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広文協研修会(平成18~22年度)

印刷用ページを表示する掲載日2024年1月16日

広文協では,公文書等や地域に伝存する古文書・記録類の保存・管理・活用に向けて,その具体的方法や知識を共有するため,年2~3回の研修会を行っています。

平成22年度

第1回 「小規模自治体における公文書館機能の導入に向けて―芳賀町総合情報館の事例―」 

芳賀町総合情報館 富田健司 (平成22年10月4日,於廿日市市市役所7階会議室)

『広文協通信』第18号8~12頁。

要旨

  • 平成20年に開館した芳賀町総合情報館は,町民と町が一体となって文化・地域・行政情報資源を収集・利活用する生涯学習と文化活動の総合拠点になること,図書館・博物館・文書館の機能集約に伴う情報の一体的利用とその利便性,この2点を主な運営のコンセプトとしている。
  • 文書館の構想段階であった平成14年に,芳賀町文書取扱規程の改正を行い,非現用文書の移管を開始したこと,また平成20年に永年保存文書の80%を総合情報館の地域資料庫に移動したことによって文書館機能が充実した。
  • 全般的に公文書に重点を置いてきたこれまでの業務から,町史編さん事業で収集した歴史的私文書等の再活用を含んだ業務の再構築を図ること,また図書館・博物館・文書館の機能を複合することの意義をどのような形で具体的に打ち出すのかが,今後の課題である。
  • 保存期間満了文書の移管が制度的に整備されており,情報公開制度より幅広い公開裁量を有するという2点を満たしていれば,独立した施設を持たずとも,公文書館機能を果たすことが可能。
  • 地方自治体の現状を考慮すれば,まずは歴史的公文書の保存整備を規則や要綱といったレベルで行っていくことも一手であるが,最終目標地点としては条例の制定を視野に入れなければならない。

第2回 「広島市公文書館における写真資料の収集・保存・活用について」

広島市公文書館 池本公二 (平成23年2月4日,於広島市公文書館研修・会議室)

『広文協通信』第19号9~12頁。

要旨

  • 公文書館所蔵の写真は,刊行目録や図書・エクセルデータで管理しているが,エクセルデータは職員用であり,利用希望者には,刊行目録や図書から写真を特定の上,申請書を提出してもらっている。営利目的が明らかなものを除いて,かなり緩やかな条件で提供している。
  • 写真資料は将来の広島市史の編さん資料として収集しており,市の広報紙で呼びかけるなど,重点的に収集している。媒体はネガ・ポジフィルム・プリントのほか,寄贈が無理な場合は借用の上,デジタルカメラによる撮影やスキャニングで収集している。
  • 整理方法は時期により変化しているが,フィルムをネガ袋に入れ,写真の所蔵者や内容ごとにB6の個別ホルダーに分けて整理する方法は一貫して採っている。プリント類は整理ファイルに入れて管理している。

平成21年度

「公文書管理法が成立した今,何をすべきか」

内閣官房公文書管理検討室参事官補佐 植草泰彦 (平成22年1月29日,於まなびの館ローズコム)

『広文協通信』第18号1~5頁。

要旨

  • 公文書の管理に関する法律(公文書管理法)について,法律制定に直接関係した立場から,法律制定の経緯えと法律の概要を解説されました。
  • 公文書管理法のポイントとして,統一的な管理ルールの法定化,レコードスケジュールの導入,コンプライアンスの確保,有識者・専門家の知見の活用,歴史公文書の利用促進などについて説明されました。
  • 地方公共団体に今後求められることとして,要は文書をきちんと作ること,文書を勝手に捨てないこと,残すべきものは移管して永久保存する仕組みを作ること,を提示されました。

平成20年度

第1回 「安芸高田市における文書管理の現状について」   

安芸高田市総務課 高下正晴 (平成20年9月26日,於安芸高田市役所クリスタルアージョ301会議室)

『広文協通信』第14号4~7頁。

要旨

  • 安芸高田市は平成16年3月に6町合併で誕生し,同時に文書管理システムを導入したが,文書の書庫への引継ぎは19年11月の新庁舎完成により初めて行われた。その後20年2~3月に各支所の文書整理を行い,全文書の登録が完了した。20年4月からは文書管理主任・文書取扱員の役割を見直し,ファイル基準の見直しも行った。
  • 文書管理システムは導入したが,決裁は紙ベースで行っており,システムには目録情報のみ登録される。
  • システムと文書現物は同時に進むことを前提としており,文書現物をシステムに反映させるという原則を徹底させることが重要である。それには,起案段階からどのファイルに綴るか意識し,指定したファイルに必ず綴ること,また,担当者が変わっても指定したファイルに綴られるよう,普遍性のあるファイル名を設定することがポイントとなる。
  • 職員が使い勝手のよいファイルを別に作ったり,担当者の考えで勝手にファイル基準を設定して混乱が生じたため,改善策として,文書取扱員をグループに1名,文書管理主任を部に1名配置した。また,ファイル基準の前面見直しを行った。ちょうど事務事業評価の事業区分が固まりつつあったので,それを素案に総務課で作成し,各課に検討してもらったが,比較的うまくいった。
  • 今後の課題は,支所の書庫の整理,工事関係資料(図面など)の管理,歴史民俗資料館(文書館)へ移管する文書の基準を明確化することである。

第2回 「写真資料の保存と活用について」

(平成21年2月20日,於広島県立文書館研修・会議室)

『広文協通信』第16号1~6頁。
 

「尼崎市立地域研究史料館における写真資料の保存と活用について」

 尼崎市立地域研究史料館館長 辻川 敦 / 同館嘱託 西村 豪
  • 尼崎市立地域研究史料館が所蔵する写真資料の概要を紹介していただき,それら写真資料の収集・整理・公開についてボランティアの協力を得ながら作業を進められた事例を説明していただきました。また,写真資料の活用例として写真集『ふるさと「尼崎」のあゆみ』の刊行などについて紹介していただきました。
  • また,市の広報課から移管された写真資料(プリント・フィルム)をボランティアグループによって整理した実例を紹介していただき,作業の過程で生じたフィルムの異常現象とその対策などについてお話しいただきました。

平成19年度

第1回 「簡易な資料修復」

 助言者 久保清風堂 久保隆史(平成19年9月26日,於広島県立文書館研修・会議室)
 
『広文協通信』第12号7~9頁。 
  • 国立公文書館がまとめたDVD『国立公文書館における資料修復』を参加者全員で見ながら,その中で紹介されている資料修復について,古文書や文化財修復の専門家である久保隆史氏に各項目ごとの補足説明をしていただきました。
  • 久保隆史・義宗氏の指導のもと,実際に破損した文書を使って,身近にある道具や入手しやすい材料でできる簡易な資料修復(文書の埃払いと公文書や地図の繕い)の実習を行いました。

第2回 「合併時に保存した旧町村役場文書の選別について」

 (平成20年2月5日,於福山市役所3F大会議室,福山市芦田倉庫)
 
(1) 「福山市旧町村行政文書の選別について」  福山市企画総務局情報管理課次長 坂本泰之
 
『広文協通信』第13号8~10頁。 
 

要旨

  • 福山市では当初,歴史的文書として情報管理課へ移管する文書の判断を各課に委ねていたため,多くの文書が廃棄された。そのため,平成15年度から原則として廃棄文書をすべて情報管理課へ移管することとし,「明らかに廃棄する文書の例」を示して,それ以外の文書を情報管理課で判断することにした。
  • 新設の生涯学習プラザに「歴史的文書保管施設」として歴史資料室が設けられることになり,ガス消火設備を備えた収蔵庫が新設され,福山藩主阿部家文書など重要資料も保管されることになっている。
  • 福山市は平成の大合併により4町と合併したが,廃棄文書の引継ぎは様々であり,廃棄寸前のものを受け入れたケースや,文書管理システム構築に伴う整理により,すでに大量廃棄されたケースもあった。
  • 旧町と福山市とは組織や文書管理の方式が異なるため,合併町の文書を整理するのに福山市の文書管理規程を単純に当てはめるというわけにはいかなかった。
  • 旧町の文書には古い土地台帳や軍属名簿などもあったが,現在個人情報保護の担当課からは不要な個人情報は確実に廃棄するよう指導しており,公文書としての有用性と歴史的な価値判断との違いに気づかされた。
(2) 「福山市旧町村行政文書選別の現地説明」  福山市企画総務局情報管理課嘱託員 藤井聖士
 

要旨

  • 芦田倉庫では旧役場文書の整理を行っている。「移管文書」と「廃棄文書」との第一次選別は簿冊単位で行っており,結果的には全体の5割弱を「移管文書」とした。
  • 旧新市町は,明治・大正期の簿冊もあり,福山市に比べて大量の文書が廃棄されないまま残されていた。
  • 文書整理は専任職員によって文書の全体像を把握し,歴史的価値から専門的に整理する必要がある。第二次選別は新施設に搬入し,専任の職員が整理担当者として時間をかけて整理することになる。

平成18年度

第1回 「大和ミュージアムにおける資料の保存と活用―IPM導入とデジタル化,資料の公開―」

 
大和ミュージアム学芸員 斎藤義朗(平成18年7月25日,於呉市海事歴史科学館会議・研修室)
 
『広文協通信』第10号4~6頁。
  • 呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)では,開館当初よりIPM(総合的虫害管理)を導入し,従来型の全館一斉燻蒸に頼らない試みを行っています。その取り組みの一部を紹介していだたきました。
  • 展示室などで,完全に虫の侵入を防ぐのは困難なため,日常点検・管理を行うことが大切なこと,日常管理を行うことによって資料保存の思わぬ弱点を発見することができることなどを話していただきました。
  • また,同館では日本海軍を中心とした艦艇の図面や写真資料を大量に収集しており,それらのデジタル化を進めています。この報告では,資料デジタル化の利点と,同館で行われているデジタル化の特徴についても紹介していただきました。
  • 続いて,斎藤さんの案内で,4階ライブラリで参加者が実際にパソコンを使い,博物館の裏事情を説明していただきました。研修会終了後には,希望者により意見交換会を行いました。
  • 参考文献:斎藤義朗「戦艦『大和』(縮尺1/10)復元とデジタル化資料の活用」(『月刊IM』2005年9月号)
    :同 「大和ミュージアムにおけるIPMの導入―初歩的な取り組みから―」
     (『第13回全国科学博物館協議会研究発表大会資料』2006年)

第2回 「災害と文書修復―文書・図書の被災にどう対応するか―」

(平成19年3月2日,於広島県情報プラザ第1研修室) 

『広文協通信』第11号6~10頁。

(1) 「災害事例に学ぶ市町村の文書管理災害対策」  (有)PHILIAシニア・コンサルタント 坂本 勇
  • 平成16年12月に発生したスマトラ島沖大津波によって,大きな被害を受けたインドネシアのアチェで,大量の文書をカビの被害から救う活動を行った経験から,行政機関などでバイタルレコードを管理保存する部署が,今後どのように備え,対応していけばよいのか,実践的,技術的側面から説明していただきました。
  • 被災現場では決定権のある組織の責任者が作業を指揮すること,資料が劣化損傷するメカニズムを予め知り,被害後48時間以内に初期救助作業が開始できる体制を構築しておくこと,保存資料の優先順位を含む「危機管理マニュアル」を事前に検討作成し,周知徹底しておおくことが大切です。
  • 災害後に混乱しても,諦めて廃棄するのではなく,それを乗り越える勇気と,それを支える情報網が必要です。


(2) 「地方自治体への事業継続計画の導入―災害の前に準備しておくべきこと―」  (株)東京海上火災日動リスクコンサルティング 岡部紳一

  • 平成18年10月に秋田県八峰町役場が焼失し,戸籍簿など公文書保管態勢が問われた事例から,事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の重要性について説明していただきました。
  • 自治体は,庁舎が被害にあっても,早く復旧して住民サービスを再開する責任があるため,防災施設だけでなく,災害に備えて強い体制を事前に確立することがBCPの考え方です。
  • 災害で機能が停止した役所で,すぐ復旧できない場合,どの業務から復旧させるか,優先順位を決め,それに必要な人員,設備,データ,文書がすぐ使えるようにしておく必要があります。
  • 組織の存続に関わる文書や,代替情報が他に求められない文書がバイタルレコードです。自治体では住民の権利や利益を保護する文書などがこれにあたります。それが何かを各職場で考え,安全な場所で保管する必要があります。

(3) 「広島歴史資料ネットワークの活動について」  広島県立文書館 西村 晃

  • 平成13年3月の芸予地震を契機に設立した「広島歴史資料ネットワーク」(略称「広島史料ネット」)について,ボランティアで活動しているその内容などについて紹介するとともに,ご協力をお願いしました。  
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