広島県企業懇談会

広島県企業懇談会~平成28年2月4日開催(会場:東海大学校友会館)

パネルディスカッション

「イノベーションを生み出す広島の魅力と今後の展望について」

広島県企業懇談会

  • パネリスト:
    (株)前川製作所 代表取締役社長 前川 正氏
    (株)ドリーム・アーツ 代表取締役社長 山本 孝昭氏
    カルビー(株) 上級副社長執行役員 江原 信氏
  • コーディネーター:広島県知事 湯崎 英彦

広島県との関わり

知事皆さんが運営に携わる企業と広島県との関わりは。

前川氏当社は1924年に東京で創業し、産業用冷凍機や各種ガスコンプレッサーなどの製造販売を行っています。2003年に広島県営高屋東工業団地に東広島工場を設け、現在同工場を拡張しています。

山本氏山本 孝昭氏当社は大企業や大組織向けのシステム開発やITソリューションに携わっています。広島には2001年から研究開発(R&D)拠点を置いており、現在10数人規模のところをことしから3年かけて100人体制とし、国内最先端のソフトウェアFAB(※1)として拡大する計画です。

江原氏当社は広島で発祥し、かっぱえびせんでスタートしました。1973年に本社を東京に移転しておりますが、アジアへの市場を考えると西日本にもう一つ新たな事業拠点を置けないかと検討中です。

広島県の魅力と課題

知事事業環境として、広島にはどのような魅力がありますか。

前川氏ものづくり技術の集積があり、当社の事業を支えていただけるサプライヤーや優秀な技術者が大勢います。真面目で粘り強い人が多く、人材、技能レベルともに事業の追い風となっています。

山本氏広島に赴任させた社員は全員絶賛しています。最初は転勤を渋った社員も、帰すのが大変なくらいに住み良さ、人情の良さを感じているようです。

江原氏広島東洋カープのチームカラーにも似ていると思いますが、地道に人材を育成するという点において、広島には魅力があります。着実に技術を積み重ね、それを製品につなげる力があります。

知事逆に、課題はありますか。

山本氏ITエンジニア約4千名を対象としたアンケートによると、47都道府県における勤務地別年収ランキングで広島は26位、勤務地別満足度では41位となっています。広島のIT業界は、大手の下請けや孫請けの仕事が多く、収入面でも、やり甲斐の点でも課題があるようです。関東や関西から優秀な人材を呼び込むには、彼らが興味を感じるような面白い仕事がなくては。企業が地方に進出する上でいろいろな課題がある中、職場を持ってくるのが先か、人を集めるのが先かという議論がありますが、職場が先だと思います。魅力的な職場があれば、そこに優秀な人材が集まり、フォロアーがさらに職場を提供し始めます。

知事広島県企業懇談会の様子広島には層の厚いものづくり産業の集積、技術の蓄積があります。IOT(※2)の観点から製造業とITが融合していく時代ですから、ソフトウエアなど新しい分野の企業誘致や、本社や研究開発機能など多様な投資誘致を促進したいと考えています。

江原氏当社は年齢や性別を問わず多様な人材を活用する「ダイバーシティー」を推進しています。重要ポストへの女性社員の起用が増える中、配偶者の都合や子供の教育などの問題を考慮した上で、誰もが納得して転勤できる工夫が必要です。

知事転勤を考える際、家族にとって非常に大事なのが教育環境です。この分野で広島県は小中高いずれも全国トップレベルの水準に達しています。また大学入試制度が知識偏重から思考力の重視へシフトしつつある現在、広島県では全国に先駆けて「学びの変革」に取り組み、優れた人材の育成に努めているところです。

イノベーションの創出に向けて

知事それでは今後、広島県が産業を活性化させ、イノベーションを創出するには、何が大切だと思いますか。

山本氏広島県には、たたら製鉄や会場工廠など、千年を超えるものづくりの歴史があります。それを土台に、ITを生かした新たなソフトウエアやサービスを付加していけば、さらなる成長の可能性が生まれるのではないでしょうか。

前川氏前川氏の写真イノベーションを起こすのは人の力。当社は沖縄から北海道まで事業所がありますが、採用後3年間、寮での共同生活を体験することで異文化に触れ、イノベーションが生まれる素地ができると考えています。18年4月から東広島にも約150室の寮を建設し、通年120名の新卒を採用していく予定です。ここ数年、高機能製品の生産を海外から国内に戻しており、東広島の工場でも高機能製品を製造しています。特に鋳物製造やモーター、熱交換器の技術に精通する人材を求めていますので広島県の多彩な人材に期待しています。

江原氏イノベーションは、異文化がぶつかり合って生まれます。当社の経営委員や支店長職は、プロパー社員と中途採用社員が半々を占める構成です。多様な人材が関わることで経営のバランスを取り、さまざまな企業文化が混じり合って生まれる新しい発想と展開を大切にしています。今後は、アジアや欧米など外国人社員の登用も推進します。広島県には外国人を積極的に受け入れる環境はありますか。

知事湯崎氏広島県は昨年末に「国家戦略特区」に決定し、グローバルな高度人材が集積する環境の構築に取り組んでいるところです。また、県内全ての県立高校が海外の学校と姉妹校提携し留学や交流を進めており、10年間で1万人の高校生が留学を経験するプロジェクトにも取り組んでいます。このほか、企業の協力も得て、海外から優秀な留学生の確保を進めるなど、グローバル人材の育成に注力しています。本日お話しいただいた内容をまとめるとイノベーションは多様性と人材がカギであるということかと思います。広島県では、政策の大きな柱の一つとして「人づくり」を掲げており、幼児期から大学・社会人までを見据えた人材育成に力を入れています。また、多様性の観点からUターンはもちろん、I・Jターンも積極的に促進していく方針です。県内に可能性の豊かな人材を集めて、育てて、人や企業とつなげることでイノベーションを創出する活気あふれる広島県づくりを目指していきたいと思います。本日はありがとうございました。

※1:「ファブリケーション(製造)」の略。また、製造工場のこと。
※2:「Internet of Things」の略。あらゆる物がインターネットを通じてつながることによって実現する新たなサービス、ビジネスモデル、またはそれを可能とする要素技術の総称。

講演

講演の写真「地方から創生する我が国の未来」
国務大臣 地方創生・国家戦略特別区域担当 石破 茂氏

安倍政権は「地方創生」を重要政策の一つに掲げ、東京への一極集中の解消や地域の活性化を推進しています。

これまでも歴代内閣では「日本列島改造論」や「田園都市構想」、「ふるさと創生事業」など地方の振興を掲げてきました。しかし、高度成長期やバブル期に立案された過去の政策と比べ、我々の「地方創生」は、これに失敗すると、国そのものが滅んでしまうといった危機感に裏打ちされている点で一線を画します。

危機感の背景にあるのは、急速な人口減少です。現在の出生率や死亡率がこのまま続くとしたら、2100年の日本の人口は約5200万人に半減し、3000年にはわずか1千人にまで減ることになります。人口減少は国の存亡に関わる「静かなる有事」ともいえます。

人口が減る一方で、東京への一極集中が止まりません。地方の高齢化がピークを越えた今後は、東京の高齢化が未曾有の勢いで進むと予想されています。そうなると、医療や介護のニーズが東京に集中し、マンパワーが地方から東京へ流出するなど、さらなる一極集中が起きる危険すらあります。地方と東京のあり方を根底から変えなければ、日本の社会は持続できません。「待ったなし」の状況です。

政府は現在、GDP(国内総生産)を600兆円にする目標を掲げています。かつてのように公共事業で雇用や所得の多くを賄えない中で、この目標を達成するには、地方の生産性を高めていくしか方法はありません。

地方には、東京と比べ生活コストが安く、住居も広く、自然が豊かといったメリットがあります。広島県は、温暖な瀬戸内からスキーのできる県北部まで、気候風土が変化に富むことなどから「日本の縮図」と呼ばれており、広島で売れる商品は全国でも人気が出ると考えられています。消費者のニーズをつかみやすく、行政が身近で連携しやすい点も地方の良さではないでしょうか。

地域ならではの強みを生かし、雇用をどう創出し、産業をどう活性化していくか。そのための創意工夫が求められています。東京に本社を置く企業が、企画立案部門や研修部門、調達部門といった機能を地方に移すのは有効な一手です。政府ではこうした企業に対し、税制上の優遇措置を講じ、移転を後押ししています。国も、文化庁や消費者庁などの中央省庁の地方移転を検討しています。通信網や交通網の発達を考えれば、全てを東京に集約させておく必要はありません。

また政府は、全ての都道府県と市町村(特別区を含む)に対し、今後5年間にわたる展望を示した「総合戦略」の立案をお願いしています。産業界、教育機関、行政、金融機関、労働団体、メディアの「産・学・官・金・労・言」が連携することで生まれる地方創生の新しいビジョンに期待します。広島の皆さんには、「わが町から日本を変えよう」という気持ちを大切にしてほしいと思います。いつの時代も国を変えるのは首都ではありません。地方がどれだけ力を結集して日本を変えられるか、それが今の時代を生きる私たちの責任ではないかと思います。

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