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生涯学習を支援するシステムの構築について(答申の概要)

答申の概要(平成14年11月6日)

1はじめに

 県民一人ひとりが心豊かに充実した生活を送っていくためには,生涯にわたって,おのずから学び,自己を高め,さらに学んだ成果を社会で生かす「生涯学習社会」の実現が求められている。
 広島県生涯学習審議会では,平成13年6月18日に広島県教育委員会教育長から「生涯学習を支援するシステムの構築について」諮問を受け,同年11月9日に「中間まとめ」を行い,ここで提言した方向性を基に,できるだけ具体的な内容となるようさらに審議を進め,ここに答申をとりまとめた。

(注) 生涯学習を支援するシステムは,「広島県生涯学習推進構想(平成11年2月に21世紀に向けた新しい時代の生涯学習を推進していくガイドラインとして策定)」の中で今後重点的に取り組んでいく施策として位置付けられているものである。

2生涯学習を支援するシステムの構築についての基本的な考え方

【背景・要因】

○急激な社会の変化や日常生活の中の様々な課題に対所するためには,生涯にわたり学習活動を継続していく必要がある。

○生涯学習への関心が高まるにつれて,学習の成果を地域社会や職業生活に生かしたいと考える人が多くなっている。

○複雑化する現代社会では,様々な課題を解決するため,社会自体が人々の学習成果の活用を求めている。

○市町村合併が進展していく中で,地域社会の連帯のまれ薄化や,地域アイデンティティーの低下が懸念されており,地域社会をベースとする生涯学習への期待は,以前にもまして大きくなっている。

○完全学校週5日制の実施は,教育機能を地域や家庭に広げ,生涯にわたりあらゆる機会に学ぶ環境をつくる契機となる。

【学習成果の評価】

○学習成果の評価は,自己学習の充実・発展につながり,また,学習成果を社会活動に生かすうえで,学習活動と社会活動の適切な接続を支援・促進する機能を持っている。

【各組織,機関の連携・協力】

○生涯学習システムの構築は,地域社会のあらゆる場所,機会が学習するための教室,キャンパスとなることを目指しており,その実現には各組織,機関の連携・協力が必要である。

3広島県における生涯学習を支援する施策などの現状と課題

1生涯学習を支援する施策

    県の生涯学習関連のこれまでの取り組みを,次の5つの観点で見直し,課題を整理した。

(1)生涯学習需要の喚起

 まなびピア,国民文化祭,ねんりんピック,スポレク祭などにより喚起された学習や活動への意欲を発展させることや,人々のネットワークづくりへの支援が必要である。

(2)多様な学習機会の提供

 県内各地で様々な機関が実施している講座などの学習機会が,体系化されて提供されていないため,講座の体系化・総合化や,地域社会の課題解決などの学習,職業能力開発に関する学習機会の充実が必要である。さらに,高度な学習機会を身近な公民館などで受講したいという県民ニーズが高く,今後一層の充実が望まれる。

(3)学習成果の活用

 学習の成果を生かしたいというニーズは増加しているが,活動する場が十分でないため,学習成果を生かした活動への普及・啓発を引き続き行うとともに,活動する場を幅広い分野・領域で開拓・拡充する必要がある。また,人材バンクにおいて,両者のマッチングが円滑・効果的に行われるようコーディネート機能を充実させるなど,実効性のある運営が必要である。

(4)生涯学習の基礎づくり

 「生涯にわたって多様な学習資源を活用して自分で学びつづける能力-生涯学習能力―」を身につけるということと,「自分で課題を見つけおのずから学び,おのずから考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力-生きる力-」とは重なるもので,あらゆる基礎・基本を学ぶ学校教育の中で,生涯にわたりおのずから学習していく態度・技能などを培っていくことが重要である。

(5)生涯学習支援体制の整備

 生涯学習情報提供システムなどにより,学習情報の収集・提供・相談などの事業を行っているが,人々の生涯学習活動を専門的に支援する社会教育施設や文化・スポーツ施設が学習機会の提供,相談,グループの育成,活動の場の提供などの機能の充実を図る必要がある。
 また,図書館においては,個別化する学習需要に対応し,学習者の自主的な学習活動を支援できるよう,市町村域を越えた情報ネットワークの充実などが必要である。

2生涯学習を支援する人づくり

 生涯学習の推進において重要な役割を果たす人材の育成とネットワーク化について,次の2つの観点で見直し,課題を整理した。

(1)全国生涯学習フェスティバルなどで生まれた人材の活用

 人材がお互いに刺激・影響し合い,新たな学習活動を広げていけるよう,交流の場づくりが必要である。

(2)完全学校週5日制の実施への対応

 地域の人材などの生涯学習資源を十分に活用して,地域全体で子どもたちの様々な体験活動を支えていく必要があり,その際には,子どもたちが企画に参画するなど,地域社会の構成員として貢献できるよう配慮することも必要である。

4広島県生涯学習キャンパス構想の実現に向けて

  家庭・職場・地域社会など,県全域学ぶところすべてが教室であり,学習を支援する人すべてが指導者となって,最適の学習機会や情報提供・相談事業などを提供し,人々の学習を充実・向上する「学びの入り口」から,学習成果を生かした学習の発展や社会活動を促進する「学びの出口」までを,総合的に支援する仕組みを「広島県生涯学習キャンパス構想」という。

1学習圏(広域)の構築-体系的な学習機会を行政区域を越えて提供-

「生涯学習支援センター」が総合的に支援

 身近なところで,広範囲に多様なレベルの学習サービスを利用することができるシステムをつくる。
 この広域な学習圏を構築するため,学習圏域内の拠点的な機能として,新たに「生涯学習支援センター」の設置が必要である。

(1)学習圏で体系化・総合化し,各学習圏が機能分担

 身近な学習圏(行政区域),ブロック学習圏(県内6ブロック程度),全県的広域学習圏の各学習圏が機能分担することにより,"いつでも,どこでも,だれでも,学びたいことを学べる"を可能にする学習機会の体系化・総合化を図る。

(2)多様で高度な学習機会の充実

 文化・教養・趣味的な学習に偏ることなく,現代的な課題に関する学習機会や高度な学習機会が身近な生活圏で提供されるようにする。

(3)マルチメディアで学習圏を越えて支援

   学習圏を越えた学習をマルチメディアの活用で支援する。

2学習成果の評価・活用

    学習の成果を適切に評価し,学習活動のさらなる発展や,社会活動への参加を支援・促進するための評価方法を検討する。

○ポートフォリオによる学習と評価   
 学習のプロセスと成果がひとつのファイルにまとめられたポートフォリオ(注1)を活用した課題解決型の講座や,ポートフォリオを活用した学習方法に関する研修を実施することにより,多元的な評価への社会的理解を深め,生涯学習の成果が広く流通価値を持つよう取組む。
 なお,ポートフォリオを導入したモデル講座については,行政と高など教育機関,NPOなどが協働して,例えば,社会人・大学生・高校生などを対象とし,ボランティア活動など地域社会に貢献する活動を取り入れたプログラムをポートフォリオにより大学の単位として認定するといったものが考えられる。
 社会人にとっては,大学の単位認定を可能とする高度な学習機会であり,大学生などにとっては,ボランティア活動,サービスラーニングのキャンパス外での単位認定の機会が促進されることとなる。 
  また,完全学校週5日制のもと,高校生にとっては,土・日曜日に地域社会で行った学修の成果が,高校の単位として認定される機会となる。
 このことは,現代的課題や身近な課題に対して,体験的・問題解決的に取組み,それを総合的に評価し,次の活動につなげていくという「生きる力」を育むことにつながるものである。

○時間の単位換算による評価
 
自己の学習を計画・管理していく観点から,行政,大学,民間事業者などが実施する講座などにおいて学習した実績を,時間などに単位換算して奨励するなどの方法を検討する。

(注1)ポートフォリオ(portfolio)
 ポートフォリオは,もともと,持ち運びのできる(ポータブル(portable)な)二つ折りにした紙や本(フォリオ(folio)),すなわち紙ばさみや折りかばん,書類入れやファイルなどを意味するものであるが,学習の過程や成果に関する資料と情報を,目的を持って長期間収集するところから,学習活動を意味するようになった。
 近年,欧米における成人の学習成果の評価において活用されるとともに,国内においても,小・中・高校などにおける総合的な学習の時間での評価や,大学におけるAo(Admissions Office)入試の導入など,学校教育の中で注目されるようになってきたものである。

(注2)サービスラーニング
 アメリカなどにおいて,大学の正課教育の中にボランティア活動などの社会貢献活動を導入したもの。
 サービスラーニングとは,「社会の要請に対応した社会貢献活動に学生が実際に参加することを通じて,体験的に学習するとともに,社会に対する責任感などを養う教育方法」であり,大学教育と社会貢献活動との融合を目指したものとされている。

3生涯学習をリードする人づくり

 生涯学習を支援するシステムを機能させるためには,指導者・ボランティアリーダーの推進力が不可欠であるため,専門的な指導者・リーダーを全県的に養成する必要がある。

(1)生涯学習の牽引力となる指導者・ボランティアリーダーの養成
(2)専門家の育成と活用

○生涯学習専門職員の育成

○すべての行政部局に生涯学習の視点を

○講師に対する研修機会の充実

(3)完全学校週5日制への対応

○子どもたちを育む活動が生涯学習のステージに

○子どもを地域の一員として育成する

4具体的な方向性

(1)生涯学習キャンパス運営機構

   関係機関,団体,行政,企業などが連携・協力する,生涯学習キャンパス運営機構を組織することが必要である。

(2)県立生涯学習センターの役割の強化

   生涯学習の拠点施設として,また,学習者や学習を支援する人々をサポートしていく中心的機関として,コーディネート機能などを発揮していくことが重要である。
 また,ポートフォリオを活用した先進的な学習プログラムや,指導者養成のためのプログラムの研究・開発に取り組むことが望まれる。

(3)生涯学習支援センターの設置

 各教育事務所に,圏域内の市町村間の相互連携が円滑に推進されるよう学習圏域内の拠点的な機能として,生涯学習支援センターを設置し,広域な学習圏の構築を実現させることが期待される。

(4)市町村の役割

○学習者(地域住民)への支援 
 各自治体が,学習者(住民)のために,地域の学習資源を活用して,多様な学習機会を提供していく必要がある。
 また,暮らしの中における自己学習や,相互学習(家族・近隣・職場などでの学習)及び学習に取組むライフスタイルの確立などへの支援が大変重要である。

公民館を中心としたコミュニティーの形成など 地域づくりのための拠点として活用することにより,新しいコミュニティーの形成が促進されることを期待する。
 また,大学など高など教育機関などとの連携・協力によって,公民館における高度な学習機会を一層充実する必要がある。

(5)大学など高など教育機関の生涯学習資源をさらに地域に提供

 大学など高など教育機関の教育機能や人材・ノウハウ・施設設備などの学習資源が,地域の生涯学習推進のために開かれ,積ごく的に提供されることを期待する。

(6)企業などの参画

 学習成果を活用する場の提供,ポートフォリオの活用などによる採用,プログラム開発への協力・支援など,生涯学習システム構築のパートナーとしての役割を期待する。

(7)民間事業者への期待

 民間の柔軟な発想による多様で創意にあふれる学習機会の提供,学習プログラムの開発,教材提供などで,より一層,生涯学習の推進を支える力となることを期待する。

(8)NPO・ボランティアグループへの期待

 学習成果を活用する場の提供や,生涯学習を支援する人づくりへの協力を期待する。
 また,NPOとボランティアグループが交流することにより生まれる,新たな活動の展開を期待する。

5おわりに

 地域社会ベースの県民の生涯学習を支援するシステムの構築に向けて,「生涯学習の県内全域への拡がりとともに,身近な学習から高度な学習までの生涯学習の発展」を支援する仕組みづくりに焦点化し,今後取組むべき重点的な課題と,基本方針を取りまとめた。
 県,市町村,教育機関,民間企業・事業者,NPOなどの関係機関・団体の協働と,パートナーシップによって,この構想が速やかに実現することを期待する。