戦国武将の中でも極めて人間的であるといわれる毛利元就。
時代の転換期を生きる私たちも、彼の生き方に学ぶことが多いかも知れない。
1月5日、広島国際会議場で開催された「毛利元就フォーラム」での、
NHK大河ドラマ『毛利元就』の
脚本家・内館牧子(うちだて まきこ)さんの発言から、
現代にも通じる元就の魅力を考える。

「毛利元就フォーラム」は、1月5日(日)、広島国際会議場(広島市中区)で開催された。
内館牧子さんのほか、岸田裕之(きしだ ひろし)広島大学教授と
木田幸紀(きだ ゆきのり)大河ドラマ『毛利元就』チーフプロデューサーが
パネリストとして参加。中村橋之助さん、富田靖子(とみた やすこ)さんも会場にかけつけた。
内館牧子(うちだて・まきこ)…昭和23(1948)年秋田県生まれ、東京都で育つ。大手企業のOLとして13年勤務後、脚本家に転身。数々のヒットを飛ばし、人気・実力ともに今、最も注目される脚本家の一人。平成5(1993)年NHK連続テレビ小説『ひらり』で第1回橋田壽賀子(はしだ すがこ)賞を受賞。代表作に『クリスマス・イヴ』『出逢った頃の君でいて』『都合のいい女』など。著書に『切ないOLに捧ぐ』『恋愛レッスン』などがある。
大河ドラマの脚本を書かせていただくことになり、毛利元就について夢中で調べて最も印象的だったのは、家の外ではとても雄々しいのに、家の中では愚痴っぽいこと。そのバランスが非常にいいんです。策略家の智将とされる元就が、家ではほとんど奥さんにひざまくら状態で、「俺は誰からも好かれていない」だの「しょせんこれまでの男だ」と愚痴っている。
今の男たちは家庭に仕事を持ち込まないのは、とても格好いいことだと思っていて、妻の方もそれを誇りにしています。でも、家に仕事を持って帰り、いろんなことを話しあい、時にはぼやき、そこで元気を作って、家を出たとたん雄々しく頑張るのが本当のいい男なのではないでしょうか。元就を知って私の男性観は変わりました(笑)。夫が妻に外のことをしっかりと話し、一緒に考えていくことこそ、バランスのとれたいい夫婦関係なのだと思います。
元就は500年近く昔の人ですが、これは今の人間よりもさらに半歩先をいった生き方ではないかと感動しました。
もう一つ心を動かされたのが、59歳で立ち上がって75歳で死ぬまで疾風怒とうのごとく戦ったことです。軍記物を読むと、厳島合戦の夜は嵐でどうにもならない状況だったのにもかかわらず、「暴風雨こそ人生におけるチャンスである」と敢然と立ち上がり、わずか4千の軍勢で2万の陶晴賢(すえ はるかた)軍を打ち破る。血沸き肉踊る場面で、男の色気を感じます。
59歳というと今なら定年前後です。これから何をしたいかと聞くと、返ってくる答は「妻とのんびり温泉にでもつかりたい」といったものがほとんどでしょう。それもいいでしょうけど、片や「暴風雨でもやるぜ!」ですからね(笑)。75歳で死ぬまで、元就は決して守りに入らなかったんです。
元就には「もうこれでいい」という考えはなかったと思います。71歳を過ぎても子どもが生まれてますし(笑)。「死ぬまでチャンスはいくらでもあるんだ」という気が、元就を調べているとふつふつとわいてきました。自分の年齢でやることを制限せずに、「やりたいときが一番若いんだ!」と考えればいいと思うんです。
元就の後半生は史実を曲げない範囲で、できるだけ膨らませていきたいですね。
安芸の国の一国人(在地豪族)毛利弘元(もうり ひろもと)の二男として生まれた元就は、21歳のとき「西の桶狭間」と称される有田城合戦に勝利し、一躍「安芸に元就あり」といわれるようになった。27歳で毛利の本家を継いだ元就は、50代半ばまでは山口の大内氏と山陰の尼子氏の間で領国を守ることに終始した。中でも尼子氏による元就の本拠、吉田・郡山城攻めと、大内氏に従った出雲侵攻は、元就にとって大きな危機であった。この30年の間に安芸周辺で力を蓄えた元就の最大のターニングポイントが、陶晴賢と対決した厳島合戦である。この戦いをきっかけに、元就は中国地方の有力大名になっていく。
元就だけでなく、あの時代の中国地方には魅力的な武将がいました。質実剛健で戦にたけ、元就にも影響を与えた尼子経久(あまご つねひさ)、山口に『西の京』と称されるほどの文化の華を咲かせた大内義興(おおうち よしおき)…。調べると本当に面白く、資料読みにわれを忘れるほどです。
また、元就の家臣も個性的な人物ぞろいです。まだ大名が絶対権力者として威張っていたわけではなく、内でも外でも同盟関係が非常に大事ですから、みんなきちんと意見を述べ、一筋縄ではいきません。片岡鶴太郎さんが演じる井上元兼など、強力なキャラクターづけをしていきたいですね。
そして、女たちも元気です。トレンディ・ドラマをやってきた私がなぜ大河ドラマを、とよく聞かれるんですが、15〜16世紀は女たちも今と同じように元気だったんです。彼女たちはとてもおおらかでキチンと力をもっており、決して低い地位にいたわけではありません。彼女たちの生き方は現代にもフィットするはずです。「毛利元就」では元気な女たちをたくさん描いていきます。
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