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教育講演会20021120「静岡県立浜松西高等学校・中等部の新たなチャレンジ」記録

教育講演会・学校説明会

演題  実践報告
    「静岡県立浜松西高等学校・中等部の新たなチャレンジ
   ~中高一貫教育半年を経過して~ 」
講師  石田邦明氏(静岡県立浜松西高等学校校長)
日時  平成14年11月20日(水曜日)13時00分~16時00分
会場  広島県民文化センター 多目的ホール

 実践報告(内容)

 <はじめに>
 <校長の宿題>
 <学校の概要>
 <中高一貫教育の基本方針>
 <特色ある教育活動>
 <保護者の願い>
 <「ゆとり」を生かした教育>
 <平成14年度中等部入学者選抜の状況>
 <一貫教育のメリット>
 <一貫教育を実施して半年の課題>
 <終わりに>
 <質疑応答>

<はじめに>

 静岡県立浜松西高等学校,及び中等部の校長の石田です。よろしくお願いいたします。
 浜松西高等学校は,本年4月1日中等部を併設して,中高一貫教育校になりました。その半年間のチャレンジについて実践の報告をさせていただきます。

 もう30数年前になりますが,大学を卒業して,広大の大学院で学びたいということで,こちらに受験に参りました。広島で勉強できるかなと思って期待していたのですが,残念ながら不合格ということで,その結果,静岡県の教員になったわけですけれど,もしかしたら広島県の教員になっていたのかなあと広島に来るたびにそのことを思い出します。

 私は,その後教員になってから修学旅行等で生徒を連れて何回か広島に来ました。広島に来るたびに思うことは,やはり「平和」ということです。
 今年も8月6日の日の平和記念式典をテレビで見ておりました。広島の市長さんのお話,それから小学生6年生2人の平和の誓いを聞きながら,私たち一人ひとりは微力だけれども平和の使者,平和のリレーランナーになりたいなということをつくづく思いました。

 本校の教育方針の中にこう書いています。「社会貢献への高い志とたくましい力を持ち,国際社会においてリーダーとして輝く人材の育成をめざす」。
 なかなか中学生には,難しい言葉ですが,私は中等部の開校式・入学式の時に,このことはどういうことを意味するのかということを話しました。「これは君たちが世界のために,そして人類の幸福のためにつくす。そういう人間になってほしいということだよ。」と。まさしく私は広島の平和記念式典で小学生が言ったあのような人材に本当に育ってほしいなということを期待しています。 

<校長の宿題>

  レジュメには,「校長の宿題」と書いてありますけれど,付けたい力,中高一貫教育校になってどんな力を付けたらいいのかということを私自身考えていますけれど,この夏休みに,中等部の生徒たちに一つの宿題を出しました。「人類がこれまでに発明あるいは発見したものの中で,一番大きな影饗を与えたものは何か。それを一つあげ,それは何故か自分の考えを述べなさい。」というものです。

 A4版1枚のレポートでしたけれども,159人の1年生全員が提出をしてくれました。夏休みが終わって,私は全員分に目を通しました。子どもたちが一生懸命考えてくれた様子がよく分かりました。宿題を出す時に私は,「一人で考えなくてもいい。お父さんお母さんに話を聞いてもいいし,おじいちゃんやおばあちゃんに話を聞いてもいい,友達と議論をしてもいいし,インターネットやあるいは図書館で調べてもいい。どんなことをやってもいいから必ず自分の考えを書きなさい。」と,子どもたちにいってやりました。そういった手前,私自身も応えてやらなくてはいけないということで,全員の分を添削して,ひとこと一言子どもに私の考えを伝えました。

 私はこれからの時代というのは,本当に先行きが不透明な時代,毎日毎日もしかしたら課題の答えというのは変わっていってしまうかもしれない,なかなか解決方法が分からない,そういう時代になろうかと思います。
 そういう時代に本当に付けてほしい力というのは一体何なんだろうか。やはり自分で知恵の総力を結集して考えていける人間に育ってほしいと思っています。

<学校の概要>

  さて,前置きはこれぐらいにして学校の状況についてお話をしたいと思います。私たちの学校があります浜松市の概況,それから本校の沿革,それから学校の形態の3つについてお話をします。

  1. 浜松市の概況

     浜松市は,静岡県西部に位置しており,人口60万を有する県下最大の都市で,平成8年には中核市に指定されました。人口の4%が外国の方々です。海外在住の経験のある方もたくさんいます。国際都市としての色彩を有しています。

     浜松市は,戦前より工業都市として栄え,繊維・楽器製造を核に,戦後は,オートバイ,あるいは小型乗用車へと発展し,昭和59年のテクノポリス指定後は,先端技術科学都市としても脚光を浴びて,今や国内はもとより,世界を舞台に活躍する企業が林立する産業科学技術都市として発展しています。

     近年では,製造業としての街づくりだけではなく,音楽を中心とする文化的な伝統のある街を作ろう,そういうキャッチフレーズのもとに駅前には,地上45階建てのアクトタワーという高層ビルがあり,その中に4面舞台装置をもつ大ホールも造られて,世界の著名な方々が演奏会等々を開いています。コンクール等も盛んに行われています。

  2. 本校の沿革

     本校の沿革ですが,大正13年4月,静岡県立浜松第二中学校として開校しました。今年で78年目を迎えました。浜松駅の西方,JR浜松工場のちょうど向かいに小高い丘があります。西山台といいますが,その丘の上に建っています。

     戦前は「知,仁,勇」を校訓として掲げて,イギリスのパブリックスクール「イートン校」をモデルに「ヤングジェントルマン」の育成をめざしてきたといわれています。

     戦後の学制改革によって昭和24年4月に現在の校名である静岡県立浜松西高等学校と改めました。普通科の男女共学制となりました。その後,昭和61年に理数科が1学級設置をされました。

  3. 本校における中高一貫教育の学校形態

     本校における中高一貫教育の学校形態を説明します。本校は県立浜松西高等学校に県立の中学校を併設する,いわゆる併設型中高一貫教育校です。中学校の校名は,静岡県立浜松西高等学校中等部といいます。各学年160人の4学級編成です。高等学校は,普通科で各学年200名の5学級です。広島県で作られる16年開校の中高一貫教育校は中学校4学級,高校6学級と聞いていますので,高校が1学級分だけ少ない学校でございます。

     中等部への入学は,希望者の中から総合適性検査・作文・面接などを組み合わせた方法で入学者の決定をしています。中等部の生徒は高校入試を受けることなく,無試験で浜松西高等学校へ入学します。高等学校段階では,一般の中学校から1学級40人の入学者を受け入れます。なお,中等部の生徒は高等学校進学時に他の高等学校へ進学することも可能です。

     中等部4学級,高等部5学級とした理由ですが,中高一貫教育校ですので一貫教育を受ける生徒が多い学校形態としました。しかし,いろいろな生徒が交わるということも大切である,高等部の段階で外からの中学校で学んできた生徒も受け入れて,いろいろな考え方の子どもたちがいるということを知ることも大事だということで高等学校から1学級を受け入れます。

  4. 静岡県における中高一貫教育校設置の状況

     さて,本県における中高一貫教育校の状況を説明します。
     平成14年度,この4月に本校,浜松西高等学校が併設型の中高一貫教育校となりました。
     また,川根地区の川根高等学校は連携型の中高一貫教育校としてこの4月に出発しました。
     来年の4月になりますが,東部の沼津地区の沼津市立沼津高等学校で併設型,また,中部地区になりますけれども,県立清水南高等学校で併設型の中高一貫教育校が開校します。したがって来年度2校またスタートすることになります。沼津市立沼津高等学校は,全面改築をする予定でいます。また校長先生は民間の方を採用するということで全国的にも話題を呼んでいる学校です。

<中高一貫教育の基本方針>

 次に,本校の中高一貫教育の理念についてお話をしたいと思います。

  1. 教育目標

     最初に教育目標についてお話をさせてください。教育目標を定めるに当たって,3つのことを考えました。

     第1に,中高一貫教育校になってもこれまでの本校の伝統を維持したい。すなわち私たちの学校の校訓は「高い知性(知),豊かな心(仁),たくましい力(勇)」の育成を掲げてきたわけですが,この精神をずっと引き継ぎたいということを考えました。

     第2は,新学習指導要領のねらいに沿った教育を推進すること。すなわち,個性の伸長はもとより,「生きる力」,「豊かな人間性」を育成するということがもっと大事である。その精神を生かしたいと考えました。

     第3は,本県では中高一貫教育を推進するに当たって「静岡県中高一貫教育研究会議」を県が設置しました。いろいろな各界各層の方が委員になって提言をしたわけですが,その最終提言の中に普通科高校はこうあってほしいという提言があります。そこには「普通科タイプの学校にあっては社会貢献への強い意志と使命感を持った有為な人材を育てる」ことが中高一貫教育の類型として掲げられました。

     本校の伝統,新学習指導要領,それから最終報告,この3つの精神を引き継いで,教育目標を「高い知性,豊かな人間性,社会貢献への高い志とたくましい力をもち,国際社会においてリーダーとして輝く人材の育成をめざす。」と新たに定めました。

  2. 6年間を2+2+2の発達区分に分けた教育理念

     さて6年間をどのように教育していくか。これは非常に難しい問題です。

     6年聞の発達区分については,様々な議論があり,また個々によって大分異なります。
     中高一貫教育校であっても全国的ないろいろな学校の様子を見ますと,6年を3+3あるいは4+2,あるいは2+3+1等の区分を考えて,いろいろな指導を考えている県があります。私たちは2+2+2に分けて教育をしていこうと考えました。

     2+2+2の教育を入学式以来皆さんに説明をする時にこんな説明をさせていただいています。
     6年間それぞれの小学校で育った若々しい苗木が浜松西高校中等部という肥沃な土地に植え替えられました。
     最初の2年聞は肥沃な大地から栄養分をいっぱい吸い上げることができるように,また,厳しい風雨に耐えられるようにしっかりと大地に根を張る時期です,その根とは,高い知性,豊かな心,たくましい力という本校が育てたい力の基礎・基本といってもいいと思います。

     高い知性の基礎・基本は何でしょうか。何よりも知的好奇心を養うことです。それは学ぶ楽しさを経験し,学ぶ喜びを知ることが欠かせません。さらに授業を真剣に受ける態度あるいは学びの方法を身につけることです。
     心の豊かさとはまず,命の大切さや自分自身の大切さを知ることです。さらに異なるものを理解し受け入れる寛容さです。
     たくましい力,それは大変なことでも積極的にチャレンジする力,つらいことを乗り越える力,大きな壁や障害に勇気を持って立ち向かう力,怠けようとする心やくじけてしまいそうな心に打ち克つ力等々です。

     次の2年間は,自分という木をしっかりたて,太い幹に成長させる時期です。
     この時期は様々なことに興味を持ち,幅広い経験を重ね,厳しい鍛錬を乗り越え,将来花を咲かせ素晴らしい実を実らせるために,さらにしっかり根をがっちりと張ること,太い幹に成長させる時期です。
     科学の不思議さ,世界の平和,文化,あるいは命の神秘さ,日本の文化,環境・福祉など様々なことに関心を持ち自分から積極的に学ぶことが大切です。自己確立の時期と考えていいと思います。

     そして最後の2年間は,将来自分に最も適した得意な分野での国際社会でリーダーとして輝く人材となるための必要な力,そして大学進学という超えなければいけないハードルを越す力,その2つの力を十分に鍛える時期です。

<特色ある教育活動>

 さて,このように考えて本校では特色ある教育活動を行っています。4月8日に開校・入学式を行ってから約半年が過ぎようとしています。順風満帆とまでは言えませんが,まずは順調に滑り出しをしました。学校中が初々しい中等部の1年生を迎えて,新しい息吹が感じられます。

 中等部の生徒の登校の様子ですけれども,学校に来ますと最後に東坂という坂,120メートルぐらいあるでしょうか,中等部の子どもたちは自転車通学を許可していませんので歩いて登校します。最後に重い鞄を背負って,部活の生徒はスポーツバッグを抱えて本当にえっちらおっちらと上がってきます。大丈夫かなと声を掛けますと「先生,もう慣れました」と元気な声が返ってきます。

  1. 特色ある教育

     それでは,本校一貫教育の特色ある教育についてご説明させていただきます。
     3つの柱がありますが,第1の柱は「基礎・基本の確実な定着を図る」こと,第2の柱は「問題解決能力や表現力を育てる教育課程を編成すること」で,第3の柱が「高い志と豊かな心を育てる」ことです。

    • 基礎・基本の確実な定着を図る

       第1の,基礎・基本の確実な定着を図るために,一人ひとりの生徒に対して丁寧な学習指導を行います。そのために授業展開において3つの特色があります。

       1点目は,1単位時間の弾力的な対応です。
       通常であれば50分の授業ですけれど,1時間を55分の授業を行っています。写真左は,社会科の授業です。よく手が上がっています。右は,パソコン室での技術の授業です。高校の教員とTTで授業を行っています。

       2点目は,「少人数集団による指導」です。
       英語と数学の授業では1つのクラスを2つに分けて,40人を20人ずつの小集団に分けて指導を行っています。左が英語の授業,高校の先生による授業です。右が数学の授業です。小学校の算数とは異なりかなり難しい内容になりますので,丁寧にとりこぼしのないようにいろいろな質問を聞きながら指導を行っています。

       3点目は,6年間を見通した指導計画に基づく授業を行うことです。
       本校は6年間の中高一貫教育校ですので,一貫した教育理念の下に,中学校と高等学校で学ぶ学習内容に一貫性を持たせて授業展開を行っています。そのために6年間を通した指導計画書,シラバスというものを作っています。

       また,生徒たちには各学年でどんな勉強をするのかという勉強の学習計画表というものを作って配っています。子どもたちは,これを自分の机の前に貼って,日々の家庭での学習に役立てています。

    • 問題解決能力や表現力を育てる教育課程編成

       第2の特色は,問題解決能力や表現力を育てるための教育課程上の工夫です。

       1点目は,数理分野をのばすための工夫です。
       中等部の2年・3年の選択教科は,全員が,理科と数学を選択します。またそれに対応して高校でも様々な選択教科・科目を設け,生徒の多様な興味・関心に対応できるようにと考えています。写真は中等部1年生の理科の授業ですけれども,実験や観察を重視し,そこから科学的なものの見方や考え方が育つようにと考えています。理科の実験の授業では,高校の教員が実験の手伝いをしています。

       2点目は,国際社会で必要になる表現力やコミュニケーション能力を育てるための工夫です。写真は中等部の「表現」の授業ですが,中等部では教科「表現」を独自に置いています。英語や日本語で,読むこと・書くこと・聞くこと・話すことに力を入れた授業を実施しています。高校では教科「コミュニケーション」を設け,中等部で学んだ表現をさらに発展させていきたいと考えています。

       3点目は,新しく設けられた「総合的な学習の時間」です。
       この時間は,本校の教育目標に沿い,問題解決能力や表現力を総合的に育てる時間とし,その名称を「探求と表現」と位置づけました。6年間一貫したテーマで実施をします。課題を発見し,科学的にそれを調べ,論理的にまとめて表現し,これらの活動を通して自分の生き方を見つけることを目標にしています。写真は,生徒が自分の出身の小学校や地域について調べたことを発表している様子です。

    • 高い志と豊かな心を育てる

       第3の特色は,「高い志と豊かな心を育てる」ことです。
       学習面だけではなく,将来のリーダーとして,思いやり,寛容さ,また,たくましさなど豊かな心を,あるいは自らの在り方生き方を考える中で志を育てる教育にも力を注ぎます。次のような3つの教育活動を考えています。

       1点目は,思いやりと感動する心を育てる交流教室です。
       様々な立場の人と交流する中で,これらの基盤を作っていきたいと思っています。写真は6月に実施しました「交流教室」のアイマスク体験と車いす体験の様子です。この他に,本校と隣接する鴨江小学校の児童との交流あるいは地域の人々と語る会あるいは父母と語る会などを行っています。

       2点目は,自らの生き方を考察する「進路探求」です。
       本校の中等部の生徒には高校入試はありませんので,はじめから6年先の高校卒業後の自らの進路を考えることができます。社会全体に目を向けさせ,様々な職業やよりよい社会作りを目指しての活動などに参加させ自らの生き方を考えさせたいと思っています。既に本校では,企業・研究機関訪間や大学教授による授業などを行っています。写真は,6月に行った企業研究施設の訪間の様子です。生徒は物作りの大切さや働くことの意義を感じてくれたようです。

       最近のうれしいニュースにノーベル物理学賞の小柴先生の受賞がありました。その後ろ側で支えていた企業というのが浜松にあります。浜松ホトニクスという会社ですけれども,そこの企業にも私たち中等部の生徒は行かせていただいて,光電子倍増管というものを見学して来ました。

       3点目は,たくましい力を育てる学校行事や部活動です。
       勉強だけではなく,部活動や行事などにも全力で取り組む,心身共にたくましい生徒を育てたいと考えています。本校は創立以来文武両道を掲げ,原則として部活動は全員加入させています。行事においても,現代の子どもたちに欠けていると思われる「苦しくてもがんばろう」というたくましい力を育てる行事や生徒が主体となって運営する行事作りを考えています。

  2. 交流

     さて,交流についてお話をしたいと思います。生徒の交流と教師の交流についてお話しします。

    • 生徒の交流

       最初に生徒の交流ですけれども,生徒の交流の主なものは,ただ今紹介しました部活動と学校行事です。学校行事ではこれまでに,対面式,コーラスコンクール,文化祭,体育祭などにおいてよい交流が持てました。
       今年はまだ実現していませんが高校生が中学生の勉強の指導をする,そういうような場面も作りたいなと思っています。

    • 教師の交流

       教師の交流ですが,職員室も教材研修室も職員会議,分掌会議,教科会議も一緒にやっています。その良いところは,互いに教え合い刺激を与え合い情報交換をするところにあります。

       また,中高一貫教育を協力してやるんだという共通の意識を育てることにもなります。教科指導はもとより生徒指導,進路指導においても共通理解ができます。

       現在中等部の教員の8人が高等部へ,高等部の教員9人が中等部の授業を受け持っています。このことは,中高一貫教育校では最も重要な役割を担っているかもしれません。それは,高校入試のない,切れ目のない,一つ理念の下における一貫教育を最も重要な「授業」ということについて貫くからです。お互い教え合い刺激を与え合っています。

<保護者の願い>

 さて,保護者の方々が本校中高一貫教育に期待することは何か。
 皆さんが新しい広島県の中高一貫教育校に期待することは何か。
 私どもは保護者の願いを知るために,入学式直後に保護者の方々から「本校の教育に対する期待と願い」を書いていただきました。その中の主なものをご紹介したいと思います。

  1. 学び,学力

     学び,学力については,

    • 生きていく力と技と知恵を,体験を通して頭と身体にしみこませる教育
    • 物事の本質を知る教育
    • 学習することが楽しく常に探求心を養う教育
    • 広く世界に目を向け,自分は何ができるかを考える力を育てる教育
  2. 自己発見,自己実現

     自己発見,自己実現については,

    • 色々な体験を通して自分の道,目標を見つけ実現のための努力をする。
    • 自分のよさ,好きなこと,特技などを気づかせたい。
    • 学ぶ喜びを味わえる子ども,広い視野で物事をとらえられる子ども,6年間で自分の将来の夢を持てる子どもになってほしい。
  3. 学校生活

     学校生活については,

    • のびのびと楽しい学校生活を送らせたい。
    • 6学年の縦割りの行事でふれあいをさせたい。
    • 奥の深い学校生活を通して,一生握りしめておきたい人間関係を(生徒・教師)築かせたい。

とありました。

<「ゆとり」を生かした教育>

 私たちはこれらの保護者の方々のご希望に沿うように特色ある教育を展開しているわけですが,私はもう少し違った視点でもっともっといろいろなチャレンジをしてみたいなというように今考えています。
 その私が考えている別の具体的内容についてすこしご紹介をしたいと思います。

 第1点は,読書の習憤を身につけること。
 読書の楽しみを知ることの大切さは誰もがいわれることですが,本校では中等部100選,高等部100選から必読書30冊,自由図書70冊を卒業までに読ませたいと思っています。

 2点目,卒業までに全員が英検2級を取得すること。
 ツールとして使える英会話能力を身につけること。これはこれからの国際社会に生きる人間にとって最も大事なことと考えています。文化・芸術・科学分野で一流の方との出会いや体験を通して驚き・発見・感動の体験をさせたい。このような企画を随所に設けたいというように考えています。

 また,生徒と教師が作るサロン。先生方と子どもたちが接する機会は授業の場だけではありません。もちろん部活動の場もありますが,私はもう少しリラックスした形で,同じ立場で子どもたちといろいろな意見が交換できるといいなと。
 今,本校では図書館で「オープンスペースデイ」という催しをしていますが,図書館を利用して,子どもや先生方はいろいろなタレント(才能)がありますので,そこで自由に発表していただいて,議論を戦わす,そういうようなサロンを子どもたちと先生方に企画させたいというように思っています。

 あるいは名言,名句,名詩などの暗唱。
 丸暗記させることに反対の意見もあります。しかし,皆さんの中でもこういう経験がおありだろうというように思います。国語の授業で暗記した詩,あるいは音楽の授業で覚えたドイツ語の歌,社会の授業で覚えた憲法の前文あるいは英語の授業で暗記したリンカーンの演説など。
 わたくしはこれからの国際社会に生きる人間として日本の文化であるとかあるいは世界の文化であるとか,そういうことが口をついて出てくるような教養を身に付けてほしいというように考えています。

 その他,講演会,弁論大会,あるいはたくましい力を養う浜名湖一周のロングウォークなどを検討しています。

<平成14年度中等部入学者選抜の状況>

 それでは平成14年度中等部入学者選抜の概況についてお話をしたいと思います。今年行われた入試の概況をお話しします。

 募集定員は4クラス160人です。

 2番目に学区ですが,全県1学区。基本的には県下どこから来てもよいわけですが,中学生の発達状況から考えて,自宅から1時間程度で通える範囲というお願いをしています。ただし実際には,一番遠いところからは1時間半かけて来ている生徒がございます。

 昨年の検査実施日は,平成14年1月12日と13日でした。今年は1月18日と19日の両日で行います。

 検査方法につきましては,総合適性検査,作文,面接,調査書等となっています。
 検査の内容について,少しご説明をします。

 総合適性検査というのは何か,よく聞かれるわけですが,法令により中高一貫教育校においては学力検査をしてはいけないということになっています。これはいわゆるアチーブメントテスト,学力検査ではありませんけども,子どもたちの生活体験であるとか,あるいは興味・関心であるとか,そういうものを総合して子どもたちがどう課題を解決できるかということを実際の生活に即して問う問題です。それが総合適性検査です。100分という時間をかけて行います。

 作文もやはり同様の考え方で実施しますが,作文の題を3つ出して,子どもたちに選択をさせて答えさせています。60分間,800字程度の作文を書いてもらっています。

 面接は2回行います。集団面接15分,グループ面接で討論をさせています。これが30分。5人ずつを2人の面接官が担当しました。

 志願者は131の小学校から1,009人の応募がありました。浜松市内からの応募が81%の815人でした。

 入学者ですが,入学者総数は159人。1名定員から足りないですが,合格者160人出しましたが,保護者の転勤で合格後に出てしまいました。市内からの入学者が121人,市外からが38人。小学校数にして71校からの合格者がありました。1校の最大人数は8人でした。

<一貫教育のメリット>

 一貫教育のメリットですが,これはおそらく会場の皆さんはいろいろな議論の中に加わって中高一貫教育校にしてどういうメリットがあるのかということを熟知されていることと思いますが,私が感じていることを4点だけお話しさせていただきます。

 第1は,これが最も大きなメリットだと考えられますが,高校入試がないことです。
 高校入試がないのが何故メリットか。
 選抜試験を受けることや調査書によって評価されることから解放される,精神的負担がないことが一つ。それから,入試対策ということで継続的な学習が寸断されることがないということです。

 第2は,現在高等部へは52の中学校から入学生がありますが,これが1つの中等部からあがってくるということです。
 どの高校も普通,入学してくればオリエンテーションをやります。あるいは担任は生徒一人ひとりのことを理解するということで面接を行ったり,家庭訪問を行ったり色々な手だてを講じます。また子どもたちに早く学校に慣れさせるための宿泊訓練等を計画したりします。そういう時間がなくて済みます。
 高等部の先生方は日頃から中等部の子どもたちに接していますので,子どもたちのことを十分熟知しているということになると私は期待しています。

 3つ目は,交流による影響です。
 先程もご紹介しましたが,生徒と生徒,教師と教師,色々な交流があります。共通理解を得るために本当に良い効果をもたらしています。

 今どの中学校も,高等学校も悩みの一つは,中学校までの指導方法や評価方法と高等学校のそれとが違うことです。
 中学校の教師は,もっと中学校でやっていることを高校の先生に理解してほしいと言います。高等学校の先生は,中学校では勉強の習慣をつけてきてほしい,基礎学力をもっとつけてきてほしいと言います。
 中高一貫教育校でもこの問題はあるわけですが,お互いに交流する中で共通理解ができていきます。

 4つ目は,まとめになるかもしれませんが,何よりも6年間の一貫した理念により,6年間を見通した教育が貫けるということです。
 こういう生徒を育てたい。6年間で育てられるのです。こういう生徒を育てるために6年間のどこで何をやればいいのか。6年間貫いて何かをやることもできます。
 3年間・3年間で育てる教育と,6年間を見通して行う教育とは違います。
 工夫次第では学力や教養を育てるにも,人間性を育成する上でも,志やたくましさを育てる上にも色々なチャレンジができると考えています。

<一貫教育を実施して半年の課題>

 一貫教育を実施して半年ですが,その間私が実感して反省させられています課題3点だけ簡単にお話しします。

 一番大きな課題は,中高一貫教育のメリットを生かし,且つ6年一貫した教育理念に基づく学習計画をいかに作るかということです。
 既設の高校に併設中学を設置したわけですが,高校と中学では指導方法,評価方法ともずいぶん違います。いくら交流があってもなかなかかみ合わない点があります。これは大きな問題です。

 2点目は,中高一貫の教育理念・教育目標のめざす人間づくりと高校卒業時における進路保障の関係です。
 保護者の方々はどちらも期待しています。学校の先生方もどちらも欲張りで求めようとするわけです。その時にその両方をいかにマッチさせて両方とも生かせるような教育を展開するためにはどうしたらいいか。これが大きな課題です。

 3点目,以外に大きな問題ですが,部活動です。
 これは広島県では新しく中学校と高等学校を作られるので問題ないかもしれませんが,既設の高校に中学校を併設することになると,本校では現在高校は10クラスありますけれど,これが5クラスになります。
 半分になってしまうということは,教員の数も半分になってしまいます。部活動を今のまま置くわけにはいきません。という大きな問題が今起きています。

以上3点です。

<終わりに>

 終わりに,今本校で合い言葉にしている言葉,それをご紹介したいと思います。
 先生方にはいつも言っています。「どんな改革も100%よいわけではない。改善されよくなると考えるから実行するわけだけどもデメリットや課題も当然あります。特に課題は段々と見えてきます。デメリットはどうしたら最小限にすることができるか。メリットをどのように生かせるかを大胆に示すことが本校の役割だ。」と。

 今の合い言葉は,「マイナスをゼロに,プラスを倍にするチャレンジを大胆にしよう」ということです。

 生徒たちの未来が輝くように中高一貫教育で夢を実現させたいと今考えています。
 半年のチャレンジをご紹介しました。後ほどご質問があればお聞きしたいと思います。どうもありがとうございました。

<質疑応答>

 福山市市立福山高等学校で教員をしています。うちの高校も併設型の中高一貫教育校をめざしているのですが,3点ほど校長先生の方にお聞きいたします。
 高校入試がないことのメリットもあるんですけど,高校入試がないために学習しないのではないかという不安の方もあります。
 1点目は,その辺の対策をいかにされていこうとされているのかということについてです。
 2点目は,55分授業の2学期制を敷かれているということですけどそのメリットを教えていただきたいということです。
 3点目は,10クラスが5クラスに減って中学校ができるということですが,中学校の先生は高校の先生が直接中学校へ行かれるのか,それとも他の中学校から来られたのか,その辺をお聞かせいただければと思います。
 よろしくお願いいたします。

 それではただいま3点ほどご質問がありましたのでそのことについてお話をしたいと思います。

 1点目の高校入試がないということはメリットなんだけれども,中だるみで学習しなくなるのではないか。これはよく言われます。
 実際に私どもの学校で私立の中高一貫教育校を何回も訪問させていただいています。各私立の中高一貫教育校であっても「6年間というのは先生長いですよ。その6年間の中でどうしても中だるみは起こってきます。」という悩みを語られる学校が多いです。
 実際私もその心配をしないではありません。ただ,今の子どもたちの様子を見ていて私は心配をしてはいません。

 私たちは初期指導と言っていますけれども,子どもたちに学習というのはどうやるべきなのか,あるいは学ぶ意味というのはどういうところにあるのか,私たちはなぜ学ぶんだろうか,あるいは学習の方法というのは具体的にどうやったらいいのか入学後早いうちにきちんと教えることが大切です。

 本校では,チャレンジセミナーといって,中学生が入学すると2泊3日で寮に泊まって生活をともにしながら,先生方がその指導をします。あるいはホームルーム活動,あるいは先程の総合的な学習の時間のなかで学びの持つ意味,これらについて私も話しをさせてもらいますし,教科の先生方も話をします。

 その結果,子どもたちの様子を見ていますと,本当に勉強を一生懸命やってくれています。心配がないわけではありませんけれど,私はこれについては教員の指導力だと思っています。先生方がいかにこれから指導していくか,その力量が問われることだろうと思います。心配が決してないわけではありません。

 2点目ですが,55分2学期制のメリットは何かということですけれども,今は具体的に1年生だけ入っているわけですが,その子どもたちの様子を見ていますと55分という授業が長いかなと心配をしていたわけですが,全然そういうことを意識させません。

 むしろ先生方が50分よりも5分だけですけれども,長い時間丁寧に教えることができるという感想を持っています。子どもたちは55分だから負担ということはもう一切ありません。
 55分2学期制というのは高等学校側の立場からいうと授業時間を確保するという重要なメリットがあると思っています。

 3点目の高校の教員が中学へ行くのか。
 実は私は大変悩んでいるわけですけれども来年高校は5学級の募集になってしまいます。教員は,単純にいうと1クラス減ると2人減るんですね。そうすると高校の教員は10人減ってしまうんですよね。もちろんその分中等部の先生方が来るじゃないか。そのとおりです。

 しかしこの教員の異動ということは非常に難しい問題です。非常に悩んでいるんですけれど,今のご質問に高校の先生が中学校の先生として行くのかというお話しがありました。実際にはどこの県も同じですけれど,高等学校と中学校,これは中等教育学校ではありませんので,はっきり中学校は中学校に籍をおいた教員なんですね。高等学校は高等学校に籍を置いた教員なんです。
 したがって,そこのところをどうするのか問題ですけども,実状をお話しします。
 昨年まで高校にいた先生で中学校に行っている先生は1人だけです。これは中学校に籍をおきました。身分を切り替えて高校の先生だった方が一人行っています。中学校にいた方で高校に来ている方はおりません。

 ただし,静岡県では中高交流というのをやっていますので,中学校の先生が高校へ行って3年間学んできます。高等学校の先生が中学校へ行って3年間学んできます。そういう先生方が本校には6名か7名います。そういう先生方に積極的に異動してもらって本校でやってもらっています。
 来年も中学校でやりたい先生はいるかという希望を高校もとって,もしいればそういう異動も考えたいと思っています。

 失礼します。浜松の方には私立の中高中高一貫教育校もたくさんあると思いますが,公立であることのメリットというのは何かあるのでしょうか。ずっと私立の先生は替わらなくて,それで人気があったりしますよね。
 その点,公立の場合は替わられる先生はないのでしょうか。
 それともう一つ,先程ゆとり教育のところで校長先生が英検2級を目指したいとおっしゃいました。もうすぐ文部科学省認定ではなくなりますが,それでもまだ英検に価値がありとお考えですか。

 公立であることのメリットって何だろうかというのは,なかなか難しい問題であろうと思います。
 私学であれ,公立であれそれぞれの学校でどういう生徒を育てたいかということをそれぞれの学校が真剣に考えていると思う。例えば,私立の学校であっても,人間教育をしようということを考えるだろうと思います。公立の学校だって同じです。

 ただし,私立と公立,この場に私立の関係の方がいらっしゃるかもしれません。もしかしたらお前何考えているのかと怒られるかもしれませんが,でも経営っていうことがありますよね。その経営ということにおいて,やはり私学の先生方は,公立ほど自由に理想を追って行うということはやっぱり難しい。公立の方ができるだろうというふうに思っています。

 2点目は人材の問題もありますね。
 私立の中高一貫教育校であれば,今言われたように20年でも30年でも同じ先生方が同じ学校におられる。いろいろな方が入ってきて交流するということにおいて先生方同士の質を高めていくということは,私は公立高校のいいところではないかなと思っています。

 それから3点目,公立の中高一貫教育校のいいところというのは,他の公立の中学校や高等学校への大きな影響,自分たちがやってきた試みを還元することができると思っています。
 本校の中等部では,今こんなことを考えてこんなことをやっています。高等部ではこんなことやってこんなこと考えています。先程も大きな課題といいましたが,中学校と高等学校では指導方法や評価方法がずいぶん違います。先生方すごく悩んでいますけど,ずいぶん違うのです。その時どうやって中学から高校へ結んでいくんだろうかということを私たちの学校でやった実験を公立の中学校や公立の高等学校にお示しすることができるだろう。そういう利点もあるだろうと思っています。

 それから英検2級のことですけれども,先程言った私がしたいと考えているいろいろな試みの中で英検2級については実は高等学校の先生方に反対されています。
 これはなぜかというと,「その資格を目指すよりも日常の本校における中学1年生から高校3年生までの表現,あるいは英語,国語の中で目指していく目標がきちんとある。その目標に即して学年毎させる,毎時間の授業を行っていく。その目標がどれだけ達成されているかを検証するようなやり方でコミュニケーション能力を付けていく方が有益です。英検2級という資格を取らせるよりもそういう形でコミュニケーション能力をつけていきましょう。」ということが教員に中から出ています。
 したがって英検2級というのを私は思っておりましたけれど,そうなるかどうか分かりません。ただし,コミュニケーション能力は付けたいと思っています。

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