3. 水辺の保全・再生
 
現状と課題
 
 河川整備においては,災害防止の観点とともに,生物の生育・育成,水の浄化等の機能を保全・創造することの重要性が認識され,自然環境や生態系の保全に配慮した多自然型工法の導入や親水性や景観に配慮した護岸整備が進められています。
  一方で,自然海岸は,高度経済成長期から行われた各種の開発行為等により,約33%が残存するのみとなっていることから,優れた環境を有する自然海岸の保全を図るため「広島県自然海浜保全条例」に基づき「自然海浜保全地区」に指定しています。
水質の浄化機能を有し,魚介類の産卵・育成等の場として重要である藻場・干潟についても,沿岸域の環境変化や開発行為等により減少していることから,残された藻場・干潟を保護・保全するとともに,周辺の景観や生態系などの自然環境と調和した人工海浜や離岸堤,緩傾斜護岸の整備等を行う必要があります。
  また,ダム貯水池,ため池,農業用水路などの水辺は,魚,昆虫をはじめ野鳥が活動し,水生植物などを含む豊かな生物相が育まれており,地域住民にとって,散策,レクリエーションなどの憩いの場所として,重要な役割を果たしています。
 
図表3-1-7
自然海浜保全地区数及び面積(平成15.4.1現在)
資料:県自然環境保全室
 
図表3-1-8 海岸線の状況
出典:環境庁第2回,第3回及び第4回自然環境保全基礎調査
 
図表3-1-9 藻場・干潟の現存面積と消滅面積
出典:環境庁第4回(平成元年〜平成4年)自然環境保全基礎調査
 
[施策の方向]
自然とのふれあいの場である河川や海岸・海浜などの水辺の生物の生息・育成環境に配慮した保全・再生
 
(1) 自然環境に配慮した河川の整備
 
 水生生物の移動の分断を回避する魚道の整備,水際部の水生植物の維持・回復のための自然石を使った岩組み・石積み,魚巣ブロック・ホタル護岸など,地域の状況を考慮した工法の採用等により,自然環境に配慮した河川の整備を進めます。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
多自然型川づくり[河川企画整備室]
 
 水生生物の移動の分断を回避する魚道の整備,水際部の水生植物の維持・回復のための自然石を使った岩組み・石積み,魚巣ブロック・ホタル護岸など,地域の状況を考慮した工法の採用等により,自然環境に配慮した河川の整備を進めます。
 
[平成14年度事業実績] 江の川,黒瀬川,安川,有地川などにおいて地域の状況を考慮した工法により整備をしました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,地域の状況を考慮した工法により整備を行います。
 
  多自然型川づくりのイメージ
多自然型川づくりのイメージ
 
(2) 海岸・海浜や海の自然の保全と再生
 
優れた環境を有する海岸は「広島県自然海浜保全条例」に基づき,自然海浜保全地区に指定し保全に努めます。
藻場や干潟は,水質の浄化機能を有し,魚介類の産卵・生育等の場としても重要であることから,自然に残された貴重な藻場・干潟の保護・保全と再生を図ります。
ミティゲーションの考え方に基づき,自然と調和のとれた港湾の整備を行うとともに,自然環境や生態系の保全・再生を積極的に進めるとともに,藻場,干潟や湿地等の保全・復元などの自然再生事業を推進します。
水産試験場を再編整備し,藻場・干潟等の浅海域の環境保全・修復技術等に関する調査研究を進めます。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
  
自然海浜保全地区の指定等[自然環境保全室]
 
 優れた環境を有する自然海岸を自然海浜保全地区に指定し,自然海浜の保全及び適正な利用を図ります。
 
[平成14年度事業実績] 県内19箇所で指定されている自然海浜保全地区の保全と適正な利用に努めました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,自然海浜の保全と適正な利用に努めていきます。
 
水産基盤整備事業[漁港漁場整備室]
 
 藻場や干潟などの魚介類の産卵,幼稚魚育成の場づくりや優良な漁場を構成するとともに,海底に堆積したゴミを除去して漁場環境を保全することで,漁場生産量の増大を図ります。
 
[平成14年度事業実績] 藻場の造成(大崎上島1.7ha,豊浜1.0ha),魚礁の設置(内海町他4箇所7,432空m3),干潟の造成(田尻2.0ha),海底の清掃(広島市他5箇所18.6km2)を行いました。
[平成15年度事業内容] 藻場の造成(豊浜2.6ha,因島2.9ha),魚礁の設置(尾道市他3箇所5,883空m3),干潟の造成(田尻2.0ha),海底の清掃(広島市他5箇所21.4km2)を行います。
 
広島かき振興総合対策事業[水産振興室]
 
 台風などの災害による養殖被害や資材流失などによる環境への影響を防ぐため,災害に強く環境にやさしい養殖筏や養殖方法の開発に取り組みました。(平成14年度終了)
 
水産海洋技術センター(仮称)の整備[技術振興室]
 
 現在の水産試験場を,瀬戸内海の環境保全や水産資源の維持拡大を図る技術拡大など,海,河川に関する幅広い要請に応えられる水産・海洋技術開発の拠点として,再整備します。
 
[平成14年度事業実績] 養殖技術開発棟,内水面実験棟,屋外飼育棟の整備に着手しました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,平成16年度末までに水産試験場の再整備を行います。
 
河川清掃等業務委託事業[河川管理室]
 
河川清掃「クリーン太田川」[河川管理室]
 
広島県ラブリバー制度推進事業[河川管理室]
→オ,カ,キの詳細はこちら
 
放置艇の規制[港湾管理室]
→詳細はこちら
 
エココースト事業[港湾企画整備室]
 
 良好な自然環境を積極的に保全・回復する必要性が高い竹原港海岸において,高潮・津波・浸食などの自然災害から海岸を防護することと併せ,生態系や自然景観等の周辺の自然環境に配慮した海岸の形成を図り,自然と共生した海岸づくりを進めます。
 
[平成14年度事業実績] 護岸整備(50m)を行いました。なお,生物分布状況調査により,干潟生息生物の種の増加が確認されました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,護岸整備(40m)を行います。
 
エココースト事業
エココースト事業
 
港湾環境整備事業[港湾企画整備室]
→詳細はこちら


●コラム● 広島県ラブリバー制度推進事業
 
   広島県においては,県の管理する河川において,河川清掃,除草などの一定の河川美化活動等を行う団体を対象に平成14年度より広島県ラブリバー制度を導入しています。これは,県が活動を希望する団体をラブリバー団体として認定し,サインボード(活動団体が当該河川で美化活動を行っていることの看板)の設置,傷害・賠償責任保険の加入などを行うことで,その活動をバックアップしようとする制度です。 (参加者のコメント)
草取り作業の呼びかけをしてもらえるので,参加するきっかけができる。参加すると,元気でみんなの役に立てることが嬉しい。
土手の草刈りに協力している。距離が長く幅も広いので一度に刈り揃えることが出来ないため,見栄えがもう少しという気がする。
健康保持を兼ねて協力している。
・  犬を連れて散歩する人がいるから,いつも土手が綺麗になっているので歩くのが楽しいと言ってもらえた。
活動時写真
[事業主体] [事業主体]
竹原西公民館加茂川吉崎土手美化推進委員会,広島県,竹原市  沼田川を愛する戸野区民の会,広島県,賀茂郡河内町
[目 的] [目 的]
河川環境の美化保全活動  河川環境の美化保全活動
[活動概要] [活動概要]
竹原市に流れる加茂川の河口近い吉崎土手は景色の美しいところです。
平成元年4月,その川土手を「未来の子供達に残そう」という計画が当時の竹原西公民館長を中心に湧き上がり,竹原西公民館で開かれている文化教室受講者の有志によって,河川環境の美化保全のためのボランティア活動がスタートしました。活動の中心は,花いっぱい運動で,吉崎土手の中段に菜の花・コスモス・ヒマワリ等季節ごとに年間10種類以上の花を植え替え,その延長は現在では約600mに及んでいます。これらを維持するため構成員が交代で水をやり,毎月1回は約50人で草取りを行っています。
 また,平成14年度からは広島県ラブリバー制度におけるラブリバー認定団体となり,広島県・竹原市と協働して河川の管理を行っています。
 当初は大人のみで構成されていた団体も,一昨年からは子供教室の子供達も参加して,大人の指導を受けながら河川美化について学習しています。この河川美化保全活動の積み重ねが新しい世代まで引き継がれ,地域の人達に河川愛護の精神が育っていくことを期待しています。
 賀茂郡河内町戸野地区を流れる沼田川河川敷で,平成14年夏,戸野地区公民館を中心に,子供たちが安全に遊ぶことのできる川を自分たちの手でつくってみようというプランが動き出しました。
 戸野区民の会は,何をどういうふうにすれば良好な河川環境が創り出せるか河川管理者に相談したところ,このプランについて,河川管理者は住民の自発的な河川愛護であると戸野区民の会に賛同し,ラブリバー制度による川の里親と認定しました。
 当初,川岸は草ボウボウの状態で,草刈りしてはみたものの足元は凹凸でゴミや鋭い切株が残り,とてもそのままでは子供たちを遊ばせることはできませんでした。
 そこで,小型ユンボで掘り起こし,根やゴミ等を手で拾い地均しをしてやっと平らなフィールドが完成しました。
 流れのあるところでは,自然の川の流れと石を利用して,水遊びのできる瀞場をつくってみました。
 地域で子供を育てるということを実践する戸野区民の会では,川と親しむフィールドを創り出したことで,住民が自発的に河川愛護活動(清掃等)を意識するようになり,以前にも増して良好な環境が保たれてゆくことが期待されます。
集合写真 (松浦戸野地区公民館長のコメント)
 地域のために何ができるか,ということを住民が意識することによって,なくしかけていたものを取り戻していくことができる。
 地域で叱り地域で誉める中で育つ子供たちは,たくましく自然を愛する人間になる。
 そんな風なことを念頭に,少しずつできることをやっていきたいですね。

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