
![]() 平和都市広島市は水の都と呼ばれる。太田川は下流域にかかると6本の川に分かれ、川に架かる橋とともに美しい都市の景観を見せる。原爆ドームのかたわらを流れる元安(もとやす)川の両岸には階段状の親水護岸が続き、春や盛夏には多くの市民が川辺に遊ぶ。すっかり広島市の名物になった遊覧船のリバークルーズも楽しい |
![]() 標高1,339メートルの冠山(かんむりやま)山頂から西側に約 100メートル下った湿地帯に、太田川の源流点がある。ここ吉和(よしわ)村ではその清流を生かしたワサビ栽培が盛んだ。もともと清らかな水と、水温が年間を通じて10度前後であることから栽培に適する地。大正初期から技術改良を重ね、今や村を代表する特産品となった |
![]() 川との対話は、心身の健康に働きかける。建設省では太田川沿いの町、戸河内(とごうち)町にお年寄りや障害者も安心して水に親しめる『まほろば護岸』を整備した。護岸には散歩コースが設定され、緩やかならせん状のスロープの途中にはベンチを備えたフジ棚やテラスなど、しゃれた休憩場所があちこちに点在している |
![]() 最新の設備を整える瀬野川(せのがわ)浄水場(広島市安芸(あき)区)。安芸灘地域島しょ部の水不足を解消するため1971(昭和46)年から整備を進め、現在1日約10万トンの水を処理している。太田川の高陽(こうよう)取水場(広島市安佐北区)から取水し、広島都市圏だけでなく賀茂(かも)地域、竹原地域など県内4市21町に供給する(3点とも) |
![]() 田村龍弘(たむら・たつひろ) 太田川漁業協同組合職員 |
| 吉和村の冠山に源を発し、広島市から瀬戸内海へと注ぐ太田川は、全長 103キロメートル。流域面積は
1、690平方キロメートルにも及ぶ。かつてアユやサツキマス、ヤマメなどさまざまな魚が生息し、川漁も盛んだった。しかし、戦後の高度経済成長期に水質が急に悪化。さらにダムや堰の影響で川と海とを結ぶ生態系が一度は途絶えかけた。 その川も現在、下水道などの整備や周辺住民の努力で清らかさを取り戻しつつある。川漁再生のため、太田川漁業協同組合(広島市安佐北区)では環境保全を働きかけるほか、アユ(年間約 200万匹)とモクズガニ(年間約15万匹)の養殖、放流も行っている。 「なるべく天然ものに近い形で放流できるよう、自然と同じ水温、えさで育てるよう心掛けています」と養殖担当の田村龍弘さん。4〜5月には地元の子どもたちの体験放流も行われる。また、絶滅が危ぶまれるサツキマスの放流を続ける『サルモプロジェクト』など、自然保護グループの活動も盛んだ。 田村さんは仕事のかたわら、太田川に住む魚の生態をレンズを通して追い続けてもいる。水中にビデオカメラを固定し、モニターをにらみながら、ひたすらシャッターチャンスを待つ。サツキマスの産卵シーンは3年をかけて撮影したという。そんな田村さんに、近年うれしい驚きがあった。放流したものではないサツキマスの産卵を撮影できたのだ。 「サツキマスは海へと旅立った後、同じ川をさかのぼって産卵します。放流ものではないサツキマスが産卵しているということは川と海が、再びつながりかけているということなんです」 建設省が太田川を魚の上りやすい川づくりのモデル河川とし、ダムや堰に設けた魚のための通路、魚道が成果を挙げ始めたのだ。 |
![]() メスが産み落とした卵に精子を放つオス |


