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令和5年広島県議会6月定例会(令和5年6月23日)

印刷用ページを表示する掲載日2023年7月4日

追加議案(令和5年7月4日)はこちら

知事説明要旨

6月定例県議会の開会に当たり、ただいま提出いたしました議案の説明に先立ちまして、本県を取り巻く情勢及び本年度主要施策の取組状況について、御報告いたします。

1.本県を取り巻く情勢と認識

はじめに、先月、本県で開催された「G7広島サミット」について、その概要に加え、開催期間を中心とした「広島サミット県民会議」の取組、更には、広島サミットの成果を踏まえた今後の取組の方向性などについて、御説明いたします。

5月19日から21日の日程で開催されたG7広島サミットは、G7各国及び欧州連合の首脳が参加されるとともに、いわゆるグローバルサウスの中核であるインドやブラジル、インドネシア、また、オーストラリア、韓国、ベトナムなどの8カ国、さらに、国連や世界銀行など7つの機関が招待されて、各種プログラムが行われました。

サミットの開催に当たりましては、安全・安心かつ円滑に各プログラムが実施されることが何より重要であると考え、要人警護を行うための警備体制の構築やインフラの整備など、地元自治体の責務として、その対応に万全を期してまいりました。

また、交通規制による一般交通への影響を最小限に抑えるため、昨年12月以降、県民や事業者の皆様に、交通総量の抑制に向けた取組について御協力をお願いしたところ、多くの皆様により、自主的に様々な対応をしていただきました。

具体的には、学校の休業や保育園等の休園、企業活動の休止や業務の見直しのほか、休暇・テレワークの促進による出勤者の抑制、また行事・催事の日程変更など、多くの御協力をいただきましたが、これらは県民・市民の皆様にとって、多大なる御負担と御不便であったものと考えております。

こうした皆様お一人お一人の御理解と御協力をいただいた結果、県内の高速道路及び広島市中心部の一般道路の交通量は、50%削減の目標に対して、53.8%の削減となり、安全・安心で円滑なサミットの開催が実現できたものと受け止めております。

改めて、県民・市民及び事業者の皆様方の御協力に対しまして、深く感謝を申し上げます。

また、サミットの開催に当たっては、全国から多くの警察官が本県に派遣され、その規模は、前回の伊勢志摩サミットを上回る、最大時約2万4千人の警備態勢が敷かれました。

要人警護のみならず、安全安心な県民生活の確保のために、昼夜にわたって、警戒警備に当たっていただいた警察関係者の皆様をはじめ、海上の警備を担っていただいた海上保安庁の皆様、更には、緊急時に備えた危機管理体制を担っていただいた医療や保健、消防・救急、並びに自衛隊など多くの方々に支えられたことで、事故なくサミットの全日程を終えることができたものであり、全ての関係者の皆様方に、深く敬意を表しますとともに、厚くお礼申し上げます。

さて、人類史上初めての被爆地であり、かつ目覚ましい復興を成し遂げた、ここ広島の地において、G7各国の首脳が、平和をはじめとした様々な地球規模の課題を議論していただく意義は大きいと考え、令和3年11月、県、広島市及び広島商工会議所の三者で、首脳会議の誘致を表明し、国に対する要望活動を積極的に展開してまいりました。

こうした中、昨年5月、岸田総理から「広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はない」として、G7サミットの広島開催が発表されたところでございます。

これを受けまして、7月には、オール広島で開催準備を進めていくため、官民連携の組織となる県民会議を立ち上げ、全力で取組を進めてまいりました。

その一方で、国際社会に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵略が1年以上続くとともに、核兵器による威嚇、また北朝鮮による度重なるミサイル発射など、国際情勢が一段と厳しさを増していく状況となり、広島でのサミット開催の意義が、一層高まっていったものと認識しております。

こうした中で開催された広島サミットでは、「平和の回復と維持」が重要テーマとなり、サミットのテーマと開催地が持つメッセージが一致した歴史的なサミットとなりました。

また、県民会議から強く要望を行ってきた、各国の首脳等に被爆の実相に触れていただくことについても実現したところでございます。

具体的には、招待国などを含む各国首脳が平和記念公園を訪れ、資料館を見学されるとともに、被爆者との対話、芳名録への記帳、慰霊碑への献花、更にはG7首脳による植樹も行われました。

これらはいずれも、核兵器の非人道性に加え、平和を回復し、維持していくことの必要性を世界中の人々に改めて認識していただく上で、大変意義深いことであったと考えております。

また、急遽、広島サミットに参加されることとなったウクライナのゼレンスキー大統領も、平和記念公園を訪問されるとともに、その後行われた会見では、ウクライナと広島の姿を重ねた上で、ウクライナの復興を成し遂げる決意が示されました。

今回、核兵器国を含むG7メンバー国のみならず、核保有国であるインドも含む招待国、招待機関のリーダー達が、資料館を見学し、被爆者の証言を聴き、慰霊碑へ献花されたことは、世界に大きなインパクトを与え、世界平和の実現に向けた力強いメッセージとなりました。

こうした平和のメッセージが発信されたことは、広島県民はもとより、世界中の人々に平和の大切さを身近に感じ、分断と対立ではなく協調の重要性、更には、「核兵器のない平和な世界」を目指す機運を高める契機になるものと考えております。

次に、広島サミットでは、本県が持つ様々な魅力が発信されました。

まず、G7首脳及びパートナーのプログラムとして、宮島訪問が実現したところでございます。

首脳等の宮島訪問に当たりましては、廿日市市の全面的な御協力の下、ハード・ソフト両面から環境整備に取り組んでまいりました。

こうした中、宮島にお住まいの皆様や、観光関連事業者をはじめとした多くの皆様には、首脳等の訪問の実現に向けて、入島時における識別の実施、商店や宿泊施設の休業・予約の停止、またフェリーの減便など、多大な御負担をお掛けいたしましたが、御理解と御協力をいただきましたことに改めて厚く感謝を申し上げます。

G7首脳が宮島を訪れた日を振り返りますと、雨に見舞われたサミット初日でありましたが、厳島神社における記念撮影の瞬間には、雲の隙間から夕日が差し、より一層、荘厳で神秘的な宮島の姿が世界に発信され、未来に向けた明るい希望を感じさせたところでございます。

宮島への入島制限の期間中、宮島観光ができないことにつきましては、ポスターやチラシの配布、ホームページ等による多言語での周知、デジタルマーケティングを活用した広報など、国内外に向けた情報発信に努めました。

その結果、観光客は大きく減少したものの、実際に宮島口まで来られた方がいらしたことは、よりきめ細かな広報をより早期に実施する必要があったものと捉えており、こうした課題については、今後の県政の情報発信に生かしてまいりたいと考えております。

次に、首脳プログラムなどの公式行事において、各国首脳やパートナーに振る舞われた料理には、広島県産の食材等が使われ、多くの広島の味を堪能していただきました。

日本酒やワインも広島県産のものが多数提供され、特に日本酒については、提供された20種類のうち、16種類が広島県内の銘柄となりました。

また、会場の設えに、広島県産の工芸品や福山のバラが装飾として活用されるなど、多くの県産品も活用されたところでございます。

首脳等に振る舞われた料理の食材や飲料などについては、その後、問合せや注文が続くなど大きなインパクトや反響があり、国内外に対する、広島の食や県産品等の認知度向上につながるものと認識しております。

また、岸田総理夫妻が主催され、各国首脳等やパートナーを招いた夕食会においては、世界の繁栄や平和への祈りが込められた、広島神楽のデモンストレーションが披露されるとともに、パートナーズプログラムでは、上田流和風堂や広島県立美術館、縮景園において、広島の伝統文化を鑑賞又は体験されるなど、広島が持つ文化とその歴史が世界に発信されました。

この他、イギリスのスナク首相が、カープソックスを履かれたこと、また、お好み焼の体験施設を訪問されたことも大きな話題となり、G7サミットの発信力の高さを改めて実感したところでございます。

一方で、県民会議といたしましても、広島サミットの開催は、これまで本県の歴史上ない、貴重な機会であり、サミットを単なる一過性のイベントにすることなく、世界が注目する絶好の機会と捉えて、サミット期間中にも積極的に情報発信の取組を進めてまいりました。

中でも、国内外の多くの報道関係者が利用し、報道の拠点となった国際メディアセンター内には「広島情報センター」を設置し、広島の伝統工芸、心、技術、環境、そして食と酒をテーマに、県内23市町の様々な魅力を発信いたしました。

具体的には、私自身も広島情報センターを訪れ、比婆牛等の食のセールスを行ったほか、大型モニターを利用した観光PR、神楽衣装の試着やお茶席等の体験、牡蠣・お好み焼・日本酒などの試食・試飲、和菓子づくり等の実演、並びに、23市町のオリジナリティあふれる観光・特産品の展示などを行いました。

また、同センターでは、「被爆・復興・未来へ」をテーマとして、平和記念資料館から借り受けた懐中時計や女学生の夏服などを展示するとともに、報道機関を対象に、被爆者の方の講話を実施し、核兵器の非人道性などについて訴えるなど、海外の記者に被爆の実相を伝えることができました。

実際に、これらの展示や講話を聴かれた海外の記者からは、「非常にショックを受けた」、「恐ろしい」、「人類がすべきことではない」などのコメントや、涙を流しながら見学されている方がいるなど、広島情報センターでの平和の発信も大きな意義があったものと受け止めております。

こうした取組の結果、広島情報センターの延べ来場者数は、速報値で50,327名、うち外国人は4,967名となったところでございます。

次に、県民会議では、サミットを契機に、様々な場面で広島の若者が参画する取組を進めてまいりました。

サミット開催前から、県民会議の公式ロゴデザインやカウントダウンボードの制作、路面電車・バスのラッピング、G7各国の高校生が集まって平和や持続可能性、多様性などについて議論を行ったジュニア会議、Y7サミット参加者と県内若手社会人との交流など、幅広く取り組んできたところでございます。

また、サミット期間中においては、首脳等の公式プログラムにおいて、献花や植樹の介添えをはじめ、宮島での出迎え、またパートナーズプログラムでは、おりづるタワーで開催された次世代シンポジウムへの参加などに取り組んでいただきました。

加えて、広島空港や広島駅などインフォメーションカウンターでの学生ボランティアによるおもてなしや、報道関係者に向けた高校生による広島神楽や筆のパフォーマンスなどの実演も行っていただいたところでございます。

これらに参加した若者からは、「とてもいい経験になった」「平和を考えるきっかけになった」との声を多くいただいており、若者のチャレンジ精神や国際感覚の醸成とともに、自発的な行動の後押しにつながるものと大いに期待するところでございます。

広島サミットの概要と県民会議の取組内容は以上となりますが、今回の広島サミットでは、G7各国をはじめとした参加者の皆様だけでなく、広島でお迎えをする県民や事業者の皆様の誰もが「広島で開催されて良かった」と思っていただけるように、総力を挙げて取り組んでまいりました。

元宇品や宮島などを中心に厳戒態勢が敷かれる中、皆様には御不便をお掛けしましたが、地元住民と警察官との間で新たな交流が生まれたことや、子供たちが各国や平和について考えるきっかけとなったことなど、多くの皆様に「広島で開催されて良かった」と思っていただいたサミットになったものと考えております。

また、安全・安心で円滑な開催や広島らしいおもてなしの実現に向けては、庁内の各局だけでなく、議長をはじめ県議会議員の皆様、国や市町、また関係機関などとの緊密な連携により、まさに総合力が発揮できました。

さらに、民間や団体等によるサミットを応援する取組として認定した件数は、当初目標の1,000件の約2倍となる2,045件となったことに加え、交通総量抑制の取組や県内各地でのクリーンアップ活動の展開など、官民連携という県民会議の枠組みが大きく奏功し、オール広島による取組がサミット成功に貢献したものと認識しております。

改めて、広島サミットでは、被爆地広島から世界に向けて、「平和の実現」に向けた力強いメッセージが発信されたことに加え、様々なチャンネルを通して、「広島の魅力」が世界に発信されたものと考えております。

このことは、本県にとっても、未来につながるとても重要な機会となりました。

こうした経験やサミットの成果は、県そして県民一人一人にとっての「誇り」となり、大きな財産になったものと考えております。

特に今回、中高生や大学生など多くの若者に、会議の開催支援や平和の発信、国際関係への理解促進など、サミットを契機とした様々な取組に参画をしていただきました。

若者たちは、緊張する場面などでも決して臆することなく、個々の能力や個性を存分に発揮して活躍されており、その姿を見て、必ずや将来の広島の発展を担う一人になるであろうと、大きな期待を抱きました。

また、シンポジウムや講演会等を通じて、被爆者の方をはじめとした先人たちの苦労と努力に真剣に向き合う姿を見て、広島の若者が、世界平和の実現など、困難な課題に対しても、決してあきらめず「挑戦」してくれるであろうと確信したところでございます。

今回のサミットを機に、世界から広島への注目度や関心度は高まり、ブランド力も向上し、これらは本県にとって、大きなチャンスでございます。

今後は、この「追い風」を的確に捉え、とりわけ、「核兵器のない平和な世界」の実現に向けて、若者の参画を含めた様々な平和の発信に取り組んでいくとともに、今後のインバウンド客の獲得、更には「選ばれる」県産品の創出など、多様な広島ファンの増加に向けて、広島の魅力発信に引き続き取り組み、本県の更なる発展につなげてまいりたいと考えております。

まず、観光誘致につきましては、広島空港における5月の搭乗者数が対前年同月比で約1.5倍と、多くの方々が広島を訪れているところであり、また、県内の主要な宿泊施設からはサミット開催後に予約も大変好調であると伺っております。

サミットの開催を契機に国内外からの観光客数の増加が見込まれているところでございますが、一方で、観光関連事業者におきましては、エネルギー価格の高騰の影響を受けているほか、人手不足などの課題を抱えております。

このため、観光関連事業者のデジタル技術等を活用した取組を早急に支援することで、観光関連事業者の生産性や観光客の利便性の向上などを図ることとし、必要な経費を6月補正予算に計上しております。

広島空港の国際線につきましては、先月、広島とベトナム・ハノイ、今月には、韓国・仁川を結ぶ直行便の就航が発表され、また、新型コロナウイルス感染症の影響で約3年にわたって休止していた外国クルーズ客船の寄港受入が、国や業界団体の調整を経て、県内でも本年3月から再開いたしました。

こうした動きは、観光客の受入拡大に大きく資するものと期待しているところでございます。

今後も、サミットの効果を絶やさないよう、令和7年の大阪・関西万博なども見据え、海外からの誘客に向けた施策を強化し、オール広島で本県への国内外からの観光客数の更なる増加を目指してまいります。

次に、広島の魅力発信につきましては、サミットを契機に国内外からの認知度が高まっている県産農林水産物において、多彩な食の磨き上げと情報発信を行う「おいしい!広島」プロジェクトを本年2月に発足させ、生産者と飲食店等のマッチング・商談会や新商品の開発など、サミット開催前はもとより、開催後も時機を逃さない取組を実施しているところでございます。

今後も、サミットにおいて脚光を浴びた「比婆牛」や「瀬戸内さかな」等について、多様な主体と連携した食の磨き上げや効果的な情報発信を通じて、国内外から広島に訪れる多くの皆様に、広島の食の魅力を知っていただき、県産農林水産物の販路・消費拡大と、更なる生産拡大につなげていきたいと考えております。

また、平和の発信につきましては、サミットで高まった核兵器廃絶に向けた機運を生かし、今後もNPT運用検討会議第1回準備委員会などへの参加を通じて、多様な主体と連携した国際社会への働きかけを行い、核抑止に依存しない安全保障政策づくりなど、核兵器のない平和な世界の実現に向けた取組を進めてまいります。

今後も、「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」における「目指す姿」の実現に向けて、サミットで高まった広島への注目度や関心度を維持し、その熱を拡大させるための様々な施策を検討し、実施してまいりたいと考えております。

 

2.令和5年度主要施策の概要

続いて、令和5年度の主要施策の概要について、御説明いたします。

【防災への対応】

はじめに、大規模災害への備えについてでございます。

今月、近畿・東海地方等で線状降水帯が発生し、6月における1日あたりの降水量としては、複数の地点で観測史上最高を記録するなど、各地で豪雨による大規模災害が発生しております。

近年、台風や線状降水帯などに伴う、短時間の記録的な豪雨により、大規模な河川の氾濫や土砂災害が全国各地で相次いでいることから、出水期を迎えている本県におきましても、災害への最大限の注意が必要となっております。

県民の皆様には、災害への備えとして、再度、避難場所や避難経路をご確認いただき、避難情報が発令された際には、速やかに避難行動をとっていただくようお願い申し上げます。

県といたしましても、「みんなで減災」県民総ぐるみ運動において、自主防災組織による呼びかけ体制の構築や維持・充実の取組と、マイ・タイムラインの作成を一体的に展開するため、新たに、市町と連携し、防災訓練の場などを活用して、「地域防災タイムライン」の普及促進に取り組んでおり、引き続き、適切な避難行動につなげてまいります。

 

【感染症への対応】

次に、「感染症への対応」についてでございます。

新型コロナウイルス感染症につきましては、5月8日から感染症法上の位置付けが5類感染症に変更されたことにより、特定の医療機関による特別な対応から幅広い医療機関による通常の対応に移行したところでございます。

現在までのところ、各医療機関や医師会等の関係団体の御協力により、医療提供体制も概ね確保されており、県民や事業者の皆様にも大きな混乱は生じてない状況でございます。

引き続き、県民の皆様が安心して生活できるよう相談体制を維持し、また、想定を超える感染拡大となった場合にも適切に対応できるよう、外来や入院医療体制を確保するために必要な経費を6月補正予算に計上しているところでございます。

なお、直近の感染状況につきましては、定点医療機関あたりの患者報告数は、6月12日から6月18日までの一週間で4.36人となり、緩やかな増加傾向を示しております。

今後も、感染状況や医療提供体制の状況を把握しながら、社会全体でコロナ以前の日常に戻っていくよう、必要な取組を行ってまいります。

あわせて、感染症法上の位置付けの変更に伴い、社会経済活動が活発になることから、今後、インフルエンザをはじめとした他の感染症が感染拡大しないか注視し、感染拡大の予兆等が見られた場合には、これまでのコロナ対応で培ったノウハウを活用し、新たな感染症対策にもしっかり対応してまいります。

 

【物価高騰等への対応】

次に、「物価高騰等への対応」についてでございます。

本県経済につきましては、5月に開催されたG7広島サミットの開催で広島の注目度が高まった中、新型コロナウイルスの5類感染症変更に伴う人流増加により、宿泊業や観光業などを中心に個人消費に緩やかな回復の動きがみられていることに加え、半導体不足等の影響が和らぐ中で、自動車などの製造業の生産性が改善するなど、足元は持ち直しております。

一方、長期化しております物価上昇に加え、懸念される世界経済の動向やウクライナをはじめとする世界情勢の今後の展開など、リスク要因は多く、不確実性は高い状況でございます。

こうした情勢を踏まえ、国の交付金等を活用し、物価高騰対策などを実施するため、必要な経費を6月補正予算に計上しております。

具体的には、直面する課題である「物価高騰による影響緩和」といたしまして、公的価格により経営を行っている医療機関や社会福祉施設等に対し、光熱費や食材費などの高騰額の一部を支援してまいります。

また、特別高圧契約により受電した電気を使用する中小企業等や家庭業務用LPガスを使用している一般家庭及び中小企業等に対し、料金高騰の負担を軽減するための支援などを新たに実施するほか、中小企業等に対して、地域の実情に応じたきめ細かな対策を市町と連携して行ってまいります。

さらに、生活に課題を抱える生活困窮者の多様な支援ニーズに対応するため、生活困窮者への支援体制の強化を図る市町の取組を支援してまいります。

こうした取組に加え、将来にわたって対策効果を持続させるための方策であるエネルギーコストの節減に向けた「ネットゼロカーボン等の取組の後押し」といたしまして、持続可能な公共交通の実現に向けて、交通事業者がEVバスを導入する経費の一部を支援するとともに、農業水利施設の省エネルギー化に取り組む施設管理者等に対し、エネルギー価格高騰に伴う影響額の一部を支援してまいります。

 

【それぞれの欲張りなライフスタイルの実現】

次に、「それぞれの欲張りなライフスタイルの実現」に向けましては、地方を挑戦の場に変革していく「ローカル・トランスフォーメーション」を実践し、ウィズ・アフターコロナにおける経済の発展的回復につなげる取組を進めているところでございます。

「産業イノベーション」の取組につきましては、世界に羽ばたき大きく急成長する企業の創出を目指す「ひろしまユニコーン10」プロジェクトにおきまして、昨年度末にスタートアップ企業によるプレゼンテーションイベントを3回開催し、ベンチャーキャピタルや事業会社との交流の場を作り、資金調達や協業、連携へ向けた接点づくりに取り組んだところでございます。

今後も、この取組を継続するとともに、中国地域の有望なスタートアップを認定し、育成支援する「J-Startup WEST」とも連携して、挑戦心のある起業家の発掘及び、その事業成長を支援する活動を拡大してまいります。

「DXの推進」につきましては、「広島県DX加速プラン」に基づき、民間事業者の取組の後押しや、デジタル人材の確保・育成、様々な施策における市町との連携機能の強化、庁内システムのガバナンスの強化など、DXの取組を更に加速させるため、本年4月、「DX審議官」の設置をはじめとしたデジタル部門の機能強化を図ったところでございます。

今年度の新たな取組として、民間事業者等による自律的な取組を後押しするため、伴走支援として「DX実践道場」を開始し、DX実践までのモデルケースを創出するなど、全県的なDXを推進してまいります。

「リスキリングの推進」につきましては、「リスキリング推進企業応援プロジェクト」において、ITパスポートの取得支援、企業のリスキリングの取組をPRする宣言制度、経営者層を対象としたセミナーの実施など、県内企業における取組を積極的に後押ししているところでございます。

また、昨年4月に設立した協議会において、今後習得が必要なスキルの明確化、労働市場の流動化を踏まえた社会システムの在り方などについて検討を行っており、7月下旬を目処に最終報告書をとりまとめる予定でございます。

引き続き、リスキリングの推進や円滑な労働移動が可能な社会の実現に向けて、県が実施する取組等の方向性について検討してまいります。

 

【特性を生かした適散・適集社会の実現】

次に、「特性を生かした適散・適集社会の実現」についてでございます。

中山間地域の振興につきましては、これまで県内12市町における、サテライトオフィス誘致の取組を支援し、累計38社の進出が決定したところであり、引き続き、中山間地域における新しいワークスタイルの定着と企業誘致を促進してまいります。

また、急速な人口減少と高齢化の進む中山間地域における、持続可能な地域運営の仕組みや安心して暮らせる生活環境の在り方等について検討するため、有識者による検討会議を今月立ち上げたところであり、今後、有識者からの意見を踏まえ、関係市町との連携を図りながら、取組を進めてまいります。

県全域を対象とした地域公共交通政策のマスタープランである「広島県地域公共交通ビジョン」につきましては、これまで4回にわたる法定協議会を通じて、骨子を取りまとめたところであり、今後は、この骨子を基に、本県における公共交通の目指す姿の実現に向けた施策等について引き続き議論を重ね、今年度中の策定に向けて、取り組んでまいります。

 

【社会的基盤の強化】

次に、激甚化・頻発化する気象災害等への対応についてでございます。

平成30年7月豪雨災害により被災した公共土木施設の災害復旧事業及び農地・農業用施設の災害復旧事業につきましては、概ね完了しております。

さらに、令和3年豪雨により甚大な浸水被害が発生した6河川における改良復旧プロジェクトにつきましては、三原市の天井川では、堤防強化のための対策工事が本年3月末に完了するなど、着実に事業を進めております。

流域治水につきましては、特定都市河川流域として指定した、竹原市の本川流域の総合的な浸水被害対策をとりまとめた「流域水害対策計画」を3月に策定したところであり、引き続き、市と連携しながら計画を着実に進めてまいります。

防災・減災につきましては、インフラマネジメント基盤「DoboX」において、3月に道路、河川、港湾等のカメラ情報を追加し、より広範囲で災害リスクや被災状況等が把握できるようになったところでございます。

さらに、今月から、県内23市町が管理する主要な道路の通行止めなどの規制情報についても提供を開始し、これまで、別々のサービスで提供されていた情報を一元化することで、ワンストップで閲覧でき、利用者のニーズに応じた様々なリスク情報の把握が可能となったところでございます。

引き続き、きめ細かなリスク情報を提供することにより、県民の皆様の適切な避難行動につながるよう取組を進めてまいります。

高病原性鳥インフルエンザにつきましては、昨年度の大規模発生を踏まえ、秋以降の備えが急務であることから、飼養衛生管理基準の遵守を飼養者に徹底させるなど発生予防対策を強化するとともに、埋却予定地の事前適否調査など発生農場における防疫措置の早期完了に向けた対策を実施するために必要な経費を6月補正予算に計上しております。

今後も、国が実施している感染の要因分析等の結果も注視しながら、県としても必要な対策を講じてまいります。

あわせて、国に対し、迅速かつ的確な防疫措置に向けた仕組みを構築するなどの要望を行っているところであり、引き続き、国が主体となって取り組むようあらゆる機会を通じて働きかけてまいります。

 

3.当面する県政の諸課題への対応

次に、当面する県政の諸課題への対応について、御報告いたします。

まず、「広島高速5号線」についてでございます。

シールドトンネル工事につきましては、昨年12月に地表面が隆起して二次管理値に到達したことから掘削を一旦停止しておりました。

この間、事業主体である広島高速道路公社において、学識経験者の意見を踏まえながら要因分析と今後の対応策をまとめたところでございます。

今後、公社は、住民説明会を開催し、その内容について丁寧に説明することとしており、住民の皆様の御理解を得ながら掘削を再開してまいります。

また、建設工事紛争審査会に調停申請されていることにつきましては、公社や広島市と連携し、適切に対応してまいります。

引き続き、住民の皆様の不信や不安を可能な限り払拭できるよう、適切かつ丁寧な対応に努めながら、着実な事業推進に取り組んでまいります。

次に、ローカル鉄道についてでございます。

本年4月に、ローカル鉄道に関する議論や支援の枠組の創設及び拡充が規定された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」が可決、成立したところでございます。

今秋の法施行に向けた国の動きを注視するとともに、中山間や過疎地においても、利便性が高く持続可能な地域公共交通が構築されるよう、引き続き、全国知事会などとも連携しながら、要望活動などを行ってまいりたいと考えております。

こうした中、JR芸備線の状況に関する2回目のヒアリングを、岡山県と合同で本年5月に開催いたしました。本県の求める全路線収支の開示と、それを踏まえた内部補助の持続可能性についての説明は今回も不十分でございました。

本県といたしましては、一部区間の鉄道特性の低さや赤字だけを取り上げた議論ではなく、JR西日本の国鉄改革の経緯を踏まえた責任、地域の公共交通の持続可能性や鉄道特性の考え方について、国を交え、全体での議論を行い、基幹的線区以外の線区も含めた鉄道ネットワークのあり方が整理された上で、個別路線のあり方が議論されるべきと考えております。

引き続き、本県主張の考えが受け入れられるよう、国とJR西日本に働きかけてまいりたいと考えております。

次に、水道の広域連携についてでございます。

昨年11月に県と14市町で共同で設立した広島県水道広域連合企業団におきましては、本年4月から事業運営を開始し、統合浄水場の新設など、施設の最適化、強靭化に着手するとともに、広域運転監視システムの整備による業務の効率化などの取組を進めているところでございます。

また、水道企業団に参画していない7市町とは、職員研修の共同実施などに取り組むこととしており、引き続き、県内水道事業の経営基盤を強化し、将来にわたって、安全、安心な水を適切な料金で安定供給できる水道システムの構築を目指してまいります。

 

4.令和5年度補正予算案等の概要

次に、今回提出いたしました議案について、その概要を御説明いたします。

まず、一般会計補正予算案につきましては、当初予算編成後の状況変化等を踏まえ、必要性が認められる事業に適切に対応することを基本として、編成しております。

具体的な補正の内容でございますが、物価高騰等への対応のほか、新型コロナウイルス感染症への対応やウィズ・アフターコロナにおける経済の発展的回復に向けたLXの実践の取組などに、時機を逃さず対応するための経費について、予算を計上しております。

これらの結果、一般会計の歳入歳出補正予算額は183億1,528万円の増額となり、本年度予算の累計額は、1兆1,586億3,528万円となります。

次に、予算以外の議案といたしまして、「広島県宅地造成及び特定盛土等規制法施行条例」などの条例案11件、人事案件といたしまして、「広島県公安委員会委員の任命の同意について」など2件、その他の議案では、「工事請負契約の変更について」など2件を提出しております。

また、報告事項として、専決処分報告のほか、令和4年度繰越明許費繰越計算書、県が資本金の四分の一以上を出資等している法人の経営状況説明書などを提出しております。

どうぞ、慎重に御審議いただき、適切な御議決をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

追加議案(令和5年7月4日)

ただいま追加提出いたしました議案は、副知事の退職に伴う後任副知事の選任につきまして、県議会の同意を求める議案であります。

どうぞ、適切な御議決をくださるよう、よろしくお願いいたします。

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