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教育講演会20020419記録

教育講演会 ~新たな「教育県ひろしま」の創造~

演題 「グローバル化時代に活躍できる人材の育成について」
講師  マーク フィールズ氏(マツダ株式会社 代表取締役社長)
日時 平成14年4月19日(金曜日)15時00分~16時30分
会場  広島国際会議場 ダリア

講演内容

 <あいさつ>
 <本日のアジェンダ(議題)>
 <変革の必要性>
 <リーダーシップ>
 <リーダーシップの育成>
 <質疑応答>

<あいさつ> 

みなさん,こんにちは。マツダのマーク・フィールズです。本日はお招きいただきまして大変光栄です。

 私は,ある理由により,教育の専門家の方々や,関心の高い方々とお話する今日の機会を楽しみにしていました。と申しますのは,私自身,企業を発展させるためには,また特に国家を発展させるためには教育が非常に重要だと信じているからです。

 本日は,この2~3年,変革と将来の基盤作りを目指してマツダの中で実際に行ってきた教育についてお話したいと思います。
 また,本日のミーティングを私自身にとっても,お集まりの皆さんから何かを学ぶことのできる絶好の機会だと思っています。

 本日お話する内容が皆様にとって何かの参考になれば幸いです。

<本日のアジェンダ(議題)>

 4年前広島に来て以来,マツダの先輩や同僚に対する尊敬の念は増すばかりです。塗装工場から役員室まで,彼らは何もないところから今のマツダを築き上げてきたのです。すなわち,文字どおり原爆の灰の中から130を超える国々で感心される車を作る会社になったのです。これには信じられないほどの大変な働きと創意工夫がありました。マツダの社員は,その多くが広島の人ですが,奇跡的な働きをしたのです。

 マツダの強みの1つは,いつも,ある計画を支持し,ものすごい速さと正確さで実行する能力です。私たちは品質と改善に対して非常に専念しています。そしてマツダは,日本の自動車業界の中で,いつも勇気を持って変革していく先見の明のある夢追い人として目立ってきました。その結果は,世界で最も売れているスポーツカーであるロードスターや,独自のロータリーエンジンを搭載したRX-7のような個性的で魅力のある商品として現れています。にもかかわらず,私が現在の役職に就いた時は,マツダが方向性を見失っているのが誰の目にも明らかでした。企業として注力すべき焦点が定まっていなかったのです。組合との関係もよくありませんでした。全面的な変革が避けられない状態でした。私たちがマツダで直面している課題の多くは日本社会いたるところの組織で同じように起こっていることでした。

 そしてその解決は,フォードの経営陣も共有していましたが,マツダの風土をフォード流に変えればよいといったような簡単なものではありませんでした。マツダは82年もの独自の伝統を持っていましたし,また,それは日本の自動車産業の強さの現われでもあったわけです。私は,その伝統を大切にしていますし,その強さを土台にしていこうと思っています。と同時に我々はその強みが持っているいくつかの問題点も認識し解決していかなければなりませんでした。これは何も我が社を自慢しているのではないことを申し上げておきたいと思います。もちろん仲間を誇りには思っていますが,これは本日の演題である「グローバル化時代に活躍できる人材の育成について」の導入としてお話しました。

 皆さんは,私が学んだ以上にマツダや日本をご存知です。今日のビジネス環境において挑戦的な課題をどのように達成すべきかという重要な問題は,「変革」「リーダーシップ」「教育」という問題に集中していることはより明白です。問題は,日本人が変革を拒んでいるのではなく,現状に執着しているわけでもありません。なぜならここ10年間や50年間に物事がどう変わったかをご覧いただければお分かりと思います。

 挑戦しようと主張すること自体は変革ではありません。日本企業は,変革の方向を示すこと,言い換えれば強力で明確な方向性を提示するとも言えますが,そして人々を変革するよう動機付けるといったようなことが,しばしば直面する問題となっています。そこにリーダーシップの必要性が生じてくるわけです。

 リーダーシップは,まっすぐな線をたどるように物事が順調に進んでいる場合は,問題になりません。それはマネジメントの問題ですし,舵輪をしっかり握っていればよいのです。しかし,方向を変えなければいけない,それも鋭角に変えなければいけない時はどうでしょうか,社内で「非連続的変革」と言っていることを実行しなければなりません。

 このことが,マツダや日本全体の企業をここ10年間ぐらいの間トラブルに巻き込んでいました。なぜなら,常に変わっている市場に対して柔軟かつ素早く対応する必要性が,今日の世界では重要な要素になっているからです。

 マツダでは,「変革」,「リーダーシップ」,「教育」というシンプルなキーワードを徹底させるために相当な時間と労力と費用を費やしてきました。

 本日は私たちが何をしてきたかについて少し突っ込んでお話しますが,その概要を紹介しましょう。

 まず,現在の環境,とりわけ自動車産業を取り巻く環境についてお話します。変革の波は物事をどんどん変えていっていますし,私たち自身も継続的な変革が必要であり,そのためには学び続けることが重要だといったことをお話します。

 そして,そういう時代において重要なコンセプトは「リーダーシップ」だと考えていますが,変化し続ける環境に対応するために,実際に私がマツダで行ってきたこと,つまり“社内の全ての階層にリーダーを育成する”ことについてお話します。

 そして,社員の知識やスキルを育成するために何を教え,人事施策と組み合せながらどのように教育とコミュニケーションプログラムを構築していったかについてもお話したいと思います。

 そして最後に,私自身が教育というものをどう考えているかについて,いささか愚見を述べさせていただいてまとめに代えたいと思っています。

<変革の必要性>

変革の必要性
変革の必要性

  それではまず,全体の枠組み,すなわちグローバル時代におけるビジネスについてお話しておきたいと思います。

 ここでお話する変化は多くの事象のうちのほんのわずかです。自動車業界に特化したものでもありません。但し,私の考えでは,多くの企業が人材育成と教育について同じような課題に直面していると思います。

 まず,マーケット,特に日本も含め先進国と言われる国々についてですが,大衆消費社会・右肩上がりの成長経済は終わりました。消費者ニーズは多様化し国際化・IT化が進んでいます。

 こういったマーケットの変化に対応して,企業とりわけ我々メーカーの戦略も少品種大量生産戦略から,多様化,複雑化した市場ニーズに敏速に対応した戦略,価格・機能面で国際力のある商品の導入戦略へと変わってきました。

 それにより企業目標も変わってきました。以前はいかに他社よりたくさん売るか,すなわちナンバーワン企業を目指していました。しかし,現在は規模はあまり問題ではありません。むしろ,利益性やマーケットにおけるポジショニングが重要になってきました。すなわち,他社にないブランド・商品・サービスを適正価格で提供することです。

 次に,企業の組織にも変化が現れています。以前は決められたことをいかに効率良く運用するかが大切な点でしたが,最近は,めまぐるしく変化する状況に素早く対応することのできる柔軟性や機動力が大切になってきています。

 ここでITやインターネットに関することをお話しないわけにはいかないと思います。陳腐化した言い方かもしれませんが,ITは全てを変えます。

  • 間もなく,ウェブ上での買物と従来の店で買物をすることに差がなくなるでしょう。また,オンライン上に現在よりもはるかに多くの市場情報が掲載されることによって,オンラインショッピングに全く支障がなくなると思います。
  • インターネットは,お客様により幅広い地域の在庫へのアクセスを可能にし,商店街のお店を通さずにメーカーへ注文できるようになります。お客様とメーカーとの直接のやりとりが可能になり,高い在庫コストをなくすことができます。
  • また,インターネットは,お客様の保有期間全体を通じて,カスタマーリレーションを支援し,また,それを築く上で,重要な役割を果たすことになるでしょう。また,お客様,お店そしてメーカーとのコミュニケーションを促進することによって,お客様にかつてないほどの利便性を提供することができます。

 そして,国際化の重要な側面として最後に申し上げたいことは,今後10年の間に,各国政府間の規制基準の調整が様々な面で行われていることでしょう。そしてそれは,国際的な商品開発という面で大きな影響を及ぼし,自動車業界においては特別な影響を及ぼすと思われます。

 グローバルビジネスにおける多くの変化は,特に自動車業界においては,実際に革命的な変革をもたらしています。

変革の必要性
 そのような状況は,企業の社員も明確にそして大変急激に変わる必要性に迫られています。このスライドにある表現は,特に日本において当てはまるものだと思います。
 スケール・効率が重視された時代にあっては,
  • 組織の和を乱さず,人間関係を重視し,関係者全員の納得を得ながら仕事を進めていく。
  • 部下の立場では,上司の命令・指示に良く従い,従順で管理しやすい人材
  • 管理者の立場では,効率を大きな判断基準とし,組織を機能的に管理できる人材

 こういった人材であれば,会社業績に十分貢献することができました。
 但し,現在では不十分です。念のため申し上げておきますが,あくまで十分ではないのであって,不必要という訳ではありません。

 しかし今日では,これに加えて,何かが必要なのです。
 協調性や規律,効率といった要素は企業では欠かすことのできない重要な要素です。但し,現在は専門性を有する人材,大きな行動力を発揮することができる人材が必要です。変化の激しい時代は,トップの指示を待っていたのでは時代の変化に柔軟に対応できません。会社ビジョンを理解し,それを達成するためには何をすればいいか自分自身で問題意識を持ち,課題を設定し,実際にその解決に取り組める人が必要です。

 今までは課題は与えられるものでした。それをどう解決するか,ようするに「How to」を考えればよかったのですが,今では課題はどんどん変化します。今何が大切か「What」を考え,それを課題として形成できる人材が企業の各層に必要なのです。

 したがって,管理者も効率的な組織運営をするだけでは,「What」を考える人材を活用しきれません。これは大きな変化です。昔は,今までのフレームワークでは処理できないことを提案してくる人材は,トラブルメーカー,ボートロッカー(ボートをゆする人)として疎んぜられました。日本のことわざ「出る杭は打たれる」を思い出します。そういった人材は通常画一的な管理を嫌います。

 ここで明らかなことは,述べてきたような環境の変化はスタッフとマネジメント双方に今までとは異なった枠組みを要求しているということです。そして「リーダーシップ」が全員にとってキーワードになるのです。

<リーダーシップ>

 変革をリードするリーダーは,次にあげているようなことができなければなりません。

  • 組織のビジョンを明確に示すことができる。
  • 個人の動機付けを図り,コミットの促進ができる。
  • 組織力を発揮することができる。
  • 個人的にも最大限に能力を発揮できる。

 このリーダーシップは,私がマツダを成功する組織に変革していくために実行したかった事柄を成すための基礎なのです。

 こういった変革をリードする人材を育成するためには,個人へ焦点を当てた教育だけでは不十分です。

 変革したいという情熱を持った人材だけで,変革へのドライブを起こすことは非常に困難です。なぜなら,一般に変革は心地よいものではなく,ほとんどの関係者は批判的で,サポートを得にくいからです。たとえ知識として何をしなければいけないか分かっていても,できるかどうか不安だからです。

 また,たとえできるだろうと思える状況でも,今まで慣れ親しんだ状況から離れるのは苦痛です。 その壁を突き破ることをサポートする仕組みが必要です。「実際に行う」ためには,行いやすい環境をつくらなければなりません。すなわち,

  • 組織全体で目指す方向が共有されている。
  • 価値観や行動規準を全員が知っている。
  • そしてきちんと具体的な目標が設定され進捗をフォローしている。
  • 官僚的でなく迅速に決定できる。
  • そして,常に外部に眼を向け,トレンドに先んじて次々と柔軟な対応を迅速に行っている。

 私はここで,「人」についてお話しました。リーダーは人材そのものです。「成功する組織」は,「人の成功」と同義語です。これが,私が特に人材育成に注力している理由です。

<リーダーシップの育成>

 前にお話しましたが,「リーダーは組織のビジョンを明確に示す」ということが,リーダーの1番目の要件です。

 また,柔軟性のある組織というものは,社員が会社のビジョンと方向性を理解し,先んじて手を打っていく,ということも申し上げました。

リーダーシップの育成
リーダーシップの育成
リーダーシップの育成
 このスライドは,我々のコーポレートビジョンを示しています。会社の方向性を決める一環として,このビジョンを全社に徹底しました。

 ビジョンと同様に,我々は社員に対して目指す方向に到達するための枠組みと方法を明確に説明しなければなりませんでした。
 その枠組みとして,「6つの重要課題」を設定しました。我々は今,意思決定をする際,これら6つの重要課題に照らし合わせ,我々が実行することは会社の計画に沿ったものであるか常に確認し,全体のビジネス活動に合わせていく努力を続けています。

 ここに6つの重要課題を掲載していますが,直接的に人に関わるということから,特に1番と6番について触れてみましょう。

 第1の重要課題,「将来を理解すること」ですが,これは,マツダの社員全員が,会社の長期ビジョンと短期的な経営目標を理解していなくてはならないということを意味します。そのためにも,会社がどの方向に進もうとしているのかを明らかにし,ビジョンを実現するために必要な戦略,施策を明確にコミュニケーションしていく必要があります。進むべき道を知り何をなすべきかが分かった集団ほど強いものはありません。それは,過去ではなく,将来に目を向ける会社を醸成します。

 第6の重要課題,「将来のため,社員の能力を開発すること」は,6つの重要課題の中でも最も重要なものです。人材は企業の成功と発展になくてはならないものです。しかも人的資源は,教育や社員の持つ可能性を最大限に発揮させてその価値を増大させることができるのです。

 2000年11月,我々はビジョンと6つの重要課題に沿って,ミレニアムプランと呼んでいます中期経営計画を策定しました。その計画は世界的な規模で,我々がどのように改革と事業再構築へ取り組むかを表しています。社員も,そして労働組合も,この計画をマツダの「成長」へ向けてのプランと理解して,能動的・主体的に取り組んでくれています。この計画の成功は,社員がこの計画をいかに深く理解し,支援し,実行するかにかかっています。

 具体的な証拠として,先週ですが,収益に関しまして上方修正をすることができました。ここにきて黒字へ転換してきたという画期的な状況が生まれてきました。

 したがって,人材育成については努力を惜しみません。これについては,後程少し詳しくお話しますが,マツダの社員一人一人が我々の経営戦略を他の人にも説明できるレベルで理解しています。

 さて,ビジョンを伝え方向性を決めるだけではリーダーとして不十分です。個人の動機付けを図り,共通する目標に対して全員が取り組んでいけるようにしなければなりません。

 そこで,社内「コミュニケーション」ツールを作り,日々強調することによって,会社の目標について全社員が共通認識を持っていることを確認しています。それに加え,わたし自身も社員と直接コミュニケーションを図るようにしています。

 以上述べたようなことを私はあらゆる機会を通じて社員に説いていきました。

Mark Fields Online
 このMark Fields Onlineをちょっとご紹介しましょう。私の個人ホームページをイントラネットに掲示しました。チャットルームも設け,社員からの質問を受け付けています。それによって,全員の意見に直接接することができますし,質問に必ず返事を送るよう試みています。また,そういったコミュニケーションを教育訓練プログラムを促進する機会としても利用しています。

 しかし,わたし達の主要なコミュニケーション及び教育活動は,全社に展開しているMBLDプログラムです。MBLDはMazda Business Leader Developmentの略です。これは,コミュニケーション戦略であると同時に人材育成戦略の核をなすものです。

 MBLDは,企業文化の変革という明確な目的があります。MBLDが狙うもの,その第1の目的は,会社の直面する重要課題,及びその課題を解決するための戦略を社員が理解するよう,促進することです。

 すなわち,ミレニアムプラン,6つの重要課題,そして企業ビジョンを教えていきました。MBLDの期間中,私たちはまた,社員のマインドに緊迫感を醸成しました。会社が将来成功を享受するために変革は必須であると,社員に理解してもらいたかったのです。変革の犠牲者になるのではなく,あくまでも変革を起こすイニシエーターとなることを意図しています。

 MBLDはまた,社員にどのような行動様式が要求されているか明確にするとともに,ビジネスへの理解を深めるプロセスを通じてリーダーシップ能力を強化し,社内の各層においてリーダーを育成する,という本質的な目的も持っています。

リーダーシップの育成
 MBLDを実行していくには,教育・研修方法において大幅な変革が必要でした。
 変革の遂行者であるリーダーの輩出がマツダにとって急務でありました。変革に抵抗する企業文化と,変革をどのように起こすか知らないマネジメントチームとが組み合わさった企業は,いかなる場合においても,最終的に命取りになると私は確信しています。そこで,私たちは,従来の研修とはおよそ趣を変えて運営にあたりました。その方法は「優秀なリーダーは優秀な教師でもある」です。まず,取締役全員が一堂に会して「何を社員に伝えていくか」,コンテンツ(情報の内容)とキーメッセージを吟味しました。その上で,アウトソーシング(業務を外注すること)した第三者ではなく,私自身と役員が教師となって,彼らにメッセージを伝えていったのです。

 次に,社員にこの研修を行なうにあたり,「カスケード(滝)」システムを用いました。私たちは,このやり方をリーダーティーチャーによるカスケードと呼んでいます。滝が下へ向けて力強く流れていくように,広く社員に経営の方向と意思を伝える最も効果的なやり方であると思っています。

 役員が主体となって,部長以上を参加者とするMBLD第1カスケードを行ないました。
 そして,間接社員全員が参加する第2カスケードでは,この部長や本部長が自ら教師(リーダー/ティーチャー)となり,彼ら自身の部下に対して同じようにメッセージを伝えていきました。この第2カスケードでは,役員が社員と直接対話するパートも設けました。これは役員と社員との間の壁を取り除くことにもなりました。

 このプログラムは,プロジェクトワークも取り入れています。
 研修には,社員が10人程度でチームを組み,特定のビジネステーマを自ら選び出して改善に取り組む「プロジェクトワーク」というプログラムが組み込まれています。言い換えれば,この教育を「アクション・ラーニング」に結び付け,一人一人の努力がどのような形で直接会社の業績に影響を与えているか,社員に示そうとしたのです。

 MBLDは2000年7月に開始しました。その年には間接部門の社員を中心として2日間の研修を1回あたり100人で100回,ほぼ1万人が参加しました。そして1000件を超すプロジェクトが活動しました。収益へも大きな貢献をしてくれていますが,それよりもなによりも,社員一人一人が変革の必要性を自覚し,主体的に行動を起こしてくれたことが最大の成果であったと考えています。優秀な成果をあげたチームに対して,順次,昼食を共にして懇談していますが,持続的に変革に取り組もうとする意欲が皆に渦巻いていることを感じます。意識の変革が日常業務レベルで定着し,文化へと昇華することを私は期待しています。

 2001年にはMBLD#2を行いましたし,現在MBLD#3が進行中です。

 教育プロセスを支援するために,新しい人事施策を開発しました。主として,これらの施策の一つ一つは以下の目的に沿っています。

  • 企業文化の変革
  • 人材育成の促進
  • 処遇の見直し

 それでは,我々が実行してきた人事施策について,いくつか例をご紹介しましょう。

 私たちはリーダーシップ・コンピテンシー(能力・適性)を用いて,私たちが成功するために必要な人材像・行動様式がどのようなものであるか,個々の社員に明確なイメージを示しました。また,これらのコンピテンシーは,会社の求める価値に沿って社員が何を伸ばしていけばいいか,明確にしています。

 リーダーシップ・コンピテンシーは,昨年の春の評定から幹部社員に導入したいわゆる360度評価において,不可欠な要素となっています。この360度評価では,上司,部下,そして同僚・関係先という360度の視点でリーダーシップ行動様式を図っていこうとしています。

 それを評価するにあたっては,できるだけ客観的に,そして個々人にとって改善に繋がる示唆が得られるものであることがベストです。私たちが長年人事制度として続けている,上司と部下との「話し合い制度」は,マネージャーに対して,リーダーシップ能力を向上しなければならないという動機付けになりますので,(リーダーシップ向上の)追加のツールとしても有効です。

リーダーシップの育成
 これが,マツダの10リーダーシップ・コンピテンシーです。

 これらの行動様式は,企業が現在必要としている人材像と密接な関連があります。すなわち

  • 専門的な知識と技能を備えた人材こそ「貢献」,「価値創造」ができます。
  • 会社のビジョンを理解・共鳴した上で,自分のオリジナリティを発揮して取り組める人(自律型人材)こそ「責任」,「リーダーシップ」,「変革」,「重点志向/意思決定」,「熟考/大局観」といったことが発揮できます。
  • 会社・職場の仲間に強い連帯感を持てる人材こそ「協力」,「地球観」において,高いレベルの行動様式がとれます。

 これは,全幹部社員に配布していますマウスパッドです。マツダのコーポレートビジョンと10リーダーシップ・コンピテンシーが印刷されています。彼らは,毎日パソコンの前に座るたびに,これらの行動様式を取らなければならないことを肝に銘じています。

 我々が実行した人材育成に関する施策です。
 この施策の背景としまして,かつてマツダではいわゆる「年功序列」制度がありました。過去においては非常にうまく機能していました。しかし,今日,競争が激化する経営環境においては,通常の年功序列の順番より早く,極めて優秀な人材を早期にリーダーシップが発揮できるポストに配置しなければなりません。これはビジネスの成功の成否を分けます。優秀な人材をこちらから見つけ,育てること,しかも早くからリーダーシップの育成に着手することが不可欠と,私は考えています。

 この考えの基に,マツダは昨年から,人材開発委員会(パーソナル・ディベロップメント・コミッティー),略称PDCを展開しています。PDCの目的の1つは,次代を担うリーダーを発掘し,計画的に育成することです。PDCの成功要素として,まさに経営陣が担当領域を超えて,総がかりで取り組み,多角的な視点や意見を出し合うことです。

リーダーシップの育成
 PDC審議の実際を少しお話してみましょう。まず,コミッティーメンバーに彼らの人事データが公開され,対象者の能力像,実績,強み,弱みが浮き彫りにされます。次に,「昇進可能性」をPDCメンバー全員で評価し,人材の絞込みを行います。次のステップとして,選んだ社員について,将来のポストをにらんだ詳細な育成計画を立て,実行していきます。

 PDCをもう少し下のレベルまで広げようとしています。既に,PDC2が動き始めています。私は,つまるところ,我々の後継者を見つけ育てておくこともリーダーの責任だと考えています。PDCは社内の各層からハイポテンシャルなリーダーを浮き彫りにし,次,あるいは次の次まで見通した人材の展望を開くものと確信しています。

 このように,登用が年功序列から離れて,PDCプロセスを用いて決定されていくと,処遇制度もリンクして改革しなければ,矛盾が起こってきます。部長に抜擢任命されたけれども,旧制度の職務等級で賃金が支払われる,というのでは,士気にも影響します。また,実績をあげてもその報いが正当に反映されない古い処遇制度から脱却しなければなりませんでした。したがって,2000年10月から幹部社員に対する人事処遇制度を変革したわけです。

 この点を,もう少しお話しておきましょう。従来のマツダの処遇は,個人と不可分の関係でした。どこの学校を出て,何年に入社し,経験を積み重ねて,職務等級が何級である,賃金は,その職務等級によって定められる,ということです。賃金は個人によって決められ,彼らが行っている仕事で決められていませんでした。新しい制度では,賃金は仕事と不可分の関係にしました。能力があり,仕事で成果を出せる社員は,年功に関係なく正当に処遇します。私たちの新しい制度は,中途入社の人でも不利にならないようにしています。
 最後に,今週からスタートした「リーディングマツダ21」と呼んでいる新しい研修について,少しお話したいと思います。この重要な研修は,マツダの次世代のリーダーを育成するためのものです。

 参加者は,彼ら自身のリーダーシップとマツダにおけるリーダーの役割について深く理解するとともに,より広い視野でビジネスを捉え,経営センスを磨くことを期待されています。

 更に,この研修は,マツダのビジネスをより深く理解するとともに,異業種他社の研修プログラムへの参加や他社からの研修生の受け入れ,また各課題に対してのグループ討議,役員への提言を目的としたプロジェクトワークの取組みなどを中心とした内容となっています。

 以上,「グローバル時代に活躍できる人材の育成について」概略をお話しました。
 私は,当社の人事施策を人材育成をサポートする組織的なアプローチとして紹介いたしました。 私は,当社の人材に実際に変革を起こしリードできるようになってもらいたいのです。

 彼らは,ビジョンを持ちビジネスに対する戦略的な計画を立て,変革をリードする人材にビジネス成功の成否がかかっているという会社からの明確なメッセージを理解しています。

 初めに申し上げましたように,わたしは頑固なまでに教育というものの信奉者です。
 企業活動が,更に言えば社会活動そのものが,教育の場であるとも言えます。そして,楽しく学べる場を作っていくのは私たちの使命だと思います。マツダもコミュニティーの一員として教育の場づくりに協力していきたいと思います。

<質疑応答>

 マツダで必要とされるリーダーについてお話していただきありがとうございました。
 私は高等学校に勤めておりますが,我々はこれからの社会で必要とされる人材の育成を大きな目標に取り組んでおります。
 今日のお話を聞いて,マツダで必要とされるリーダーを育成するために学校教育で必要なものは何か,こういったことを期待したいということがありましたら,社長さんのお考えを聞かせていただきたい。

 非常にいい質問だと思います。
 どのような教育が必要なのかということに関しましては,日本の教育システムでどういったものが必要とされるかということですが,まず生徒が創造性を育成できる,柔軟性を育成できる,そして自由に自分の考えを表現できる,そういう生徒を育てる教育だと思います。
 日本の教育システムでは単に積め込みをする,暗記をするということが重要視されています。これはある程度は重要だと思います。そのことで,日本が人材面・技術面で豊かになり,こんな強い国になった1つの要因がそこにあると思います。
 しかし創造力,柔軟性,人と違う考えを持つということも,これからは重要になってきます。今日のグローバル化した経済においては,非常に重要になります。グローバルという言葉が嫌いな人がおられるかもしれないが,我々は実際グローバルな社会に生きているのです。世界の国々は教育改善をしています。そういったことを認識する必要があります。しかし,誤解して欲しくないのは,日本の教育には素晴らしい面があるということです。私は人々が創造力を持つ,柔軟性を持つということを特に強調させていただきたい。そして,変化に対応する力を付けるということが非常に重要になると思います。こういった要点が競争力を持つ会社にするのです。
 また,このような考え方について子どもたちが幼いうちに教育していくことが重要だと思います。年を重ねるに従って難しくなる。「英語を年とった犬に教えるのは大変だ」ということわざもあります。もし,こういった資質を早いうちから教える,「熱いうちに鉄を打つ」ということで,人々を重要な人材へと育てることができる,それは国の競争力,力につながると思います。

 今のお話にもありましたが,残念ながら現代の若者には,創造性とか表現力,柔軟性,そういったものを身に付ける前に,あいさつできないとか,マナーが悪いなどという声が多く聞かれます。
 これからの国際社会を生きぬいていくために,若者として,これからの国際人として最低限身に付けておかなければならないマナーとは何か,また,それを身に付けさせるために学校教育では何をすべきと考えられるか,教えていただきたい。

 私はマナーに関してエキスパートでないことをまずお断りしておきます。その中でお話できることとして,若い人を教える際に重要なことで,まず,他の人を尊敬するということだと思います。
 なぜこのようなことを申し上げるかと言いますと,幸運なことにこれまで複数の文化で働いてきました。アメリカ,南アメリカ,そして今回日本で働く機会を得ました。当然,いろいろな文化の違いがあると同時に,共通点もあるわけです。1つの共通点,類似点と言いますか,それは尊敬の念を持って人を処遇するということです。全ての文化がそれを持っている特徴だと言えます。ですから,その中で,いいテーブルマナーを身に付けるとか言うつもりはありません。
 しかし,自分をしっかり尊敬する,他の人もしっかり尊敬するということが非常に重要だと思います。これは家庭からスタートするものだと思います。お母さんのお腹の中からスタートするといってもいいと思います。まず重要なのは両親からスタートするということだと思います。
 学校の中で,何かプロジェクトをチームでやっていくようなことがあったとします。そこでいろいろな交流が出てきます。初期の段階からお互いを尊敬の念を持って交流していくことを教えるということが必要ではないかと思います。

 2つほどお伺いしたことがあります。
 1つはお話の中で,各国の統一規準が今後商品としてできていくだろうと言われていましたが,それが1つの方向性になるだろうと思います。それはアメリカンスタンダードということを意味しているのか教えていただきたい。
 2番目は,マツダの場合,若手社員を採用するときに何を重要点において採用しているのかという事と,伸びている社員に共通な背景みたいなものがあれば教えていただきたい。

 最初の質問をはっきりさせたいのですが,私は全ての製品が各国共通の統一の基準にになると申し上げたのではありません。私が申し上げたかったのは,例えば自動車におきましては,現在自動車を製造いたしますと,それは日本の安全基準に合致しなくてはならない,アメリカではアメリカの安全基準に合致しなくてはならない,そしてヨーロッパではヨーロッパの安全基準に合致しなくてはならない,といったことがあります。そこには,あまり重複性がないわけです。ですから,我々は3つの違う車を製造することになるわけです。
 将来的に,もしこういった規準が統一されれば,それぞれの国で違ったものを出すという事がなくなるわけです。しかし,違った趣味・嗜好はありますから,違った趣味・傾向に合わすということはあると思います。この点をまずはっきりさせたいと思います。
 第2点の我々がどういった人物を望むかということですが,採用する場合には,まず知的なレベルが十分あるかということを配慮します。しかし,より重要になってくるのは,その人物が我々の企業文化・企業の価値を理解し,仕事ができるかということです。
 しかしながら,みんなが同じような人であって欲しいとは思いません。いろいろな考え方があっていいわけです。非常に潜在的に力のある人達,組織の中で活動できる人達の特性というのは,まず知性が十分あるということ,第2点は結果を出してくれる人,そしていろいろな人と関わりをしながら働ける人,チームが組める人,そして人の意見が聞ける人,そして人々が質問がある場合,その質問を解決できる思考力のある人,最後に求められるものは,非常に前向きで積極的であるということ,内向きでは困ります。
 常に可能性を求めて前向きに考える,不可能という字はないというような積極的な人材を求めています。

 大変興味深い講演を聞かせていただきありがとうございました。若手とか女性の社員とのディスカッションを重要視しているということでしたが,そこに何を期待しているのか聞かせていただきたい。

 そのミーティングにおいての基本的なものは学ぶということです。彼らがどういった考え方をしているのかを学ぶということです。
 リーダーのポジションにあると,壁をつくってしまいがちになります。いつもアンテナを張って,組織の下の方でどういったことが起こっているのかを感知しないと理解できないということになってしまいます。また,私は日本語が理解でないということで,より大きな障害があるということになります。
 毎月,女性のグループや若い人達と会います。そして,ランチタイムでラインワーカーの人達ともミーティングをするわけです。基本的に90分ぐらいをベースにしてお話をします。最初の5分か10分ぐらい会社・企業に関してお話をして,それから,残りの80分間は彼らの意見を傾聴します。どういう意見を持っているのか,どういう考え方を持っているのかお話をして欲しい,というわけです。最初は靴の紐を見ていたりしますが,誰かが口火を切ればあっという間に時間が過ぎてしまいます。
 女性のグループのミーティングにおいても,実際に実施したらいいと思うような多くのアイディアが出てきました。1つのグループでは,勤務時間に柔軟性が欲しい,子どもを学校に送るのに少し家にいたい,また子どもがいるから早めに帰りたいということでフレックス勤務というものを導入することになりました。約1年前に導入いたしました。
 また,実行に移されたものとしては,半日単位の有給休暇というものが出てきたわけです。そこで,子どもが病気の場合や高齢者の介護のために1日の中で一部,あるいは半日の有給休暇が欲しいという事があり,それをやってみました。
 また,職場においてのデイケアーというサービスも行いました。私達のような大規模な製造業で職場にデイケアーセンターを日本で初めて設けるということを行いました。
 そのような形で多くのことを学ぶことができました。これは若い人達,女性,ラインワーカーの人達など,全ての人達のアイディアを尊重することが重要だと考えています。私が全ての解決策を持っているのではありません。経営陣,管理職が持っているわけでもありません。しかし,会社全体としては何らかの解決策が必要なわけです。
 そういった意味で全ての人達のアイディアが重要になってきます。自分の意見を包み隠さず自由に出してくる,上司の顔色を伺いながら言ってもいいんだろうかというような状況を作ってはいけないと考えています。

 1人の非常に積極的な人がいたとします。非常に積極的でいろいろな提案をします。しかし,中間管理職が積極性を欠いている人で,そういった場合にはどのようなアプローチをとりますか。
 第2番目は,この積極的な人の解決策の方が中間管理職の解決策よりも優れている場合には,この2人をどのように扱いますか。

 社員が上司を飛び越えて更に上の人に直接提案できるかということだと思いますが,マツダではできます。私のホームページがあります。社員が自分の考えを送りたかったら,E-Mailで送ってくるわけです。こういったことはしばしば起こっております。
 確かに企業文化として上司の命令に従っていないと何らかの罰を受けるのではないかというような考え方はあります。しかし,理論上はマツダでは可能です。我々は360度評価というものを取り入れています。そこで,部下が上司の評価を行うことができるのです。処遇制度の中にも反映されています。もし,ある上司が提案を気に入らない,それをはねのけてしまうということになると,360度評価の中で必ず反映されます。
 今はそういった状況を取り上げるメカニズムができており,自由に誰でも意見を述べることができるようになっています。我々はもちろんいい考えを採用します。会社が良くなるような提案を上司が阻むようなことがあってはならないわけです。

 追加ですが,日本においては縦割り社会とよく言われますが,最近では,社会は1つになってきているわけです。社長は1人ですが,組織が何万人にもいると縦割りになりがちですが,それを横割りにするメカニズムをマツダはお持ちでしょうか。もしお持ちなら,どういうシステムか教えていただきたい。

 非常にヒエラルキー的な縦割りの組織を排除していきたいと考えています。それによって官僚的な要素が高くなってしまう,重要なアイディアなどが押しつぶされてしまうというようなことがあるからです。なるべく水平的なもの,いわゆるウェブ状のもの,網目のようなものを考えているわけです。ウェブによって相手とのコミュニケーションが得られるからです。ITがこれを助けてくれます。
 ご存知のように,2001年の3月から人員の削減を行っていきました。その時によりスマートに,より厳しくない状況で人員を削減していくことができるか考えたわけです。そこで,稟議制度を考えたわけです。稟議においては,次から次にハンコを貰っていくわけです。ある日,稟議において23のハンコが必要だいうことが分かりました。これが1つの警鐘になり稟議制度をイントラネットでやってはどうかと考えたわけです。
 基本的には,最大4人の承認があればいいということで,4人目の承認が私ということになります。そのような形で45日かかっていたものが3日間で済むようにしていきました。このようにITを活用して,完全に平たいものではないわけですが,企業全体がウェブになっています。

 その4番目のチェックはどなたがされるのか教えていただきたい。

 私が最後に承認します。副社長,CFO,1人の専務が行います。非常に効率的に承認作業が進みます。私はよく出張しますが,コンピュータを持っているので,ビジネスが遅滞するということはありません。

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