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4 是正の取組み(その1)

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4 是正指導の取組み

(1) 対応の視点

是正指導を受けた後,県教育委員会は,平成10年5月22日に県立学校長会議, 同月29日に市町村教育委員会教育長会議を開催し,是正指導の内容について周知徹底した。
 6月9日,学校管理運営の適正化に係る指導通知を発出し,県立学校長及び市町村教育委員会を指導した。また,指導要録の適正な記入,授業時間数確保及び道徳の時間の実施状況調査の実施,学校管理・運営に係る調査の実施について通知を発出し,指導した。
 平成10年6月12日,教育委員会会議において,是正指導に当たっての取組みの視点を次のとおり明確にした。 

文部省からの是正指導については,県教委としては,是正措置を着実に実施することにより,県民の本県教育に対する不安を払拭し,県民の期待に応えるよう最大限の努力をしていかなければならないと考えている。
 こうした認識に立ち,次の視点で取り組んでいくものとする。

(1)学習指導要領等の関係法規に照らし,「逸脱」あるいは「そのおそれがある」部分について是正・改善を図っていくものであること。
(2)是正状況については,文部省,県議会文教委員会に報告するものとすること。なお,文部省からは,少なくとも3年間継続するよう求められていること。 
(3)是正に取り組むに当たっては,市町村教育委員会及び校長と十分な連携を図るとともに,広く関係者の理解と協力を求めるものとすること。

 また,是正指導を受けるに至ったことについて,県教育委員会は県教育長に対し文書訓告,県教育委員会幹部職員に対し口頭による厳重注意を行った。

(2) 主な経緯

 是正指導1年目(平成10年度)においては,平成10年6月に各学校における道徳,人権学習等の実情把握に努め,8月~10月には学校の管理運営の実態や是正状況を把握すべく,すべての公立小中学校及び県立学校を対象に校長ヒアリングを実施した。この結果,具体の課題が明らかになった,教職員の勤務管理の適正化,職員会議の運営の適正化,主任等の命課の適正化,確認書の破棄等の項目については,指導通知を発出し,校長及び市町村教育委員会を指導した。特に,県立学校については,本人の希望以外の人事については意見具申しないとするなど校長権限を制約する内容の人事協定書を締結しないこと,また,締結した場合は破棄することを指導し,人事の適正化に努めた。
 10月には,教育長ホームページ「ホットライン教育ひろしま」を開設し,本県教育に関する最新の情報を広く県民に公開した。特に,「意見のひろば」では,本県の教育施策に対する様々な意見を掲載し,開かれた教育行政の実現と県民の意向を的確に反映した教育行政の推進に努めた。また,県教育委員会の広報紙「くりっぷ」にも是正指導に関する経過を掲載することで是正指導に対する県民の理解を求めた。
 平成10年12月,学校運営の適正化及び学校における国旗・国歌の取扱いについて通達を発出し,学習指導要領をはじめとする法令等に則った教育の推進を図るよう県立学校長及び市町村教育委員会を指導した。
 卒業式・入学式における国旗・国歌の実施に関わって職員団体や運動団体から「国旗・国歌の法的根拠がない」,「同和教育との整合性がない」,「2・28見解に矛盾する」などとした強い反対があり,一部地域においては校長会として県教育委員会へ要請文を書くよう運動団体から迫られるなどの状況があり,数多くの要請文が県教育委員会に送付された。
 こうした状況の中,平成11年2月23日,臨時に県立学校長会議を開催し,その際,卒業式・入学式における国旗及び国歌の取扱いを学習指導要領に基づいて適正に行うよう,教育長が各校長に対し職務命令をもって指示した。その中で,国歌「君が代」の指導にあたっては,その歌詞の意味は日本国憲法の枠組みの中で解釈されるべきものであり,我が国の繁栄を願った歌であるという考えを明らかにした。同日付けで,県立学校長,市町村教育委員会教育長に対し指導通知「学校における国旗及び国歌の取扱いについて」を発出し,国歌「君が代」についての県教育委員会としての考え方を示した。また,教育事務所ごとに管内の市町村教育長会議及び校長研修会を開催し,指導の徹底を図った。
 さらに,平成11年3月に広島県立高等学校等管理規則を改正し,職員会議を,校長の職務を補助させる組織として明確に位置付けるとともに,市町村教育委員会に対して同様に学校管理規則を改正するように指導通知を発出した。 

 是正指導2年目(平成11年度)においては,公教育は法令等に則り,適正に実施すべきものであるということを踏まえ,学習指導要領に則った教育活動の実施と校長の権限と責任による学校運営体制の確立をめざし,1年目の取組みで残された課題に取り組んだ。

是正指導2年目(平成11年度)における基本構想図

是正指導2年目(平成11年度)における基本構想図の画像

 平成11年6月28日,県教育委員会は職員団体等とのこれまでの対応のあり方を見直し,以後,これに基づいた適正な対応を行うこととした。
 6月29日,指導通知「教職員研修について」を発出し,県立学校長及び市町村教育委員会を指導した。これにより,教職員研修の実施に当たり職員団体との話合いにより進めてきた姿勢を改め,県教育委員会の権限と責任において適正に教職員研修を実施することを明確化した。
 県立学校長に対して7月上旬から中旬にかけて,市町村教育長及び小中学校長に対しては6月上旬から7月上旬にかけてヒアリングを実施し,是正状況を把握するとともに,課題のある学校や市町村教育委員会に対しては,個別に指導を重ねてきた。
 10月25日の県立学校長会議,同月26日の市町村教育長会議において,いわゆる「2・28文書」が国旗掲揚・国歌斉唱の適正な実施に支障をきたしているという状況があることから,県教育委員会は,いわゆる「2・28文書」を現在においては意味を持たないと明確に否定し,学校においては,過去の文書にこだわらず,学習指導要領に基づき,卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱が適正に実施されるよう指導した。
 管理運営面では,県立学校の教職員が勤務時間中に職員団体の活動に従事する際,年次有給休暇を取得しなければならないにもかかわらず,一旦形式的に年次有給休暇の届けを行い,その後破棄するという,いわゆる「破り年休」の問題について,勤務時間を適正に管理するよう校長を指導するとともに,条例所定の事由がないのに,給与を受けながら勤務時間中に職員団体のための活動を行った職員について,違法に勤務場所を離脱した時間に相当する給与額の返還を求めた。
 また,教職員定期人事異動においては,長期在職者の解消,広域人事の推進,校種間交流及び他県交流などの推進を図った。
 さらに,主任等の命課時期の早期化や経験や識見を有する適格者の命課など主任制の機能化に向けて引き続き指導をした。
 また,県教育委員会は,主任等について,職員団体との間で交わした「協定」,「覚え書」を破棄するとともに,広島県立高等学校等管理規則を改正し,命課は教育委員会の承認を得て校長が行うこととした。併せて,主任等の命課に当たり,職員会議の討議などを経て行うとする教育長訓令を廃止した。

 是正指導3年目(平成12年度)においては,教育介入を排除し教育の中立性を確保するとともに,アカウンタビリティ(説明責任)を重視して,県民の参画と協力を得ながら是正に努めた。

是正指導3年目(平成12年度)における基本構想図
是正指導3年目(平成12年度)における基本構想図の画像

 県教育委員会は,教育研究団体との関係について抜本的な見直しを行い,法令等に照らして適正な研究活動が行われ,その成果が期待できる教育研究団体に対し,補助金等の支援を行うこととした。このことから,従来行っていた広島県同和教育研究協議会や広島県高等学校同和教育推進協議会に対する補助を廃止した。また,平成12年5月30日,「広島県学校教育研究団体連絡協議会」が設立された。
 6月28日の県議会本会議での教育長答弁において,「同和教育が全ての教育活動や法令等に優先するとするのは誤った考えである」として,いわゆる「同和教育基底論」を否定し,運動団体との関係について,「連携の名のもとに,運動団体が学校に運動論を持ち込んだり,自らの主張を受け入れるよう一方的に働きかけたり,また,校長権限を侵すような要望を学校が受け入れたりするようなことは決してあってはならないことであり,そのような場合には,運動団体との対応は行うべきではない」,「中立・公正の原則が厳しく求められる公教育の場にあっては,教育と政治運動や社会運動との関係は明確に区別されるべきである」という県教育委員会の考え方を明らかにした。これらの整理によって,これまで多くの学校で年度末に行われてきた同和教育の視点から全ての教育活動を点検・評価する「総括」の見直しや,校務分掌全体を再編する中で,同和教育部の名称変更,人数・仕事内容等の縮減が進められるようになってきた。
 また,9月19日,昭和60年9月に作成された「広島県における学校教育の安定と充実のために」(いわゆる「八者合意」文書)に関し,県議会本会議において知事が「教育現場において,教育介入を招いているとの疑惑を生み,教育行政を進める上でいささかでも支障となることがあってはならない」と答弁するとともに,教育長が答弁し,「あくまでも過去の文書であり,今日においては,これに拘束されるものではない」という県教育委員会の方針を示した。
 そして,6月,9月県議会で示した同和教育をめぐる県教育委員会の考え方について,改めて,10月3日の市町村教育長会議,同月5日の県立学校長会議において指導の徹底を図った。
 また,市町村教育委員会が助成している市町村同和教育研究団体の活動が政治運動や社会運動と明確な区別ができているかという観点で実態調査を行い,12月下旬,活動方針等において問題があると報告のあった研究団体に助成している市町村教育委員会に対し,ヒアリングを実施するとともに,学習指導要領をはじめとする法令等の趣旨に沿った適正な活動をするよう指導した。
 卒業式・入学式における国旗及び国歌の適正な実施を図るために,12月26日付けで指導通知「卒業式及び入学式における国旗及び国歌に係る指導について」を発出するとともに,「国旗掲揚は正面掲揚が望ましいこと」,「国歌斉唱に際しては,教職員は起立するとともに,児童生徒が起立して斉唱するよう指導すること」などについて,12月26日の県立学校長会議,翌27日の市町村教育長会議において指導した。
 主任等については,その命課時期の早期化及び適格者の命課に努めるとともに,教務主任研修を初めて実施するなど,主任等が実質的に機能するよう努めた。

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