【伝統の鍋を楽しむ】
蔵人が生んだ酒都の男料理。
●びしょ鍋 東広島市
銀帝の大将の写真
談笑しながら囲むびしょ鍋は最高。酌み交わす日本酒も進む。アルコール分は熱で飛ぶので、お酒の苦手な人や子どもでも大丈夫。「飲んでる酒を途中で入れてもいいんですよ」などと、大将が作りながら説明してくれた
●取材協力/銀亭 TEL 0824‐23‐3255
 灘(なだ)、伏見(ふしみ)と並ぶ酒どころとして有名な東広島市西条。この地で古くから杜氏(とうじ)や蔵人たちが食べたと伝えられるなべ料理を20数年前に再現したのは『銀亭(ぎんてい)』の大将・井上保人(いのうえやすと)さんだ。「古い杜氏の方にお話を伺うと、酒造りの合間に食べる豪快な男料理があったというんです」。びしょとは酒蔵で働く杜氏や蔵人のことで、作業中に水にぬれたり、汗をかいたりして、びしょびしょになるからだという説がある。かつて男たちは、秋に収穫した野菜や米を蔵に持ち寄り、冬場の酒の仕込みに備えた。ハクサイ、タマネギ、ニンジン、豚肉、鶏肉など、雑多な具をなべに放り込んで酒を注いで煮る。味付けはシンプルに塩だけ。これが意外なほどうまい。「コショウや溶き卵でアレンジすることは簡単ですが、昔ながらの味を守りたいですね」。知名度が上がるにつれ、井上さんは思いを新たにしている。
銀帝の大将井上さん家族の写真
今では年に一度の西条酒まつりでもお目見えする郷土の味、びしょ鍋。手軽な料理なので「ご家庭でもぜひ作ってほしい。それが本当の普及だから」と井上さん


村上水軍直伝の豪快な海鮮なべ。
●水軍鍋 因島市
村上水軍直伝の豪快な海鮮なべ。
なべのふたを取るとかんぴょうの鉢巻きをしたタコが丸ごと1匹飛び出してくるので、びっくりするお客さんも多いとか
●取材協力/いんのしまシーサイドホテル TEL 08452‐2‐2525
 水軍鍋は、戦国時代の瀬戸内海の覇者、村上水軍が出陣の前夜、海辺でかがり火をたいて食していたというなべ料理に、現代的なアレンジを加えて再現したもので、因島市内の多くの宿泊施設で味わえる。「八方の敵を食う」のたとえから、水軍の武者たちがなべの中に必ず入れていたというタコを中心に、カキやアナゴ、イカや白身魚など、旬の魚介類や海草をふんだんに盛り込む。
 また、酒盛りが終わるとなべの中に麦飯を入れて食べていたという言い伝えから、米ではなく麦を使って雑炊にする。麦独特の臭いが消え、とても食べやすい。水軍直伝の豪快なイメージとヘルシーさとの同居がおもしろい。
村上水軍のかぶとをかたどったふたも勇壮な水軍鍋
村上水軍のかぶとをかたどったふたも勇壮な水軍鍋は、『いんのしまシーサイドホテル』『いんのしまロッジ』『ホテルみやじま』などで食べることができる(要予約)

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