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第1部:アジェンダ設定 1.なぜ広島なのか?

印刷用ページを表示する掲載日2012年6月14日
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なぜ私たちはこの提案を広島から行うのか。第一の理由は明白である。広島は核兵器が投下された二都市の一つであり、その後何十年にもわたり、住民たちの間で「ノー・モア・ヒロシマ」の叫びが共有されてきた場所である。第二の理由も同様に重要である。広島は廃墟の中から立ち上がり、平和の街として再生した。この経験から広島は、海外の戦争の苦難に強い関心を寄せている。したがって、広島が核兵器のない未来及び紛争で疲弊した地域の平和構築について提案する場となるのは自然かつ妥当である。
a.被爆都市広島

第二次世界大戦の戦前、戦中を通じて、広島は陸軍連隊や火薬製造所、士官学校を擁する軍事拠点のひとつであった。原子爆弾が投下された後、広島は核廃絶及び平和促進の拠点という新たなアイデンティティを獲得した。
原子爆弾により、広島は完全に破壊された。14万人もの生命が失われ、20万人を超える人々が負傷し、また放射能にさらされた。原子爆弾によって奪われたものは、人命や社会のインフラだけではない。家庭、コミュニティ、そして思い出までもが奪われた。亡くなった人々を偲ぶ写真などは仮に残されていたとしてもごくわずかであった。こうした中、生き残った人々は、広島で何が起きたのかを伝え未来のために働くことは自分たちの責務であると受け止めた。

原爆の経験から、広島の人々は平和に深くコミットし、核によるこれ以上の惨禍を防ぐための行動を求めるようになった。また、これらの取組を通じて、広島の自治体と人々は、人類と核兵器は共存できないこと、そして核は廃絶されなければならないことを世界へ訴えた。こうした広島と長崎からの訴えは、核兵器の廃絶を求める世界中の反核運動のきっかけとなり、広島は長崎とともに反核及び平和運動のシンボルとなった。こうしたこれまでの持続的な取組に鑑みると、地球上から核兵器を削減し全廃する新たなイニシアティブを始める場所として、広島はまさに最適である。

b.復興の経験を生かして

広島は、核のない世界のシンボルであるだけでなく、国家間の戦争、内戦、過度の暴力全般によって疲弊した地域の平和構築のシンボルでもある。それはなぜなら、広島では多くの人命が失われ、社会のインフラが損なわれ、さらには原爆の放射能による深刻な疾病や被爆者に対する差別や偏見など様々な苦難があったにも関わらず、広島の人々が繁栄した社会を構築したからである。自らの苦難の記憶を留めている広島の自治体とコミュニティは、復興に伴う困難を知り尽くしている。そうした過去の苦しい経験をもとに、広島は、とりわけ冷戦終結以降、復興と平和構築のため活発な活動をおこなっている。

広島は、すでに「広島国際貢献構想」(1996年)及び「ひろしま平和貢献構想」(2003年)を策定したほか、ネットワーク構築、復興支援、人材開発という三つの主要な分野で多大な貢献をしている。そしてこうした取組は、国連訓練調査研究所(UNITAR)広島事務所や国際協力機構中国国際センター(JICA CIC)、広島国際協力センター(HICC)、 広島平和構築人材育成センター(HPC)、放射線被曝者医療国際協力推進協議会(HICARE)、広島市立大学広島平和研究所や様々なNGOによって行われている。

現在の原爆ドームと広島市街平和構築への広島のイニシアティブは不可欠であり、より一層強化されるべきである。その理由は、戦争で疲弊した地域の人々の苦しみが不当であるためだけではない。なぜなら、紛争終結地域の政情不安は国家破綻や過激なテロリズムを生み出す可能性があり、それは世界平和にとって大きな課題となるからである。核軍縮に焦点を当てた私たちの運動は、ゆえに、平和構築に向けた取組と併せて行われなければならない。また、広島が核による惨禍から甦ったという純然たる事実は、紛争地域の人々に復興への信念を抱かせることができるだろう。

c.ひろしま平和構想に向けて

私たちの平和構想の目的は、国際平和を進展させる拠点として広島の役割を強化することである。まず、私たちは核軍縮の要求を実際の政策に結びつける拠点を広島に設けたい。そのためには、政府とNGO両者が核全廃を求める世界中の声をまとめ、その希望を現実のものとする必要がある。さらに私たちは、広島を、紛争地域における平和構築に貢献する意志を有する政府やNGOの職員が現場で迅速に平和構築プロセスを実施できるようにするため、必要な資源・訓練を受けられる拠点にしたい。もうひとつ重要な点として、私たちは広島を平和研究に関する学術的貢献拠点でもあると考えている。私たちは広島に存在する多くの施設を活用し、海外から研究者を招き、戦略兵器管理や軍縮、紛争解決、平和構築のためのあらゆる研究を促進していくべきである。

これは言うまでもなく困難な課題である。しかし広島には、こうした難題に積極的に立ち向かえるだけの土壌がある。平和拠点という広島のシンボリックな性格を疑う者はほとんどいないだろう。事実、広島は、世界平和を促進する全ての国・関係者にオープンスペースを提供し、また地方自治体も平和構築に直接的に関与している。広島は歴史的に重要な都市であるとともに、世界平和実現に必要な行動を積極的に展開する拠点であることを、ここに強調したい。

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