このページの本文へ
ページの先頭です。

食品工業技術センター 研究報告 第22号

印刷用ページを表示する掲載日2012年4月17日

食品工業技術センター研究開発・成果>研究報告 第22号


第22号 平成12年(2000)

ちぎりこんにゃくの品質に及ぼすレトルト条件の影響

 新しく開発したちぎりこんにゃく切断機で製造したちぎりこんにゃくを使用してレトルトちぎりこんにゃくを関発することにより以下のことが判明した。

  1.  一枚の枕こんにゃくから直方体のちぎりこんにゃくを490個調製した。これらのちぎり面の構成は1および2面は0個,3面は8個,4面は72個,5面は210個,6面は200個であった。
  2. ちぎりこんにゃくの加熱殺菌時間は105℃では230分,110℃では81分,115℃では32分,120℃では16分であった。
  3. ちぎり面の増大につれて,ちぎりこんにゃくにしみ込む食塩量は増加し,pHは低下する傾向であった。ちぎり面が6面の場合は,0面の場合と比べて,食塩量が0.2~0.4%増加し,pHが0.4~0.5低下した.このことから,ちぎり面の数が増大するにつれ,味がしみ込みやすくなることが示唆された。
  4. レトルト時間が増加するにつれて,ちぎりこんにゃくにしみ込む食塩量の増加は0~0.2%と小さかったが,pHの低下は 0.4~0.7と大きかった。
  5. レトルトちぎりこんにゃくの保存試験を行ったところ,37℃,12日貯蔵後もフィルムが膨張せず,内容物も漏洩せず,官能的にも腐敗を認めなかった。このことから,レトルト加熱条件は120℃・20分間で十分であった。
  6. 官能検査の結果,レトルト時間が長くなるとレトルトちぎりこんにゃくの色は濃くなるが,味のしみ込み,硬さ,味,外観,嗜好が向上した。また,ちぎり面の数が増大するとレトルトちぎりこんにゃくの外観は悪くなるが,味のしみ込み,硬さ,色,嗜好が向上した。
  7. 以上,新しく開発したちぎりこんにゃく切断機で製造したちぎりこんにゃくをレトルト処理することにより,味のしみ込み が良く保存性も良いレトルトちぎりこんにゃくを開発することができた。製造コストを考慮すると,実用的なレトルト条件 は120℃・20分間が適当であることがわかった。また,いずれのちぎり面の数のちぎりこんにゃくを使用しても良いと考 えられた。

昆布佃煮の変敗に及ぼす水分活性,初発酵母菌数及び貯蔵温度の影響

  1. 変敗した市販昆布佃煮から原因菌を分離し,同定したところ,酵母の一種である,Zygosccharomyces rouxiiと推定された。本酵母は水分活性が0.79の培地でも生育可能であり,耐浸透圧性の高い醇母であった。
  2. 市販されている5杜9品の佃煮を分析した結果,水分活性は0.81~0.95,水分は44.8~64.6%,塩分は1.9~7.4%,pHは4.66~5.56であった。また,これらの佃煮に分離酵母を接種したところ水分活性が0.81の佃煮であっても変敗した。
  3. 昆布佃煮の水分活性と初発酵母数の関係を調べた結果,佃煮の変敗までに要する日数と初発酵母数の対数値は直線関係があった.また,貯蔵温度を30℃にしたとき,水分活性が0.80より高い場合は,酵母の接種量が10CFU/g程度であっても変敗した。貯蔵温度を20℃にしたとき,30℃と比べ若干変敗までの日数が伸びたが,顕著な効果は見られなかった。一方,貯蔵温度を10℃まで下げると,水分活性0.87においても初発酵母数が10CFU/g以下なら佃煮の変敗は1か月間防止できることがわかった。

清酒もろみにおける多収穫米「アケノホシ」の溶解に対する市販酵素剤の効果

 多収穫品種「アケノホシ」の蒸米の清酒もろみ中での溶解性の向上を目的に,白米浸漬時における各種市販酵素剤の添加効果および蒸米の消化性試験へのそれらの添加効果に対し,国税庁所定分析法注解による消化性試験法を若干改変して検討を行い,最終的に総米1kg規模の仕込試験で確認を行った。

  1. 「アケノホシ」と「中生新千本」の白米(精米歩合 70%)の米粒と米粉を用いて消化性試験を行った結果,米粒では,
    両者に大きな違いが生じたが,米粉では,ほぼ同程度の値となり,2品種の米粒中の胚乳細胞およびその配列の状態は,大きく異なることが考えられた。
  2. 種々の市販酵素剤を用いた高温浸漬処理後の「アケノホシ」の白米に対する消化性試験では,「ニューラーゼF」と「ヘミセルラーゼ」で効果が観られた。
  3. 「アケノホシ」の白米を用いた消化性試験における種々酵素剤の併用効果は,「ニューラーゼF」と「グルターゼS」で認
    められた。
  4. 高温浸漬処理および市販酵素剤の併用による消化性試験で効果の認められたこそ剤を用いて小仕込試験を行った
    結果,「ニューラーゼF」,「ヘミセルラーゼ」および「グルターゼS」をそれぞれ,総米重量の1/3000ずつもろみに添加し
    た試験区が最も大きな効果が認められた。

スケトウダラ魚肉ゲルの品質に及ぼす豚プラズマの影響

 物性測定の結果,魚肉ゲルへの豚プラズマの添加により,破断強度はほぼ直線的に増加するのに対し,凹みの大きさは添加量2%で最大値に達した。また,官能検査結果から豚プラズマを添加した魚肉ゲルの食感は3%までかまぼこ様の食感を保つことが示された。これらの結果から,魚肉ゲルへの豚プラズマの添加は魚肉ゲルの弾力を増加させるが,添加量2~3%の付近で魚肉ゲルの物理化学的性状に変化を引き起こし,それに付随して食感を変化させると考えられた。

コンニャクマンナンのゲル形成に及ぼす天然多糖類の影響

 コンニャクマンマン(KM)のゲル形成に及ぼす天然多糖類の影響についてアミログラフによる粘度測定およびレオメーターによるゲル強度の測定により検討した。

  1. KMのゲル形成に及ぼす天然多糖類(カラギーナン,プルラン,ローカストビーンガム,アルギン酸ナトリウム,グァー
    ガム)の影響を混合多糖濃度1%溶液に凝固剤(リン酸三ナトリウム)10.5mM添加前後におけるアミログラフのBU値
    の変化で調べた。その結果,ローカストビーンガムに相互作用が,カラギーナンとアルギン酸ナトリウムにゲル形成阻害作用が認められた。
  2. KMと多糖類との比率を1:1に混合した4%濃度のゲルの性状を調べた結果,ゲル強度と粘度を指標としたゲル形成能の傾向とは良く一致し,KMとローカストビーンガムの相互作用が確認された。

佃煮変敗かびに対する香辛料および精油成分の抗菌性

 佃煮変敗かびに対する香辛料および精油成分の抗菌性を調べた。

  1. pH4.5~6.5.塩化ナトリウム濃度0~2Mに調整した香辛料添加培地上でのAspergillus sp. の発育に対して,オールスパイス,シナモンおよびクローブはpHや塩化ナトリウム濃度の変化に関わりなく顕著な抗菌効果を示した。
  2. 香辛料精油成分のエタノール溶液蒸気による抗菌性は,Aspergillus sp.に対してサリチルアルデヒドが最も効果が大きく(50倍),次いでチモールおよびフルフラール(25倍),オイゲノール(10倍)などであった。Penicillium sp.に対してサリチルアルデヒド(40倍),チモール(20倍),カルバクロール(10倍)の順であった。Cladosporium sp.に対してチモール,サリチルアルデヒド,フルフラール,シンナムアルデヒドおよびカルバクロール(30倍),イソボルネオールおよびオイゲノール(15倍)の順であった。

レトルトパウチ食品からの変敗菌の分離とその胞子の耐熱性

 変敗したレトルトパウチ食品から変敗菌を分離し,同定を行った。その結果,Bacillus coagulansによる変敗が3件あった。また,菌が増殖したにもかかわらず製品の品貿変化が官能的に認められないものもあった。この原因菌はBacillusに属した。これらの菌は,いずれも耐熱性が強かった。次に,ガスを発生し糞便臭を伴った変敗では,Clostridium属の菌が分離された。変敗した5品目中3品目について,乾燥キノコに付着した耐熱性菌が製品中に移行したためと推定された。

ダウンロード

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)

おすすめコンテンツ

みなさんの声を聞かせてください

満足度 この記事の内容に満足はできましたか? 
容易度 この記事は容易に見つけられましたか?