平成25年度 第20回県政知事懇談「湯崎英彦の地域の宝チャレンジ・トーク」を,次のとおり庄原市において開催しました。
平成25年6月8日(土曜日) 13時30分から14時40分まで
庄原市ふれあいセンター : 庄原市西本町4-5-26
訪問先 | 内容 |
---|---|
株式会社ひばごんファーム (庄原市西城町三坂) | ○建設業から農業へ参入し,夏秋イチゴ「サマールビー」 |
田総川漁業協同組合 (庄原市総領町ハイヅカ湖) | ○ハイヅカ湖で産卵孵化した大量の稚アユは,遡上する |
ひばごんファームを訪れ,ハウス内のイチゴの苗の様子を見学しました。
ハイヅカ湖にある現地を訪れ,アユの運搬・計量といった取組体験を行ないました。
庄原市在住で,あらかじめ選定した方に「人づくり」「新たな経済成長」「安心な暮らしづくり」「豊かな地域づくり」等の分野の取組について発表していただきました。
名前・職業等 | 取組内容 | テーマ |
---|---|---|
福元奈津(ふくもとなつ)さん 農業 | ○福島県いわき市から庄原市口和町に移住。 | 「牛飼いのチーズづくりは 土づくりから ~小さな牧場から 環境と食を考える~」 |
実安裕美(さねやすひろみ)さん 農業・山内自治振興区事務局長 | ○「竹パウダー」を活用した土づくりが特徴の | 「里山整備の廃材で農業再生」 |
赤木琴絵(あかぎことえ)さん 県立東城高等学校2年生 | ○生徒会を中心に”東城応援隊”を結成し, | 「『ふるさと・夢里,応援します』 ~東城応援隊」 |
井西みき(いざいみき)さん 庄原市立比和中学校3年生 | ○牛を供養し,豊穣を祈願するために行わ れる比和の伝統行事「牛供養田植(うしくよう たうえ)」に,大太鼓・小太鼓・早乙女・サゲと して参加。 ○学力向上や話す力の向上をめざした取組 「チャレンジタイム」を実践中。 | 「挑戦」 |
●福 元
私たち夫婦は2011年3月に起きた原発事故の後,悩んだ末に,福島県いわき市から7月に広島県に避難した。牛舎と放牧可能な土地を借りることができ,去年の4月に口和町に越してきた。それ以降,放牧地の整備や牛のえさとなる草づくりをしながら,この3月に2年ぶりに牛乳を搾ってチーズの製造と販売を開始した。
牛は本来草を食べ,その栄養をもとに牛乳を出す。その力を十二分に引き出して,牛の体にも,自然環境にも負担のない酪農がしたいと思い,いわき市の中山間地に2008年に移り住んだ。荒れ果てていた土地の開拓から始め,牛と人間の共同作業で少しずつ,土の力を農薬などで壊さないように時間をかけて開拓した。半年後に子牛を2頭購入。2年半してやっと牛乳を搾り,チーズを製造・販売し始めた。その半年後に起きた原発事故。製造量も増え,販路が開けてきた時期だった。牧場がある地域は原発から60km,人が住んでも全く問題ないと言われたが,原発事故後,放牧も沢の水を飲ませることも禁止する通達があった。いつ再開できるか分からない。牧草に汚染があるということは,豊かな自然の循環の中に入り込み,いつまでも存在し続ける。国の基準値以下だからといって,自信と誇りを持ってチーズを売ることができるだろうかと考え,断腸の思いで移住を決意した。
口和町で再開した「ふくふく牧場」では,現在,ジャージー牛5頭,そのうち2頭の牛乳を搾っている。チーズづくりは牛乳からではなく,牛たちのえさとなる草を育む大事な土壌の健康にこだわるところから始まる。できるだけ自然な形で飼った牛のミルクは,風味が豊かなのに,さらっとさわやかで,舌にまとわりつくことがない。2種類のナチュラルチーズは,素材の栄養と味を壊さないように牛乳を低温殺菌し,添加物や保存料を使わずに手づくりしている。ミルクの味も,チーズの味も,毎回少しずつ違うが,自然なこと。多くの方に一期一会のチーズの存在を知り,味わってほしい。
私たちの酪農の理念とスタイルや,食・環境・農と命について関心を深めてもらうため,牧場体験も行っている。現在は乳搾り,バターづくり,チーズ料理教室や牧場見学を行っているが,今後さらに内容を充実させていきたい。近い将来には,地域の山を守っていくための体験や,エネルギー問題を考える小水力発電講習会,また,原発事故によって外で遊べなくなってしまった子どもたちの保養,受入れなどにも取り組みたい。
ネットワークを広げ,地域の結束力なども生かし,牧場のあり方,里山の暮らしや自然の豊かさに魅力を感じる人を総動員し,地域をよりよくしていく企画ができると思う。それを実現していくことも,今後の夢の一つです。
○知 事
原発事故で開拓をした牧場が使えなくなり,相当なショックだと思うが,こうやってまた広島で牧場を開設するエネルギーというのがすごい。これからも,やりたいことを考えるだけではなくて実際に実行されるのではないか。庄原の皆さんの力も借りながら,どんどん発展させていただけるのではないかと思う。
●実 安
庄原の高齢化率は38%ですが,山内自治振興区は42%と,なかなか里山の整備が行き届かない。ただ整備をするだけでなく,田んぼや道の周りに繁茂し,地域の邪魔者である竹を活用して特産品づくりに取り組んでいる。竹パウダーを使うと,果樹や野菜,いろいろな作物がおいしくできると取り上げられており,地域産業である米づくりにこれを活用することとした。根元からササまで竹が全部処理され,竹林もきれいになることから,一石二鳥を狙おうと考えて始めた。
竹パウダーは牛糞堆肥と一緒に混ぜて,約3~4ヵ月発酵させて使っている。現在は酪農家の堆肥場を借りているが,将来的には堆肥場が必要と思っている。発酵させた堆肥をマニアスプレッダーで田んぼにふり,荒起こしをして稲を植える作業になる。
平成21年度から計画を立て,取り組み始めた。第1段階は,作物に対する適性試験を行う。第2段階は,作物ごとの竹パウダーの施用量を量る。第3段階は,栽培農家の増加を図って研修をする。第4段階は,低農薬,高品質作物の生産をする。第5段階は,特産品として宣伝,販売。最終的には農家所得の向上を図る。第4段階まで既に終わった。今後は特産品としていかに宣伝,販売していくかを取り組まなければいけない。我々農家は,一番不得手な部分だが,2~3年後をめどには達成し,農家所得の向上に結びつけていきたい。
「里山の夢」というのがブランド米の名前。食味,外観,硬さ,粘り,非常にバランスの取れた米である。昨年度,長野で行われた米・食味分析鑑定コンクール国際大会に出品した。山内小学校の学校田で,竹パウダーを使ってつくった米が,小学校部門で金賞をいただいた。大阪府民いっちゃんうまい米コンテストでは,総合最優秀賞,日本一になった。去年は庄原の藤本農園さんがこの大会で日本一になっている。
今後の取り組みとして,現在16ヘクタールの作付け面積を,有利販売可能な30ヘクタールまで増やしていく。また,商談会や販売会,全国の食味値コンクールにも出品・挑戦したいと思っている。販売方法として,今は農協や一部の米卸業者に出しているが,今後は,百貨店などにも出していき,インターネット販売にも取り組みたいと思っている。
食の都大阪で2年連続して,庄原の米が日本一になったことは,庄原の誇りであり,広島の誇りであると思う。庄原のお米を自信を持って全国に宣伝してほしい。
○知 事
皆さんで力を合わせながら,邪魔者だった竹を宝に変えて,自分たちが持っていたお米も日本一にしていく。それを実践しているのがすばらしいと思う。次の段階,農家所得の向上もうまくいくのではないかと思う。庄原を含む広島県の県北のお米はすばらしいものがたくさんある。これが知られていないのが「おしい!」。頑張っていきたいと思う。
●赤木・三上
東城高校生徒会が中心となって結成したボランティア組織「東城応援隊」は,大好きなふるさと「東城町」を夢のあるまち,夢を描けるまち「夢里」にしたいという思いから,自分たちができる活動を行っている。
本校は,伝統的にボランティア活動の盛んな学校で,30年前から広島中央特別支援学校との交流を通じて点字カレンダーの製作を,10年前からは町内の清掃活動を行うボランティア「クリーン大作戦」を行っている。
観光ボランティアの活動では,お祭りなどのイベントに毎回30名程度の生徒が参加している。ボランティアを行なうにあたり,スタッフジャンパーやガイドマップの製作,観光案内のための事前学習を行なった。町内の歴史などに詳しい方による講習会を開いたり,事前にまちなみを歩いたりしながら,東城の歴史と文化を学び,問答集の形でまとめた。
東城町で最も盛大なお祭り「お通り」では,グループごとに町内各所の街頭に立ち,ガイドマップを使って道案内をした。それに加えて,イベントや町内の観光施設の場所や特徴を,パンフレットを使って紹介した。中には外国の方もおられ,道案内に苦労した生徒もいた。あらかじめ用意していた問答集にない質問を受けたときには,知らないことがまだまだあることを実感し,もっと勉強しないといけないと思った。敬語の使い方にも苦労し,普段からの心がけが大切だと実感した。お祭りの終わりには町内の清掃活動をして活動を終了した。本当に疲れたが,やりきったという大きな充実感を得ることができた。地域の方々から多くのねぎらいの言葉をいただき,感謝の気持ちでいっぱいになった。
活動の成果として,若い私たちが地域の歴史ある伝統文化に参加することでお祭りを盛り上げることができたと思う。また,自分たちで考えて行動することができ,先生から指示されていたボランティア活動では得られない達成感があった。そして,参加した仲間との強い信頼関係を築くことができた。課題としては,まだまだふるさと東城のことをよく知る必要がある。言葉づかいやマナーも十分とは言えない。外国の方に英語でガイドができたらとも思う。何より,一人一人ボランティア活動に対する意識をさらに向上させていかなければいけない。
これからも東城応援隊はボランティア活動を通して地域に貢献し,自らを成長させながら,ふるさと東城で,夢のあるまち,夢を描けるまち,「夢里」の実現に向けて挑戦し続ける。
○知 事
東城育ちの子たちがたくさんいて,人数が少ない分,地域と密着できる。本当の意味でふるさとの応援ができるのではないかと思う。やってみると,自立できたとか,課題もちゃんと見つけて,いろいろまた新しく考えてくれて,すごく頼もしいですね。ふるさとで育って,そして,ふるさとを応援する。きっと頼もしい将来を担ってくれると思います。
●井西・石川・小田・陶山・森繁
比和町は吾妻山の麓にあり,絶滅危惧種に指定されている「ヒゴタイ」や「カワセミ」などが生息している自然がとても豊かな地域で,住んでいる皆さんもとても気さくで優しい方ばかりの,私たちの大切なふるさとです。比和中学校は全校生徒32名と小さな学校ですが,全校生徒が仲良く,なんでも全力で頑張る学校だと誇りに思っている。
私たちの挑戦の一つは,広島県無形民俗文化財に指定されている伝統芸能,比和「牛供養田植」の伝統を,昔のまま伝承していくこと。牛供養田植とは,家族同然として飼っていた牛への感謝と,秋の豊作を祈願し,4年に一度,オリンピックのある年に,本田植えが行われる。田んぼの中で牛が田を耕し,サゲが歌う唄や太鼓,小太鼓にあわせて早乙女が手作業で苗を植えていく。たくさんの人の中でとても緊張したが,終えた後には地域を誇りに思う気持ちとやりきったという充実感でいっぱいになった。これからも地域の方々と一緒に伝承し続けていこうと思う。
挑戦の二つ目は書くこと。昨年,中国新聞ヤングスポットに16名の生徒が掲載され,私たちは書く意欲がどんどん沸いた。今年も既に4名の生徒が掲載されている。昨年1年間,絵手紙や俳句,新聞コンクールなどに延べ80人が入賞しており,全校生徒が様々な作品応募に挑戦することで,書く力が高まると同時に,自信を持つことができた。
このような活動を通して,私たちは考える力や説明力,集中力を高めている。これからもお互いを高め合い,また,地域のよさについて理解をもっと深めていきたいと思う。
○知 事
いろいろなところで伝承が問題になっているが,若いみんなの力を借りて伝承していけるというのは本当にすばらしいこと。高校に行って,進路がそれぞればらばらになってしまうかもしれないが,これからもきっと仲良く,ずっと一生の友達でいるのではないかと思う。
約160名参加
懇談の模様を録画でご覧いただけます。
こちら(インターネット放送局)からご覧ください。
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)