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食品工業技術センター 研究報告 第19号

印刷用ページを表示する掲載日2012年4月17日

食品工業技術センター研究開発・成果>研究報告 第19号


第19号 平成元年(1989)

南極産オキアミ塩辛の熟成に及ぼす食塩,添加物,温度およびpHの影響

 オキアミ塩辛の熟成に及ぼす食塩,プロテアーゼ阻害剤としての添加物,熟成温度およびpHの影響について検討した。

  1. 食塩は,オキアミ塩辛の熟成を著しく抑制した。用塩量を10,20,30%とした場合の熟成速度恒数(NP-N量を指標)の比は,100:52:39であった。用塩量が20%以上になると,微生物は熟成にはほとんど関与しなかった。
  2. オキアミプロテアーゼの阻害剤とされている添加物は,期待したほど塩辛の熟成を抑制しなかった。
  3. オキアミ塩辛の熟成至適温度は,40℃付近であった。熟成の温度係数Q10は,20~40℃では1.7,40~50℃では0.8であった。50℃で貯蔵した塩辛の熟成に対する微生物の関与はわずかであった。
  4. pH5.1および6.4の塩辛の熟成速度恒数( NP-N量を指標)は,対照区を100とするとそれぞれ71,100 であった。pH5.1の塩辛の熟成に対する微生物の関与はほとんどなかった。

スチレン-ジビニルベンゼン系吸着樹脂およびアクリル系吸着樹脂によるナリンギン吸着

 スチレン-DVB系吸着樹脂(HP-21,S-861,S-865,Kogel-B),アクリル系吸着樹脂(XAD-7)によるナリンギンの吸着特性および晩柑果汁中のナリンギン吸着効果を検討した。

  1. ナリンギン-ショ糖-クエン酸のモデル系を用いてナリンギンの吸着速度を調べた結果,約90分で平衡に達することが認められた。この時のナリンギンの吸着量は130~165mg/g-吸着剤であった。
  2. ナリンギンの吸着に及ぼすpHの影響は,pH2.8~3.6の範囲内では認められなかった。
  3. ナリンギンの吸着に及ぼすショ糖の影響は,ショ糖の濃度が高くなるにつれて減少する傾向が認められた。
  4. ナリンギンの吸着量と平衡濃度との関係を調べた結果,吸着等温線はFreundlich型であった。
  5. 晩柑果汁中のナリンギンの吸着量は,モデル溶液のそれに比べ,ハッサク果汁で37~50%,夏ミカン果汁で27~46%低かった。
  6. 吸着樹脂による果汁中のJAS成分の吸着は認められなかった。
  7. 吸着ナリンギンのアセトン処理による回収率は98~102%であった。

酵母細胞壁溶解酵素による白味噌の防湧

 酵母細胞壁溶解酵素(LE)による白味噌の防湧効果について検討した。

  1. LEで処理を行った酵母の糖消費率は無処理のものより10~15%低く推移した。
  2. LEを0.05~0.3%添加した白味噌中の酵母数の変化は初期の4日間は若干減少し,その後増加に転じた。しかし,保存期間を通じて添加区の菌数は無添加区の菌数以上に増加することはなかった。
  3. LE添加を行った白味噌は30℃,30日間の保存試験でわずかな容量変化しか認められなかった。
  4. 実際規模である200kg仕込み試験においてLEを0.1%添加した場合,湧きは認められず,酵母も検出されなかった。

ネーブルオレンジ,夏ミカン,ハッサク果実ピューレーの調製

 ネーブルオレンジ,夏ミカン,ハッサク等の晩柑果実の新規利用を目的として,風味,色調を生かしたフルーツソース,飲料等全果系製品の原型となるピューレーの調整方法を検討した。酵素剤(セルラーゼ等)を用いて,ネーブルオレンジ,夏ミカンおよびハッサクからそれぞれ特徴あるピューレーを高収率で調製できることが分かった。これらのピューレーはフルーツソース,飲料製造等の素材として利用できると考えられた。

ゆばの引張り強度と膜厚に及ぼす製造条件の影響

 合理的なゆば製造条件を設定する際の基本的な資料を得る目的で,ゆばの品質,特に「引っ張り強度」と「膜厚」に影響を及ぼす2,3の因子を取り上げ検討した。膜厚は,加熱時間5分以上でほぼ一定になった。一方,引っ張り強度は5分間加熱した場合最大になることが認められた。膜厚は,豆乳の固形分濃度が増すにつれて増大することが認められたが,ゆばの収率に関与する原料大豆からの豆乳中への固形分抽出率が著しく低下した。豆乳のpH6.0および8.0以上において膜厚がやや小さくなったが,引っ張り強度はpH6.0~9.0で顕著な差が認められなかった。ゆば生成時の豆乳温度90℃以下で引っ張り強度がほぼ一定であった。膜厚は75℃の時に最大であった。

 ポテトサラダ及び金平ごぼう市販品の性状と貯蔵中の変化

 製造工程中の微生物管理の検討資料とするため,ポテトサラダ,金平ごぼうの市販品の性状及び貯蔵中の変化を調べた。ポテトサラダ市販品20種類,金平ごぼう市販品14種類の性状と貯蔵中の変化について調べた結果,製造工程中及び流通経路の貯蔵温度管理に注意を払う必要があることが分かった。そのため,原料の洗浄・減菌,加熱,pH調節,天然系保存料の利用,製造機械の洗浄・殺菌などの方策で保存性の向上を計る必要があると考えられる。

干しのりの色素の光分解に及ぼす水分とL-アスコルビン酸の影響

 干しのりには,各種ビタミンやアミノ酸,有機酸等が含まれており,こうした成分が色素の光分解に影響していると考えられ,これらの成分の中からL-アスコルビン酸の影響について検討した。干しのりの中のカロチノイドやクロロフィルの光分解に対して,その中に含まれいる水分やL-アスコルビン酸が関与していることが示唆された。

昆布佃煮と大豆煮豆に対するグリセリン脂肪酸エステル-グリシン混合製剤の保存効果

 昆布佃煮と大豆煮豆に対する市販のグリセリン脂肪酸エステル-グリシン混合製剤の保存効果を検討した。混合製剤には,0.5%濃度で,昆布佃煮に対してソルビン酸と同等の防カビ効果が,大豆煮豆に対しては無添加の場合の3倍以上の保存効果があることがわかった。

昆布佃煮に対するステビア抽出物製剤の適合性

 昆布佃煮の性状に対するステビア甘味料の影響や適合性について検討した。昆布佃煮のような濃厚な味のものにステビア甘味料を添加する場合,使用されるショ糖の30%をステビア甘味料に置換しても甘味度およびおいしさについて問題はないと思われる。ただし,今回の試験で行った製造条件では,ステビア甘味料を添加した昆布佃煮は,対照の昆布佃煮に比べて歩留まりの大きい,水分含量の多い,そして若干テクスチャーの柔らかいものができた。実際の製造現場ではこれらのことを考慮する必要がある。

 

 

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