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広島県における家庭教育力を充実するための方策について

広島県生涯学習審議会答申(平成14年11月6日)

広島県における家庭の教育力を充実するための方策について

はじめに

 広島県生涯学習審議会は,平成13年6月18日,広島県教育委員会教育長から次の三つの事項について,諮問を受けた。

  1. 生涯学習を支援するシステムの構築について
  2. 家庭の教育力充実のための方策について
  3. 広島県スポーツ振興計画の見直しについて

 これらのうち,2.家庭の教育力充実のための方策については,社会教育分科会に付託し,審議をすすめてきたところである。
 諮問理由にもあるように,家庭内においても「引きこもり」や「幼児・児童虐待」,「児童・生徒の問題行動」といった家庭教育や子育てをめぐる様々な問題が,年々深刻化するとともに,親の子育てへの自信喪失,不安という問題が生じている。
 そうした中で,家庭が本来果たすべき役割を見つめ直していくことや,地域の人たちの力を結集して家庭の教育力を支援していくことが急務となっている。

 そのため,この審議会においては,次の三つの項目で検討することが示された。

  1. 家庭の教育機能再生のための方策
  2. 地域において家庭の教育力を支援していく方策
  3. 行政としての家庭教育への支援方策について

 これを受けて社会教育分科会に家庭の教育力充実方策検討小委員会を設け,審議を重ねてきた。
 答申をまとめるに当たっては,幅広い視点から,家庭・地域・行政に向けてできるだけ具体的な内容となるよう努めた。

 

第1章  子どもたちの問題状況

1 広がりを見せる子どもたちの問題

 少子化が進行する中,子どもを巡る問題は広がりを見せ,深刻化している。

 少年刑法犯罪の検挙人数は,第3のピークである昭和58年以降減少傾向にあったが,現在再び増加傾向に転じ,第4のピークを迎えている。
 本県においても,刑法犯少年の少年人口1,000人当たりの補導人員は,平成9年,12年が全国でワースト1位,10年,11年がワースト2位,13年はワースト9位であり,その内容は,凶悪化,粗暴化,低年齢化している。

 また,平成12年の公立学校1校における暴力行為の発生件数は,全国平均の2倍以上であり,その他,いじめの発生件数,不登校の状況,中途退学のいずれにおいても概ね全国平均を上回っており,憂慮すべき状況である。

 さらに,担任を拒否し授業を妨害したり,パニックを起こすなどして授業が成立しなくなるいわゆる「学級崩壊」という現象が小学校低学年まで広がってきている。

2 問題視される家庭教

 こうした子どもたちの問題行動は,それを引き起こした子ども個人の問題にとどまらず,どの子にも起こりうる社会的課題として広がりを見せている。
 この背景には,現代の大量情報,消費社会や知識偏重の教育,地域の人間関係,親子,大人と子ども,あるいは子ども同士の人間関係の希薄化,忙しすぎる子どもの生活など様々な問題があり,それらが複雑に絡んで,子どもの成長に大きな影響を与えていると考えられる。

 こうした様々な原因が輻輳する中で,子どもたちが問題行動を起こす最も大きな原因として,「家庭」をあげる人が多い。また,中央教育審議会答申でも家庭の教育力の低下が指摘されている。その原因は「過保護,甘やかし過ぎの親」「しつけや教育に無関心な親」が増加したことであり,その結果として,現在の子どもには基本的なしつけが身についていないとする調査結果も出されている。

 次章では,一般に言われる「家庭の教育力」の低下とは何か,なぜ低下したのかを,その背景に着目し,検討する。

第2章  変わる家庭教育

1 家庭教育の本質
(1) 子どもの社会化と家庭教育

 子どもが言葉を覚え,周りの人を愛し,基本的生活習慣を身につけ,人間関係を形成し,社会的自立を果たし,社会に参加していく過程を「社会化」というが,この過程には,子どもの「社会化」を支援し,促進させる周囲の人々の存在が重要不可欠である。両親をはじめ,きょうだい,祖父母,おじおば,いとこ,友だち,近所の人など様々な人が,子どもの社会化の支援者として,家庭,地域や学校といった場で関わっている。

 家庭は,子どもが体験する初めての社会である。子どもの社会は家庭に始まり,家庭教育は,全ての教育の原点といえる。基本的な生活習慣・生活能力,倫理観,自制心や自立心など子どもが社会化する上での基礎的な能力は,家庭の教育によって最初に培われるものである。

(2)家庭の教育力の二つの側面

 家庭が持つ教育力には,二つの側面がある。一つは親などの家族が子どもに対して一定の目的をもって行う意図的な教育力であり,しつけ等言葉や態度によって子どもの生活を導くことや学校でわからないところを教えたりすることがこれにあたる。

 これに対して,もう一つの側面は,「環境による教育力」である。親の労働・行動や態度に接し,家事を手伝ったりする中で,結果として規範意識や共同体意識,自立意識などが自然に子どもに身につくことがこれにあたり,子どもを取り巻く人間関係や自然・社会環境が持つ教育力である。

 家庭教育は,この二つの教育力が相互補完し,その機能を果たしているといえる。最近の家庭の教育力が低下したといわれる,大きな要因として,この二つの教育力の相互補完的な機能が崩れてきたことがあり,そのことが子どもを社会化する上で様々な支障を及ぼしていると考えられる。

2 家庭教育の現状
(1) 環境による教育力の低下

ア 労働などの体験機会の衰退

 今ほど経済的に豊かでなかった時代には,子どもが家の仕事や家事を手伝うことが多かった。この中で子どもは働くことの意味や家族としての共同意識を無意識に学んだ。子守りをすることで子育ての困難さを味わった子どもも多かった。親が身近で働いていたため,その労苦を肌で感じ,労働が自分たちの生活を支えているということを実感した。

 しかし,高度経済成長期を境に,家の仕事はもとより,家族という共同体を維持するための子どもの役割が少なくなった。さらに,産業構造の変化やサラリーマン化が進む中で,子どもは親の働く姿を間近に見ることが少なくなった。
 また,昔の日本では三世代同居型の家族が多く,赤ちゃんの誕生や祖父母の死去に立ち会い,生と死を身近に接し,生命への畏怖,畏敬を覚えたが,こうした機会を得ることは少子化・核家族化の現代社会では困難なものとなった。

イ 人間関係の希薄化  

 かつての子ども社会には,多くの異なった世代,異なった個性とのコミュニケーションが存在していた。しかし,現在は,おじ,おばも少なく,祖父母のいる世帯も少ない。子どものきょうだい数も二人が一般化し,親族関係や家族関係などの人間関係の幅がせまくなってきた。加えて,郊外の住宅地はもとより,旧市街地においても地域の共同体意識は低下してきている。特に住宅の高層化は子どもたちが外へ出ていくことを難しくしていると言われている。

 子どもの「社会化」を考えるとき,子どもは集団の中で遊び,学ぶ機会を必要とする。子どもは対立と協調,競争と共同を経験する中で自分の位置を確認し,自己を発見し,成長していくものである。また,お年寄や地域の人など多くの人々との関わりの中で,自分の立場を自覚すると共に,年長者への尊敬の念を育てていくものである。

 しかし,現状を考える時,地域において子どもたちが異年齢の子どもや大人の中で,人間関係にもまれる機会は減ってきている。
 このことは,地域の中での家庭についても言え,「母子カプセル」という言葉にも見られるように,地域から孤立する家庭が増加していると言われ,子どもを社会で育てることを困難にしている。

(2) 家庭教育の偏り

ア 塾などの教育市場の拡大

 高度経済成長を期に,少子化や経済的に豊かになったことなどに伴い,家庭の中で子どもへの関心が高まるようになり,子どもが家庭の中心となってきた。
 一方,これまで子どもの成長を支えてきた「環境による教育力」が低下する中で,親たちは子どもに様々なことを教えようと努力するようになってきた。しかし,親自身が自分の子どもを教育しようと努力するよりも,外部の教育機関に委ねることによって,子どもに教育機会を与えている。

 少子化にもかかわらず,教育市場は拡大の一途を辿り,全世帯の家計における教育費(授業,教材,塾等の費用)の占める割合は,昭和50年と平成12年の比較(総務省家計調査)によると3倍以上に増加しており,この数字は,子どものいる世帯のみに限定するともっと高いものになっていると予想される。平成13年国立教育政策研究所の調査によると,3歳児の28%が習い事に通っているという驚くべき状況である。

 また,育児に関する書籍,雑誌についても親の関心の高まりと共に,その発行部数は増えている。

イ 「勉強」に偏重した家庭教育

 家庭教育の中でも「勉強」が重要視されるようになり,学歴重視の傾向とともに,勉強を優先させることが家庭教育の大きな目標となった。
 平成13年度の広島県における高校進学率は,97.3%とほぼ全員が進学するようになり,大学・短大進学率も52.1%に上昇している。受験競争は幼児にまで及び,早期教育熱は高まってきている。

 また,平成14年「地域の教育力の充実に向けた実態・意識調査」文部科学省調査によると,学習塾に通っている割合は,小学校3年生が30%,5年生が39%,中学校2年生が50%となっている。

 「環境による教育力」に代わり,「意図的教育力」が家庭の中で大きな比重を占めるようになり,その重点が「勉強」に移っていった。偏差値が家庭教育に持ちこまれ,このことが,子どもたちの生活から時間的,精神的なゆとりをなくした一因と考えられる。

(3) 父親不在の家庭教育

ア 男女の固定的な役割分業

 高度経済成長期は急速なサラリーマン化と核家族化が進む中で,「夫は外で仕事,妻は  仕事・育児が仕事」という男女の固定的な役割分業が広がった時期でもある。

 その後,急速に産業構造が変化する中で女性の社会進出が進み,子育てと仕事の両立に悩む母親も増加してきた。それとともに,専業主婦の孤立化も問題視されてきている。

イ 父親の参画の希薄化

 一方,「特に中年世代の父親は企業への帰属意識が強く,会社人間が多い。また諸外国との比較では,男女の賃金差が小さいほど男性の家事協力度は,高い傾向にあり,男女の賃金差が大きい日本では男性の家事協力度が低い」との指摘もある。

 父親の企業への帰属意識の強さが,父親の家事や家庭教育への参加を低下させている要因となっている。

 国民生活白書によると「性別役割分担型」と「家庭内協力型」では,男性,女性共に家庭内協力型を求める割合が圧倒的に高い。
 人々が描く好ましい父親像は変わってきているし,現実の父親の意識も変化しつつあるが具体的な行動にどうつなげるかが問われている。

(4) 情報化社会の中の家庭教育

ア コントロール困難な情報環境

 高度情報通信ネットワーク社会では,家庭の中でも子どもは多くの多様な情報にふれることができるようになり,従来の家庭教育とは別の領域が生まれてきた。従来であれば,親が子どもへの情報をある程度つかみコントロールできていたものが,多量の情報が氾濫する社会の中で子どもへの情報環境をコントロールすることが困難な状況になりつつある。

 子どもたちの,携帯電話,テレビゲーム機やパソコン等の所持率は上昇し,平成13年文部科学省の調査によると,高校2年生女子の約83%がふだん携帯電話を所持している状況である。
 

イ 仮想世界と現実の混同

 多くの情報に接し,それを活用することは,今後の高度情報通信ネットワーク社会を拓く大きな可能性につながるものと考えられ,学校教育が情報教育を取り入れる努力をしているのも,この方向に沿ったものである。

 しかし,その一方,情報メディアへの過度ののめりこみによる子どもたちの人間関係の希薄化,直接的な体験の不足,仮想世界と現実との混同,有害な情報の影響など,様々な問題が指摘されている。

 家庭教育の中で,情報メディアとのつきあい方を考え,実体験とのバランスをとるため,自然体験,遊びなどで五感を磨き,より深い人間関係を育てる場を積極的に用意することが求められるが,現状では十分とは言えない。

第3章  家庭の教育力再生の可能性と課題

 子どもたちの問題状況と教育機能の衰退する家庭の現状を踏まえて,どうしたら教育力を再生することができるか,その手がかりとなる視点と具体的な実現への課題を整理することとする。

1 認識から行動へ
(1)しつけの重要性の認識

 子どもたちの問題状況と,社会や家庭の変化の中で,家庭の教育力を向上させるためには我が家でできることをどう具体的な行動につなげていくかが課題である。

 そこでまず,子どもの人格形成の基礎は家庭にあり,子どもに対する親の姿勢,しつけが根本的に重要であることを認識することが必要である。その上で親がともに育児・家事を担うなど共同で家庭をつくっていくとともに,親自身が多様な学習機会を持ち,充実した生活を送ることが重要である。

(2)「我が家の方針・ルール」の確立

 家庭の教育力を再生していくためには,「我が家の方針・ルール」を確立し,具体的な行動をできることから一つ一つ積み重ねていくことが大切である。

 例えば我が家の方針・ルールを決め,だれもがそれを守りながら生活していくことを通じて,共同生活におけるルールを守ることの重要性を知り,そのことが規範意識を育てることにつながっていく。

 できることを,少しでも多く,具体的な行動に移していくことが重要である。

2 開かれた家庭教育に
(1)多くの体験との出会い

 子どもは親のしつけや教育など「意図的な教育力」だけで育つものではないことも認識すべきである。子どもは親の知らないところで,人間関係や様々な体験にもまれながら多くのことを学ぶものである。家庭では,この「環境による教育力」と交わる場面をできるだけ豊富に用意することが重要である。

(2)家庭の問題を地域で

 家庭教育を開かれたものにしていくためには,子どもを家庭の中に囲いこむことなく,多くの体験と人との出会いが経験できるように家庭を開かれたものにしていくことが必要である。
 このことにより,家庭の問題を地域全体で考え,地域でアクションを起こしていくことが,地域の活性化と教育力の向上につながっていくことになる。

3 生涯学習社会の中の家庭教育は
(1) 教育の出発点

 国の中央教育審議会が「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」で述べているように「教養教育の原点は家庭教育」であり,教育の出発点である。
 この家庭教育を補完するのが地域の教育力であり,地域社会において,子どもが他者とふれ合う中で,人間関係や集団のルール,公共心や規範意識,勤勉性や自己規制の力などを身に付けることができるよう,社会全体で子どもを育てる環境づくりを進める必要がある。

(2)共に学び合う「学習家族」に

 家庭を取り巻く教育環境は変化してきているが,依然として,多くの家庭では学歴偏重の考えを払拭することができないでいる。幼児からの早期教育や受験競争の低年齢化,将来の進路とは関係なく高校,大学を選択する傾向は,家庭教育に未だ学歴偏重社会のイメージが残っている一つのあらわれでもある。

 しかし,現実の社会では,早期教育の有無や学歴のみで,その人の社会的な処遇が決定することはあり得ないし,幼児期での育て方がその後の子どもの成長に影響を与えるとしても,それだけが全てを決定するのではなく,多くの節目で修復することは十分可能である。

 これからの生涯学習社会に生きる子どもたちの在り方を考えたとき,家庭教育も大きく変わっていくことが求められる。社会も子どもたちも変わってきており,その社会の変化を受け入れた上で家庭の教育機能を充実していく方法を検討していくことが必要なのである。

 そのためには,親子が家庭という場で共に学び合い,驚きや感動を共有し合う「学習家族」となっていくことが求められる。

第4章  家庭教育支援施策の現状と課題

 家庭の教育は,基本的には家庭の責任において行われるべきものであるが,これを適切かつ円滑に行えるような支援体制を整備していくことは,行政の責任である。

 行政は,社会状況や家族形態などの変化に起因する「家庭の教育力」低下の問題については,個別の家庭の責任だけでは解決できないことを十分認識し,「家庭の教育力」を向上させていくため,生涯学習社会の形成に即した地域の環境をつくることが必要である。
 この環境づくりとは,子どもたちが地域社会の一員として,地域づくり,社会づくりに参画し,信頼できる大人や異年齢の仲間と出会う場と機会をつくることであり,一方,親たちに対しては子育てなど子どもの成長に係る「学び」や「癒し」の場や様々な人と交流できる場・機会をつくっていくものである。

 そこで,ここでは,これまで本県が実施してきた家庭教育施策について検証し,今後の方向性をまとめることとする。

1 学習機会の充実

 家庭教育支援事業は,親が子どもへの教育的な指導を適切に果たすために必要な考え方や働きかけを支援していくものである。
 これまでも,公民館やPTA等を通じて,家庭教育学級や家庭教育講座が実施され,多くの親に学習機会を提供してきたり,資料等を通じて,家庭教育の重要性の認識などの啓発に取組んできたが,社会教育法の一部が改正され,家庭の教育力の向上を図るため,家庭教育に関する講座等の実施及び奨励が市町村教育委員会の事務として明記され,教育行政としての責務が明確化された今,その内容が問われている。

 学習機会の充実については,昨年度から「子育て学習の全国展開事業」を実施し,13年度43市町村(全市町村の5割)で340講座が開催された。
 この事業は,就学時健診等の機会を活用し,より多くの親に子育てに関する学習機会を提供しようとするものである。

 これらの実施状況を分析評価する中で,その成果と課題が明かになってきた。成果としてはまず就学時健診や保護者参観等の機会を活用したことが全体の参加率を高め,団体や部局を超えた連携により,参加率はもとより,その内容の充実を図ることができた。

 課題としては,全体の参加率が高まる中で,父親の参加は2割に満たない状況であり,どうすれば父親の参加率を上げることができるかに視点を当て,実施曜日,時間設定の工夫や企業への働きかけを通した出前講座の実施等も検討する必要がある。

 本年度は更に,「妊娠期子育て講座」,「就学時健診等を活用した子育て講座」,「思春期の子どもを持つ親のための子育て講座」等,子育ての時期に応じた学習講座を72市町村で540講座開催する予定であり,全市町村の8割以上で実施することとなる。

 これらのことから,全県的な家庭教育施策充実の機運の高まりが感じられる。

 学習機会の充実という面では,県はさらに3地域において,家庭教育フォーラムを実施している。

 これは,読書や家庭教育における父親の参加促進等のタイムリーな課題を取り上げ,先進的なモデルとして実施し,県内に広めようとするものであり,13年度は,「メンタルヘルス」「体験活動」「読み聞かせ」をテーマに実施し,14年度は父親の家庭教育への参加促進を統一テーマに「体験活動の重要性」「完全学校週5日制と家庭・地域の果たす役割」「父親の家庭・地域への参加~おやじの会設立に向けて~」等のテーマで取組む予定である。
 これまで参加した人には好評であるが,全体的に参加率は低く,広く参加者を募集する上での広報のむずかしさ等の課題がある。また,モデルとして実施する限りにおいては,実施後の県内への広がりが求められ,どう展開していくか課題もある。

2 子育て支援ネットワークの充実

 子育てに関わる親の支援を図るため「子育て支援ネットワークの充実」事業を,平成13年度4市町村で実施した。内容としては,家庭教育の支援を図るため,子育て中の親の身近な相談相手としての「子育てサポーター」の配置,子育て支援のためのさまざまな交流事業を実施してきている。

 子育てサポーターについては実施市町村においては子育て相談や交流事業に積極的に活用されており,子育て支援交流事業では親同士の交流が積極的に図られた。しかし,PR不足からか住民に浸透していない状況があり,広く県内への拡大を図るに至っていないのが現状である。

 平成14年度は,これらについて10市町村で実施の予定であり,さらに子育てサポーターへの助言や深刻な悩みを持つ親へのカウンセリングを行う「家庭教育アドバイザー」を3市に配置することとしている。

 特筆すべきこととしては,この事業で全く実施されてこなかった「父親の家庭教育への参加促進」事業の「父親のための家庭教育出前講座」「子どもの職場参観」を14年度においては,1市2町で実施することとしている。

 父親の家庭教育への参加を図る取組みが重要視されてきた表われであり,今後県内に広く浸透を図っていくことが期待できる。

3 支援事業の充実

 家庭教育の充実を図るため「家庭教育手帳」を母子健康手帳交付時に,「家庭教育ノート」を全ての小学校1年生の親に配布することなどにも取組んでおり,「家庭教育ビデオ」も県内すべての市町村の図書館,公民館,視聴覚ライブラリー等265ヵ所に設置している。

 今後,住民への幅広いPRと様々な学習機会での有効な活用が望まれる。さらに県では,これらの家庭教育に関する事業全体の企画・運営について協議し,事業の評価をするとともに,家庭教育に関する事業について連絡・調整を行うため,広島県家庭教育推進事業連絡協議会(14年度:広島県家庭教育活性化推進連絡協議会)を設置してきた。

 学識経験者,保育・学校関係者,マスコミ関係者等を委員に委嘱し,それぞれの立場で事業を分析・評価し,事業の展開に生かすこととしている。

 このように,これからはさまざまな角度から事業を評価・分析し,効果の高いものを広めていくと共に,課題を明らかにし,それらを解決していこうとする視点をもって施策を見直し,変革していくことが求められている。

第5章  家庭の教育力を充実するための方策

 ここでは,家庭,地域,行政に具体的に取組んでほしい点を提言としてまとめる。

1 家庭に求めること
(1)基本的生活習慣を育む

ア 規律ある生活習慣

  国の中央教育審議会は「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」で,「教養教育の原点は家庭教育である。その重要性は,どんなに社会が変化しようと変わることはない」と述べている。

 家庭は,人間を形成していく教育の場であり,各家庭での日常生活を基本にした教育の充実が望まれる。

 中でも,あいさつ,食事のマナー,就寝時間,衣服の着脱等の基本的生活習慣の定着は人間として生きていく上での基礎・基本であり,子どもが明るく楽しい生活を送るためにも最も重要な要素である。

 これまでも各家庭において教育されてきたことではあるが,子どもたちの問題行動や幼児・児童虐待の実態をかんがみる時,ここでもう一度我が家の家庭教育の基礎・基本を振り返り,親子で規律ある生活習慣を形成していくことが大切である。

イ 「食」を大切にする家庭に

  ライフスタイルの多様化に伴い,朝食を摂らないで登校する子どもが増えている。また,一人だけで食事を摂る「孤食」の子どもも増えており,こうした状況は身体の健康のみならず,心の成長にも影響を及ぼすことが懸念される。

 また,物が豊かな社会の中で,インスタント食品が増え,親も子も慣れてしまっており,身体の栄養のバランス等,「食」に関することへの知識は,子どものみならず親においても十分な認識が持たれていないと考える。

 人間が生きていく上において最も重要な「食」について認識するとともに,家族でコミュニケーションを図りながら食事することを大切にする必要がある。

  • 規則正しいリズムを保ち,1日3食の食事を摂る
  • 家族揃って食事を摂る
  • 親子が一緒に調理する機会をできるだけ多く持つようにする
  • 生産活動を体験させ,生産の苦労や喜びを感じることで,食の重要性を認識させる

(2)規範意識を育む

ア しつけの充実

  家庭は,親子のふれあいや家族の団らんを通して,基本的なしつけや社会規範を身に付けるところであり,人間形成が行われる最初の場である。しかし,近年,家庭においては受験競争の低年齢化に伴い,日常生活におけるしつけや感性,情操の涵養など,本来家庭が果たすべき教育機能が低下し,子どもたちの問題行動や犯罪などにつながっている。

 このような状況の中,家庭や地域社会において,他人とふれあう中で,人間関係や集団のルール,公共心や規範意識,勤勉性や自己規制力などを身に付けることができるよう,社会全体で子どもを育てる環境づくりを進める必要がある。

  • 生活の中で善悪を区別する力や我慢する心を身に付けさせる
  • 電車の中で席を譲るなど,親自身が実践して見せることを通して,思いやりの心,譲り合う心を身に付けさせる
  • 他人の子どもに対しても,叱るべき時は叱り,悪いことは悪いと教え,人として身に付けるべき基礎・基本をしつける

イ 「我が家の方針・ルール」の実践

  規範意識が低く秩序を失いつつある社会の中で,ルールを守って生きることを家庭で指導していくことは極めて重要である。
 そのためには,まず「我が家の方針・ルール」を確立し,親子ができることをきちんと守っていく,また親が手本となり守る姿勢を見せていくことが大切と考える。

  • 「我が家のしつけ三原則」を決めて,実行する
  • 家庭での年中行事や地域の行事へ積極に参加する
  • 親がお年寄りや年長者を敬姿勢を見せることで子どもに伝える
  • テレビやゲームに費やす時間を制限するなど規律ある生活習慣を身に付けさせるためのルールを決めて実行する
(3)豊かな心を育む

ア 生きる勇気を育む体験の機会を充実

 勉強中心の家庭教育から多様な学習,体験に重点を置く方向に改める必要がある。そのためには,子どもがそれらに参加できる「ゆとり」の時間をつくることが必要である。そして,ゆとりの中で,様々な体験や学習の機会を豊富に用意することが求められる。

 また,国の中央教育審議会「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」においても,「様々な分野の人との交わり,社会とつながることに喜びや達成感を味わったり,失敗したりすることを通じ,社会の中での自分の位置や負うべき責任を自覚する経験は,大人になるための大切な基礎をつくる」と述べている。

 地域の美化活動をはじめ,スポーツ活動,ボランティア活動,季節毎の行事などに積極的に親子で参加し,地域のつながりを深めるとともに活動の中で豊かな情操を養い,生きる勇気を養うことが重要である。

 さらに,本県は大小幾多の島々が点在し,美しい多島美を見せる瀬戸内海と中国山地の美しい山々に囲まれた自然豊かな県である。また,県内に厳島神社と原爆ドームの二つの世界遺産を擁し,地方色豊かな神楽や田楽など数多くの文化財が残されている。これらの自然や文化財を生かし,子どもたちが親しむ機会を積極的に持つことが望まれる。

  • 自然体験や文化活動を親子で企画し実行する
  • 山登りやサイクリング,研究活動など,忍耐力や努力が必要で達成感が得られる活動に親子でチャレンジする
  • 親子各自が役割を果たしながら生きる勇気を養う活動に取り組む

イ 新たな読書の扉を開こう

 読書は,子どもたちに基礎学力や考える習慣を身に付けさせ,豊かな感性や想像力を育てる活動であり,本県は学校教育においては「朝の読書」を,家庭教育においては「ファミリー読書」をすすめている。

 家庭での読書については,家族のきずなを深め,子どもたちの豊かな心をはぐくみ,本を読む家族の声は,いつまでも子どもたちの心に残ると言われている。

 家族で利用できる公共の図書館も,平成14年度現在で53館,公民館図書室が273室と広く整備されつつある。
 しかし,平成13年内閣府「第2回青少年の生活と意識に関する基本調査」による休日の過ごし方を見ると,小学生(高学年),中学生,15~17歳のすべてにおいてテレビ視聴が第1位(6割以上)であるのに対し,本を読むは小学生(高学年)が第9位(21.5%)であり,中学生,15~17歳においては2割以下という状況である。

 読書の楽しさを伝え,意欲を喚起するため,家庭で読書や読み聞かせを習慣化することが重要である。

  • 就寝前に読み聞かせをするなどの具体的な取組みを習慣化する
  • 生活の中に,親子で読書を楽しむ「読書タイム」をつくる
  • 家族で図書館等を訪れ,新たな本との出会いを求める
(4)愛情を育む

ア 父親の家庭教育への参加促進

 これまで,家庭教育は主に母親が担い,一方父親は主に経済的な面を担うと考える傾向があった。確かに,これまでの労働環境は父親が子育て等の家庭教育や家事に関わることを困難にしてきたが,平均労働時間の短縮や休日の増加等労働環境が改善される中で,時間的な余裕を持つ父親は以前より増加してきたと考えられる。

 父親が母親と協力し積極的に家庭教育や家事に参加することは,子どもの発達にとって好ましい影響を及ぼし,母親の育児不安を解消するとともに,父親が家庭での役割を果たす喜びを感じる機会にもなる。このことにより父親自身も人間的に成長することにつながるのである。

 また,青少年の問題行動が増加する中,今こそ父親の出番として,リーダーシップを発揮し,地域社会に生きる大人としての生き方を見せていくことが必要である。

  • 家庭教育や家事に積極的に関わり,子どもの手本となる
  • 地域の行事に積極的に参画し,役割を果たす
  • 善悪をきちんと指導し,自ら行動で示す
  • 週1日子どもとふれあう機会を持つ

イ 家庭を安心して過ごせる場に

 家庭は,人間を形成していく教育の場所であるとともに,家族みんながゆったりとくつろげ,安心して過ごせる場所でなければならない。そのためには,家族が多くの体験を共有し,団らんの中で互いの理解を深め合うことが必要である。

 広島県「子育てに関する実態及び意識調査」(平成13年3月)によると,子どものしつけ方や育て方について何らかの不安を感じている親が87%を占め,その理由として,自分の配偶者が十分に相談にのってくれないことや,同世代の子どもを持つ親しい仲間が身近にいないことが高い割合を示している。

 近所の人との付き合いの程度は,約7割がごく日常的な会話はするがそれ以上の付き合いはしないと応えており,配偶者とのコミュニケーションを含んだ,社会的ネットワークの狭さが読み取れる。

 悩みを共感できる夫婦や仲間といるだけで心が癒されたり元気が出たりすることがあるが,今,親に必要なのは,安心して過ごせる居場所ではないだろうか。親自身が子育てを楽しみ,元気な親でいることが家庭の教育力の向上には欠かせない。

  • 親子の団らんを大切に,子どもの思いを受けとめ親子で夢を語る
  • 子どもの良い所を認め,誉め,長所を伸ばしていく環境をつくる
  • 親自身が学ぶ気持ちを持ち,趣味や習い事にチャレンジし,生活に新しい風を吹きこむ
  • 地域の行事に積極的に参画し,社会的なネットワークを持つようにする
  • 家庭を,家族が会話を楽しめるような安心して過ごせる場所にする
2 地域でサポート
(1) 地域でつながる

ア 子どもを見守り育てる地域に

  青少年の問題行動や児童虐待等が増加する中,地域で子どもを見守り育てていく視点が必要であり,その体制づくりが求められる。
 これまでも,本県においては,母子保健,青少年育成に関わる部局や教育委員会等の各行政機関が中心となり,それぞれが,児童虐待防止や青少年の健全育成等に取組んできた経緯があり,縦のつながりの中で成果をあげてきたところであるが,これから求められるのは,その縦のつながりを横につなぐ取組みである。横のネットワークを構築することにより,児童虐待に関する状況,青少年の健全育成に関する状況,学校の状況等を認識し,総合的に取組むことが可能になる。

  • 青少年育成市町村民会議,児童虐待防止ネットワーク会議などや,小・中・高・大学等の教育機関・各行政機関・各種団体・警察等の横の連携をすすめる

イ 青年の力を地域へ

  地域の活動や子どもたちを対象とした活動の中で,大学生や高校生等の青年の力を活用し地域の教育力を向上していく取組みが望まれる。
 これまでも,地域においては大学生を中心としたボランティアサークル等が児童・生徒を対象としたキャンプなどの野外体験活動を実施したり,親子のサークル活動に事業を支援する立場で参加し,家庭・地域の教育力の向上に大きな役割を果たしてきた例がある。
 しかし,これらの取組みは,個人の意思に基づくものであり,総合的な取組みとはなっていないのが現状である。今後,その全県的なネットワーク化と青年の力の有効活用が望まれる。

  • 大学生や高校生等の青年の力を,地域行事や子どもの体験活動などの機会に活用する
(2) 親がつながる

ア 困った時に相談できる地域に

  かつて,近所同士のつながりが強かった時代は,子育てやしつけ等について近所の子育ての先輩方からアドバイスを受けることが多かった。
 しかし,核家族化が進み,住宅の高層化等により,人間関係の幅がせまくなり,地域のつながりは希薄化してきてきている。そのことにより,地域の相談機能は低下し,地域から孤立化する家庭が増えてきたと言われている。

 広島県「子育てに関する実態及び意識調査」(平成13年3月)によると子育てに関する相談相手として,近所(地域)の人と答えた保護者は,6.9%という状況である。
 困った時に相談できる相互扶助的機能の再生が求められる。

  • 困った時には,お互いに助け合えるつながりをつくる

イ 日常的な声のかけあいを

 相互扶助的機能の再生は,地域の教育力向上のキーポイントであり,その向上のためにはまず,日常的に声をかけあえるつながりをつくることが重要である。
 そのためには,参加しやすい地域の行事づくりや,安心して話せ,だれもが楽しめる居場所づくりが求められる。

  • 地域の行事への参加を促進(誘い合い)する
  • 日常的な声のかけあいに心がける
(3) 子どもとつながる

ア 子どもたちが企画に参画する

  地域の教育力の向上が望まれる現状ではあるが,地域の人たちと子どもたちのつながりがなければ,子どもたちに対して指導・助言できにくいのが現実である。
 本県の青少年実態調査(平成11年)によると,「近所の大人たちとどのようなつきあいがあるか」という問いに対して,男子高校生の21.8%が「ほとんど顔も知らない」と答えており,「顔はわかるがあいさつはしない」の22.7%を合わせると,約5割にもなる。言葉を交わしたこともない状況の中,コンビニの前にたむろしタバコを吸う青少年がいても「怖い」「注意しにくい」のは当然であろう。
 これらのことから地域の教育力の向上を図るためには,地域と子どもたちをつなぐ具体的な行動を積み重ねていくことが最も効果的であると考える。
 そのためには,従来行われてきた運動会や文化祭などの地域の行事に,子どもたちをお客さんとして参加させるのではなく,企画の段階から参画させ,一定の部分を任せることを通して達成感と地域づくりに参画している意識を持たせることが重要である。

  • 子どもたちを地域行事(運動会・文化祭等)にスタッフとして企画の段階から参画させ,責任を持ってやりきることを体験させる。

イ 子どもたちの力を活用する

  新たな取り組みとして公民館活動等で青少年の教育力を活用していくことが考えられる。

 現代の青少年の多くは,パソコン,ワープロなどIT機器を自由に使いこなす者が多く,その技術力を公民館等で行われるワープロやパソコン講座などの講師,あるいはアシスタントとして活用することなどである。

 これらのことを通して,地域の人々とのつながりが生まれ,町で会ってもお互いが声をかけられる関係となっていく。このことこそが地域の教育力の向上ではないだろうか。

  • 地域公民館等のワープロ・パソコン講座等生涯学習活動で,青少年を講師またはアシスタントとして活用する
3 行政がサポート

 家庭教育の支援施策は,地域の実態を十分に把握し,地域に根ざした地道な活動を展開しなければならない。そのためには,「共創」「協働」の考え方に基づき,住民参加を促進したり,ボランティア団体,NPO等,民間の諸活動と連携した施策を展開することが大切である。

(1)全県的な学習の場づくり

 県内においては,これまでも公民館等を通じて,家庭教育学級や講演会等が実施されてきたが,子育て不安を感じている親の増加や幼児・児童虐待の増加,青少年の問題行動の深刻化等に対応するため,母子保健部局や学校と連携し健診やPTA活動の機会を活用した学習講座を全県的に展開している。

 本年度,これまで以上に学習機会の充実を図るため,「妊娠期子育て講座」「思春期の子どもを持つ親のための子育て講座」を加え,子育ての時期に応じた学習機会の充実に努めているが,今後は参加できにくい親や,全体的に参加率の低い父親に焦点を当てた講座実施方法の検討が望まれる。この場合ワークショップなど参加型の講座による実施方法の充実に留意する必要がある。

  • 多くの親が集まる機会を活用し,妊娠期,幼児期,思春期など子育ての時期に応じた学習講座を展開し,アドバイスを与える
(2)子育てを支援する人づくり

 子育ての相談ができる人が身近におらず子育て不安を持つ親が87%もいる現状の中で,身近な地域において子育てに関するアドバイスをしたり,子育てのネットワークづくりを行うために設置されている「子育てサポーター」の積極的な養成と活用が望まれる。
 また,本年度から,深刻な悩みを抱える親のカウンセリングや子育てサポーターを指導する「子育てアドバイザー」を3市町村で配置している。この「子育てアドバイザー」は臨床心理士等を含んでおり,今後県内への拡大とその積極的な活用が期待される。

 さらに広島県幼児教育ビジョン検討会議が,「幼児教育の充実に向けて(提言)」で述べているように,「開かれた幼稚園・保育所づくり」をすすめ,保護者・地域の保育参加を促すなど,地域の教育力を生かした「地域ぐるみでの教育」の推進が求められる。

 そのためには,保護者,大学生,地域のボランティアの保育,教育参加の機会を拡充することにより,「共に育てる」意識の高揚を図ることが求められる。

 具体的には,幼稚園,保育所を中心に活動している「子育てサポーター」の拡充や,地域の読み聞かせボランティアや読書サークルの積極的活用などが考えられる。

  • 身近な地域において子育てに関するアドバイスを与えたり,子育てのネットワークづくりを行う「子育てサポーター・アドバイザー」の積極的な養成と活用を図る
(3)しつけを充実する意識づくり

 家庭は,親子のふれあいや家族の団らんを通して,基本的なしつけや社会規範を身に付けるところであり,家庭教育は個々の家庭の方針に基づいて行われるべきものである。

 しかし,親の子育て不安の増加や,社会の規範意識の低下,児童・生徒の問題行動が増加している状況においては,あいさつ,食事のマナーなど人として生きていく上での基礎・基本の定着や,社会全体で子どもをしつけ育てる意識づくりが望まれる。
 そのためには,県民運動として広く展開していく必要があり,学校教育と家庭教育の両面からアピールしていくなどの取り組みが望まれ,本年度,本県では,「広島県豊かな心を育むひろしま宣言推進協議会」(HUMENプロジェクト)を設置し,道徳教育,家庭教育の充実について検討している。また,検討された内容を「豊かな心を育むひろしま宣言」として,広く発信し,県民総ぐるみで道徳教育を推進する気運を醸成していくことをめざしており,この中にしつけの重要性について盛り込んでいく必要がある。

 さらに,全県的に展開する子育て学習講座や,学校での保護者会,PTAの研修会,教育委員会の広報誌等を活用し,様々な場面で啓発していかなければならない。

  • 善悪を区別する力やがまんする心,譲り合う心,社会の中で生きていくための基本的なきまりなど,人として身に付けるべき基礎・基本をしつけることの重要性を啓発する。
(4)「我が家の方針・ルール」づくり

 規範意識が低く,秩序を失いつつある社会の中で,ルールを守って生きることを家庭で指導するため,「我が家の方針・ルールづくり」をすべての家庭ですすめることが望まれる。

 そのため,県民運動として高めていくために,「豊かな心を育むひろしま宣言」等を通して,学校教育と家庭教育の両面からその重要性をアピールするとともに,PTAを中心に実施に向けて強力に推進していく必要がある。また,幼稚園,保育所,学校等の協力を得ながら,全県的な取組みとして展開することが望まれる。

  • 毎日決まった手伝いをさせる,テレビやゲームに費やす時間を制限するなど,忍耐力を養い規律ある生活習慣を身に付けさせる「我が家のルール」づくりを奨励する
(5)心を育む体験の機会づくり

 これまで,地域や各種団体などが実施しようとする子どもや親子対象の体験活動の情報を情報誌やホームページで発信してきた「子どもセンター」は,県内31ヵ所に設置され,活動エリアは県内全域をカバーするようになり,地域において定着してきた。

 今後はコーディネーターを配置し,体験活動やボランティア活動の情報収集・提供をはじめ場の開拓,指導者の登録・活用を図るとともに,個人や学校などからの求めに応じて体験機会をコーディネートするなど,機能を強化し積極的な活用が望まれる。

 さらに,高校生,大学生を対象に体験活動の指導者としてプレイリーダーを養成し,その積極的な活用を通して,異年齢集団の交流や,ボランティア活動の体験を促進し,体験活動をより充実していく施策が求められる。

 また,本県では昨年度から「広島県こども夢基金」を設置し,募金活動を展開するとともに,子どもたちの夢を育む体験活動などを実施するグループ・サークルに助成しており,昨年度87事業に助成している。
 これらの事業は,子どもたちと,子どもを支える地域の大人たちの主体的で地道な活動であり,まさに地域の教育力を向上していくことにつながっていると考られる。

 今後も,積極的な募金活動を展開するとともに,できるだけ多くの地道な活動を助成していくことが望まれる。
 また,現在の若い世代の多くは,乳幼児の世話をするといった経験だけでなく,様々な人と接したり,育児能力につながる様々な体験を持つ機会も,以前の世代に比べると大幅に減っている。子育てに関する知識や情報についても,親になる前にふれる機会が少なくなっているため,妊娠・出産してからの子育てを育児書に頼り,育児と現実とのギャップに悩む者も少なくない。

 このような中,本県においては一部の高等学校が保育所・幼稚園と連携し,乳幼児とふれ合う保育体験を実施している。
 これは,乳幼児とのふれあいを通して,子どもを理解するとともに,自分を育ててくれた親の思いを知るなど,感性に訴える取組みであり,プレパパ・ママ体験講座として,今後全県的な展開を望みたい。

  • 子どもの自然体験・社会体験の機会や自由に遊べる場を地域で豊富に用意するとともに,乳幼児とふれ合う子育て体験機会づくりをすすめる
(6)読書を通じたことばの環境づくり

 国の文化審議会答申において,地域や家庭など,日常生活の中で自分自身の考えを相手や場面に応じて適切な言葉で伝えようとする意識の高揚を図ることの必要性が挙げられている。
 近年,子どもの「活字離れ」や国語力の低下,対話による問題解決能力の低下などが指摘されているが,読書や作文などを通じて国語力を高めることは,思考力や表現力を高めるものであり,人間関係や文化を豊かにする上で極めて重要なものである。

 そのような中,本県は学校教育においては「朝の読書」を,家庭教育においては「ファミリー読書」をすすめている。

 家庭での読書については,家族のきずなを深め,子どもたちの豊かな心を育み,本を読む家族の声は,いつまでも子どもたちの心に残ると言われており,読書の楽しさを伝え,意欲を喚起するため,家庭で読書や読み聞かせを習慣化することが重要である。
 そこで,PTAなどに働きかけ児童・生徒の家庭での読書を推奨するとともに,全県的に展開している子育て講座を活用し,読書や読み聞かせなどの重要性,効果などについて啓発することが求められる。

 また,学校での朝の読書や,土・日の学校図書館開放などにおいて,読書ボランティアを派遣するなどの取組みも期待したい。
 図書館においては,現在公共図書館を訪れて検索すると,他の公共図書館の蔵書情報を知ることができるシステムになっているが,各家庭のパソコンですべての図書館の蔵書情報がわかるようになれば,図書館の利用も増え,家庭での読書活動が促進される。そのようなシステムの整備について現在県立図書館で取組んでおり,県内の図書館のネットワーク化が望まれる。
 さらに,地域での読書活動促進の取組みとして,読書ボランティアの養成や,読書サークルの育成など人的資源の確保と充実が望まれる。

  • 朝の読書や読書を推進する教育を学校で取組むとともに,地域や家庭においても読書を推進する環境づくりに取組み,読書,読み聞かせボランティアの積極的な活用を図る
(7)父親のネットワークづくり

 県内においては,これまで,問題行動等の多い学校の父親が中心となり「おやじの会」を組織し,学校の清掃,卒業式の手伝い等を通じて,父親同士のネットワーク化を図り子どもたちとのふれあいを深め,問題行動の減少等に成果をあげた例がある。
 また,他県においても,「父親クラブ」を結成し,父親と子どもの体験・交流活動や子育てに関する話し合い(子育て談義)を行い,親子の交流や対話を深めるとともに,地域の教育力を高める成果を挙げている例が見られる。

 さらに,今年に入って県内でもいくつかの父親を中心とした会が発足してきており,今後,PTAに地域のおやじの役割を担う「おやじの会」を組織するなど,父親のネットワーク化を図り,親と子の交流活動を促進するような施策の展開が望まれる。

  • 父親の家庭教育への参加を促進するため,学校PTAを中心に「おやじの会」を組織し,親子のふれあい,問題行動 の減少化を図る
(8)企業の協力体制づくり

 今まで参加の得られにくかった親,特に父親の参加を得るため,企業等に働きかけ,社内研修で家庭教育・子育て講座を実施するなどの出前講座の実施が望まれる。今後は事業を実施していく上において「必要な所に届ける」という視点が望まれる。

 また,この他,家庭と生産活動が結びつきにくい現状の中,働く親の姿を見せていく取組みとして,子どもが職場を参観したり,職場体験学習なども効果的である。これらの取組みから,家族のために働く親(大人)の姿を通して,働く意義や家族を守る責任等を感じてくれることが期待される。

 これらの取組みが,企業全体に家庭教育施策への協力体制を広げていくきっかけとなり,企業総体が各家庭の子育て・家庭教育を支援していく体制をつくっていくことが望まれる。

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