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浅尾 省五さん(動物写真家)

印刷用ページを表示する掲載日2015年12月26日

浅尾さん  

人と自然が共存できる距離感。
教えてくれたのは、故郷ひろしまの里山の人たちと動物。

 <プロフィール>
 浅尾 省五(あさお しょうご)さん
   

     廿日市生まれ。動物写真家・田中光常に師事。
     助手を務めた後、1973年から2年間の長期海外勤務を契機に野生動物の撮影をはじめる。
     年間のおよそ半分を海外取材に費やし、新聞、雑誌等多方面に作品を発表中。
     自然相手の撮影が多い中「とっても雨男、私が移動する時には必ず雨が降る」とか。

<インタビューの映像(概要)はこちら!>

動物写真への世界へと導いた、
ひろしまの自然。

 生まれ育ったのは廿日市市浅原。家の前には瀬戸内海に注ぐ小瀬川があり、裏には山があり、そこにはムササビやリス、サル、イノシシが暮らす。そんな環境が身の回りにあったので、いつも自然の中で遊び思うがまま生きてきたと思います。

最初に写真を撮ったのは中学2年生の時。秋の運動会で知り合いから突然カメラを渡され、「仮装行列を撮ってきてくれ」と。一応何枚か撮ったのですが、後日仕上がったプリントはブレブレ、ピンぼけの大失敗。みんなから非難ごうごう。それがまた悔しくて何とか挽回したいと思いアルバイトをして小さなカメラを買ったんです。それでいろいろ撮りはじめると写真が面白くなった。
最初にコンテストで入賞したのは、小さなどんぐりを写した写真です。みんなが見落とすような小さな花やアリを、地面をはいつくばって必死に撮っていましたね。

上京した後、写真の師匠である田中光常さん(日本の動物写真の先駆者)のカメラ雑誌の連載で“日本の野生動物の中で、今、イノシシがどうしても撮れない”という記事を目にしました。そこで私は、“私の田舎の広島に行けばいくらでも撮れますよ!”というハガキを送り、役所で働く叔父を紹介しました。
田中さんはすぐに広島の叔父を訪ねられイノシシに挑戦されました。しかし、実家周辺で1か月間粘られましたがイノシシを撮れなかったのです。その話を後から聞いて、私は“えらい申し訳ないことをしてしまったな”という後悔の念を抱きました。なんとか恩返しをしなければと考え、私の専門の電子技術を生かして田中さんと共に、人がいなくても撮影できる自動撮影装置を作ったんです。

もともと自然の中で生きてきた人間なので、“自然の中で出来る仕事をしたい”と思うようになり、遂に写真の道に入ったのです。それも動物の写真!まあ、すべては私の生まれ育った故郷の自然が絡んでいるのですが。

野生動物の本当の姿、原風景を見たい。
その一心で世界を巡る。

 オランウータン昭和50(1975)年、初めてのアフリカ2年間の滞在を機に野生動物の撮影を始めました。
あれから40年。訪れた国は54カ国。地球上には知らない所がいっぱい!「知らないものを見てみたい」「知らない場所に行ってみたい」そんな思いが人一倍強く、まだ見ぬ土地や動物との出会いにこだわるようになります。動物園ではなく動物が本当に住んでいる現地に出向いてその環境を見る。運が良ければいい写真におさめたい。原風景というか本当の野生の姿を見たい。これが私の活動の一番ベースにあるんです。

1年の半分は野生動物を追い求めて海外にいるので、たまにひろしまへ帰るとホッとしますね。
海外で取材中に、「私のホームタウンはひろしまだ」と伝えると、“あぁひろしまか!”と世界中に知られているので誇りに思っています。やはり世界で一目置かれているんですね。日本には東京・大阪・京都など様々な都市がありますが、ひろしまはそういう意味(平和を発信する都市)でも世界各地でよく知られている場所なんだと誇らしく思います。だから私の心は、世界を巡りながらも、「ひろしま」に向いています

 人と自然が共存する里山が、
 ひろしまには今も残っています。

  6年前、ニュースで偶然、県北の里山に人に近寄ってくるキジがいることを知りました。早速会いに行ったのですが、キジのケンちゃん地元の人の傍にいたキジは、私が近づくと逃げていくのです。それが寂しくて、機会ある毎に訪ねました。私はそのキジを勝手にケンちゃんと名付け「ケンちゃーん」と呼びかけながら何度もアプローチを続けました。
4年が過ぎた頃、同じように近づいても逃げないんです。「あれ?今日はどうしたんだろう」と思いながら近づいていっても全然逃げない。触れるほど近づけた!それまでは、大きな望遠レンズで遠くから撮るという状態だったので、その時は本当に胸がはちきれるほど嬉しかったですね。

その地域で暮らす人たちは、動物を特に手厚く保護するわけでもなく、餌をあげたりするわけでもなく、特別なことはしない。あるがままの自然、その環境を大切にしようと実践する人たちがいる、それが嬉しいですね。そのおかげでキジたちの生活環境も保たれ、捕獲されることなく人里で無事に何年も生きていられるんです。自然の中に生きる動物をそのまま静かに見守るという感覚を持つ人が増えることを願っています。

皆さんの身近にある小さな自然。
見つめてみませんか?

 ひろしまに車で帰る時には、私は山陽道ではなく中国道を走ります。曲線が多く距離は長いですけど、スピードを落としてのんびりゆっくり、周りの景色を楽しみながら帰ってきます。春には木々の芽吹いた新緑がとても綺麗で、初夏になると水を張った田んぼの稲がすくすくと育っている。夏になると沢山の花が咲いて緑が濃くなり、秋になると紅葉・・・これが最高ですね。そして冬は雪景色。沿道には自然を慈しむ人たちが植えた花もあります。

 ひろしまに暮らす皆さんの身の回りにも、たくさんの素敵なところがあるのでは?有名な所でなくとも、草一本、樹一本あるだけで「あぁ良かった」という光景がいっぱいあると思うんです。そんな小さな自然を見つめてみるのも楽しいですよ!私にとってひろしまは心の故郷であり、本当の故郷でもあります。また、それ以上に、ひろしまでこの大切な自然を大事に守っている里山の人たちの存在こそが私の誇りなのです。


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