸内 海の道1兆円構想」の推進による観光振興及び地域経済の活性化に向けまして,先月,「産業革新プロジェクト・チーム」と「海の道プロジェクト・チーム」を立ち上げたところであり,今後,早い時期に事業に着手できるよう検討を進めて参ります。
 懸案となっております鞆地区の埋立架橋計画の問題につきましては,私自ら現地に赴き,様々な立場の住民の方々と意見交換をさせていただきました。現在は,いわゆる第三者の仲介者を立てた議論の枠組みを作るべく,関係者と地元のスケジュールにも配慮しながら第一回目の会合の開催を目指しているところでございます。
 また,県と広島市の間で懸案となっておりました課題につきましては,先月27日に開催した,広島県知事・広島市長会議で秋葉市長と協議し,結論を得ることができました。
 まず,福祉医療費補助につきましては,一昨年12月,広島市に対する補助率の見直しを提案し,以来,広島市の理解が得られるよう協議を重ねてきたところでございますが,両者の意見の隔たりは依然として大きいことから,一旦,この提案を白紙に戻すことといたしました。
 次に,広島西飛行場につきましては,現在就航している定期便の撤退後,ヘリポートとして県市共同で運営していくことを提案したところ,広島市は,市の負担と責任において西飛行場を継続運営するか,ヘリポートとしての活用を図るか,1年程度かけて検討し結論を出すことを明らかにされました。
 今後,西飛行場の存続については,広島市の判断に委ねることになりますが,いずれにしても,飛行場機能に係る県の財政負担は,現在の定期便が就航している期間に限ることで合意したところでございます。
 また,広島港出島地区廃棄物埋立護岸整備に係る工事費の増加に伴う広島市負担金については,広島市のご理解をいただき,条例に基づく負担をいただくことになりました。
 このように,広島市長との協議によって,具体的な成果を得ると同時に,お互いの立場を理解したうえで,共通の着地点を見出すという考え方を共有できたことは,大変意義深いものと思っております。
 これからも広島市長をはじめ各市長,町長とは,緊密な連携をとって参りたいと考えております。

【平成22年度事業運営方針のポイント】

 次に,平成22年度の事業運営方針の五つのポイントについてご説明申し上げます。
 第一点目は,新たな挑戦のための「仕込み」と基盤作りであります。
 平成22年度は,私の県政の実質的スタートの年として,マニフェストに掲げた政策の実現に向けた行動を本格的に開始する年であります。まずは,基本的な構想を練り上げ事業化に向けた基盤を整備することとし,このための組織体制を整えるとともに,財源的な裏づけについても検討を進めて参りたいと考えております。
 具体的には,次期総合計画として,10年後を見据えた広島県のビジョンを作成いたします。また,連動する「産業振興ビジョン」,「新農林水産業活性化行動計画」,「こども夢プラン」なども策定し,それぞれの分野における政策の具体的内容をお示しして参ります。
 「広島版『産業革新機構』」や「瀬戸内 海の道1兆円構想」といった重要施策についても,平成22年度において慎重かつ十分な検討を行い,成果を出すための具体的な計画に落とし込んで参ります。
 また,これらの構想を財政及び人的資源から支える中期財政健全化計画と行政システム計画も策定いたします。
 県内における分権の推進に関しましては,行政サービスの質向上とコスト抑制を両立しながら権限移譲を進めるため,これまで進めてきた権限移譲や合併の実態を,課題や問題点を含めて検討した上で,新たな分権改革推進計画を策定いたします。
 このように,平成22年度は,いわば計画と検討のラッシュとなりますが,これらを通じ,平成23年度以降,それぞれしっかりと成果を結実させて参りたいと考えております。
 第二点目は,切れ目ない緊急経済・雇用対策の実施であります。
 先ほど申し上げたとおり,足下の経済情勢は引き続き厳しいものがあります。このため,平成21年度1月及び2月補正予算と合わせ,切れ目ない15ヶ月対策を実行し,県民の暮らしを守って参ります。
 第三点目は,スピーディなマニフェストの実行であります。
 第一点目において,来年度は「仕込み」と基盤作りの年,と申し上げましたが,その中でも,広島県の活性化を図る「挑戦そして実現!マニフェスト」の具体化のため,すぐに実行すべきもの,そして実行可能なものは出来る限り早期に着手し,重点投資したいと考えております。
 具体的事業については,また後ほどご説明させていただきたく存じます。
 第四点目は,財政規律と財政健全化の推進でございます。
 選択と集中を行って「仕込み」と基盤作り,緊急経済・雇用対策,マニフェスト早期実現項目など,先ほど申し上げました重点分野に人的・財政的資源を振り向けつつ,ムダを排して厳しい財政規律を維持し,財政再建を推進いたします。
 そして第五点目は,県政コミュニケーションの充実であります。県政に関するメッセージを積極的に発信するとともに,県民の皆様のご意見を吸収し,双方向のコミュニケーションを図って参ります。結果として,県民の皆様のご意見を県政に反映させることに加え,県民の皆様の県政への関心を高め,ひいては県民の皆様や県内の各企業・団体等が,県庁執行部や議会とともに,広島県の改革に向けてより積極的な役割を果たしていただくことを目指して参ります。
 具体的には,平成22年度においては,引き続き県政知事懇談「湯崎英彦の宝探し」を原則各市町で行うほか,各自治体の首長等と懇談する「市町懇談会」を開催するとともに,県政から発信する情報の内容やその伝達方法などの戦略的な再構築などを行って参ります。
 これら事業運営のポイントに関する事項は,重点予算項目もあれば,非予算項目,ないしは内部人件費による人的資源の重点配分によって実施するものもございます。いずれにせよ,来年度も,事業運営にあたっては,「県民起点」,「現場主義」,「予算主義から成果主義への転換」の視座を徹底して参る所存でございます。
 このような事業運営の基本方針を,財政資源の配分という観点から具体化したものが平成22年度当初予算でございます。この平成22年度当初予算編成方針でございますが,昨年8月の「今後の財政収支見通し」では,急速な景気の悪化などに伴い,引き続き,厳しい財政運営を余儀なくされる状況となっております。
 そこで,財政構造改革を進めつつ,マニフェストに掲げた将来の県勢発展に向けた施策を積極的に展開するという命題に対応すべく,予算編成に臨んだところでございます。
 予算編成にあたってのポイントにつきましては,何点か申し上げますと,まず1点目としては,財政健全化を進めつつ,必要な施策には積極果敢に挑戦していくという姿勢を明確にしているところです。
 現在,景気の長期低迷や過疎化の進展,急速な少子・高齢化への対応や,さらなる教育改革の推進など,本県が直面する課題は山積しております。
 このような状況の中でこそ,今後の県勢の発展に向け,「広島県の底力」を引き出し,あらゆる分野で「挑戦」することにより,新たな活力を生み出していくことが不可欠でございます。
 2点目としては,喫緊の課題である「緊急経済・雇用対策」や,新たな活力を創出するための五つの挑戦に取り組むにあたって,事業の重点化を目指したことでございます。事業運営の基本方針で申し上げたとおり,来年度はスピーディなマニフェスト実現に取組んで参りますが,とりわけ,広島県の宝であり,全ての分野の源泉となる「人」づくりや,イノベーションを通じた新たな産業の芽となる産業革新に向けた支援,瀬戸内等の多彩な観光資源のネットワーク化を図る戦略的な観光振興,救急医療体制の充実強化や医療人材の確保など,県民が安心できる医療サービスを提供する地域医療の再生,そして市町の主体性を活かした中山間地域の産業振興と暮らしの安心の確保を,重点化の対象といたしました。
 3点目としては,具体的な予算編成にあたって,「事業仕分け」をはじめとして事業の見直しを徹底的に行ったことでございます。
 この見直しにあたっては,県民の皆様が真に求めているのは何かという「県民起点」,本当に意味のある事業を遂行するための「成果主義」の観点から,全ての事業において費用対効果の十分な検証を行うなど,行政のムダの徹底的な排除を図ったところでございます。

2 平成22年度当初予算の概要

  以上の方針をもとに編成をいたしました平成22年度当初予算案について,その概要を申し上げますと,歳入面では,急激な景気悪化に伴う企業収益の大幅な落ち込みによる法人二税の減少などにより,県税等収入は,平成21年度当初予算に比べ398億円の減収となる2,930億円と見込んでおります。
 一方で,地方交付税とその振替である臨時財政対策債については,413億円の増となるなど,県税収入の減収に対する一定の財源対策が講じられたことにより,一般財源総額は,ほぼ前年どおりの水準を確保することができました。
 歳出面では,新たな活力を生み出すための施策に財源を重点配分しメリハリをつける一方で,「事業仕分け」などによる事業の徹底した見直しにより46億円の財源を捻出したほか,公共事業費の削減や内部管理費の縮減による歳出削減に努めて参りました。
 共済費を除く給与費は,期末勤勉手当の引き下げや職員数の削減などにより,給与抑制措置の見直しによる増加要因を打ち消して,前年度を5億円下回る額といたしました。共済費を含む職員給与費全体では,負担引き上げにより共済費が46億円増加したことから,最終的に平成21年度当初予算に比べ41億円の増加となっております。
 一方,国民健康保険制度や後期高齢者医療制度などにおいて,引き続き多額の財政需要が見込まれており,財源対策を必要としております。このため,行政改革推進債や退職手当債の発行に加え,公債費の平準化などの財源対策によって収支の均衡を図ったところでございます。
 このほか,特別会計や基金の見直しにより捻出した29億円については,年度途中の災害等に備えるため,当初予算では,平成4年度以来,18年ぶりに財政調整基金に積み立てることができました。
 以上の結果,平成22年度の一般会計当初予算案の規模は,総額9,363億2,000万円といたしました。平成21年度当初予算と比較して,0.2%の減となっておりますが,実質的な予算規模を表す一般歳出は,7,278億6,308万円となっており,前年度に比べて1.2%の増となっております。また,プライマリーバランスは,前年度を大幅に上回る146億円の黒字となっております。
  以下,平成22年度当初予算案につきまして,重点分野にしたがい,その内容を御説明いたします。 

3 平成22年度主要施策

【緊急経済・雇用対策】

  まず,「緊急経済・雇用対策」のうち,「雇用対策」についてでございます。
 「雇用相談・情報の提供」といたしましては,離職者等に対して,引き続き,広島や福山の労働相談コーナーや求職者総合支援センター等において,労働・就職相談や生活・就労情報の提供をワンストップで行うとともに,就職面接会やミニ企業説明会を開催するなど,再就職を積極的に支援して参ります。
 中でも,担い手が不足する農林水産業分野への就業を促進するため,ひろしまジョブプラザに新たな相談窓口を設置するなど,農林水産業への就業相談体制を強化いたします。
 また,福祉・介護分野への就業を促進するため,無料職業紹介や面接会の開催,職場体験などを実施するとともに,国や関係団体等と連携し,職場環境の改善など,魅力ある福祉・介護職場づくりに向けた取組を支援して参ります。
 次に,「雇用機会の創出」といたしましては,離職者等の早期就業につなげるため,高等技術専門校や民間教育訓練機関において,過去最大となる3千人を超える規模の職業訓練を実施いたします。
 また,ホームヘルパー養成研修を拡充する一方,介護福祉士の資格取得を支援し,福祉・介護分野への就業促進に努めて参ります。
 さらに,今春の高校生の就職率が例年に比べまして大幅に低下することが見込まれることから,就職支援専門員を配置するとともに,未就職卒業者等を対象に,企業での就業体験を組み合わせた研修を実施することにより,受入先企業での正規雇用につなげて参りたいと考えております。
 次に,「地域経済活性化対策」についてでございます。
 県費預託融資制度につきましては,依然,厳しい経営環境にある中小企業者の資金需要に応えるため,本年1月から実施している「緊急経営基盤強化資金」の対象要件の緩和と融資期間の延長を継続するとともに,融資枠を拡充し,低利かつ長期の資金を供給して参ります。
 また,県内製品及び県内産品の消費拡大に向けて,市町や経済団体等との連携による「BUYひろしまキャンペーン」を通じ,積極的な情報発信に努めるとともに,県内産農水産物の学校給食への利用促進や県産材を使用した住宅への助成などの取組により,さらなる県産品の消費拡大を図って参ります。
 また,「地域生活基盤の整備」につきましては,県民の日常生活の安全・安心を確保するため,県立学校施設の耐震化や保育所などの社会福祉施設,医療施設をはじめとする生活基盤の整備を進めて参ります。
 さらに,「暮らしの安心緊急確保対策」につきましては,国の高等学校授業料無償化の実施に伴い,県立高校の授業料を無償化するとともに,私立高校等につきましては,就学支援金による助成を行うことに加え,本県独自施策として,経済的理由により学資負担が困難な方に対し,施設整備費等に係る納付金をも対象とするなど,授業料減免補助金を拡充し,教育費負担の軽減を図って参ります。

【活力を生むための「五つの挑戦」】

  次に,広島県の底力を引き出し新たな活力を創出するための「五つの挑戦」について御説明いたします。

「人づくりへの挑戦」

 第一は,「人づくりへの挑戦」であります。経済,医療,福祉,教育など,あらゆる分野での力の源泉は「人」であります。
 「人づくり」に必要な施策は多岐にわたりますが,今年度は特に,「総合力を培う『人』づくり」に重点的に取り組むことといたしました。
 学力向上対策につきましては,県立高等学校において,生徒の進学希望を実現する取組や,基礎学力の着実な定着を図る取組を推進するとともに,高校生の科学に対する関心や理数学習に対する意欲の一層の向上と論理的思考等の育成を図るため,新たに広島県科学オリンピックを開催いたします。
 また,県立高等学校において,起業の実践につながる基本的な知識等を習得するためにセミナーを開催し,自立心や創造力などの起業家精神を育み,地域社会や産業の活性化に貢献できる人材の育成に努めて参ります。
 さらに,ものづくりコンテスト全国大会等への入賞を目指して,生徒の技能向上のためのセミナーを開催するなど,本県のものづくり産業を担う人材の育成に取り組んで参ります。
 また,児童の自立性や主体性,人間関係を形成する力を育むため,県内50校の小学校5年生を対象に,広島県の豊かな自然環境を生かした集団宿泊体験活動をモデル的に実施いたします。
 次に,「芸術文化・スポーツの振興」を通じ,本県の新たな魅力の創出を図るため,昨年に続いて「ひろしま夏の芸術祭」を開催し,広島交響楽団による七夕 ライトダウンコンサートをはじめ,本県を題材とした創作神楽など,県民に優れた芸術に触れる機会を提供して参ります。
 また,スポーツ県ひろしまの実現を目指し,本県の競技力向上を図るため,引き続き,国体選手・ジュニア選手の強化を図るとともに,県民に夢と感動を与える未来のトップアスリートの育成を目指し,ジュニア選手の発掘とさらなる強化に取り組んで参ります。加えて,新年度からは,ふるさと納税を活用し,子ども達にスポーツの素晴らしさや楽しさを伝え,夢や目標に向かって努力することの大切さを学んでもらうためのイベントを実施して参ります。

「新たな経済成長への挑戦」

 第二は,「新たな経済成長への挑戦」でございます。
 広島県民が将来にわたって豊かな生活を送っていくためには,中四国・九州地方随一の製造品出荷額等と世界に誇れるものづくり技術の集積,多種多様な農林水産物,二つの世界遺産と瀬戸内海をはじめとする恵まれた自然環境などの「強み」を引き出し,さらなる活力を生み出していきたいと考えております。
 まず,「産業革新に向けた支援」についてでございます。
 平成23年度の早期の設立を目指します広島版「産業革新機構」は,投資ファンドを設立し,県内企業への集中的な投資や総合的な経営支援によって,企業の成長を後押しすることで,新たな産業を育成する仕組みを構築しようとするものでございますが,新年度は国の設立した「産業革新機構」への人材派遣を含め,その設立準備を進めて参ります。
 また,環境・新エネルギー関連産業の創出に向けて,東部工業技術センターに,LED製品等の企画から設計・評価までができる開放型の試験室を整備するとともに,広島県産業科学技術研究所に低炭素技術研究・活用センターを設置し,産学官連携による研究開発から産業利用までを一体的に推進して参ります。
 このほか,新エネルギーの活用等が期待されるバイオマスによる新しい排水処理などの技術について実証実験等を行うことにより,新技術の導入を促進して参ります。
 次に,「農林水産業の活性化」についてでございます。
 中山間地域の基幹産業である農業につきましては,担い手が中心となった力強い農業構造を確立するため,引き続き,集落法人の設立を支援するほか,農業外企業の農業参入を促進するため,参入する場合の初期投資に対して助成するとともに,新たに参入するうえで課題となる農地の確保等が容易となるよう支援して参ります。
 また,流通・加工業者のニーズに応じつつ,複数の集落法人が連携し,安定的な生産・出荷と販売体制を構築するための取組を支援するなど,集落法人の経営高度化を図って参ります。
 さらに,県内産の品質に優れた農水産物のブランド化と,東アジアへの販路拡大を図るため,新たに農水産物とその加工品の輸出拡大にチャレンジする法人等の支援をモデル的に実施して参ります。
 林業につきましては,森林整備加速化・林業再生基金を活用し,間伐の実施や路網の整備などにより森林の整備を促進するほか,木材加工施設の整備や流通体制構築への支援,間伐材の利用促進を図ることにより,林業・木材産業の振興を図って参ります。
 次に,「戦略的な観光振興」についてであります。
 まず,観光産業をはじめとする地域産業の活性化についてでございますが,「瀬戸内 海の道1兆円構想」については,地域資源の再発掘や国内外の事例研究など,プロジェクト推進に必要な調査を実施するほか,瀬戸内への国内外からの誘客促進などを図るために必要な様々な要素について,専門家等からの意見を伺いながら,年内を目処に具体的計画を策定いたします。そして,順次,具体的な施策展開を図って参りたいと考えております。
 また,瀬戸内の観光拠点機能の向上と周遊ルートの確立を図るため,テレビドラマのロケ地など話題性のある地域において,JRと連携した観光キャンペーンを展開するほか,特に県北部における冬期の観光客の誘致を促進するため,九州・四国をターゲットに,スキーなど,本県の冬の魅力を一体的に情報発信するキャンペーンを実施して参ります。
 このほか,国際観光につきましては,新たに中国地域のインバウンド推進体制を整備し,本県がその牽引役となって外国人観光客の誘致を促進して参ります。
 交流基盤の整備につきましては,引き続き,広島高速道路の整備を進めるとともに,広域的な交流・連携基盤を強化するため,中国横断自動車道尾道松江線,東広島・呉自動車道などの整備を促進して参ります。なお,東広島・呉自動車道の上三永インターチェンジから山陽自動車道との接続部までの間については,この3月に,また,広島高速2号線の全線と3号線の宇品から吉島までの間については,この春に,それぞれ開通する予定となっております。
 また,広島空港につきましては,上海線のナイトステイが3月28日から実施されることとなり,また,7月からは成田線の増便が決定いたしました。引き続き,航空ネットワークの拡充に向けて,路線誘致活動と利用促進活動を戦略的に実施し,中四国地方の地域拠点空港にふさわしい機能強化に努めて参ります。 

「安心な暮らしづくりへの挑戦」

 第三は,「安心な暮らしづくりへの挑戦」についてであります。
 県民の皆様の安全・安心な暮らしを実現することは,行政の究極の目標の一つであります。中でも,医療については,日本一安心できる医療サービスの実現を目指して参ります。
 特に,来年度は,「地域医療の再生」について重点的に取り組みたいと考えております。
 深刻な問題となっている医師不足に対応するため,県,市町,広島大学,県医師会等が連携して,医師確保や人材育成を総合的に行う「広島県地域医療推進機構(仮称)」の設立に着手するとともに,引き続き,「緊急医療支援市町交付金」により,地域医療の確保に向けた市町の取組を支援し,全県的な課題である医師の確保と定着促進に取り組んで参ります。
 また,救急医療体制の充実・強化につきましては,二次救急医療機関の負担軽減及び重症患者の円滑な受け入れを図るため,初期救急医療を担う急患センターや,二次救急医療のコントロール機能を担う医療機関の整備を行うとともに,重篤な救急患者を受け入れる地域救命救急センターを新たに整備するなど,初期,二次,三次救急医療それぞれの機能を強化して参ります。
 さらに,県立広島病院におきましては,今後,増加が見込まれる脳・心臓疾患の救急患者に対応するため,救命救急センターに専門の医師が常時当直できるよう体制を整備し,三次救急医療機関としての一層の機能強化に努めて参ります。
 また,消防・防災ヘリによるドクターヘリ事業につきましては,搭載する医療機材の拡充や協力医療機関の拡大など機能強化を図るとともに,ヘリコプターを活用した広域的な救急医療体制の充実について,本県の実態を踏まえた検討を行って参ります。
 次に,がん対策につきましては,県立広島病院を含む広島市内4病院の連携による「高精度放射線治療センター(仮称)」の具体化に向けた調整を進めるとともに,地域でのがん医療提供体制を充実強化するため,がん医療ネットワークの構築やがん診療連携拠点病院の充実に取り組んで参ります。
 さらに,周産期医療につきましては,高度で専門的な周産期医療を提供する「周産期母子医療センター」が未整備となっております広島中央圏域において,東広島医療センターが設置する「周産期母子医療センター」の整備を支援して参ります。
 また,医療と介護が連携し,増加する認知症の患者やその家族の方々を支援するため,新たに,専門医療相談等を行う「認知症疾患医療センター」を設置するとともに,地域包括支援センターに認知症ケアの担当者を配置し,医療・介護の連携体制を強化して参ります。併せて,県民の皆様の認知症への理解を一層推進して参ります。
 次に,「福祉サービスの充実」についてであります。
県立障害者リハビリテーションセンターの施設整備につきましては,医療センターの機能強化や施設の利便性の向上を図るため,平成27年度の供用開始を目指し,実施設計に着手いたします。
 また,県東部地域における障害児療育体制の充実・強化を図るため,療育機能を持つ「県立福山若草園」の全面改築と,発達障害児療育体制の構築に向けた検討を行って参ります。
 また,「安心こども基金」を活用し,保育所や幼稚園の整備を支援するほか,子育てをみんなで応援する社会の構築を目指し,その気運づくりを進めるとともに,NPOや市町による地域での取組を積極的に支援し,働く人が子育てしやすい環境づくりを促進して参ります。
 次に,「防災・危機管理と治安の充実」についてであります。
危機管理につきましては,「広島県防災対策基本条例」に基づく取組をさらに進めるとともに,近年の相次ぐ豪雨災害や高潮災害の状況を踏まえ,緊急度や重要度の高い河川・海岸の護岸や,砂防施設・急傾斜地崩壊防止施設などの防災施設の重点整備,土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定などにより,総合的な防災対策を進めて参ります。
 また,県営水道事業につきましては,災害や事故等に強い供給体制を構築するため,緊急時の送水連絡管等の整備を進めるとともに,平成23年度の供用開始を目指し,因島・向島間の海底送水管等の整備を進め,西瀬戸島しょ部のライフラインの機能強化を図って参ります。
 治安体制の充実強化につきましては,官民一体で取り組んでおります「減らそう犯罪」県民総ぐるみ運動により,昨年中の刑法犯認知件数は,平成14年のピーク時に比べ半減するなど,治安は改善傾向にあると認識しております。引き続き,県民,事業者,関係団体等と連携して「だれもが安全・安心を実感できる広島県の実現」に努めて参ります。

「豊かな地域づくりと真の地域主権の確立への挑戦」

 第四は,「豊かな地域づくりと真の地域主権の確立への挑戦」であります。
 私は,中山間地域においても,たくさんの力や宝を見出すことができると確信しており,また,これまで実施した県政知事懇談においてもその確信を強めております。
 県民の皆様や市町をはじめ,企業や地域活動団体とも連携しながら,その力や宝を掘り起こして磨き,個性ある豊かな地域づくりを推進していきたいと考えております。
 先ほど,「新たな経済成長への挑戦」の項目の中で御説明いたしました,「瀬戸内 海の道1兆円構想」は,この一環としても位置づけております。
 まず,「中山間地域の産業振興と暮らしの確保」につきましては,過疎市町が,地域産業の活性化を基本に地域住民と一体となって行う総合的な取組を支援して参ります。平成22年度は,魅力ある中山間地域の形成に向け,市町が具体的な将来目標を設定し,目標を達成するための取組方針を定める,「地域の未来創造計画」の策定を支援し,実施効果が高いと認められる事業に対しては,平成23年度からの2年間で重点的に支援して参る考えでございます。
 また,住民の日常生活に不可欠な生活交通を確保するため,引き続き,市町の行うバス路線や航路の維持,デマンド交通の導入のほか,地域の特色を踏まえた効率的な交通体系への再編を支援して参ります。
さらに,公共事業の減少に伴い厳しい経営環境に直面しています建設業者の行う新分野進出などの経営革新を応援するとともに,高速道路料金の引下げなどにより,深刻な影響を受けております一般旅客定期航路の維持を支援して参ります。
 このほか,平成23年7月の地上デジタル放送への完全移行が円滑に進むよう,難視地区の解消に向けて取り組んで参ります。
 また,今国会に提出が予定されております過疎地域自立促進特別措置法につきましては,議会をはじめ関係の皆様のご尽力により,本県過疎地域が継続して,地域指定されるとともに,医療,集落対策,生活交通などのソフト施策への支援制度が盛り込まれ,延長される見込みであります。拡充された延長過疎法の下で,地域の実情を踏まえ市町が行う過疎対策が,円滑かつ効果的に講じられるよう対応して参ります。
 次に,「真の地域主権の確立」に向けた取組につきましては,県・市町とも,より良い行政サービスをより効率的に提供できるよう,新たな分権改革推進計画を策定いたします。併せて,本県ならではの分権改革の取組を踏まえたうえで,地域主権改革の推進について,国に積極的に提案して参りたいと考えております。

「行政運営刷新への挑戦」

 第五は,「行政運営刷新への挑戦」についてであります。
 今後の行政運営につきましては,先ほど申し上げたとおり,「真の県民起点の行政の徹底」,「現場主義」,「予算主義から成果主義への転換」を目指すこととしており,こうした方針のもと,県民の皆様に新たな広島県のビジョンや計画をお示ししたいと考えております。
 また,今年度,試行的に実施した事業仕分けにつきましては,来年度,対象事業を拡大するとともに,議会のご意見を賜りながら,より幅広い視点から実施して参りたいと考えております。 

【その他の主要事業】

 以下,そのほかの主要な事業について御説明申し上げます。
 まず,冒頭でも触れました鞆地区の埋立架橋計画の問題につきましては,歴史的な経緯も踏まえ,鞆の町に住む方々が分断されたり,将来に禍根を残さないよう,議論を重ねながら解決を図って参りたいと考えております。
 広島高速5号線におきましては,トンネルの安全性について検証を進めているところであり,この結果を踏まえて適切な対応を図って参りたいと考えております。
 また,本体工事を進めております野間川ダムにつきましては,国の「ダム事業見直し」の中で検証の対象となっております。県といたしましては,流域の安全性の向上と水供給の安定化のため必要なダムと考えており,地元も事業推進を強く望んでいることから,計画どおりダム建設が推進されるよう,先月,国に協力を要請したところでございます。
 次に,幹線林道整備事業につきましては,残事業の承継について県に判断を委ねられておりました3路線5区間のうち,事業進捗率や用地取得率の高い布野・作木区間及び西城・東城区間につきまして,事業計画の検証を行った結果,平成22年度から事業実施することといたします。
 次に,県は,これまで,国に対して税財源移譲や財政調整機能の拡充などとともに,国直轄事業負担金の廃止を要請して参りましたが,その結果,国直轄事業負担金につきましては,平成22年度から,全ての事務費及び一部の維持管理費について地方負担が廃止されることになりました。
 なお,本県では,県の公共事業における維持管理費について,従前から市町には負担を求めておりません。一方,これまで市町に負担を求めていた事務費負担金につきましては,新年度から廃止することといたしました。 

4 予算以外の議案

 予算以外の議案といたしましては,「自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例」など条例案25件,及び,その他の議案では「財産の無償譲渡について」など13件を提出しております。 
 以上,就任後短期間にまとめた予算案等ではございますが,広島県が直面する様々な課題や障壁を打破し,新たな時代に向けた変化を作り出していく第一歩となるものでございます。どうぞ,慎重にご審議いただいたうえ,適切なご議決をいただきますようよろしくお願い申し上げます。

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