調査・研究の充実
 
●現状と課題
 
 保健環境センター及び工業技術センター等において,大気汚染,水質汚濁等の公害,また,化学物質や廃棄物・リサイクル等についての調査・研究を行っています。環境問題の複雑化・多様化に対応するため,調査研究などの充実に努める必要があります。
 
[施策の方向]
調査・研究の着実な推進
 
●施策の展開
 
複雑・多様化する環境問題に対応するため,保健環境センターをはじめとする各分野の試験研究機関における調査・研究等を進めます。
県立大学,国立・私立大学,独立行政法人,民間の研究機関等との幅広い産・学・官の連携を図り,互いの技術力や研究成果を活用したより高度な調査・研究を推進します。
調査や研究,技術開発等の成果を広く公表し,利用の促進を図ります。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
試験研究機関における調査・研究[環境政策室・産業技術振興室・技術振興室](再掲)
 
[平成14年度事業実績]
項目 調査・研究内容 調査研究機関
大気関係 光触媒を利用した環境浄化技術の開発  被処理物の影響を受けず,効率的な光触媒反応器を設計製作し,アセトアルデヒドなどの大気汚染物質の分解試験を実施しました。その結果,アセトアルデヒドの場合では,初期濃度に依らず,約2時間の光触媒反応によって約50%除去できることを確認しました。更に,大気汚染物質の光触媒反応による分解過程において,有害な重合体(ホスゲン)が生成されないことも確認しました。 西部工業技術センター

質関係
沿岸域の窒素浄化機能に関する研究  広島湾沿岸域の窒素循環における干潟と沿岸海域の底泥の浄化機能を,窒素固定と脱窒速度を測定することにより,定量的に明らかにしました。 
 その結果,沿岸海域の底泥は干潟の3〜15倍高い脱窒速度を示し,その浄化能は,有望な富栄養化対策技術として活用できる可能性があることがわかりました。
保健環境センター
湖沼における藻類の発生予測に関する研究  アオコの原因藻類と水質,気象及び水理条件との関係を解明するため,魚切ダム貯水池での詳細な調査及び室内培養実験を行いました。その結果,水温以外に,燐,金属類,藻類組成等がアオコ発生と消滅に関与することが示唆され,発生予測式への反映が可能となりました。
農薬や化学肥料に偏らない栽培技術の開発  環境保全型農業を中心とした農薬や化学肥料に偏らない栽培法を確立するため,(1)環境にやさしい施設果菜類の病害虫防除技術,(2)耕種的方法を活用した環境にやさしいカンキツ病害虫防除技術,(3)キュウリにおける環境保全型ネコブセンチュウ防除技術等の研究を実施しました。 農業技術センター
畜産環境保全技術の調査研究  堆肥の流通促進を目的として,耕種農家のニーズに応じた稲作,施設園芸,果樹及び家庭菜園用等の用途別堆肥生産技術の研究を実施しました。特に,高炉スラグを乳牛ふんの堆肥発酵の副資材とし,水稲用にケイ酸を強化した堆肥生産技術を開発しました。 畜産技術センター
漁場環境改善のための基礎研究  漁場環境の改善と幼稚魚の育成の場として重要なアマモ場を回復させることを目的とし,アマモ場造成の基礎研究を実施しました。特に,アマモの安定した種子採取法及び発芽体生育法の確立に取り組みました。 水産試験場
騒音
・振動関係
道路交通騒音の面的把握に関する研究  騒音の環境基準の改正に伴い,道路に面する地域の騒音の状況を面的に把握することが必要となっています。今年度は,これまでに整備した面的把握も可能な道路交通騒音推計システムを道路沿道に建物がある場合に適用できるシステムに更新し,簡便に推計ができる機能も持たせました。 保健環境センター
音・電磁波防止対策に関する研究  騒音源から発生する騒音や振動データを計測・保存し,振動情報から音情報を推定するとともに,騒音・振動の周波数分析が可能なシステムを構築しました。また,電磁波ノイズと電子基板配線パターンとの関係を調べ,ノイズ低減が可能な配線パターン設計指針をまとめ,データベース化しました。 西部工業技術センター
化学物質関係 PRTR(環境汚染物質排出移動登録)対策に係るリスク評価の支援に関する研究  人への影響が指摘されている有害化学物質の中で,PRTR対象物質に関するデータベースを作成しました。データベースには,化学物質の毒性,基準値などの各種情報を収集・入力するとともに,一部の化学物質については県内の環境濃度を入力しました。 保健環境センター
ダイオキシン類による地域環境汚染の実態とその原因究明に関する研究  原因究明のため,発生源及び環境試料のダイオキシン類の異性体組成の検討とダイオキシン類の迅速分析法の検討を行いました。 迅速分析法として,高圧液体抽出法や充填済みカートリッジカラムによる精製法は,有望な前処理法であることがわかりました。
廃棄物
・リサイクル関係
廃棄物二次資源の安全性評価に関する研究  廃棄物二次資源のうちの溶融スラグについて,国立環境研究所と共同で,重金属類等の溶出試験方法の検討及び調査を実施しました。溶出挙動は元素によって異なっており,また,長時間の振とうを行っても有害な重金属類の溶出量は少ないことがわかりました。
酵母による食用廃油からの糖脂質生産技術の開発  精製油を原料とした酵母による糖脂質の生産技術を確立しました。この技術を,食品加工業者から回収した食用廃油の分解に適用し,糖脂質の生産が可能であることを確認しました。更に,食用廃油を原料として得られる糖脂質の機能性を調べ,精製油原料の糖脂質に比べ乳化能が優れていることが分かりました。 食品工業技術センター
ポリプロピレンをベースとした廃プラスチックのマテリアルリサイクル技術の開発  繊維強化プラスチック(FRP)と再生ポリプロピレン(PP)との複合化によるマテリアルリサイクルを低コストで実現するため,短時間で粗粉砕したFRPの粒度分布と成形性との関係を調べ,粗粉砕FRPの45%及び85%がそれぞれ射出成形及びプレス成形に利用できることを明らかにしました。また,複合材料における両成分間の剥離が起こらず,耐衝撃性も向上できる最適な配合組成を把握できました。 西部工業技術センター
廃鋳型微粉体の動的表面処理プロセスの開発  これまで産業廃棄物として埋め立て処分していた鋳造廃鋳型を粉砕微粉化し,プラスチックの充填材として低コストで利用するための技術を開発し,コーンウエイトや方向表示用重り,U字溝,道路の段差解消製品などを試作しました。 東部工業技術センター
 
[平成15年度事業内容]
項目 調査・研究内容 調査研究機関
大気関係 光触媒を利用した環境浄化技術の開発  工場から排出されるクロロフェノール等有機塩素化合物やアルキルフェノール等環境ホルモン含有廃水について,光触媒,オゾン,生物活性炭を用いた高度廃水処理システムを開発し,実用化を目指します。さらに,光触媒の各種パネルを用いて,工場から発生するメチルメルカプタンや塩化メチレン等大気汚染物質処理技術への応用を図ります。 西部工業技術センター
水質関係 沿岸域の窒素浄化可能に関する研究  沿岸海域環境が有する窒素の浄化機能について検討し,沿岸海域の浄化能の実態や特性を把握し,その機能を高めるための基礎的な研究を行います。 保健環境センター
湖沼における藻類の発生予測に関する研究  アオコ発生予測の精度向上に向け,これまでに抽出したアオコ発生要因の更なる絞り込みを行うため,魚切ダムにおいて同様の詳細調査を実施するとともに,従来からの室内培養実験に加えて,水温成層を考慮した新たな視点からの培養実験も行います。
酸素透過膜を用いた省エネルギー型排水処理技術開発に係る調査研究  通常,排水処理で行われている動力を用いた曝気による酸素供給に替え,酸素透過膜を介して空気中から水への酸素拡散による省エネルギー排水処理技術の開発を行ないます。今年度は,下水処理場内に実験用プラントを設置して,有機物,窒素処理機能に及ぼす温度,負荷量等の影響を検討します。
農薬や化学肥料に偏らない栽培技術の開発  環境保全型農業を中心とした農薬や化学肥料に偏らない栽培方法の確立のため,新たに,(1)野菜・花き類に発生する昆虫媒介性ウイルスの総合防除技術の開発,(2)環境にやさしいネギの水耕栽培技術の開発,(3)無袋栽培ナシにおける防除要否判定基準の設定の研究を実施します。 農業技術センター
畜産環境保全技術の調査研究  堆肥の流通促進を目的として,耕種農家のニーズに応じた稲作,施設園芸,果樹及び家庭菜園用等の用途別堆肥生産技術を開発するため,露地野菜や家庭菜園用に施肥効果を調整した堆肥生産,冬季の堆肥発酵温度低下防止技術等の研究を実施します。 畜産技術センター
漁場環境改善のための基礎研究  漁場環境の改善と幼稚魚の育成の場として重要なアマモ場を回復させることを目的とした技術開発のため,アマモ移植株,実生株の安定的育成法の研究を実施します。 水産試験場
化学物質関係 ダイオキシン類による地域環境汚染の実態とその原因究明に関する研究  幅広い試料を対象として,原因究明のための発生源及び環境試料のダイオキシン類の異性体組成の検討を継続します。また,迅速分析法として,前処理法の迅速化の検討を継続するとともに,公定法により簡易な機器を用いた分析法についても検討します。 保健環境センター
PRTR(環境汚染物質排出移動登録)対策に係るリスク評価の支援に関する研究  県内の化学物質の環境濃度を整理し,平成14年度に作成したPRTR対象物質に関するデータベースに追加します。さらに,化学物質の漏洩事故に対応するため,簡易な拡散計算ソフトの作成を検討します。
廃棄物
・リサイクル関係
廃棄物二次資源の安全性評価に関する研究  資源化を進めるうえで,溶融スラグには様々な利用用途が考えられるため,環境中における暴露状態を反映した試験条件についてさらに検討を進め,長期環境安全性を確認するための評価手法を確立します。
廃棄物最終処分場の跡地の有効利用に関する研究  現状では公園やグラウンドなどにしか利用されていない管理型廃棄物最終処分場跡地をより有効に利用する方法について研究を行います。現地調査による処分場跡地の安定化状況調査や室内模型実験による遮水構造への影響等について検討します。
酵母による食用廃油からの糖脂質生産技術の開発  食品廃棄物を利用した高付加価値物質の生産技術を開発することを目的とし,食品製造の過程で排出される食用廃油(天ぷら油など)を原料にして,生理機能(食品の乳化能,化粧品の保湿能等)を有する糖脂質の生産技術を検討します。 食品工業技術センター
ポリプロピレンをベースとした廃プラスチックのマテリアルリサイクル技術の開発  ポリオレフィン系プラスチックの高性能ポリマーアロイ化とその成形加工技術を確立し,特にリサイクル樹脂を用いた中小プラスチック製造企業におけるオリジナルな材料を用いた製品開発を支援します。 西部工業技術センター
木材及び木質バイオマスの利用促進  森林バイオマスの効率的供給システムの開発研究を実施し,林業生産活動に伴い発生する間伐材などの未利用木質資源の有効利用を図ります。また,森林バイオマス資源量の把握,施業の集団化による低コスト搬出手法,森林バイオマスのチップ化及び乾燥技術の開発に取り組みます。 林業技術センター
 
県立大学における研究[大学企画管理室]
 
 行政,企業及び試験研究機関等と連携し,新たな技術を開発し,環境低負荷の製品となり,社会に普及していくことによって,環境への影響の低減を図ります。
 
[平成14年度事業実績] 各県立3大学に産官学連携推進窓口を設置するとともに,コーディネーターを2名ずつ配置し,研究者人材名簿の配布による企業等への研究者情報を発信しました。また,企業との共同研究,受託研究を実施しました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,研究を実施します。
 
平成15年度に講じる施策(新規)
 
研究者人材名簿の県ホームページ掲載[大学企画管理室]
 
 県立3大学の研究者(教員)の研究データを人材名簿として発信します。

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