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企業における仕事と介護の両立推進について ~介護離職を防止する仕事と介護の両立推進モデル~

印刷用ページを表示する掲載日2016年8月19日

はじめに

 団塊世代が75歳を迎える2025年頃には,要介護・要支援となる者が増えることで,40代・50代の団塊世代ジュニアに,介護問題を抱える者の更なる増加が予想され,介護を担うことになる社員の介護離職が懸念されています。
 介護離職は企業にとって,深刻な人材損失につながることから,企業には介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援に取り組むことが求められています。
 そこで,広島県では,平成26年から平成27年にかけて,社員の介護離職を防止し,企業にとって貴重な戦力である40代,50代社員の定着率を向上させることを目的とした「仕事と介護の両立推進事業」を実施しました。
 この事業結果をふまえ,今回「介護離職を防止する仕事と介護の両立推進モデル」を作成しましたので,企業が仕事と介護の両立推進に取り組まれる時の御参考にしてください。

仕事と介護の両立支援に対する課題

 企業が仕事と介護の両立支援に取り組む上で課題となる要因の一つに,今後,介護問題を抱える社員が大幅に増えることが予想されるにもかかわらず,企業における社員に対する介護の実態把握ができていないことがあります。
 「当社は介護を理由に離職する社員がいないから問題がない」,「介護休業等制度を利用する社員がいないから問題がない」,本当にそうなのでしょうか。
 実は,介護休業等制度を知らずに親の介護をしながら悩んでいる社員がいるかもしれません。相談したいけれどできない雰囲気が職場にあるかもしれません。また,社員から相談を受ける管理職の介護に対する認識不足も考えられます。
 そういった「見えていない課題」が企業内にあることが,介護離職の原因の一つとなっており,「見えていない課題」を「見える化(実態把握)」することで企業と社員の認識の違い(課題)が見え,その課題を解決することが企業における仕事と介護の両立支援につながっていきます。
課題

介護離職を防止する仕事と介護の両立推進モデル

 仕事と介護の両立支援を進めていく上で重要なのは,単に,介護休業制度を整備し,就業規則に規定して終わりではなく,社員の介護の実態をいかに把握し,そこから抽出された課題に対して適切な改善策をいかに実行していくかです。
 そうした基本的な進め方を実施していくことで,企業における仕事と介護の両立が実現でき,結果,社員の介護離職の防止につながっていきます。
 次は,「介護離職を防止する仕事と介護の両立推進モデル」について,御説明します。

モデル図

 上の「モデル図」にもあるとおり,企業が取り組むべき社員に対する仕事と介護の両立支援の内容は,次の五つです。

(1) 実態把握

 社員に対して仕事と介護の両立を支援するためには,企業における介護制度等の整備状況や社員が抱える介護の問題などを確認することが必要です。
 また,実態把握のためのアンケートやヒアリングの実施は,仕事と介護の両立を支援するという企業の意思を示すことにもつながり,従業員が介護について職場で話すきっかけづくりにもなります。
※ 別紙「事業者向けヒアリングシート」,「従業員向けアンケート」参照。

(2) 課題の認識・分析

 実態把握(アンケート等)の結果から自社の課題を抽出し,課題に対する改善策を検討します。
 企業が「育児・介護休業法」に定められている介護休業制度等を整備することは最低限の取組です。課題の抽出にあたっては,1:法定の基準を満たしているか,2:仕事と介護の支援制度が社員に周知されているか,3:自社の制度が社員のニーズに対応しているか,などを確認する必要があります。
 課題を抽出した後,課題に対する改善策を検討します。課題に対する具体的な改善策については,下記のダウンロード「企業における仕事と介護の両立推進について」に記載していますので,御確認ください。

(3) 改善策の実行

 改善策としては,相談窓口の設置や介護制度の導入・見直し,ハンドブックの作成などがありますが,介護は育児と違い介護する時期を予測することが難しいため,社員が介護に直面する前から,介護休業制度等の整備や情報提供などの支援を行うことが重要です。
 具体的な取組としては,次のようなことが考えられます。

ア 介護休業制度等の整備
 育児・介護休業法により,仕事と介護の両立のための制度として,介護休業・介護休暇などが定められており,就業規則にも定められているか確認する必要があります。
 就業規則に定められている場合でも,制度の対象者や対象家族の範囲,休業などの期間・回数などが法定基準を満たしているか確認し,満たしていない場合には至急対応しなければなりません。

イ 情報提供・周知
 社員に対する主な支援内容は,自社の支援制度や公的な介護保険制度の内容・活用方法などについて,情報提供することが基本となりますが,要介護者が必要とする介護は多様で個別性が高いため,企業が個々の社員に対して,具体的な支援策をその時々に応じて個別に提供することは難しいのが現状です。
 そこで,介護保険サービスの利用方法や地域包括支援センターの情報等を掲載した「従業員向けハンドブック」の作成・配布,また,「従業員向け研修」を実施することで,社員自身が介護についての事前準備を行えるよう支援する必要があります。
 ※ 別紙「仕事と介護の両立ハンドブック」参照。

ウ 相談対応
 相談窓口を設置しても,対応する管理職等が部下からの介護の相談への対応方法がわからなければ意味がありません。
 そこで,介護に直面した社員からの相談に対する基本的な対応方法等を掲載した「相談対応マニュアル」の作成・配布,また,「管理者向け研修」を実施することで,管理職に対しても仕事と介護の両立支援に向けた意識づけを行う必要があります。
 ※ 別紙「管理職用 仕事と介護の両立相談対応マニュアル」参照。

エ 働き方改革
 残業時間が多いとか,有給休暇が取得できないとかの課題がある場合は,社員の働き方を見直す必要があります。
 時間や場所にとらわれない多様な働き方ができる職場は,介護をする社員が離職せずに働き続けられる職場でもあります。そのためには,仕事に意欲的に取り組めるような働き方を実現できる職場環境の整備が重要となります。

(4) 職場環境づくり

 上司や管理職が部下の介護問題に気づくことは困難ですが,介護について話しやすい職場であれば,介護に悩む社員から事前に相談があり,介護離職を防げるかもしれません。
 そこで,介護制度に関する研修だけでなく,ワークライフバランス(仕事と生活の両立)の実現などの社内研修も実施し,管理職や社員の意識変革を図っていき,介護について話し合える職場環境にしていく必要があります。
 また,経営者自らが社内に宣言等を発信することにより,企業として「仕事と介護の両立」に本気で取り組んでいることを積極的に社員に伝えることも職場環境づくりには重要です。

(5) 振り返り

 仕事と介護の両立を実現していくためには,取組を実施して終わりということではなく,追加した介護制度の利用状況や社員の満足度など,実施した取組がうまく活用されているかを精査し,その取組に対して課題があれば修正,そして運用していくという振り返りが重要です。
 また,社員に対する実態把握についても,今年と来年では社員の実情が変わることも予想されます。時期をみて再確認していくことが,より社員の望みに近い,仕事と介護の両立支援につながっていきます。

おわりに

 仕事と介護の両立推進に取り組む上で,社員の介護の実態を企業が把握することはとても重要ですが,把握できている企業はわずかです。実態把握することで課題が見え,課題から改善策が分かります。
 社員の介護離職を防止する上でも,この「介護離職を防止する仕事と介護の両立推進モデル」を御活用していただき,「企業における仕事と介護の両立推進」の取組を始めてみてください。

各資料のダウンロード

企業における仕事と介護の両立推進について (PDFファイル)(6.03MB)
事業者向けヒアリングシート (Excelファイル)(24KB)
従業員向けアンケート (Excelファイル)(24KB)
仕事と介護の両立ハンドブック (その他のファイル)(4.53MB)
管理職用 仕事と介護の両立相談対応マニュアル (その他のファイル)(1.14MB)
「仕事と介護の両立推進事業」事業報告書 (PDFファイル)(2.84MB)

お役立ち情報

(1) 各種情報サイト
 ア  仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~  (厚生労働省)  →  こちらをクリックしてください
 イ  仕事と介護の両立支援  (厚生労働省)  →  こちらをクリックしてください
 ウ  働き方・休み方改善ポータルサイト  (厚生労働省)  →  こちらをクリックしてください
 オ  ワーク・ライフ・バランス  (広島県)  →  こちらをクリックしてください
 カ 仕事と介護の両立できる職場環境を目指して → こちらをクリックしてください
 キ  地域包括支援センター  (広島県)  →  こちらをクリックしてください

(2) 融資,給付金,助成金
 ア  労働支援融資(働き方改革・女性活躍推進資金)  (広島県)  →  こちらをクリックしてください
 イ  介護休業給付金  (厚生労働省)  →  こちらをクリックしてください
 ウ  両立支援等助成金 (厚生労働省)  →  こちらをクリックしてください

※ 各種情報サイトや融資などは,現時点(平成30年度)での情報です。場合によっては,内容等が変更していることもありますのでご了承ください。

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