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尾道市立高須小学校問題の調査結果について

はじめに

第1 民間人校長採用制度の運用について
1 本県におけるこれまでの民間人校長の採用について
 (1)趣旨 (2)採用方法 (3)事前研修 (4)配置 (5)校内での補佐 (6)教育委員会の支援
2 慶徳元校長の場合について
 (1)配置 (2)事前研修 (3)校内での補佐 (4)教育委員会の支援
3 他の民間人校長からの意見聴取について
 (1)事前研修 (2)校内での補佐 (3)教育委員会の支援 (4)その他
4 制度運用の改善について
 (1)制度運用の状況と課題 (2)制度運用の改善 (3)平成15年度採用者に係る改善状況

第2 高須小学校における慶徳元校長の状況について
1 調査の状況について
2 主な調査事項について
 (1)高須小学校の状況
 (2)校長に対する県・市教育委員会の支援
 (3)慶徳元校長の学校運営への取組
 (4)学校運営上の課題
 ア 校務運営面について
 (ア)児童転出に伴う学級減について  (イ)運動会の運営について  (ウ)長期休業中の普通研修について  (エ)勤務評定について  (オ)指導方法工夫改善加配の運用について  (カ)卒業式のしおりの年号表記について  (キ)藤井教頭の復帰に関することについて
 イ PTAとの関係について
 (ア)運動会の運営について  (イ)ウサギ殺害事件後の対応について
 ウ 外部団体との関係について
 (5)校長の勤務の状況
 (6)亡くなった当日の様子
 (7)その他
3 慶徳元校長が学校運営に悩みを抱いた背景と要因について

第3 調査を踏まえた今後の取組について

おわりに

はじめに

 平成15年3月9日の昼,尾道市立高須小学校慶徳和宏校長が自ら命を絶つという痛ましい事件が起きた。
 広島県教育委員会(以下「県教育委員会」という。)としては,謹んで哀悼の意を表するとともに,この事件を重く受け止め,同年3月13日に,教育長を委員長とする「尾道市立高須小学校問題調査委員会」を発足させ,事件の要因,背景などについて調査を行ってきた。ここでは,その調査結果を報告する。
 この報告では,まず,(1)「民間人校長採用制度の運用」に関して,これまでの制度の運用状況を取りまとめるとともに,既に採用されている他の民間人校長から意見聴取を行い,制度運用の課題,改善策等について記している。また,(2)「高須小学校における慶徳元校長の状況」に関しては,校長に対する県教育委員会及び尾道市教育委員会(以下「市教育委員会」という。)の支援状況,学校運営上の課題,慶徳元校長が学校運営に悩みを抱いた背景と要因等について記している。そして最後に,(3)「調査を踏まえた今後の取組」についてまとめている。

第1 民間人校長採用制度の運用について

1 本県におけるこれまでの民間人校長の採用について

(1)趣旨

 民間人校長の採用については,平成12年,学校教育法施行規則の改正により校長の採用資格が弾力化され優れた人材を幅広く校長として採用することが可能となったことを踏まえて,平成13年度から,教育改革をさらに推進するため,企業における組織運営に関する経験や能力等に着目した校長採用を行い,学校教育を活性化することを目的として行ってきた。

(2)採用方法

 採用に当たっては,「民間等からの校長任用に関する手続要綱」を定め,県内経済団体(広島県商工会議所連合会,広島県商工会連合会及び広島県中小企業団体中央会)を通じて,次の要件を満たす適任者を有する企業の推薦を受け,これらの企業から推薦された者をレポート及び面接により選考した。
ア 公教育への情熱を持っている人物
イ 社内でマーケティング及びマネジメントの統括的な仕事を経験するなど,経営管理能力に秀でている人物
ウ 現在の職を辞して校長に転ずる覚悟のある人物
 面接は,有識者,教育関係者等からなる外部委員と行政関係職員の合計9名で面接を行い,能力,適性,意欲等を7項目の評定項目により評価し,採用を決定した。(採用実績は,平成13年度3名の応募に対して3名,平成14年度5名の応募に対して3名,平成15年度1名の応募に対して1名 計7名であった。)

(3)事前研修

 民間人校長の採用前の研修は,平成13年度,平成14年度については2日間にわたり実施した。
 民間人校長については,教育課程,児童生徒の在籍管理,教職員の服務・人事・勤務条件,予算,施設・設備など学校教育に関する基本的な事項について,事務局職員や現職校長等により1日研修を行った。
 また,他の新任校長とともに,主に管理職としての心構え,学校の管理運営,職務権限等について,小・中学校については赴任する学校を所管する教育事務所が,県立高等学校については県教育委員会(本庁)が,それぞれ1日研修を行った。

(4)配置 

 配置校については,民間人校長の組織運営に関する経験・能力を生かした学校経営を行うことのできる学校規模等を考慮し,面接等を通じて得られた本人の適性に応じて,県教育委員会が(小・中学校については,希望のあった市町村教育委員会の中から)決定した。これまでに小学校2名,中学校2名,高等学校3名を配置した。(学校の規模は,小学校は12学級と21学級,中学校は11学級と28学級,高等学校は18学級2校と31学級である。)

(5)校内での補佐

 校長を補佐する教頭については,教職経験のない校長をカバーしていく必要があることから,実務経験・能力に優れた教頭を配置した。また,学校規模が大きい28学級の中学校1校と県立高等学校3校については,複数の教頭を配置した。

(6)教育委員会の支援

 小・中学校長に対しては市町村教育委員会及び所管の教育事務所が,また,県立高等学校長に対しては県教育委員会(本庁)が,研修,学校訪問,ヒアリングなどにより学校経営についての指導助言を行っていた。また,県教育委員会(本庁)においても,民間人校長を対象とした研修会を年間2~3回実施し,校長相互の意見交換や直接の指導助言を行った。

2 慶徳元校長の場合について

 県教育委員会は,広島銀行から推薦を受けた慶徳元校長に対して面接選考を行い,平成14年3月18日の教育委員会会議において,配置校を含め採用を決定した。
 当時,慶徳元校長は広島銀行東京支店副支店長として勤務されており,管理職として十分な経験を有し,校長として学校経営に当たることに意欲的であった。学校経営については,(1)生徒の笑顔が輝く学校,(2)教職員が生き甲斐を持って働ける学校,(3)保護者や地域から信頼される学校を目指して学校運営を行いたいこと,そのために,(1)明確な目標設定と成果に対する厳正な評価の実施,(2)スピード感とチャレンジ精神を持った学校運営の展開,(3)風通しのよい職場づくりなどの方針でのぞみたいとの抱負を持っていた(慶徳元校長から応募に当たって提出されたレポート)。また,校種としては,小学校を希望していた。
 慶徳元校長の採用に当たっては,同氏が民間企業において多業務を経験し,バランス感覚及び経営マネジメント能力を具備していたことを評価した。

(1)配置

 配置校については,小・中学校の場合は配置を希望する市町村教育委員会の有無を調査し,希望のあった教育委員会の中から選ぶこととしている。また,民間人校長が組織マネジメントの力を発揮するには,一定の規模が必要であると考え,尾道市立高須小学校とした。

(2)事前研修

 慶徳元校長が採用となった平成14年度の研修は,3月下旬に2日間実施し,その内容は次のとおりであった。

<研修内容>

○ 新任民間人校長研修(3月25日):平成14年度採用の民間人校長を対象として,「学校についての状況説明」,「校長経験者からのアドバイス」,「組織,施策と予算」,「人事管理・教育法規」,「生涯学習の振興」,「教育改革」について,県教育委員会本庁職員等による研修を行った。

○ 尾三教育事務所研修(3月28日):管内で新任校長となった計11人の校長を対象として,「是正指導」,「新教育課程」,「学校管理運営上の諸問題」,「学校経営及び校長の職務」等について,教育事務所職員による研修を行った。

○ このほかに,3月29日に前任校長との引継ぎや,市教育委員会が指導助言を行った。

(3)校内での補佐

 校長の赴任した当初の教頭である藤井教頭は,教頭歴6年目(2校目),同校在職3年目のベテラン教頭であり,地域及び学校の事情に精通しており,県立教育センター指導主事や福山市教育委員会指導主事などの行政経験を有していた。
 また,藤井教頭の病休に伴い発令した坂井教頭は,教頭歴3年目(2校目)で,事務処理能力が高く,前任校においても的確な校長補佐を行っていた。

(4)教育委員会の支援

 県教育委員会では,7月には,平成13年度及び14年度に採用した民間人校長全員を集めて,「本県教育の課題」,「教職員と法規」について講義や演習を行うとともに,学校運営上の課題について出席者で協議を行い,それぞれの学校状況の把握に努めた。また,10月には,平成14年度採用の校長を集めて,意見交換の会を持ったところである。
 市教育委員会では,定期的に開催していた校長会において学校運営上の課題について協議を行うとともに,4月以降,随時学校に職員を派遣して校長に対する指導助言を行っていた。
 なお,慶徳元校長の学校運営に関する県,市教育委員会の具体的な支援内容については,「第2 高須小学校における慶徳元校長の状況について」においてさらに詳しく記載する。

 

3 他の民間人校長からの意見聴取について

 平成13年度及び14年度に採用した民間人校長に対して,民間人校長採用制度に関する意見,特に事前研修の在り方や採用後の支援の在り方について,平成15年3月15日(土)には県教育委員会職員が,4月8日(火)には大学教授等有識者がそれぞれ聞き取りを行った。

(1)事前研修について

 複数の校長経験者からのアドバイス,学校における実地研修,企業と学校の組織文化の違いを理解するための研修,赴任する学校の状況を理解するための研修を加える,あるいは充実させる必要があるとの意見があった。一方,事前研修(特に講義形式の内容)については,必ずしも長い時間をかける必要はなく,法令や教育用語など基礎的なものが説明されていれば十分であるとの意見もあった。

(2)校内での補佐

 民間人校長には,学校に対する社会の期待を受け止めて大きな方針を打ち出すことが求められているのであり,こうした役割にかんがみれば,実務的な部分での教頭の役割が非常に重要であり,経験豊かな者を配置することが必要であるとの意見が多くあった。また,組織的な仕事をしようと思えば,複数の教頭配置が必要であるとの意見もあった。

(3)教育委員会の支援

 ほぼすべての校長が,自らの経営方針に基づいた校内体制を整備するために,教頭を含めて教職員の人事に関する希望を述べたが,実際の学校経営に関して教育委員会からの支援を希望するとの意見はなかった。ただ,上記(2)に記したように,教頭の役割が重要であることから,教頭が不在となった場合には,後任の教頭の早期配置を含め,教育委員会から十分な支援がなされる必要があるとの意見があった。

(4)その他

 学校では組織として動くという認識が非常に弱いので,学校経営に当たっては,自校が直面している課題の理解や校長の考え方を教職員に伝えるという観点から,教員個々人との面談の機会を設けて,相互のコミュニケーションを図ることがとても重要であるとの意見が多くあった。

4 制度運用の改善について

(1)制度運用の状況と課題

 民間人校長の採用については,企業における組織運営に関する経験や能力等に着目した校長採用を行い,学校教育を活性化するという当初の目的の達成に向けて,児童・生徒や保護者,地域から概ね一定の評価が得られていると考えている。具体的には,明快でわかりやすい組織の目標を設定し,それを職員に共有させるとともに,経営スタッフとしての主任の組織化や教職員とのコミュニケーションの充実を通じて,教職員にそれぞれの役割を認識させ,学校が一つのチームとして行動していく新しい学校経営(マネジメント),地域や保護者などのニーズを把握した上で学校の活動を対外的に発信する説明責任(アカウンタビリティ)の面で相当の成果を上げている状況が見られる。しかし,一方で今回の件が起き,制度運用上改善すべき課題があることが明らかになった。このため,これまでの運用の状況,慶徳元校長の場合の課題,他の民間人校長からの意見等を踏まえ,また,本件に対して寄せられた県民の方々の御意見等を参考にして検討を行った。

(2)制度運用の改善

 検討の結果,当面,次の点を改善すべきものと考えている。

(ア) まず,採用については,十分な研修期間をとるため選考決定の時期を早期化する必要がある。また,採用選考に先立って,採用候補者に対して学校運営の現状や民間人校長に期待する役割等について直接説明を行うことも必要である。

(イ) 事前研修の内容を充実させる必要がある。既配置の民間人校長からは,校長経験者からのアドバイスや学校における実地研修が有効であるとの意見があった。このような研修は,採用される者にとっては企業と学校との組織文化の違いや実際の学校運営の現状と課題についての理解を深めることにつながり,また,教育委員会としても,配置校の決定や補佐・支援体制の整備等によりきめ細かな配慮をすることが可能となるものと考える。具体的な研修内容としては,校長経験者からのアドバイス,学校における実地研修などの内容を充実するとともに,個々人の経験や知識を踏まえた個別の研修内容を設定することなどが考えられる。

(ウ) 補佐や支援体制については,校長が学校の組織運営に十分に力を発揮できるよう豊富な経験や力量を有する教頭を配置することはもとより,定期的に学校の状況を把握し,きめ細かく支援することが必要である。特に,新任校長として学校経営に不慣れな就任当初の学年始めの期間,あるいは学校における補佐体制が機能していない場合などには,教育委員会が直接校長や学校の状況をつぶさに把握し,職員を派遣して校長の相談に応じるなどの支援を行う必要がある。

(3)平成15年度採用者に係る改善状況

 平成15年度採用者については,本件発生以前に採用選考が行われ,また,事前研修や配置は,本件に関する調査検討と並行して行われたが,できる限りの制度運用の改善を行ったところである。
 まず,採用については,決定期日を平成15年1月23日に早期化した。
 次に,事前研修については,今回の件を踏まえて,研修日数及び研修時間を実質15日間,延べ69時間へと増やした。主な内容として,高校教育の現状,生徒指導,学校事故,危機管理,人事管理や学校経営計画等,校長に必要な基本的事項の研修(38時間)に加え,赴任予定校以外の学校を訪問しベテランの校長から校長としての職務等について実地に行う研修(15時間),赴任予定校での引き継ぎ等の実地の研修(16時間)を実施した。なお,平成15年度採用者については,ジョブ・サポート・ティーチャ-(就職支援教員)として平成14年6月から平成15年3月までの10カ月間にわたり,週のうち2日は福山商業高等学校,3日は神辺高等学校に常時勤務し,教員への指導,生徒への指導,企業等外部への対応に従事してきたという勤務実績があったことから,これが学校における実地研修,教育委員会事務局職員との交流等の経験として評価することができると考えたところである。
 配置に当たっては,企業において主に活躍していた経営企画部門において培われた経営企画の経験,さらにジョブ・サポート・ティーチャーとしての実務経験及び実績をも十分に生かすことのできる学校を配置校とした。
 校内における補佐体制として,教頭を2名配置するとともに,県教育委員会(本庁)の支援体制としては,特に,学校行事等が集中する就任当初に,事務局職員を派遣して支援を行った。また,今後も,関係課の職員による定期的な学校訪問を行うとともに,民間人校長の連絡会を月1回程度開催するなどの支援をしていくこととしている。

第2 高須小学校における慶徳元校長の状況について

1 調査の状況

 県教育委員会は,既述したように,平成15年3月13日(木)に「尾道市立高須小学校問題調査委員会」を発足させ,調査を開始した。
 同日,高須小学校から学校日誌や職員会議録などの関係書類の提出を求めるとともに,同日以降市教育委員会から学校の状況等について聞き取りを行った。また,高須小学校の教職員については,教職員が児童の心のケアに専念する必要があったこと,学校において保護者会が相次いで開催されたり,教職員を批判する電話が相次ぐなど教職員が落ち着けない状況があったことから,修了式の終了を待って3月26日(水)以降,県教育委員会と市教育委員会が共同で,教職員からの聞き取りを行った。
 また,逐次,前任校長,病気療養中の2人の教頭,その他の関係者からの聞き取りも行った。
 なお,学校における教職員の聞き取り調査の開始に際して,職員朝会の場で一部の教職員から平成15年3月11日(火)に発令した校長(当時)や市教育委員会職員に対して「調査内容や方法についても職員の意見を聞いてから行うべきである」といった質問や意見が出されたため,1時間あまりにわたって職員朝会が紛糾し,聞き取りが予定の時間に始まらず,10時を過ぎて始まることとなった。

2 主な調査事項

(1)高須小学校の状況

 高須小学校は,明治6年に創立され,平成14年度に創立130周年記念祭を実施した伝統ある学校で,21学級,児童数716名,教職員数34名(平成14年5月1日現在)の学校である。
 学校運営の状況であるが,「学校運営に係る校長自己診断票」(期間:平成13年5月1日から平成14年4月30日まで)の記載によると,56項目のうち職員会議の運営,企画委員会の運営など5項目について一部課題があるとしているが,51項目については課題がないという状況であった。また,前任校長から聴取したところによると,年度当初に教職員が担当する学年・学級など校務分掌を決定する際にその原案を広島県教職員組合の学校分会が作成し校長に対して提案するなど,本来,校長がその権限と責任に基づいて決定すべき事項について,職員団体の学校分会が関与するなど校長権限が制約される状況があったり,勤務開始時間の管理など服務の取り扱いについても課題があった。
 平成14年度に慶徳元校長が赴任し,次第にそのような前任校長以来の学校運営上の課題がいろいろと明らかになり,校長はこうした課題を解決するため,その都度,市教育委員会に相談を行っている。
 また,校務運営の困難さについて校長は,5月17日(金)に県教育委員会職員及び尾三教育事務所職員に対して次のように述べている。
「私の性格として,控えめで,何事も最初から丁寧に一つ一つやる性格である。校長としては,教職員とけんかをしながら施策をとおしていく強引さが必要だと思う。職員会議で提案したことが教職員から打ち返される。柔らかい性格で強引にとおすことができない。」
 また,教員が休暇や出張で授業できない場合は,管理職から補教(自習監督や代わりに授業をすること)をするようになっており,管理職にとって管理的業務に専念できない状況があった。
 平成15年1月23日(木)に慶徳元校長から聴取したところによると,高須小学校では,教職員の大部分が職員団体に加入しているとのことであった。(なお,その職員団体が発行する広島教育時報号外第545号(2002年6月15日)には,「民間人の管理職登用に反対します。」と記されている。)
 この職員団体の学校分会が高須小学校にあり,慶徳元校長はこの学校分会への対応について,5月21日(火),県教育委員会職員及び尾三教育事務所職員に対して次のように述べている。
「学校では,初めて聞く話も多いし,組合対策も民間ではなかったレベルの話がある。」
「4月中旬までは自分も元気だったが,組合や教員とこんな話をしに来たのではないという思いがあり,嫌気がさしたころに,教頭が倒れたということが重なって気持ちが落ち込んでしまった。教育をどうしようかということでなく,そんなことに労力の大半を費やしている。」
 また,市内の小学校長からの聞き取りによれば,慶徳元校長は,校長会の後などにたびたび「校長が一言言うと,教職員が自分の思いを言う。どうして学校の先生はあんなに言うのですかね。」と話していたとのことである。

(2)校長に対する県・市教育委員会の支援

ア 市教育委員会の支援等について
 市教育委員会の報告によると,同教育委員会は,学校状況の把握とそれに基づく指導助言を行うなどして,校長の校務運営を支援する体制をとっていた。その主な方法としては,職員の学校訪問,校長ヒアリング,教育委員の学校訪問等であり,このような方法により,毎月数回にわたり,慶徳元校長の学校運営の状況把握を行うとともに,例えば,校長会での指導内容について説明を加えるなどの指導助言を行っていたとのことである。

イ 県教育委員会の支援等について
 教職員の任命権者である県教育委員会は,学校の設置者であり教職員の服務監督権者である市教育委員会と連携をとるとともに,必要に応じて尾三教育事務所を中心に職員を派遣し,校長の相談に応じている。尾三教育事務所から報告を受けた主なものは次のとおりである。

○支援訪問等
5月14日(火) 当面の学校運営の在り方について助言
5月17日(金) 学校運営について校長へ助言
5月21日(火) 学校運営について校長へ助言
5月28日(火) 学校運営について校長へ助言,校長補佐について新教頭へ助言
6月11日(火) 高須小学校関係者の連絡会議(PTA,校長,教頭,市教育委員会,尾三教育事務所)を開催し,それぞれの機関が学校を支援することを確認
2月14日(金) 当面の学校運営の在り方について助言

 なお,6月24日(月)及び2月16日(日)には,それぞれ,市教育委員会と尾三教育事務所の職員が打合せを行い,慶徳元校長に対する具体的な支援策について検討を行った。
 また,尾三教育事務所は計画的な学校訪問により,学校管理運営面や教育内容面について校長や教職員に対して指導助言を行っていた。その主なものは次のとおりである。

○計画訪問
7月 1日(月) 学習評価について校内研修で指導助言
7月12日(金) 学校訪問(校務運営組織及び教育計画,授業参観等)
8月27日(火) 道徳教育について校内研修で指導助言
8月28日(水) 指導方法工夫改善について校内研修で指導助言
10月1日(火) 県教育委員会職員による授業参観及び指導方法工夫改善について指導
1月22日(水) 高須小学校教育研究会において指導助言

ウ 教頭不在時の支援の状況について

(ア)藤井教頭入院後の状況について
 平成14年5月10日(金)に藤井教頭が入院して不在となったときには,5月13日(月)の午後に慶徳元校長は今後の学校運営の不安と心労が重なり,病院で診断を受けた結果,情緒不安定であり,休ませて欲しいと市教育委員会職員に相談をしている。
 市教育委員会からの聴取によれば,市教育委員会職員から,教頭の不在による校務運営に対する不安から弱気になっておられるので,市教育委員会職員を派遣して支援すること,教務主任に教頭の職務を担ってもらうために授業時間軽減のための臨時職員を確保することなどについて説明を行い,がんばっていただきたい旨を伝えたところ,慶徳元校長は理解され引き続き校務運営に努力されることになったとのことである。そして,県,市の連携により,(1)市教育委員会の職員が毎日学校に出向き,校長に指導助言する(5月13日(月)から5月24日(金)まで,毎日午前と午後2名の職員を交代で派遣し校務の補助に当たらせた。),(2)教育事務所も学校運営等の相談を受ける,(3)市教育委員会の要請を受けて,教務主任が校長の補佐を行えるよう教務主任の職務負担の軽減を図るための臨時職員を配置するという体制及び措置を行った。
 また,県教育委員会としても,この頃,校長自身も体調を崩したとの情報を得たので,職員を派遣し,本人から直接話を聞くとともに,助言等を行った。
 こうした経過の中で,慶徳元校長は,県教育委員会職員及び尾三教育事務所職員に対して5月17日(金)に次のように述べている。
「教頭がいないことは非常に痛い。私は,状況が分からない。校長が銀行家になっても何も分からないのと同じで,規則,手続等よく分からない。午前は係長,午後は管理主事がここ1週間は毎日のように来てくれてありがたいが事務的なことが中心である。」
  また,県教育委員会職員は,5月21日(火)に慶徳元校長から,「自分としては,公的な立場にあるし,無責任なことはできない。」との話を聞いている。これに対して,「県教育委員会としても全面的にバックアップする,1年目から結果を出そうと考えずにもっと気楽にやっていただきたい。藤井教頭が不在となっているので,後の対応も考えているし,悩みがあれば相談していただきたい。」と答えている。
 県教育委員会としては,このとき,医師の助言を得て,校長の負担の軽減を図るため,できるだけ早く,経験のある市内の教頭を配置して,校務の補佐に当たらせることが必要であると判断した。このため,市教育委員会の内申を待って,5月27日(月)に教頭の配置を決定し,翌日に尾道市立原田小学校の坂井教頭を尾道市立高須小学校教頭に配置換した。

(イ)坂井教頭入院後の状況について
 平成15年2月14日(金)に坂井教頭が入院して不在となったときには,市教育委員会との話合いで,藤井教頭が復帰する予定であった3月11日(火)までの間,(1)2月17日(月)から1日につき2~3時間程度市教育委員会の職員が学校に出向き,校長に指導助言する,(2)教育事務所も学校運営等の相談を受ける,という体制を執っていた。
 慶徳元校長は,教頭不在の中で,年度末の行事や事務処理に追われた。特に卒業式を行うことについては,慶徳元校長は,御家族に対して,「一人で卒業式をやらなければならない,経験もない,協力者もいない」などとの孤立した思いを述べていたとのことである。
 慶徳元校長は,年度末の事務処理や新年度の学校運営について,2月17日(月)以降,高須小学校において支援のため訪れていた市教育委員会職員から支援を受けている。
 なお,2月に坂井教頭が入院して不在となったときの支援は,5月に藤井教頭が入院して不在となったときの支援と比較して,(1)市教育委員会職員が学校に出向いていた一日当たりの時間が短く,毎日は出向くことができなかったこと,また,(2)教務主任が校長の補佐を行えるよう臨時職員(教務主任の職務負担の軽減を図るため)の配置という体制及び措置を行えなかった。一年の間に二人の教頭が病気で入院したという事態を重く受け止め,この時点で学校運営状況を精査し,必要な支援策を行うことが必要であったと考えるが,この点は,県・市教育委員会ともに,必ずしも十分でなかった。

(3)慶徳元校長の学校運営への取組

 慶徳元校長は,就任後,一学期の間,学校運営になじめない状況があったが,夏季休業中には,県立教育センターで行われた管理職を対象とする学校経営実践講座など延べ8日間の研修に積極的に参加するとともに,教頭とともに2学期からの学校経営の構想を練った。高須小学校の教育目標(「自ら学び,たくましく,心豊かな子ども」を育てる)の達成を図るため,2学期からは,基礎学力の定着に向けて具体の取組を進めることの検討をするとともに,市教育委員会職員や教頭の助言もあって,児童と触れ合う時間を増やすために朝のあいさつ指導や,教職員の指導力向上を図るための授業参観を計画し実施した。
 なお,県教育委員会では,10月1日(火)に会合をもったが,その際に慶徳元校長と面談した県教育委員会職員は,校長の表情が明るく落ち着いた様子であり,学校運営が一応軌道に乗ったのではないかとの感触をもった。

ア 児童との触れ合いについて
 慶徳元校長は,校長自らが朝校門に立ち,登校する児童にあいさつすることで,児童と触れ合う機会を増やそうと努力した。
 慶徳元校長の葬儀における児童の弔辞の一節には次のように記されている。
「校長先生は,高須小学校のために毎日がんばってくださいましたね。寒いのに,毎日校門に立って『おはよう』とあいさつをしてくださってました。今でも,声が聞こえてくるような気がします。3月5日の朝の集いのときも,『みんながあいさつのできる,明るい高須小学校になろうね。』とお話ししてくださいましたね。高須小学校は,校長先生のおかげで,いままでより明るくなったと思います。」
 また,慶徳元校長は,9月26日(木)から27日(金)にかけて実施された修学旅行に引率責任者として参加した。旅行中,児童と寝食を共にするなど学校内とは違う環境のなかで,児童と触れ合った。この修学旅行について,後日,校長は,充実した2日間であり楽しかったと教頭に感想を述べている。

イ 教職員の指導力向上について
 教職員の指導力向上のため,年間をとおして授業研究に取り組み,その成果として,平成15年1月22日(水)には尾道市立高須小学校教育研究会が開催された。次に示したこの大会要項のあいさつ文の一節に授業研究に対する校長の考えが述べられている。
「また,本年度から教師の専門性を生かした質の高い授業を行うことにより,児童一人ひとりの学習意欲を高め,「学びの楽しさ」を生み出す観点から,高学年における授業を,5・6年生各3学級の担任と専科教員,加配教員をチームとして学年団を編制し,担任での交換授業と専科加配教員(理科・音楽)で実施する教科担任制を導入しております。
 子どもたちの将来は,決して平坦な道ばかりではなく,幾多の困難も予想されます。
 そうした中でも,21世紀の新しい時代を創造し,国際社会の中で,強く,たくましく生きる子どもを育てるため,「自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題解決をする資質や能力」とこれを支える「豊かな心と体」を備え,『生きる力』を持った子どもの育成に努めてまいりたいと思います。」
 市教育委員会職員からの聴取によると,これまで高須小学校では公開研究会を実施することはなかったが,この研究会において全学年による公開授業が行われることとなった。この研究会には保護者を含め,約400人の参加があり,授業研究の助言者であった講師からは「慶徳校長はよくここまでやられた。最初に来た時には,どうなることかと思ったが,先生方も成長されて,校長先生の笑顔も多くなった。」との講評を受けた。

 このように校長は,坂井教頭の補佐を受けつつ,学校運営において自ら方針を示し率先して行動する姿勢を示したり,教育改革について一定の前進を遂げることができた。一方で,次に示すように学校運営上の課題について悩むことも多かった

(4)学校運営上の課題

ア 校務運営面について

(ア)児童転出に伴う学級減について
 平成14年度の新6年生について,年度末に児童が121名在籍し,新年度は4学級編制を予定していたが,4月2日に転出先の学校から受理通知が学校に届き,1名転出することが分かった。 ((注)学年の児童数が120名になると,3学級編制となる。)
 前任校長からの聴取によると慶徳元校長は,前任校長とともに,4月3日(水)に当該児童宅を訪問するなど4学級を維持しようとしたが,うまくいかなかった。結果として3学級で編制することとなり,時間割や専科担当を変更するとともに予定していた2名の臨時的任用者を任用することができなくなった。
 校長は最大限の努力を重ねたし,3学級編制は制度上やむを得ないことであったが,教職員からの聴取によると,これに対して一部の教職員からは校長の対応に不満の声が出たとのことである。慶徳元校長は,後日,教職員に対して「ひとつめの試練であった」と述懐している。

(イ)運動会の運営について
 市教育委員会職員から聴取したところによると,5月2日(木)の臨時尾道市立小中学校校長会で市教育委員会は,「運動会における国歌・国旗の取り扱いについて」を各校長に指示している。具体的には,次の指示を行っている。

開会式で国旗掲揚を行う。
(1) 「国旗掲揚」「注目の指示」
※児童生徒には,国旗に注目の指示をする。
※教職員も注目する。
(2) 国歌演奏(テープ等,歌なし,前奏なし)に合わせ国旗の掲揚
(3) 「元の姿勢に戻る指示」

 市教育委員会職員や教職員から聴取したところによると,運動会の国旗掲揚について,5月7日(火)の暮会(放課後に行う職員連絡会)で校長が市教育委員会の指示を教職員に伝えたところ,この日の会議や5月13日(月)の職員会議で一部の教職員が,「なぜ日の丸を揚げないといけないのか。」,「注目したくない子もいる。」,「地域で反対する実態を知っているのか。」,「国歌演奏のカセットのボタンを押さない。」,「校長,教頭で揚げてください。」などと発言した。
 また,教職員からの聴取によると,慶徳元校長は,13日の職員会議の終わりには,涙ながらに「みなさん,よろしくお願いします。」と言っていた。そして,職員会議録には,「国旗掲揚…役割分担について 学校長の話を聞き善処していく」と記載されている。
 このことに関連して,慶徳元校長は5月21日(火)に県教育委員会職員及び尾三教育事務所職員に対して次のように述べている。
「今年の運動会から国旗掲揚をすることとしているが,掲揚を誰がするとか『国旗に注目』という発言を誰がするかを決めることも簡単にはいかない。今年から始まったこともあって,教員からどうしてという質問が出されるが,うまく回答できない。」
 また,運動会のプログラムについても,国旗掲揚等開会式の式次第のないものが印刷されていた。5月17日(金)に慶徳元校長はどうしたらよいかと支援に来ていた市教育委員会職員に尋ねた。これに対して市教育委員会職員は「案内状の発送も遅くなるし,刷り直すのも大変だから,今年はそれでよい。運動会後の学校での反省会で,来年度は開会式次第をプログラムに印刷することを示しておくと良い。」と校長に回答した。その結果,開会式の式次第のないプログラムが配布されることとなった。
 このような経過を経たものの,5月26日(日)には,市教育委員会が指示したとおりの式次第と式の手順により運動会が実施され,「国旗に注目」の指示,国旗掲揚及び国歌のテープ演奏も教職員が行っている。
 5月29日(水)の暮会で運動会の反省会がもたれたが,教職員や市教育委員会職員からの聴取によると,その場で校長は「来年度のプログラムには,式次第を入れて,国旗掲揚・国旗降納を入れてもらいます。」と話したが,一部の教職員からは反対の意見が出された。

(ウ)長期休業中の普通研修について
 教職員からの聴取によると,長期休業中における解放子ども会の活動(特定の運動団体の方針に基づいて行われている場合,教育と社会運動や政治運動との区別を明確にするという観点から教職員が職務として関与すべきでないと整理されている)について,一部の教職員が普通研修の承認を求めるとの状況もあったとのことである。
 普通研修は,教員に権利を付与したものではなく,その承認は校長の権限であり,またその承認に当たっては,職務専念義務が免除されるのみならず給与条例上有給の取り扱いとされていることからして,研修計画書を提出させ,その研修が真に当該教職員の資質向上につながるなど研修内容を確認・判断した上で,承認を行うべきものである。この点を教頭から指導したところ,教職員が取り下げたとのことである。

(エ)勤務評定について
 慶徳元校長は,2学期から,教員の授業を観ることを職員に話した。
 市教育委員会職員及び教職員から聴取したところによると,9月5日(木),勤務時間外ではあったが,職員団体の学校分会の組合員の多くが参加し,本来管理運営事項であり,職員団体と交渉する内容ではない勤務評定に関する話し合いが行われた。この場で教職員は,一律勤務評定(所属職員に対して同一の勤務評定を行うこと。)のことであるとか,授業参観の目的などを校長に尋ねている。これに対して校長は「公平にしたい。」,「何年もやってきているので,不利にならないようにする。きちんと評価する」と答えた。

(オ)指導方法工夫改善加配の運用について
 指導方法工夫改善の加配教員が配置されている学校は,その実施状況について年度末にティーム・ティーチングの実施時間数や成果等を報告するようになっている。高須小学校もその対象校となっていた。(ティーム・ティーチングとは複数教員による協力的な指導のことである。以下TTという。)
 2月26日(水),校長は,平成14年度のTTの授業実績報告書を市教育委員会に提出した。翌27日(木)には,市教育委員会から指導方法工夫改善の趣旨に合致しないTTの授業は除外することや,当初の計画と違った理由を補記するよう指導を受けた。
 一方,尾三教育事務所も,高須小学校のTTの運用について問題があるのではないかということを知り,3月6日(木),市教育委員会に実態を調査するよう連絡した。市教育委員会職員が,同日夕方,学校を訪れ,TT加配教員の実施記録や週案等を突き合わせ,ほぼ整合性があることを確認した。
 市教育委員会からの報告によると,このとき校長は,「生徒指導上難しい学級の習字を担任以外が担当しているが,学級状況から担任も入り,複数教員で指導してきた。」という点を心配して話された。市教育委員会は,学級の実状から複数教員による指導が行われているので,心配することはないことを校長に伝えた。
 また,市教育委員会職員と尾三教育事務所職員が,確認のため3月10日(月)の午後に調査を行うこととなったが,この調査については,教務主任が当日は自分が必要な対応を行う旨校長に説明したところ,校長は安心した様子であったとのことである。 
 今回の調査では,県教育委員会としてTT加配教員に限らず,すべてのTTの授業実施状況について,実施記録や週案,報告書,出勤簿その他の関係資料を含めて調査した。その結果,平成14年6月の「実施計画書」では,TTの授業は第3・4学年の算数科を中心として1,606時間が計画されていたが,その計画に沿って実施された時間数は学年末までに1,206時間という報告であった。
 高須小学校では,計画を立てて継続的にきめ細かな指導を行うという制度本来のあるべき運用とは異なるが,時間数が不足することを補うために,当初は計画していなかった授業でTTを380時間行っていた。
 こうした時間を含めて,出勤簿その他の関係資料を精査したところ,TTを実施したとされる1,586時間には,(1)年休を取得していた教員が,TTを実施したと実施記録に記されている時間が6時間,また,(2)実施記録と週案を照らし合わせると,一つの教室でTTを実施しているはずの教員の教科が別々の教科となっていたものが75時間含まれていた。この併せて81時間については,実施記録には記載されているが,実際はTTの授業は行っていなかったものと考えられる。
 また,TT実施記録には授業実施の記述があるものの週案にはTTの授業と記載されていないので,TTによる授業の実施の突合できないものが相当な時間数あった。

(カ)卒業式のしおりの年号表記について
 市教育委員会職員からの聴取によると,3月3日(月)に尾道市立小学校校長会で卒業式のしおりの年号表記について質問があった。市教育委員会は,前年度から卒業証書の年号表記を改めたことを踏まえて,卒業式の式次第を記載する「しおり」についても,「元号が好ましい」,「併記する場合は,元号(西暦)に」と指示を出した。
 この件について,教職員からの聴取によると,校長から,今までは,2002年(平成14年)となっていたが,今年度は平成15年(2003年)とすることとする旨伝えたところ,一部の教職員から,「それはおかしいと思います。」「今までどおりでいいじゃないですか。」「これは校長の仕事ですよ。」「私たちにはできない。」との発言があったとのことである。

(キ)藤井教頭の復帰に関することについて
 3月7日(金)に実施された人事評価に係る自己申告に関する研修会の講師からの聴取によると,研修会終了後に慶徳元校長が「藤井教頭先生が,引き続き休まれるが,実は3月11日の朝7時30分にごあいさつに来られます。」と言った途端に,数人の教職員が立ち上がって「何で来るんですか。」,「7時30分にどうやって私達に来いと言うんですか。」,「会ってゆっくり話す時間もないのに,来られる必要はありません。来させないでください。」などとの発言があった。これに対して校長は一言も言葉がなかった。

イ PTAとの関係について

(ア)運動会の運営について
 市教育委員会職員からの聴取によると,5月13日(月),PTAの厚生体育委員会において保護者から,実施種目や会場の設営等運動会の実施について11項目の提案が出された。また,この時,「願いが聞いてもらえないのなら,学校の行事に協力しない。学校だけでやればよい。」という意見がPTA役員から出されたということである。
 これに対して学校は,5月21日(火)に実施されたPTA実行委員会で運動会は学校行事であるので,その内容については学校が決定するとの考え方にたって,ほぼすべての項目について実現が難しい旨の回答をしている。これに対してPTA役員からは特別な反論もなく,「例年通り協力してします。」という発言があった。

(イ)ウサギ殺害事件後の対応について
 10月26日(土)の朝,学校で飼育していたウサギ17匹が殺害されているのが発見された。この事件の後,高須小学校では,児童の安全を確保する必要から10月29日(火)以降,教職員が引率して集団下校を行った。
 市教育委員会からの聴取によると,この集団下校について,教職員から,放課後の個別指導ができない,会議や研修会が開催できないという意見が出され,こうした理由から,学校として,12月6日(金)に全校保護者会を開催して集団下校の引率を2学期末でやめることの了承を求めたが,一部の保護者から「子どもの安全をどう考えているのか」と疑問が出された。そのため12月12日(木)に開催されたPTA臨時総会でこの件について話合いがなされ,12月末までで集団下校の引率をやめることとするが,3学期の下校時の保護者の出迎えについては,各地区ごとにその対応を協議し,対応することとなった。

ウ 外部団体との関係について
 市教育委員会からの報告によると尾道市同和教育研究大会について校長と関係者との間で次のようなやりとりがあった。12月23日(月)に実施予定の尾道市同和教育研究大会について,9月19日(木)尾道市同和教育研究協議会(以下「尾同教」という。)の代表2名が,借用申請書類を持参し,高須小学校を会場として使用したいので,申請書への押印をするよう慶徳元校長にしきりに求めた。校長はこれに対して当日は,学校行事がなく,物理的な制約はないが,市教委が諾否権を持っていると回答した。
 翌20日(金),市教育委員会職員が,学校に書類一式を持参し,県教育委員会が本来の学校設置目的と関係がないなどの集会には使用許可を認めることは適当でないと指導していることを踏まえて,「貸し出しは,是正に対して後退する対応になり,市教委内で諾否決定をしたい。教育委員会で検討するので,申請書には押印しないようにと指示を受けていると回答してよい。」と答えている。
 この後,9月30日(月)には,尾同教代表から慶徳元校長に電話があった。慶徳元校長は「学校は窓口として受付している。最終判断は尾道市教育委員会にある。」と答えた。
 10月4日(金)には,尾同教代表から,「尾道市教育委員会より校長印を押したものをあげてもらってよいと連絡を受けた。」との電話があった。校長はそれが事実なのか市教育委員会に確認を求めている。その際,市教育委員会職員が「行きがかり上,言葉尻をとられて,校長印をつくことを了解せざるを得なかった。」と校長に伝えている。電話の後,校長は,市教育委員会を訪れ,書類に押印している。
 このことについて,教職員からの聴取によると,校長は何でこんな問題で悩まないといけないのかという思いをもっていたということである。

(5)校長の勤務の状況

 市教育委員会からの報告や教頭からの聴取によると,校長・教頭は,通常,教職員が退校した後も,校務運営に関する相談や事務処理のために勤務に従事していた。校長は,教頭が病気で不在の期間を除けば,会合等がない日はおおむね8時から9時ごろに帰宅していた。(教頭は,それより遅くおおむね9時から10時すぎまで仕事をしていた。)
 勤務日230日のうち,PTAや地域の会合等で退校時刻が遅くなった日は,78日あった。また,113日の休日のうち,学校での業務,子ども会や体育協会などの地域行事の参加等に費やした日は43日程度あったと推測される。地域の運動会や各種行事等が高須小学校で開催されたため,管理者として学校に出なければならない状況があった。また,幼稚園長を兼務しているため,小学校が休日の日に幼稚園の行事のために出勤した日も4日あった。
 健康の状況については,慶徳元校長が,高須小学校に赴任した平成14年4月には,健康上の問題については特に報告を受けていなかった。
 5月に藤井教頭が入院し不在となった際,5月13日(月)の朝,慶徳元校長は市教育委員会を訪問し,職員に対して自分は不安と心労が重なりしんどいのでこれから病院に行くことを話している。また,同日午後には,8ページに記したとおり,市教育委員会職員が病院で診断を受けた旨,校長から相談を受けている。県教育委員会においても9ページに記した状況を把握している。
 市教育委員会の報告によれば,9月,10月は大変調子がよかったが,10月下旬のウサギ殺害事件や高須小学校130周年記念式典のころ少し情緒不安定の傾向にあったとのことである。
 そして,11月下旬に,市教育委員会職員は,8月から通院し,薬を服用していることの報告を慶徳元校長から受けた。
 なお,この頃,県教育委員会においても市教育委員会を通じてこの旨報告を受けていた。
 また,来年度に向けての本人の人事上の希望等も確認し,校長・教頭を含めた次年度の高須小学校の教職員の人事配置について検討をしていたところである。

(6)亡くなった当日の様子

 市教育委員会職員からの聴取によると,3月9日(日)慶徳元校長は出勤し,午前9時から,創立130周年記念整備事業の一環として,教職員4名とPTA10名とともに通学路に面した場所で作業を行っていた。教職員からの聴取によると,この日,校長の様子に特に変わったところはなかったとのことである。
 慶徳元校長の亡くなった後,校長室の校長の机の引き出しに「能力のない者が校長になってたくさんの方々に御迷惑をおかけすることになって本当に申し訳ございません。」と記された慶徳元校長のメモが残されていた。 また,校長の名刺入れには,家族あてにお別れの言葉が書かれた慶徳元校長のメモが残されていた。
 そして,3月24日(月)に行われる予定の卒業式の式辞が校長室の本棚に既に準備されていた。

(7)その他

 慶徳元校長は,一月に数回程度,市教育委員会に対して,上記以外のことを含めて様々な相談を行っていた。その詳細については市教育委員会の報告に委ねることとし,ここでは,教職員等からの聞き取りによって,校長にとって学校運営上の悩みとなっていたと思われる主な事柄のうち,その具体的な状況を把握できたものについて記載してきた。
 本件発生以後,高須小学校の学校運営に関しては様々な指摘があった。ここで記したこと以外にも,例えば,一部の教職員が校長に対してあいさつしなかったのではないか。校長が朝の登校時に児童にあいさつしていたのに教職員が協力しなかったのではないかなどの指摘である。教職員等からの聞き取りに当たっては,こうしたことについても尋ねたが,「気づかなかったことがあったかもしれない。」,「校長から協力を求める旨の話しがなかった。」などという回答であった。
 県教育委員会としては,県教育委員会自身が直接把握していたこと及び教職員等からの聞き取り等において確認してきたことをここに整理し報告とするが,今後とも,関係者の協力を得ながら,事実の把握・確認に取り組んでまいりたい。

3 慶徳元校長が学校運営に悩みを抱いた背景と要因について

 上記1及び2において,高須小学校における慶徳元校長の状況について調査により判明した事実を記してきた。慶徳元校長が死を選ぶに至った原因をこれらの事実からだけでは断定することは困難であるが,残されたメモには,校長として御自身が思い描き,また周囲が期待したような学校運営をすることができなかった旨が記されていた。なぜ,このような状況が生じてしまったのかを一連の経過から見ると,その背景・要因にはいくつかのことが考えられる。

ア 慶徳元校長の思いと学校運営や校長職の現実との間にずれがあったこと
 慶徳元校長は,既述したように,採用選考に当たっては,校長として学校経営に当たることに意欲的であったし,学校経営については,(1)生徒の笑顔が輝く学校,(2)教職員が生き甲斐を持って働ける学校,(3)保護者や地域から信頼される学校を目指して学校運営を行いたいこと,そのために,(1)明確な目標設定と成果に対する厳正な評価の実施,(2)スピード感とチャレンジ精神を持った学校運営の展開,(3)風通しのよい職場づくりなどの方針でのぞみたいとの抱負を持っていた。
 しかしながら,現実には,上述してきたように,校長採用後の間もない時期から学校運営の最高責任者として職務を執行するに当たって,不安や悩みを抱えていた。学校教育に関する専門知識が十分でないこと,教職員等との関係がうまく構築できないことなどから,学校運営に対してなじめない思いを持っていたものと思われる。
 御家族からの聴取によると,慶徳元校長は,応募の時点から,家から通え,小規模で難しくない学校を希望しており,県教育委員会としても,選考の時点において,自宅から通勤できる小学校に勤務したいという希望を持っていることを把握していた。教職員の人事配置については,もとより本人の希望により行うものではないが,本件の場合には,民間からの転進であり,勤務環境が大きく異なることから,選考に当たって本人の思いや生活環境を丁寧に聴取するとともに,採用に当たって本県の人事配置の考え方を伝え十分な理解を得た上で決定できる時間的な余裕があることが望ましかったが,その点が不十分であり,本人の思いとの間でずれが生じてしまう結果となった。また,配置に当たっては,配置校の状況や課題,配置校において当該教職員に求められる職務内容等を考慮して行うことも必要なことである。県教育委員会では,3ページに記した考え方によって慶徳元校長を高須小学校に配置し,同校長に民間企業で培った組織マネジメントの力を発揮してもらうことを期待していた。しかし,このためには,その前提として,配置の際に19ページに記すような高須小学校の学校運営上の課題を十分に把握し,配置に先だってそのような配置校の状況や課題を慶徳元校長に伝えることが必要であったが,この点について,十分でなかったと認識している。その結果,慶徳元校長としては,高須小学校の状況や課題に対処するために十分準備することができないまま校長職として学校経営を始めることとなり,本人が持てる力を発揮する上での妨げとなったのではないかとの反省がある。 
 これまで記してきたように,このこと以外にも,管理職と教職員との関係など,慶徳元校長の思いと学校運営や校長職の現実との間にはずれがあったものと思われる。こうしたずれについては,採用後に御本人自身がこれを埋めるべく,教頭等との対話や職務執行を通じて自己研さん等により努力を重ねておられたわけであるが,既に5ページの「制度運用の改善」の項で記述したように,任命権者である県教育委員会として,選考決定時期の早期化はもとより,採用選考に先立って採用候補者に対して学校運営の現状や民間人校長に期待する役割等について直接説明すること,事前研修の内容を充実することなどを通じて,採用直後から円滑な校務運営に移行できるような環境を整える必要があると考えている。

イ 慶徳元校長の学校運営に対する県・市教育委員会の支援が十分でなかったこと
 市町村立小中学校については,県教育委員会は校長の任命権者として,市教育委員会は学校の設置管理者及び校長の服務監督権者として,それぞれが連携協力しながら,校長の不安や悩みをキャッチし,その原因を取り除き,安定した気持ちで勤務できるよう必要な支援を行わなければならない。特に,民間人校長については,初めて教育界に入り,学校運営の現状や課題に関する知識が乏しいことから,5ページの「制度運用の改善」の項に記述したように,新任校長として学校経営に不慣れな就任当初の学年始めの期間などには,県・市教育委員会が直接校長や学校の状況をつぶさに把握し,職員を派遣して校長の相談に応じるなどの支援を行うことが必要である。特に,配置校が是正指導上の課題を抱えている状況にあったこと,職員団体が民間人校長の任用に反対して取り組むという方針をもっていたこと等を考慮すると,こうした状況を十分に調査把握して,よりきめ細かな支援がなされる必要があったものと考える。
 慶徳元校長は,校長として子どもたちへの朝のあいさつを率先垂範したり,教育研究会において全学年での公開授業を実現するなど学校運営を改善充実することに努力し成果を上げたが,その在任中を通じて,本人の思い描いていた学校運営とはずれがあり,孤立感や無力感を抱いていたものと考えられる。慶徳元校長に対しては,市教育委員会の日常的な指導助言に加えて,県教育委員会としても本庁職員や教育事務所職員を派遣し支援を行ってきたが,カウンセリング等により校長の不安を和らげることができたのか,校長の悩みに的確かつ迅速な指導助言を行ったのかということを振り返ったとき,反省すべき点がある。
 また,県・市教育委員会ともに,秋以降は,10ページに記したように,慶徳元校長は,教頭の支援を受けながら,一応円滑な校務運営を行っていると承知していたが,結果としてみれば,この時点においても,慶徳元校長の学校運営になじめないとの思いが払しょくされていたわけではなかったことから,県・市教育委員会がより密接に連携し,より具体的に校長の校務運営の状況を把握することが必要であったと考える。
  なかでも,教頭が不在となったときの支援については,不十分であったと考えている。
 5月及び2月の2回にわたって教頭が病気により不在となり,この間,市教育委員会職員が学校に赴き校長を支援したが,支援に際しては事務的な補助が中心であり,慶徳元校長からの要請がなかったとはいえ,職員会議に出席していないなど学校運営において最も校長が苦労している場面での校長に対する補佐の在り方に課題を残した。また,5月に教頭が病休により不在となったときには直ちに後任の教頭を発令したが,2月に坂井教頭が病休で不在となったときには,病気休職中であった藤井教頭が3月上旬に復帰することが予定されていたことから後任教頭を発令しなかった。さらに,その後藤井教頭が年度内には完全復帰できないという状況が判明したが,先述したように,藤井教頭の復帰予定が,坂井教頭の後任の教頭を発令しない理由であったことを考えると,こうした状況の変化に対応して十分な状況把握がなされるべきであったと思われる。このように,特に2月に坂井教頭が病休により不在となったときのことについては,県・市教育委員会ともども,一年の間に二人の教頭が病気で入院し不在となったとの状況を重く受け止め,慶徳元校長の状況を把握し,学校運営に対する支援を行うことが必要であったが,結果として十分でなかったと受け止めている。

ウ 高須小学校に学校運営上の課題があったこと
 既に上記2で記してきたように,高須小学校においては,教職員が担当する学年・学級など校務分掌の原案を職員団体の学校分会が作成し校長に提案してきたり,校長自身が様々な議題を職員会議で提案し職員の了解を得ないと学校運営が難しいなど,校長権限が制約され,校長のリーダーシップが発揮しにくい状況にあった。
 また,高須小学校においては,管理職や主任等で組織される企画運営委員会がその役割を十分に果たしておらず,主任制が十分機能する状況にはないなど,組織上の問題があった。
 これらのことは,いずれも,平成10年の文部省(当時)是正指導において指摘された事項であり,県内の大半の学校において課題解決がなされている中で,高須小学校においてこのような状況が継続していたことは誠に遺憾である。県・市教育委員会としては,こうした学校運営の状況を把握して,適切な指導を行うことが必要であった。しかしながら,例えば,運動会における国旗・国歌の取り扱いに見られるように,意思決定の過程において厳しい意見が出たりするとの状況はあるが,結果としては市教育委員会の指示した事柄が実現されていることから,学校の外からは,学校運営上の課題について認識し,慶徳元校長の校務運営における苦悩を十分把握することができなかった。
 また,適切な校務運営組織が整備されていなかったことから,学校としての意思決定に当たって,校長の提案に対して一部の教職員から様々な対立的な意見が出され校長が苦慮しなければならない状況があった。慶徳元校長は,風通しの良い学校をつくりたいとの考えから,また,御自身で述べておられるようにその柔かい性格から,教職員の話をできるだけ傾聴しようとするとの考えに立って校務運営を進めていた。しかし,一部の教職員は,運動会における国旗・国歌の指導,卒業式のしおりにおける元号の表記等について,市教育委員会や校長の指示に最終的には従うものの,校長が校務運営に慣れずに,特に教頭不在の中で困った様子であるにもかかわらず,校長の提案や指導に対して質問を繰り返したり,異議を申し立てるなどの行為が見られ,教職員が学校目標の実現に向け,校長を中心として一丸となって取り組む体制となっておらず,校務運営に協力する姿勢に乏しかったことから,その過程において校長は校務運営に相当苦悩していたことがうかがえる。
 このように,高須小学校においては是正指導の指摘事項の課題解決が十分でなく,特に意思決定の過程において慶徳元校長が苦慮される場面が多々あり,校務運営組織の整備等是正指導の内実化が十分に図られていなかったものと考えられる。

第3 調査を踏まえた今後の取組について

 このたび慶徳元校長がお亡くなりになられたことは,民間からの新しい風を吹きこんでいただくことを期待していただけに,本県教育にとって大変大きな損失である。
 県教育委員会としては,今回このような結果となったことを深く反省し,今後二度とこのような不幸な事態を起こさないよう,このことを教訓として教育行政の適切な遂行に全力で取り組むことを決意する。
 このため,まずは,「第1 民間人校長採用制度の運用について」で詳述したように,民間人校長採用制度について,民間人校長の採用,事前研修,補佐・支援体制等の運用の改善を図ることとする(一部については既に措置済み。)。
 また,今回の調査で明らかになった学校運営上の諸問題を踏まえ,市町村教育委員会と連携しつつ,高須小学校だけでなく,県内全体の課題を抱える学校について,その運営の改善・充実を進めることが必要である。すなわち,学校運営に当たっては,校長を中心としてすべての教職員がその職務と責任を十分に自覚し,一致協力する状況を生み出すことが必要である。
 このため,県教育委員会としては,本報告書をもって取組を終わらせるのではなく,今後も,県内の課題のある学校について,その運営の現状を継続的に把握するとともに,是正指導の徹底や教育改革の推進に重点的に取り組み,各学校において,校長が自らの教育理念に基づいて特色ある教育活動を展開し,保護者や地域住民等から信頼される学校づくりが行われるよう全力を挙げる。その際,県教育委員会で実施している各種の施策を点検・評価し,その適正な執行に努める。特に,市町村教育委員会,校長会など学校運営に責任を有する関係者との連携をより緊密なものとする。

● 是正指導の徹底
 尾道市のみならず,県内各地域の学校の是正状況を的確に把握するとともに,課題のある学校に対してより一層の改善を指導助言し,校長権限に基づく責任ある学校運営がすべての公立学校で行われるように引き続き強く指導する。その際,小・中学校については,教職員の任命権者である県教育委員会と学校の設置者であり教職員の服務監督権者である市町村教育委員会が,それぞれの役割を適切に果たすとともに,より緊密な連携を図るものとする。また是正指導の徹底に当たっては,学校経営上の課題を抱える校長を支援するとともに,校長の相談に応ずる体制の充実を図ることも重要である。このため,市町村教育委員会や校長会とも協議しつつ,学校の状況をつぶさに把握し,学校や校長に対してきめ細かな指導と支援を行うことのできるシステムを確立する。
 また,是正指導については,教職員が形式としてこれに従うといった消極的な受け止めではなく,信頼される公教育を実現するためには,校長のリーダーシップの下で組織的な校務運営を行うことが必要であることについて十分に理解し積極的な受け止めがなされるよう,指導や研修の充実が必要である。その際,特に,昨年の義務教育に関する県民意識調査において,多くの県民が小・中学校の教職員に対して望むこととして,「物事を正しく判断する力を持っていること」との回答を寄せていることについて,改めて謙虚に受け止める必要があると考える。

● 教育改革の推進
 今日,各学校が様々な教育課題に直面している中で,学校が組織としてより合理的に課題解決を図ることができるよう,選択と集中,評価と公開という原理に基づき,学校評価や人事評価を定着させる必要がある。
 学校経営目標に基づき,一人ひとりの教職員が校長と一体となって目標を達成する教育活動を行うことにより学校教育の質,それを支える教職員の資質・指導力の向上を図ることが必要である。また,学校運営について校長・教頭のみならず,多くの教職員が広い視野を持って考えを深め,責任を持って積極的に参画することとなるよう,主任層の資質・能力の向上を図り主任層が中心となって組織マネジメントを展開するなど学校運営体制の充実を図ることが重要である。これらのことが,各学校における教育内容上の基礎的・基本的事項の指導の徹底・確実な定着とあいまって,児童生徒,保護者及び地域住民の期待に応え,県民に信頼される学校づくりをさらに推進することができるものと考える。その際,市町村教育委員会や校長会との連携をより緊密なものとしつつ,教育行政の適正な執行に万全を期してまいりたい。

おわりに

 県教育委員会としては,是正指導の徹底を図り,教育改革を推進することを通じ,広島県全体の教育を一層充実させることが,学校におけるマネジメントの確立に取り組まれた慶徳元校長の御遺志に沿うものと考え,全力を尽くして取り組んでまいりたい。

更新日:平成15年5月9日担当:教育委員会教職員課kyoushokuin@pref.hiroshima.lg.jp