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広島県特別支援教育基本構想策定委員会答申 はじめに

はじめに

 本委員会は,平成19年6月13日,広島県教育委員会教育長から諮問を受け,4回の諮問会議及び2回の特別支援教育推進専門部会,3回の再編整備専門部会において,

(1) 幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校における特別支援教育の推進に関すること

(2) 特別支援学校の再編整備に関すること

(3) その他特別支援教育基本構想策定に関すること

について検討・協議を行い,平成19年10月30日に,「中間報告」をとりまとめた。

 その後,本委員会は,「中間報告」で提言した広島県の特別支援教育の今後の在り方について,パブリックコメントを実施し,県民から広く意見を求めた。また,諮問会議,特別支援教育推進専門部会及び再編整備専門部会を各1回開催した。

 本委員会は,パブリックコメントの意見や諮問会議,専門部会での検討・協議を踏まえ,ここに答申をとりまとめた。

1 広島県の特別支援教育の現状と課題

 広島県の特別支援教育は,昭和54年の養護学校教育の義務制実施を節目として,養護学校の設置等の整備及び教育内容等の充実が図られてきた。そうした中,広島県教育は,平成10年5月に,当時の文部省から,学習指導要領を逸脱するなどの教育内容面の課題及び教職員の勤務管理などの管理運営面の課題について是正指導を受けた。

 これに対して,広島県教育委員会により,県民に信頼される公教育の確立を目指した取組が行われる中で,平成14年12月に,新たな障害児教育に向けての具体的方針を示した「広島県障害児教育ビジョン」が策定・公表された。その「はじめに」においては,次のような課題が述べられている。

 「是正指導から4年が経過した現在,盲・ろう・養護学校においては,未だに学校運営や教育課程等において,是正が十分に進んでいない状況があり,指導の徹底を図っているところです。」「障害のある幼児児童生徒の能力や可能性が十分に発揮されていない状況もあり,一人一人の教育的ニーズに応じた取組みが十分であるとはいえません。」

 こうした課題の解決を図るため,上記ビジョンに基づき,平成15年度からは,適正な就学指導や教員の専門性の向上等を柱とした「障害児教育ビジョン推進事業」が実施されてきた。さらに,平成18年度からは,小学校や中学校等に在籍する発達障害(*1)のある幼児児童生徒の指導を充実するため,大学教授や医師等の発達障害等の専門家(以下「発達障害等の専門家」という。)による巡回相談の実施などを内容とした「特別支援教育充実事業」が実施されている。

 また,平成18年3月に策定された広島県総合計画「元気挑戦プラン」実施計画においても,新展開施策の一つである「次世代人材育成」に関する7施策の一つに「特別支援教育の充実」が掲げられるなど,障害のある幼児児童生徒の能力や可能性を最大限に伸ばす教育が推進されてきている。

 こうした施策が実施される中で,特別支援学校の教員のうち,特別支援学校教諭免許状を保有する者の割合が,この5年間で約2倍に上昇したり,特別支援学校の在籍者数が増加したりするなどの一定の成果がみられる。一方,特別支援学校高等部卒業者の就職率は,全国平均と比較すると,10ポイント程度低い状況が続いているなど,解決しなければならない課題も残されている。

 また,近年は,知的障害のある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校(以下「知的障害特別支援学校」という。)の在籍者数が大きく増加している一方で,他の障害種別に対応した特別支援学校の在籍者数は減少傾向にある。

 さらに,小学校及び中学校においては,特別支援教育を推進するための校内委員会(*2)の設置や特別支援教育コーディネーター(*3)の指名は全校で実施できているが,支援体制が十分に機能しておらず,幼稚園及び高等学校においては,支援体制がほとんど整備されていない状況にある。また,保育所・幼稚園と小学校との接続等,校種間の円滑な接続に課題がみられる。

 一方,国においては,平成18年6月に改正された学校教育法(以下「改正学校教育法」という。)が平成19年4月1日に施行され,従来の盲学校,ろう学校及び養護学校は,複数の障害種別に対応した教育を実施することができる特別支援学校になるとともに,幼稚園,小学校,中学校,高等学校の要請に応じて,幼稚園,小学校,中学校,高等学校に在籍する障害のある幼児児童生徒の教育に関して助言・援助を行うよう努めることが示された。

 また,これまでの障害児教育の対象の障害だけでなく,小学校や中学校の通常の学級に在籍する発達障害のある児童生徒や,広島県障害児教育ビジョンには示していなかった幼稚園又は高等学校に在籍する障害のある幼児又は生徒も特別支援教育の対象として明確に位置付けられた。

 こうしたことから,広島県の特別支援教育においては,広島県障害児教育ビジョンに基づく事業等の成果と課題を踏まえ,改正学校教育法に基づく特別支援学校制度の創設や幼稚園,小学校,中学校,高等学校における特別支援教育の制度化に適切かつ迅速に対応することにより,障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた指導や支援をより一層充実することが求められている。

2 基本構想策定の視点

1 特別支援教育の理念

 平成17年12月にとりまとめられた中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」の「第2章 特別支援教育の理念と基本的な考え方」において,「我が国が目指すべき社会は,障害の有無にかかわらず,誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会である。その実現のため,障害者基本法や障害者基本計画に基づき,ノーマライゼーションの理念に基づく障害者の社会への参加・参画に向けた総合的な施策が政府全体で推進されており,その中で,学校教育は,障害者の自立と社会参加を見通した取組を含め,重要な役割を果たすことが求められている。」と述べられている。

 また,改正学校教育法の第71条に規定されている特別支援学校の目的について,平成18年6月に改正される前には,「欠陥を補うために,必要な知識技能を授けること」となっていた部分が,「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること」と改正されている。

 本委員会においては,このような中央教育審議会の審議結果や改正学校教育法の改正内容を踏まえ,特別支援教育の理念について検討した。その結果,広島県における特別支援教育は,障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを的確に把握し,その持てる力を可能な限り高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものであると考える。

 こうした一人一人の教育的ニーズに応じてきめ細かく丁寧な指導や支援を行うという特別支援教育の考え方は,障害の有無にかかわらず,幼児児童生徒の確かな学力の向上や豊かな心の育成,さらには,現在の学校教育が抱えているいじめや不登校等を含めた様々な課題の解決にも大いに資するものと言える。

2 基本構想策定の視点

 本委員会においては,広島県の特別支援教育の現状と課題を踏まえ,複数の障害種別に対応した教育を行うことができる特別支援学校制度の創設や幼稚園,小学校,中学校,高等学校における特別支援教育の制度化に適切かつ迅速に対応し,特別支援教育の理念の実現を目指すため,次の視点から検討を行った。

(1)幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校における特別支援教育の推進

校内支援体制の整備

 県内のどこの学校に在籍していても適切な支援を受けることができる体制を整備する。

一貫した支援体制の整備

 保育所・幼稚園(認定こども園を含む。以下同じ。)と小学校,小学校と中学校,中学校と高等学校,保育所・幼稚園,小学校,中学校と特別支援学校の小学部,中学部,高等部との接続を円滑に行い,乳幼児期から学校卒業まで一貫した支援を受けることができる体制を整備する。

特別支援学校における教育の充実

 特別支援学校が,在籍する幼児児童生徒に対して専門的な教育をさらに推進し,職業的な自立を促進する教育の充実を図るとともに,地域の保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校の要請に応じて,保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校に在籍する障害のある幼児児童生徒の教育に関して,適切な助言・援助ができるような取組の充実を図る。

教員の専門性の向上

 幼児児童生徒一人一人の障害の状態及び発達段階,特性等を的確に把握し,一人一人の教育的ニーズに応じた指導を行うために,教員の専門性の向上を図る。

特別支援教育に関する普及啓発

 特別支援教育の理念等が,教職員はもちろんのこと,保護者及び県民に広く正しく理解されるようにする。

(2)特別支援学校の再編整備

○ 知的障害のある高等部生徒の増加に対応する。

○ 重複障害のある幼児児童生徒に対するきめ細かな指導を充実する。

○ 知的障害のある生徒に対する職業教育を充実する。

○ 障害の特性に応じて,同一障害の幼児児童生徒による一定規模の学習集団を確保する。

3 広島県の特別支援教育の今後の在り方

1 幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校における特別支援教育の推進

(1)現状と課題

ア 幼稚園,小学校,中学校,高等学校における支援体制の整備

 小学校及び中学校においては,校内委員会の設置及び特別支援教育コーディネーターの指名は全校で実施済みであるが,児童生徒を支援するための体制が十分に機能しているとは言えない。

 幼稚園及び高等学校においては,校内委員会の設置,特別支援教育コーディネーターの指名,個別の指導計画(*4)の作成,個別の教育支援計画(*5)の策定等の支援体制は,ほとんど未整備である。

 また,障害のある幼児児童生徒の乳幼児期から学校卒業までの一貫した支援を行うための個別の教育支援計画の策定が進んでいないため,保育所・幼稚園と小学校,小学校と中学校,中学校と高等学校との円滑な接続を行うに当たって,共通の認識を持った取組になりにくいことが課題となっている。

 さらに,特別支援学級においては,特別支援学校の学習指導要領を参考にするなど,障害のある児童生徒の実態に応じた適切な教育課程を編成・実施し,授業改善を推進することが課題となっている。また,通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒が,障害に応じた特別の指導を特別な場で受けることができる,いわゆる通級による指導(*6)の充実が求められている。

イ 特別支援学校における教育の充実

 近年,一部の特別支援学校においては,主体的に授業改善に取り組んだり,小学校や中学校等の教員を支援するなどのセンター的機能(*7)を発揮したりするなど,専門性の向上を図るための取組や専門性に基づいた取組が進められている。

 一方,高等部卒業者の就職率は,全国平均と比較すると,10ポイント程度低い状況が続いており,職業的自立を促進する取組の充実が課題となっている。特に,学校における作業学習や企業における実習,生徒個々の障害の状態等に応じた指導,生徒や保護者に対して働くことの意義を早い段階から指導・啓発していく取組,関係機関との連携などの充実が課題となっている。

ウ 教員の専門性の向上

 特別支援学校における在籍校種の特別支援学校教諭免許状保有率は,平成14年度の36.2%から年々上昇し,平成19年度には72.8%になっている。一方で,小学校及び中学校の特別支援学級担任の特別支援学校教諭免許状保有率は30%程度であり,特別支援学級担任の専門性の向上が課題となっている。

 また,特別支援学級担任の約3分の2の教員の特別支援教育経験年数(*8)は,5年以下となっており,特別支援学級担任の適切な配置が課題となっている。

エ 特別支援教育に関する普及啓発

 広島県教育委員会によって平成18年度に実施された教育モニターアンケート調査の結果では,特別支援教育に関してどの程度満足しているのかということについて,「わからない」と回答した県民が32.8%と,調査対象となった12の施策の中で2番目に高い割合を示している。

 また,平成19年度に実施された同調査の結果では,特別支援教育に関してどのようなことが重要かということについて,「障害などに関する正確な知識や適切な支援等に関する情報発信」と回答した県民が63.2%と,調査対象の9項目の中で最も高い割合となっている。

 さらに,特別支援学校高等部卒業者の就職率の向上を図る上では,企業の特別支援教育に関する理解をより一層深めることなど,保護者・県民への特別支援教育に関する普及啓発が課題となっている。

(2)特別支援教育の推進の内容

ア 校内支援体制の整備

(ア)校長のリーダーシップの発揮

 校長(園長を含む。以下同じ。)は,特別支援教育の理念を踏まえ,障害についての知識をもつことの必要性や一人一人の教育的ニーズに応じた指導の必要性,校内支援体制を整備することの必要性等の特別支援教育に関する認識を深めるとともに,特別支援教育を積極的に推進することを学校経営計画に示し,特別支援教育に関する推進計画を策定するなど,校内支援体制を整備することが必要である。

 また,校長は,特別支援教育に関する校内委員会の設置,特別支援教育コーディネーターの指名等の体制整備を行うとともに,組織として十分機能するよう教職員を指導することが必要である。

 特に,幼稚園及び高等学校においては,校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名等の校内支援体制を速やかに整備することが必要である。

(イ)特別支援教育に関する校内委員会の機能の発揮

 校内委員会では,まず幼児児童生徒が生活又は学習上の何に困っているのか,あるいは,何につまずいているのかということについて,的確に状況を把握した上で,課題解決のための具体的な手立てを検討するとともに,その検討結果について教職員の共通理解を図るために校内研修会等を行うなどの役割を果たすことが必要である。

 また,幼児児童生徒の指導を組織的,継続的に実施するためには,校内委員会の開催を定例化することが必要である。

(ウ)特別支援教育コーディネーターの機能の発揮

 校長は,特別支援教育コーディネーターの役割及び校内組織への位置付けを明確にすることが必要である。

 また,いじめや不登校等の生徒指導上の諸問題の背景に発達障害が関係していることも考えられるため,特別支援教育コーディネーターはもちろんのこと,生徒指導担当者をはじめ全教職員が発達障害等に関する知識・理解を十分に深めておくことが必要である。特に,特別支援教育コーディネーターは,校内(園内を含む。以下同じ。)の共通理解・体制整備に基づき,特別な配慮を必要とする幼児児童生徒の早期発見,早期対応,必要に応じた関係機関との連携に日ごろから努めておくことが必要である。

 さらに, 校長が,特別支援教育コーディネーターを指名するに当たっては,特別支援学級担任以外で,学校全体の取組や幼児児童生徒の状況が把握できる立場にある教員を指名すること及び,人事異動等によっても特別支援教育コーディネーターの機能が継続するよう複数名の教員を指名しておくことが効果的である。

 なお,特別支援教育コーディネーターの役割が多岐にわたる中で,特別支援教育コーディネーターがその役割を十分果たせるようにするためには,校内の協力体制を構築・工夫することが必要である。

(エ)個別の指導計画の作成・個別の教育支援計画の策定による指導の充実

 個別の指導計画の作成及びそれを活用した指導に当たっては,障害のある幼児児童生徒一人一人の多様な実態に応じた適切な指導を一層推進するため,各教科等における配慮事項等も含めて作成するとともに,実践を踏まえた評価を的確に行い,指導の改善に生かすことが必要である。

 また,個別の教育支援計画の策定及びそれを活用した指導・支援に当たっては,発達障害等の専門家からの助言・援助を得るとともに,保護者の積極的な参画及び関係機関との連携を図ることが必要である。特に,学校における教育と,家庭や障害児施設等における指導との調和が図られるよう,指導方針・指導内容等について家庭や障害児施設等との連携を密にすることが必要である。

 さらに,個別の指導計画及び個別の教育支援計画を活用した指導・支援に当たっては,作成・策定の段階から実践を踏まえた評価に至るまで保護者に対する説明責任を果たすことが必要である。

 なお,広島県教育委員会及び市町教育委員会(以下「教育委員会」という。)は,幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校における個別の指導計画及び個別の教育支援計画を活用した指導・支援の充実を図るため,参考様式や記入例,実践事例等を示すとともに,個別の指導計画の作成・個別の教育支援計画の策定に関する研修を充実することが必要である。

(オ)教育委員会による特別支援教育の推進

 幼稚園,小学校,中学校,高等学校における校内支援体制の整備を推進するため,教育委員会は,発達障害等の専門家による巡回相談を実施するとともに,特別支援教育コーディネーターの養成研修等に積極的に取り組むことが必要である。

 また,教育委員会は,幼稚園,小学校,中学校,高等学校における校内委員会や特別支援教育コーディネーターの機能が発揮されているか,個別の指導計画・個別の教育支援計画を活用した指導・支援の充実が図られているかなどについて評価し,改善に向けた指導・助言を十分に行うとともに,校長からの相談に適切かつ迅速に対応する体制を整備することが必要である。

 さらに,障害があるために配慮が必要なすべての幼児児童生徒に対し,様々な場面で適切に支援することができるよう,市町教育委員会は,本年度から地方財政措置された特別支援教育支援員(*9)の配置に努めることが必要である。

 なお,市町教育委員会は,特別支援教育支援員の配置だけでなく,教員志望の学生等を学生支援員として学校に派遣し,発達障害を含め障害のある幼児児童生徒の支援に当たらせるなど,地域資源を積極的に活用することも必要である。

イ 一貫した支援体制の整備

(ア)教育委員会による支援

 教育委員会は,発達障害等の専門家による巡回相談を実施したり,地域ごとに教育,医療,福祉,労働等の関係機関からなる特別支援連携協議会(仮称)を設置したりするなど,地域における支援体制を整備することが必要である。

 また,保護者や幼稚園,小学校,中学校,高等学校の教員が助言や相談を受けたいときに相談先等がわかる情報源(リソースマップのようなもの)を県教育委員会と市町教育委員会が連携して作成するとともに,情報を必要とする者が必要なときに情報を入手し活用できるよう,情報を提供する媒体を工夫することが必要である。

 さらに,障害のある幼児児童生徒の支援に当たっては,早期からの適切な対応が重要であることを踏まえ,教育委員会は関係部局との連携を密にし,公立幼稚園だけでなく,私立幼稚園,公立・私立保育所へ支援することも必要である。

 なお,教育委員会は,小学校及び中学校における通級による指導をより一層充実することも必要である。

(イ)校種間の円滑な接続

 保育所・幼稚園と小学校,小学校と中学校,中学校と高等学校,保育所・幼稚園,小学校,中学校と特別支援学校の小学部,中学部,高等部との接続を円滑に行うためには,特別支援教育コーディネーターを中心として,入学前に当該幼児児童生徒に係る障害の状態・特性,発達段階等について正確で具体的な情報を収集すること,授業研究や研修等を通じて校種間の連携を継続的に行うこと及び,個別の指導計画,個別の教育支援計画が校種間の接続のツールとなるよう内容を充実することが必要である。

 特に,保育所・幼稚園と小学校との接続を円滑に行うためには,いわゆる就学支援シート(仮称)(*10)を作成・活用することが効果的であり,このことは,適正な就学指導を進める上でも必要である。また,中学校と高等学校との接続を円滑に行うためには,当該生徒の高等学校への合格が決定後,中学校と高等学校とが速やかに連携することが必要である。

 さらに,幼稚園,小学校,中学校,高等学校においては,発達障害等の専門家の助言・援助を受け,幼児児童生徒の課題が,主として障害を要因としているのか,養育の問題なのか,又は,その他の問題なのかを見極めて,そのことを一貫した指導・支援に生かすことが必要である。

 なお,校種間の接続における個人情報の取扱いについては,条例等に基づいた適正な取扱いに関する正しい認識を持ち,必要とされる個人情報の提供を円滑に行うことが必要である。

ウ 特別支援学校における教育の充実

(ア)障害種別に応じた専門性の向上

 改正学校教育法の施行により,特別支援学校は複数の障害種別に対応する特別支援学校として設置することが可能となったが,まずは,各特別支援学校においては,当該学校が教育の対象とする障害種別に応じた適切な教育課程を編成し,教育内容や教育方法,評価の在り方等を授業研究をとおして工夫改善することにより,より一層障害種別に応じた指導を充実することが必要である。

 また,重複障害のある幼児児童生徒に対するきめ細かな指導及び教育内容をより一層充実するためには,各特別支援学校は学校の実態を十分に考慮して,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等の専門家との連携を一層密にするとともに,支援機器等を充実し,その活用に関する研究成果を普及・共有することも必要である。

 さらに,教育委員会は,人事異動を行うに当たって,今後も教員の専門性等を考慮し,各特別支援学校の障害種別に応じた専門性のより一層の向上を図ることが必要である。

(イ)職業的自立を促進する教育の充実

 職業的自立を促進するためには,生徒一人一人の障害の状態・特性,能力,適性等に応じた指導内容や指導方法の工夫改善,作業学習や企業での実習の促進,作業学習や進路相談に必要な施設・設備の整備,生徒・保護者が主体的に就職を希望するような取組の促進,企業への啓発,及びジョブサポートティーチャー(*11)がすべての特別支援学校を支援する体制整備等が必要である。

 また,職業的自立を促進するためには,幼稚部又は小学部から高等部に至るまで組織的,計画的,継続的な指導を行うことが必要である。特に,高等部においては,職業的自立を促進するための教育課程の編成や学習集団の構成を工夫することが必要である。

(ウ)センター的機能の充実

 特別支援学校は,保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校に在籍する,障害のある幼児児童生徒の個別の指導計画の作成や個別の教育支援計画の策定,指導方法等について具体的な助言・援助ができるよう学校全体の専門性の向上を図ることが必要である。このことをとおして,特別支援学校は,地域の保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校の要請に適切に対応し,地域から信頼される学校になるとともに,保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校への支援体制を充実することが必要である。

 保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校への支援体制の充実に当たっては,次のような取組を行うことが必要である。

○ 高度な専門性を有した教育相談主任を養成し,すべての特別支援学校に配置すること。

○ 専任の教育相談主任が保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校の要請に応じて巡回相談を実施するなど,取組の充実を図ること。

○ 校長は特別支援教育コーディネーターの役割を十分認識し,適任者を指名すること。

○ 特別支援学校は,どのような相談に応じることができるのか,相談の担当者は誰なのかなどを明らかにした情報の発信に努めるとともに,その方法を工夫すること。

○ 教育相談室や研修室など,センター的機能を果たすために必要な施設・設備を整備すること。

エ 教員の専門性の向上

(ア)免許法認定講習・教員長期研修派遣の計画的・継続的な実施

 特別支援学校においては,特別支援学校教諭の一種免許状や専修免許状の取得を促進し,高度な専門性を身に付けた教員による授業改善を推進することが必要である。

 また,特別支援学級の担任及び通級による指導の担当教員の特別支援学校教諭免許状の取得を促進するとともに,特別支援学級及び通級による指導においては,教育課程の改善及び授業研究をとおして専門性に基づいた指導を充実することが必要である。

 特に,障害種別に応じた指導内容・指導方法の工夫改善や自立活動等の指導を充実するため,高度な専門性を身に付けた教員を育成するよう,教育委員会は免許法認定講習の実施,大学院や教員長期研修への派遣について,計画的,継続的,積極的に推進することが必要である。

 なお,特別支援学校の教員,特別支援学級の担任及び通級による指導の担当教員の特別支援学校教諭免許状の取得を促進するため,現在,特別支援学校教育に係る免許法認定講習の受講者から経費を徴収しないこととされており,このことについては,当面,継続することが必要である。

(イ)研修の充実

 教育委員会は,特別支援教育に関する専門性を向上させる研修プランを策定し,一人一人の教員に自分がどのレベルにいるのかの自覚を促し,次のレベルを目指すようにする取組を行うことが必要である。特別支援教育に関する研修プランの策定・実施に当たっては,教員のキャリアに応じた研修,特に管理職及び,10年経験者研修以後,経験年数に応じた指定研修がなく,教員長期研修の機会もない45歳以上の教員を対象とした研修を充実することが必要である。

 また,教育委員会は,教務主任研修や生徒指導主事研修等の悉皆研修においても特別支援教育に関する研修内容を実施し,校内支援体制の整備や教員の意識改革を図ることが必要である。

 さらに,保育所・幼稚園,小学校,中学校,高等学校に在籍する発達障害のある幼児児童生徒の教育指導上の課題に適切に対応するため,教育センターの特別支援教育・教育相談部の相談機能等を充実するとともに,教育センターの専門研修講座やサテライト研修講座の受講申込み者が,希望する講座を受講できるよう受講定員枠を拡大するなど,特別支援教育に関する研修の希望に応えるよう工夫することが必要である。

(ウ)中核的な人材の育成

 広島県教育委員会は,各特別支援学校及び各市町において障害種別に応じた高い専門性を有し,学校間連携や地域で中核的役割を担う特別支援教育推進リーダー(仮称)を養成することが必要である。

 また,小学校及び中学校の校長は,特別支援学校教諭免許状を保有する専門性の高い教員を特別支援学級の担任や通級による指導の担当教員にするなど,特別支援教育のより一層の充実を図ることが必要である。

オ 特別支援教育に関する普及啓発

(ア)教員の意識改革

 幼稚園,小学校,中学校,高等学校においては,障害のある幼児児童生徒の指導について,担任又は特別支援教育コーディネーター一人が課題を抱え込むことを防ぐ学校体制を構築するとともに,特別支援教育の推進が教科指導等の充実につながること,全教職員で取り組む課題であることなどの意識を醸成することが必要である。

 また,幼稚園,小学校,中学校,高等学校の教員は,どの学級にも発達障害のある幼児児童生徒が在籍している可能性があることを意識するとともに,障害に関する認識を深めることが必要である。

 例えば,発達障害のある幼児児童生徒の中には,場や相手に応じてコミュニケーションを円滑に行うことに課題を有している者がおり,その課題に応じた指導や支援が必要であるにもかかわらず,教員は,学習上のつまずきがあまりみられないので指導上の課題に気付かないことがあることから,このような意識を改革することが必要である。

 さらに,障害のある幼児児童生徒の自立を図るためには,障害の状態・特性,発達段階等に応じた指導方法や指導体制の工夫改善が必要である。例えば,特別支援学校においては,障害の程度や発達段階,能力,特性等により,必要に応じて,個別指導の実施,グループ別指導の実施等の授業形態の工夫が大切であるという意識を持つことが必要である。

(イ)保護者・県民への普及啓発

 教育委員会は,保護者や県民に対して,特別支援教育に関する理解が広まるよう広報活動等を通じた普及啓発を積極的に推進することが必要である。

 また,保護者が我が子の就職に対して希望が持てるよう,個別の教育支援計画の策定等への保護者の参画を促進したり,保護者に対して,職業的な自立の促進に向けて先進的な取組を行っている特別支援学校の情報を提供したりすることにより,幼児児童生徒の自立を図る教育の重要性について保護者の理解を深めることが必要である。

2 特別支援学校の再編整備

(1)現状と課題

ア 在籍者数の増加又は減少

 広島県においては,全国的な動向と同様に,知的障害特別支援学校の在籍者数が近年大きく増加している。特に高等部の在籍者数の増加は著しく,過去10年間で約2倍に増加している。このため,知的障害特別支援学校においては,施設が狭隘になっており,その解消を図ることが喫緊の課題である。

 その一方で,他の障害種別に対応した特別支援学校の在籍者数は減少しており,一部の学校においては,同一障害の幼児児童生徒による一定規模の学習集団を構成して教育を実施することが困難となっている。

イ 重複障害のある幼児児童生徒の在籍状況

 これまでの特別支援学校は,基本的に各障害種別に整備が図られてきた。しかしながら,広島県の特別支援学校に在籍する約3割(肢体不自由のある児童生徒に対する教育を行う特別支援学校においては,約3分の2)の幼児児童生徒は重複障害を有している。このため,重複障害のある幼児児童生徒の教育的ニーズにきめ細かく対応できる特別支援学校の在り方を検討することが必要である。

ウ 高等部卒業者の就職状況

 広島県の特別支援学校高等部卒業者の就職率は,全国平均と比較して10ポイント程度低い状況が続いている。特に,知的障害特別支援学校の高等部卒業者の就職率は,全国平均と比較して低位にある。

(2)再編整備の内容

ア 複数の障害種別に対応した特別支援学校への再編

 他県では,例えば,知的障害に対応した教育と肢体不自由に対応した教育を実施するなど,複数の障害種別に対応した特別支援学校の設置が進んでいる。これらの特別支援学校においては,各障害種別の教育の専門性を有した教員の協力体制の整備や各障害種別に対応した施設・設備の活用を図ることにより,重複障害のある幼児児童生徒に対するきめ細かな指導が可能となっている。

 広島県においても,重複障害のある幼児児童生徒に対する教育の充実や知的障害のある児童生徒の増加への対応を図るため,既存の特別支援学校を,複数の障害種別に対応した学校とするための検討を行うことが必要である。

 その際,重複障害のある幼児児童生徒の多くが知的障害を併せ有していることなどから,知的障害特別支援学校以外の特別支援学校が,新たに知的障害に対応した教育を実施することを念頭において検討することが必要である。

 なお,その再編の検討に当たっては,次の点に留意することが必要である。

○ 教員の配置,施設・設備の整備,教育課程の編成・実施等において,各障害種別の教育の専門性を確保すること。

○ 知的障害のある高等部生徒の増加が著しいことから,知的障害特別支援学校以外の特別支援学校において,高等部のみ複数の障害種別に対応することも検討すること。

イ 高等特別支援学校の設置

 広島県の特別支援学校高等部卒業者の就職状況を改善するためには,既存の特別支援学校において職業教育の充実を図るとともに,知的障害のある生徒の就職状況を改善するための教育システムの検討が必要である。

 他県においては,高等部単独の特別支援学校である,いわゆる高等特別支援学校を設置し,知的障害のある多くの生徒を就職させるなどの成果をあげている例がある。広島県においては,平成14年に策定された「広島県障害児教育ビジョン」で,その必要性が示されたが,未だその設置には至っておらず,その早期設置が必要である。

 高等特別支援学校においては,中学校の特別支援学級等を卒業した軽度の知的障害のある生徒を対象に,職業教育に重点をおいた教育課程と施設・設備の下,職業的自立を目指した指導を行う。また,この学校は,特別支援学校における職業教育のモデル校として,教育課程や指導方法を提示することなどをとおして,特別支援学校全体の職業教育の充実を図る役割を担うものでもある。さらに,その設置により,知的障害のある高等部生徒の増加に伴う知的障害特別支援学校の狭隘化への対応を図ることも可能となる。

 なお,高等特別支援学校の設置に当たっては,次の点に留意し,検討を進めることが必要である。

○ 生徒の就業体験先となる企業等の立地状況や生徒の通学の利便性などを考慮して,設置場所の選定を行うとともに,寄宿舎の設置についても検討すること。

○ 職業教育を充実する観点から職業学科を設置するとともに,入学定員の設定,入学者選抜の実施を行うこと。

○ 早期の設置を図るため,既存の校舎の活用等も検討すること。

○ 生徒の進路先を確保するため,企業や雇用関係機関との連携を検討すること。

ウ 学校の統合等

(ア)在籍者数が減少した学校

 在籍者数が減少した学校については,障害の特性に応じて,同一障害の幼児児童生徒による一定規模の学習集団を確保するため,同一の障害種別に対応した教育を実施する他の学校との統合を検討することが必要である。

 なお,統合に当たっては,在籍者数の推移,学校間の通学距離・時間等を考慮するとともに,幼児児童生徒の発達段階による違いを踏まえ,学部単位での統合についても検討することが必要である。

(イ)在籍者数が減少した職業学科

 在籍者数が減少している高等部の職業学科については,その在籍者数の推移,中学部生徒の進路状況,当該学科の設置の全国状況等を勘案し,廃止を含め見直しを検討することが必要である。

(ウ)障害児施設に併設した学校

 障害児施設に併設した学校については,「広島県立特別支援学校の就学区域に関する規則」で,その就学者を併設施設の入所者に限定していることなどにより,その在籍者数が減少傾向にある。このため,併設施設に入所していない者の当該校への就学について検討することが必要である。

エ その他再編整備に関すること

(ア)学校規模に応じた設置形態への見直し

 広島県の特別支援学校においては,「本校」,「分校」,「分級」及び「分教室」の4種の設置形態となっているが,これらの明確な基準がなく,各校の設置形態が学校規模に応じたものとなっていない。このため,特別支援学校の再編整備を行うに当たり,在籍者数等による基準を定め,各校の学校規模に応じた設置形態に見直すことが必要である。

(イ)特別支援学校のセンター的機能の充実

 特別支援学校の再編整備に当たり,教育相談室や研修室など,地域における特別支援教育のセンター的機能の発揮に必要な施設・設備を整備することが必要である。

おわりに

 広島県の特別支援教育は,保護者及び県民の特別支援教育への期待に応えるため,是正指導の徹底及び広島県障害児教育ビジョン策定後の施策の実施により,障害のある幼児児童生徒一人一人の能力を可能な限り発揮させる教育の仕組みづくりが進みつつある。

 諮問会議における「期待を満足に変えていく教育が必要である」という委員の発言にあるように,広島県の特別支援教育は,いよいよ中身の充実を図る段階に来ていると言えよう。

 この答申に述べているような広島県の特別支援教育の今後の在り方について,広島県教育委員会が策定する「広島県特別支援教育ビジョン」に生かされるとともに,今後の施策に反映させていただくことにより,広島県の特別支援教育の一層の充実を図っていただきたい。

 パブリックコメントの中に,「『特別支援教育基本構想』が実現するには,先生方の日々,一時間一時間の授業の充実と,保護者の参画ということから始まると思う。」という保護者の意見があった。

 教職員一人一人は,この答申の趣旨を十分理解し,障害のある幼児児童生徒一人一人が,主体的に自己の力を限りなく発揮し,障害による生活上又は学習上の困難を克服できるよう,専門性に基づくきめ細かな教育の推進を担っていただきたい。

 また,広島県の特別支援教育の今後の充実に向けて,保護者及び県民の協力・支援をいただけるよう,特別支援教育に関して県教育委員会の積極的な広報等をお願いする。

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