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別紙:民間人校長採用制度について

1 経緯

(1)制度導入の趣旨及び経緯

 平成12年4月の学校教育法施行規則の改正により,「学校運営上,特に必要がある場合」に,教員から校長になる者と同等の資格を有すると認められる者を校長に任命,または採用することができるようになり,優れた人材を幅広く校長として採用することが可能となった。
 本県においては,是正から教育改革へと軸足を移し改革を一層推進する時期にあり,学校教育の活性化を図るため,企業における組織運営に関する経験や能力等に着目し,平成13年度から民間人校長の採用を行ってきており,現在まで7名の民間人校長を採用している。

(2)任用制度

 民間人校長の任用については,採用を始めた平成13年度以来,県内経済団体を通じて適任者の推薦を受け,面接等を経て採用するという方式を取ってきた。最近では,校長を公募により採用する県が出てきており,全国的な傾向となりつつあるなか,本県においても平成15年度採用については,尾道市立土堂小学校の校長を全国から公募し,校長に採用したところである。

2 任用の現状

(1)募集及び選考

 採用に当たっては,「民間等からの校長任用に関する手続要綱」を定め,県内経済団体(広島県商工会議所連合会,広島県商工会連合会及び広島県中小企業団体中央会)を通じて,民間企業におけるマネジメント経験者であって校長として適任者と思われる者を有する企業の推薦を受け,これらの企業から推薦された者をレポート及び面接により選考した。
 面接は,有識者,教育関係者からなる外部委員と行政関係職員が行い,能力,適性,意欲等を評価し,採用を決定した。
 なお,尾道市立土堂小学校では,文部科学省の新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究の一環として,尾道市教育委員会が校長を全国から公募するという試みを行い,応募者の中から適任者を採用した。

(2)任用

 配置校については,民間人校長の組織運営に関する経験・能力を生かした学校経営を行うことのできる学校規模等を考慮し,面接等を通じて得られた本人の適性に応じて,県教育委員会が(小・中学校については、希望のあった市町村教育委員会の中から)決定した。
 現在までの配置は,小学校2校,中学校2校,高等学校3校である。

<配置先一覧>
区分氏名採用年度所在地域学科備考
呉市立郷原小学校上畑範明13年度呉市 
黒瀬町立黒瀬中学校了安 峻13年度賀茂郡 
福山誠之館高等学校山代猛博13年度福山市総合学科 
尾道市立高須小学校慶徳和宏14年度尾道市平成15年3月9日逝去
熊野町立熊野東中学校梶川 誠14年度安芸郡 
尾道商業高等学校小村雅彦14年度尾道市商業科 
高陽東高等学校森  博15年度広島市総合学科 

3 成果と課題

 民間人校長のこれまでの取組みにおいては,明快でわかりやすい組織の目標を設定し,それを職員に共有させるとともに,経営スタッフとしての主任の組織化や教職員とのコミュニケーションの充実を通じて,教職員にそれぞれの役割を認識させ,学校が一つのチームとして行動していく新しい学校経営(マネジメント),地域や保護者などのニーズを把握した上で学校の活動を対外的に発信する説明責任(アカウンタビリティ)の面などで相当の成果を上げている状況が見られる。

  • マネジメントの手法を生かした新しい学校経営
     ・単年度型ではなく中期的な見通しを持った経営
     ・顧客満足を志向したマーケティング手法の導入
     ・企画委員会の機能化
     ・教職員との個別面談の実施や校内人材育成システム等による人材育成
  • 積極的に情報を発信する開かれた学校づくり
     ・ 明快な経営目標の設定と提示 
     ・ 学校総会を開催し,保護者・地域住民に教育目標や内容・取り組み等の説明
  • 望ましい社会人を育てる人間教育の推進
     ・社会生活の基礎となる挨拶の励行や服装・遅刻指導の徹底
     ・進学・就職指導の重視
     ・部活動の奨励
     ・幼小中連携教育の推進
     ・校内美化活動の徹底やボランティア活動の推進

 一方,平成15年3月には,尾道市立高須小学校の問題が起き,制度運用上改善すべき課題があることが明らかになったところであり,採用,事前研修,補佐・支援体制について改善する必要がある。このことは,「尾道市立高須小学校問題の調査結果について」(平成15年5月9日)(以下,「報告」という。)に詳述されており,平成15年度採用者から既に一定の改善がなされている。
 なお,13・14年度採用者についての具体的な学校経営上の成果と課題については,次のとおりである。

【具体的な成果と課題の例】
マネジメントの手法を生かした新しい学校経営・ いずれの校長も自らの考え方(方針・目標)を教職員に徹底し,機能的な学校運営を行うための手法に特色を出している。
 例としては,仕事のやり方を変革し,単年度行事遂行型から3年後を見据えた計画策定を行うようにしたこと(福山誠之館高校)や,マーケティングの視点を徹底し,「お客様は誰か」という視点で具体的な取組みを進めていること(尾道商業高校)などがあげられる。
・ また,「校内人材育成システム」を企画実施し,目標達成のための組織づくりに向け,管理職・主任層の意識改革を図るための研修を実施する (福山誠之館高校)とか,経営目標を書いた横断幕を掲げ,職員・生徒・ 保護者の日常的な意識改革を図る(尾道商業高校)などの取組みを行っている。
積極的に情報を発信する開かれた学校づくり・ 信頼される学校の実現のために,情報の公開や説明責任を果たすための取組みや,中・高間連携などに努力をしている。
 小中学校では,学校運営状況等を保護者等に説明をする学校総会を開催しており,学校行事の柱として運営している。(郷原小学校,黒瀬中学校,熊野東中学校)
望ましい社会人を育てる人間教育の推進・ 社会生活の基礎となる挨拶の励行や服装・遅刻指導の徹底を図っている。(福山誠之館高校,尾道商業高校)
・ 就職指導・進学指導の重視をしている。(尾道商業高校,福山誠之館高校)
・ 部活動の奨励を行っている。(黒瀬中学校,福山誠之館高校,尾道商業高校)
・ 幼小中連携の教育活動を通して,基本的生活習慣の確立へ向けた一貫した取り組みを行っている。(郷原小学校)
・ 校内美化活動の徹底を図っている。(黒瀬中学校)
・ 生徒・教職員・町民が一体となってボランティア活動を行っている。(熊野東中学校)
・ 出前授業などで高校生が小学生を指導する体験をとおして人間的に成長を図る取り組みを行っている。(尾道商業高校)
教職員の変容・ 校長の経営方針に対する教職員の理解の徹底を図ってきたことにより,平成15年度のシラバスを前年度の1月には作成した(黒瀬中学校),全員がネクタイを着用する(尾道商業高校)などの成果が見られる。
・ また,各校長は研修への参加を積極的に勧めており,民間人校長が赴任した5校の平均で赴任前26%であった研修参加率が赴任後は48%になるなど教職員の資質向上に熱心である。
児童生徒の変容・ 各学校で次のような成果が上がっている。
(1) 家庭における学習時間が13年度58分,14年度1時間32分と増加した。(黒瀬中学校)
(2) 部の加入率が上昇した。(13年度66.1% 14年度72.8% 15年度 78.4% 福山誠之館高校,14年度59.0% 15年度64.3% 尾道商業高校)
(3) 部活動が大いに活性化し多くの運動部や文化部が全国大会出場や県のトップクラスで活躍している。(黒瀬中学校)
(4) 国公立大学合格者数が13年度69名,14年度95名と増加した。 (福山誠之館高校)
(5) 資格検定合格者数が増加した。(簿記検定1級:13年度16名→14年度37名,情報処理検定1級:51名→49名,秘書検定2級:1名→7名)  (尾道商業高校)
・ 一方で,学校によっては,不登校の生徒が13年度26名から14年度50名へと増加しているといった状況もある。校長は,こうした状況の中で,生徒指導主事を中心として組織的に取り組むことや校長自身が生徒全員との面談を実施するなど工夫をした対応を行っている。(黒瀬中学校)
・ 遅刻をする生徒の数が,13年度は1日当たり50~60名であったが,14年度は約21名,15年度は6.7名と改善をした。(尾道商業高校)
保護者・地域へのかかわり・ 保護者会等の参加者数が増えており,学校に対する関心が高くなっている。郷原小学校では,世帯数(196世帯)を上回る数の保護者(210~220人)が参加をしており,県立高校においてもPTA総会の出席者数が増加している。(福山誠之館高校 13年度340名 14年度450名 15年度 403名,尾道商業高校 13年度92名 14年度142名 15年度113名)
・ 地域への学校開放として,小学生を対象に,生徒・職員を派遣する「出前授業」(内容は電卓による計算方法とパソコン講座)を始めている。(尾道商業高校)
・ このほか,SMAP(学校経営計画)で学校の取組み項目の進捗度評価を公表するなど,学校のオープン度は高まっている。(黒瀬中学校)
他校等県内への影響・ 民間人校長は,講演会などの講師としての依頼や学校の視察が非常に多く,それぞれ93回と69件といった状況であり,新しい手法での学校経営が,周囲から注目されている。また,周辺の学校に対しては,学校総会や学校評価の実践が波及しており,学校の公開や説明責任といった面で与える影響は大きい。

 4 関係者の意見

 民間人校長の採用について,これまで2年半の状況を踏まえて,現時点における校長本人,市町村教育委員会,校長会,PTA等の意見を総合すると,既配置の民間人校長について,新しい手法での学校経営により成果を上げているとの肯定的評価が多い。その一方で,一部に,現行の方式は教育界に新しい風を入れるための過渡的なものであり,これ以上採用数を増やすべきでない等の意見もある。また,今後の採用継続について賛意を表する意見においても,尾道市立土堂小学校の事例のように公募制を導入する等制度運用面での改善を加え,慎重な選考を行うとともに,事前研修や補佐・支援体制など運用面での十分な条件整備を図ることを求めるものが多い。

ア 民間人校長による自己評価

  •  全体的に学校がよくなっているとの自己評価をしている。
  •  項目別の評価によると,学校運営の面について最も高い評価をしており,「学校評価」,「目標管理」及び「面談の実施状況」はどの校長も高い評価をしている。
  •  開かれた学校づくりの面については,総じて高い評価をしている。
  •  教職員と児童生徒の変容の面については,14年度採用者が13年度採用者と比べて十分でないとの評価をしている。

イ 市町村教育委員会

  •  小中学校の連携教育に力を入れ,地域に溶け込もうとした取り組みを積極的に行っている。校長は住居を学校の近くに構え,家族ぐるみで地域の行事等にも参加しており,こういった姿勢が地域から支持され,信頼される学校づくりにつながっている。
     校長は,企業のような組織的な学校運営を目指しているが,まだ,教員が組織的に動いていない。
  •  保護者の反応がよい。また,議会の文教委員からもよいとの意見が出ている。
     2年目であるが,6~7年やったような力がついている。最初の卒業生を送り出すとき涙が出そうになったと言っていたが,教育に熱い思い入れがある。
  •  民間人校長がうまくいくためには,学校の受け入れ体制を作っておくことが必要である。
     民間人校長は学校を変える力になった。民間人校長は,人材育成がうまい。例えば,指導主事や管理職を育成したことが近隣の学校や教職員によい刺激を与え,意欲の向上につながっている。民間人校長の採用でよかったことを,こうして事実で示すことができた。
  •  民間人校長の採用は,公募方式がよい。配置をしようとする学校の目標課題,これまでの取り組みや成果などを明らかにして,今後こういうことを期待する学校ということで募集するといい。
  •  学校に新しい感覚を入れることによって改革を進めるという観点から継続すべきである。いろんな意味で学校にプラスになっているはずである。成果が表にあまり出ていないので,改革を進めるという観点でしんどいことがあるかもしれないが,続けていくようにするのがよいと思う。

ウ 校長会

  •  めざす学校目標に向けて学校経営に手腕を発揮している。困ったときや問題等がある場合は,よく相談をして具体的な取り組みに活かしている。
     発想に良いもの,学ぶものがある。校長会研修会に茶道の家元を招聘して講話を聞く機会を設けるといった発案も民間人校長からのものである。
     事前研修は,採用を早く決めて,2週間でも1ヵ月でも学校へ赴任をさせて実際の学校運営状況を体験研修するのが一番良いと思う。今後においては,その指定校をつくると良い。
  •  おそらく民間から来た人は,組合の対応や職員との関係などの面で,学校と民間企業とのギャップに驚いたことと思う。立場の同じ人が相談相手にいるとよい。また,サポート体制をきちんとつくることが大切である。
  •  人選の仕方を工夫して,継続する方がよいと思う。例えば,尾道市の公募のようなことも一つの方法である。
      研修の長短は致命的な問題ではない。あとのフォロー体制をつくることが重要である。適任の人がいなければ,その年は採用しなくともよい。何か光るものを持っており,他の校長がなるほどと思うような人でなければいけない。

エ PTA

  •  学校は閉鎖的である。また,教員は社会的な常識に欠けることが多いし,世間を見る目や感覚が狭い。そういった観点から考えると,民間人校長の導入は新しい血を入れるということで有意義である。
     民間がすべてということではなく,教育的配慮を欠くことがないようにする必要がある。人選もポイントである。教育委員会が訓練をしたり,適材適所の配置やサポートをすることが大切である。
  •  現行の民間人校長採用制度の継続には反対である。民間人校長に必要なのは研修ではない,いかにサポート,フォローをするかである。責任を持って人を育てるということが重要である。体制も整えないといけない。
     ショック療法で導入するという意義はあったが,何年も続けることはなく,人数も多くて5人くらいである。

5 今後の在り方

 民間人校長の採用については,企業における組織運営に関する経験や能力等に着目した校長採用を行い,学校教育を活性化するという当初の目的の達成に向けて,児童・生徒や保護者,地域から概ね一定の評価が得られていると考えており,これまでの学校運営の在り方にとらわれずに,新しい発想によって学校教育を活性化するという趣旨から,広く人材を登用する道を開いておくことは意義のあることと考えられる。
 しかしながら,これまでの実施上の課題を踏まえると,募集にあたって,その職に期待される使命や役割を明確にしたうえで,より広く門戸を開くとの観点から教育界の人材も含めて広く募集を行い,応募した者の中から最も適した人材を登用する方式(公募制)へと,採用方式の改善を図ることが適当である。
 また,教育界の外から採用する場合においては,本県の学校教育が他県に例のない是正指導を経験し未だその内実化に課題を残すなどの状況にあることを考慮すると,前記報告に基づき,事前研修,補佐・支援体制等について,十分な環境整備を行うことが必要である。

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