6. 地域環境の維持・向上
 
● 現状と課題
 
(1) 地域環境保全計画
 
 開発事業の集中やその他の事情により環境への負担が著しくなるおそれがあると認められる地域として,広島空港臨空タウン圏域において,「広島空港臨空タウン環境保全計画」を平成8年3月に策定し,この地域の開発事業において環境配慮が行われるようにしています。
 
広島空港臨空タウン環境保全計画の概要
圏域 広島空港から概ね半径5kmの地域
(竹原市、大和町、河内町、本郷町)
計画期間 平成8年度〜22年度
基本方針
[恵まれた自然環境と調和する表情豊かな空港都市]
適正な土地利用
生活環境の保全
循環型のまちづくり
人と自然の共生
うるおいとやすらぎの確保
環境への配慮指針
圏域の代表的な環境への配慮
開発事業の各段階における環境への配慮
 
(2) 公害防止計画の策定状況
 
 環境基本法第17条に基づく公害防止計画は,備後地域及び広島・呉地域において策定しており,公害の発生源に対する各種規制,下水道の整備,廃棄物処理施設の設備,バイパスの設備,公園設備など,総合的な公害防止対策を推進しています。
 
図表1−2−34 公害防止計画策定状況
地域名 地域の範囲 策定等年月日
備後地域 三原市、尾道市、福山市、府中市及び神辺町の区域並びに岡山県笠岡市の区域 基本方針 H11.10.15
計画承認 H12.  2.24
計画期間(年度) H11 〜 15
広島・呉地域 広島市、呉市、府中町、海田町、熊野町及び坂町の区域 基本方針 H12.9.22
計画承認 H12.12.7
計画期間(年度) H12〜 16
 
(3) 公害防止協定の締結状況
 
 公害関係法令による規制等を補完し,地域の実情に即した公害防止対策を実行する上で有効な手段として,県や市町村と企業または住民代表と企業が公害防止協定の締結を行っています。このうち,県は県内主要企業14社と公害防止協定等を締結しています。
 
図面1-2-35 公害防止協定締結数及び有効な協定数
公害防止協定締結数及び有効な協定数
資料:県環境政策室
 
図表1-2-36 県の公害防止協定締結状況
当   事   者 締 結 年 月 日
県・大竹市 日本大昭和板紙西日本株式会社
昭和46年8月26日
〃 50年9月23日全部改訂
平成15年4月1日 日本板紙株式会社から承継
大竹紙業株式会社
昭和46年9月22日
〃 51年3月5日 全部改訂
三菱レイヨン株式会社
昭和46年10月5日
〃 50年9月2日 全部改訂
ダイセル化学工業株式会社
昭和46年11月25日
〃 50年9月23日 全部改訂
 
三井化学株式会社
三井・デュポンポリケミカル株式会社
県・福山市 JFEスチール株式会社
昭和46年12月27日
〃 57年3月31日 一部改訂
平成15年4月1日 日本鋼管株式会社から承継
福山共同火力株式会社
昭和46年12月27日
〃 57年3月31日 一部改訂
日本化薬株式会社
昭和51年9月14日
〃 57年3月31日 一部改訂
県・呉市 日新製鋼株式会社
昭和47年12月13日
〃 59年3月31日 全部改訂
王子製紙株式会社 平成元年4月1日
県・尾道市 横浜ゴム株式会社
昭和48年9月25日
平成9年11月6日 一部改訂
〃 11年3月17日 一部改訂
県・竹原市 電源開発株式会社
昭和49年1月22日
〃 55年4月19日 全部改訂
県・大崎上島町 中国電力株式会社
平成7年11月20日
平成15年6月23日 一部改訂
資料:県環境政策室
 
(4)  公害苦情件数の状況
 
 県及び市町村における公害苦情事案の取扱件数は,横ばい傾向にあります。典型七公害や廃棄物以外の公害苦情はほとんど発生していないものの,全国的な状況等を踏まえ,今後,必要に応じて対策等を検討していく必要があります。
 
図表:1-2-37 公害苦情事案の取扱件数
年度 区分 取扱件数(A+B) 取扱件数内訳 当年度
発生件数(A)
前年度
繰越件数(B)
対前年度増加件数 対前年度比
大気汚染 水質汚染 騒音振動 悪臭 その他
10
11
12
13
14
1,535
1,531
1,627
1,635
1,565
502
488
513
470
512
298
365
376
362
323
265
264
246
263
270
263
226
253
275
205
207
188
239
265
255
1,396
1,381
1,466
1,433
1,479
138
150
161
202
107
253
△4
96
8
△70
1.20
0.99
1.06
1.00
0.96
14年度構成比(%) 100.0 32.7 20.6 17.3 13.1 16.3 - - - -
資料:県環境政策室
(注) 取扱件数内訳の欄中「その他」とは,土壌汚染,地盤沈下及び廃棄物に関するもの等をいう。
 
(5)  環境監視・測定状況
 
 環境の状態を把握し,汚染が認められた場合には速やかに対策を講じるため,常時監視測定局等における監視・測定を着実に実施するとともに,未規制化学物質など新たに発生する問題にも対応できるよう,監視体制を充実していく必要があります。
 
環境情報システムの概要
環境情報システムの概要
 
[施策の方向]
総合的な公害防止対策を推進
環境監視・測定の着実な実施
 
● 施策の展開
 
(1) 地域環境保全計画の推進
 
 開発事業の集中やその他の事情により環境への負荷が著しくなるおそれがあると認められる地域については、長期的な展望にたって地域環境の望ましいあり方を明確にする「地域環境保全計画」を策定し、各種の施策を総合的に推進します。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
広島空港臨空タウン環境保全計画の推進[環境調整室]
 
 広島空港臨空タウン圏域において,「広島空港臨空タウン環境保全計画」の推進方策に基づき,環境配慮のための各種施策を総合的に推進します。
 
[平成14年度事業実績] 臨空タウン圏域において,地方公共団体等が行う一定規模以上の開発予定事業(17事業)について,環境配慮の徹底を図りました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,臨空タウン圏域における対象事業について,環境配慮の徹底を行います。
 
(2) 公害防止計画の推進
 
 公害防止計画を策定している広島・呉地域及び備後地域において,環境基準を達成・維持するため,発生源の規制,監視体制の整備,未然防止対策の徹底,公共下水道の整備など,各種の公害防止対策を総合的に推進します。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
公害防止計画策定地域の現況調査[環境政策室]
 
 公害防止計画の推進を図るため,同計画の実施状況等を把握します。
 
[平成14年度事業実績] 関係自治体や工場・事業場に対し,公害対策事業の実績や見込,公害防止設備投資実績について調査しました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,同計画の実施状況等を把握するとともに,備後地域計画については,計画策定最終年度となるため,実施状況等報告書としてまとめます。
 
(3) 公害防止協定・環境保全協定の締結及び遵守監視
 
 公害関係法令による措置を補完し,地域の実情に即した効果的な公害防止対策を実施する観点から大規模な事業者等と締結している公害防止協定・環境保全協定の実施状況等の監視を行います。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
公害防止協定の締結及び遵守監視[環境対策室]
 
 県は県内主要企業14社と公害防止協定等を締結しており,その遵守状況の確認等を行います。
 
[平成14年度事業実績] 協定内容の確認調査,設備の新増設・変更時の事前指導,排出状況の常時監視,緊急時の対応要請などを行いました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,協定工場における協定の遵守状況の確認等を実施します。
 
(4) 公害紛争処理
 
公害苦情事案について,市町村等と連携し調査・指導を行い,その迅速かつ適正な解決を図ります。
「公害紛争処理法」に基づき,広島県公害審査会が行うあっせん,調停及び仲裁により公害紛争の迅速かつ適正な解決を図ることにより,公害に係る紛争の迅速な処理や健康被害の防止に努めます。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
公害苦情相談[環境対策室]
 
 県及び市町村では,公害紛争処理法に基づく公害苦情相談員(301人:うち公害苦情相談員135人)を設置しています。公害苦情事案について,市町村等と連携し調査・指導を行い,その迅速かつ適正な解決を図ります。
 
[平成14年度事業実績] 市町村と連携を図りながら,県内の公害苦情事案処理を行いました。
[平成15年度事業内容] 引き続き,公害苦情事案への迅速かつ適切な処理に努めます。
 
図表1-2-38 公害苦情事案の処理状況
区  分 12年度 13年度 14年度
総 数 解決
件数
解決率(%) 総 数 解決
件数
解決
率(%)
総 数 解決
件数
解決率(%)
取扱件数 1,627 1,433 88.1 1,635 1,480 90.5 1,565 1,436 91.8
公害の種類 大気汚染 513 480 93.6 470 443 94.3 512 489 95.5
水質汚濁 376 334 88.8 362 342 94.5 323 304 94.1
騒音 230 208 90.4 236 222 94.1 248 233 94.0
振動 16 12 75.0 27 26 96.3 22 21 95.5
悪臭 253 217 85.8 275 248 90.2 205 178 86.8
土壌汚染 3 3 100.0 3 2 66.7 8 7 87.5
地盤沈下                  
その他 236 179 75.8 262 197 75.2 247 204 82.6
資料:県環境対策室
 
広島県公害審査会の設置[環境政策室]
 
 公害に係る紛争について,迅速かつ適正な解決を図るため,公害紛争処理法及び公害紛争の処理に関する条例に基づき,広島県公害審査会において,あっせん,調停及び仲裁を行います。
 
[平成14年度事業実績] 事案はありませんでした。
[平成15年度事業内容] 公害紛争の迅速かつ適正な解決を図ります。
 
(5) 環境の監視等
 
大気,水質,騒音等の環境の監視・測定体制を充実させるため,分析機器の計画的な整備,関係機関への指導・支援等を推進するとともに,国,近隣地方公共団体との連携を図りながら,効果的かつ効率的な監視・測定を実施します。
監視・測定の内容等に応じて,住民,市町村,民間団体等の参加を促進するともに,各主体実施による測定結果等が相互に活用されるように努めます。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
環境情報システムの運用[環境対策室]
 
 大気汚染・水質汚濁に関する監視システムの整備・運用を通じ,大気汚染や水質汚濁の未然防止を図るとともに,大気・水質等に関する情報管理システムにより県内の環境の状況を把握します。また,現システムに情報提供機能等を追加し,環境情報を体系的に管理・発信するシステムの整備・運用を行います。
 
[平成14年度事業実績] 監視システム及び情報管理システムにより,環境データの収集,処理及び加工等を行い,県内の環境の状況の把握に努めました。また,インターネットにより環境情報を県民等に提供するシステムを整備しました。
[平成15年度事業内容] 監視システム及び情報管理システムの運用を行うと伴に,インターネットによる環境情報を県民等に提供するシステムの運用を行います。
 
(6) 調査研究等の充実
 
 環境問題の複雑化・多様化に対応するため,保健環境センター等における調査研究,研修などの充実に努めるとともに,関連機関が協力して環境に関する調査研究体制を整備し,高度で専門的な照査研究を推進します。
 
平成14年度に講じた施策・平成15年度に講じる施策
 
試験研究機関の見直し[環境政策室]
 
 試験研究機関のあり方について検討し,効率的かつ高度な試験研究・検査体制の整備や,研究員や研究施設などの有効活用を図ります。
 
[平成14年度事業実績] 県が実施すべき研究分野等の提言を行う広島県研究開発推進会議により,保健環境センターをはじめとする「県立試験研究機関の研究開発のあり方」について中間報告が取りまとめられ,研究開発を取組むべき課題の1つとして「循環型社会への対応」が位置づけられ,重点研究開発分野の1つに「環境分野」が掲げられました。
[平成15年度事業内容] 「県立試験研究機関の研究開発のあり方」について広島県研究開発推進会議から最終提言を受け,それに基づき具体的な研究開発推進のための見直しを行います。保健環境センター等においては,調査研究の充実を図るため,産学官連携及び中国5県の広域連携を推進します。
  
(7) 公害防止条例の改正[環境対策室]
 
 自動車交通や廃棄物問題などの都市・生活公害型,さらには地球温暖化などの地球環境問題といった新たな環境問題に広範に取り組んでいくため,昭和46年に制定した公害防止条例の全面改正について検討します。
 
[平成14年度事業実績] 県は,平成14年6月19日に「広島県公害防止条例のあり方」について広島県環境審議会に諮問し,平成15年3月27日に答申を受けました。計4回開催された審議会での協議・検討に加え,関係業界団体や市町村等からの意見聴取等により,条例化を検討すべき内容として7分野21項目が答申されました。
[平成15年度事業内容] 答申を踏まえて,条例改正の準備を進めます。

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