第1章 循環型社会の実現に向けて



第3節 環境施策の展開(主要施策)

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1 平成12年度において特に講じた施策
(1)循環型社会システム推進事業
 21世紀において,本県が持続的に発展し,環境と調和した活力ある広島を築いていくため,リサイクル施設の整備など,環境への負荷の少ない社会システムの拠点づくりや環境にやさしい事業活動の推進など,資源循環型社会の形成に向けた施策を推進した。

1.循環型経済拠点構想〜びんごエコタウン構想〜の推進
 資源循環型社会の構築に向けた先進的なモデルケースとして,リサイクル技術や関連するインフラに一定の集積が認められる備後地域を対象として,循環型経済システムを形成し,「ゼロエミッション」の理念を実践するためのマスタープランとして平成11年度策定した「びんごエコタウン構想」が,平成12年度,エコタウン事業推進のための「エコタウンプラン」として,通商産業省と厚生省(当時)から共同承認された。
 それを受けて,学識経験者,産業界,行政で構成する「びんごエコタウン構想推進委員会」を設置し,構想の具体化に向けた事業の検討や進行管理を行った。
2.福山リサイクル発電事業
 循環型経済拠点構想の中核施設としてRDFを利用し,発電や灰溶融を行う福山リサイクル発電施設の整備について,県,関係市町村,民間企業等の出資する事業法人「福山リサイクル発電株式会社」を設立するとともに,環境影響評価現況調査を実施した。
3.ゼロエミッションの普及促進
 ゼロエミッション社会システムを構築するため,県内の幅広い企業による「環境にやさしい企業活動」の展開を促進した。
「ひろしま地球環境フォーラム」(県内の企業,団体で平成5年3月設立)が実施する次の事業を支援
LCA(ライフサイクルアセスメント)導入促進事業
環境会計導入促進事業
環境報告書作成促進事業

(2)地球環境保全の推進
 地球的規模の環境問題の中でも,地球温暖化の問題は早急に対策を講じなければならない重要な問題である。このため,地球温暖化対策推進法の円滑な実施を図り,県民・事業者・行政等の各主体での温室効果ガス排出量削減に関する取組を推進した。

1.地球温暖化対策実行計画の推進等
 地球温暖化対策を総合的かつ効果的に推進するため,「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき,平成12年4月,財団法人広島県環境保健協会を広島県地球温暖化防止活動推進センターに指定した。
 また,平成12年3月に策定した「広島県地球温暖化対策実行計画」に基づき,県が排出する温室効果ガスの排出抑制と職員一人ひとりの省エネルギー・省資源への取組を推進するため,各所属の推進責任者等を対象にした研修会を開催するとともに,点検活動を実施した。なお,12年度における計画の実績は次表のとおりであり,二酸化炭素の総排出量は基準年度に比べ,2.8%増加した。
 一方,市町村における温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する計画の策定を支援するため,説明会を開催するなど,情報提供を行った。

広島県地球温暖化対策実行計画実績(主要項目)
項目 単位 基準年度
(平成10年度)
平成12年度 基準
年度比
目標値
(平成16年度)
電気使用量の削減 千kWh 93,244 96,432 103.4 基準年度比-5%
エネルギー
供給設備等
燃料使用量
の削減
重油 千リットル 2,740 2,923 106.7 基準年度比-6%
灯油 千リットル 1,666 1,785 107.1
LPG 218 198 90.8
都市ガス 5,604 3,513 62.7
公用車燃料使用量の
削減
千リットル 3,181 3,182 100.0 基準年度比-10%
二酸化炭素発生量 64,618 66,416 102.8 基準年度比-6%

2.県内二酸化炭素排出実態調査事業
 地球温暖化対策推進法に基づく取組を推進し,適切な対策を講ずるため,広島県の各部門(産業,民生,運輸)からの二酸化炭素(CO2)の排出実態を調査した。

(3)有害化学物質環境リスク低減対策
 ダイオキシン類や環境ホルモンなど,多種多様な化学物質による人の健康や生態系への影響が懸念されている。このため本県の地域特性を踏まえた環境リスクの管理・低減の仕組みづくりなど,総合的な化学物質対策を推進した。 

1.環境汚染状況の調査
 発生源に対するダイオキシン類排出抑制の指導や,今後の環境ホルモン対策に活用するため,ダイオキシン類及び環境ホルモンによる環境汚染の実態を把握した。
2.PRTRパイロット調査
 平成11年度に引き続きPRTRパイロット調査を実施した。
対象地域:県東部地域
対象物質:PRTR法で指定された354の化学物質
事業内容:405事業所を対象に,化学物質の環境中への排出量及び廃棄物としての移動量を調査した。
3.屋外燃焼行為の規制
 廃電線等の屋外での燃焼によるダイオキシン類等の発生を抑制するため,公害防止条例に基づき有価物の屋外燃焼行為を規制した。

有害科学物質環境リスク低減対策の体系

(4)生活環境保全の推進
1.第5次水質総量削減計画の策定
 昭和54年以来,4次にわたりCODを指定項目とした総量規制が実施されてきたが,環境基準の達成率は依然として低く,海域の汚濁に関与する窒素及び燐も含めた総合的な汚濁負荷量の削減対策が必要になっている。
 このため,新たに窒素及び燐を併せた第5次水質総量削減計画(目標年度:平成16年度)を策定することとし,平成12年度においては,削減目標量に係る調査等を実施した。
2.道路交通騒音対策
 県の法定受託事務として新設された自動車騒音の常時監視について,新たな環境基準に対応した監視体制の整備及び測定評価を行った。
○ 評価区間台帳作成事業
 交通量が多く,自動車騒音が著しいと思われる道路沿道の建物立地状況等を調査し,騒音の評価に必要な情報を評価区間台帳及び地図として整備した。
 自動車騒音調査
 評価区間内の道路に面する地域及び道路後背地において騒音測定を行い,推計計算式により騒音の面的な広がりを把握した。

(5)瀬戸内海の環境保全・創造対策
 瀬戸内海の環境を健全な状態に保全・修復し,優れた資源として後代に継承していくため,基本的な指針となるプラン策定や環境修復技術の研究,地域間連携の強化など瀬戸内海の環境保全・創造に向けた施策を推進した。

1. 広島県瀬戸内海環境保全・創造プラン策定事業
 現存する貴重な自然環境の保全や自然とのふれあいの場の確保,失われた自然環境の修復など,地域の特性に応じた環境の保全・修復に向けた諸施策を,県民・事業者・行政が一体となって推進していくための基本的な指針を策定した。
◎プランの概要
【基本理念】
 貴重な自然環境を守り,残された環境をこれ以上悪化させない。(保全)
 失われた環境をできる限り取り戻し(修復),生物の生息や自然と人との良好な関わりを築く観点から必要な環境を創り出す。(創造)
【必要な施策】
 貴重な自然環境等の保全
 環境修復・創造事業の推進
 環境学習・環境教育,住民参加の促進
 技術開発・モリタニング調査の推進
【現況ベースのゾーニング】
 環境等の現況調査をもとに,27のゾーンを設定
 ゾーン毎に地域の特性に応じた施策の方向性を提示
【施策ベースのゾーニング】
 先導的・モデル的取組を推進するため,宮島など9地域を設定
2.底質改善技術調査研究事業
 平成11年度に引き続き,広島湾・呉湾などの閉鎖性水域の深奥部における深刻な水質汚濁や,生物の生息環境悪化の原因となっている底質(ヘドロ)の改善技術について,経済産業省中国工業技術研究所と共同で研究した。
3.瀬戸内海広域連携推進事業
 沿岸府県市が広域的に連携して,瀬戸内海の環境保全・創造に向けた諸施策を推進するため,「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」に参画し,海砂利採取問題などの共通課題について検討・協議を行った。

(6)廃棄物総合対策
 廃棄物の処理に係る安全性・信頼性を向上させ,生活環境の保全や産業活動の健全な発展を図るため,廃棄物処理体制の整備,適正処理の確保に向けた施策を総合的に推進した。

1.一般廃棄物処理広域化の推進
 ごみ処理施設の集約化を促進するため,各広域ブロック協議会に対し,指導・助言を行う。
2.産業廃棄物対策
 最終処分場の延命化,ダイオキシン類の排出削減,不法投棄の防止のため,産業廃棄物の排出抑制,適正処理を総合的に推進した。
廃棄物排出抑制プランの策定推進
ダイオキシン類排出抑制指導
不法投棄対策
公共関与による新規廃棄物処分場の整備推進
3.生活排水処理対策の推進
 生活排水対策として,合併処理浄化槽の設置整備を促進し,公共用水域の水質保全を図る。
小型合併処理浄化槽設置整備事業補助

(7)生物多様性の保全
1.野生生物の保護対策
 野生生物全般を対象とした体系的な保護対策の推進を図るため,平成3年度から6年度にかけて実施した「広島県緊急に保護を要する野生生物の種の選定調査事業」の調査結果を環境アセスメント等に活用するとともに,ツキノワグマの捕獲個体管理,アビ生息調査事業を実施した。
2.鳥獣の保護対策
 野生生物の保護繁殖を図るため,第8次鳥獣保護事業計画に基づき鳥獣保護区を設定し,良好な鳥獣の生息環境の保全を図った。
3.野生生物の保護思想の普及啓発
 「ゆとりの時間」を利用して自然保護に関係した授業を計画している小学校に,希少野生生物について深い知識を有する専門家を派遣し,児童生徒の野生生物保護意識の形成を図った。
 また,愛鳥週間行事の一環として,ポスター原画募集等を行い,野鳥保護思想の高揚を図った。
4.自然環境保全基礎調査等の実施
平成11年度に引き続き自然環境保全基礎調査を実施した。