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令和3年度 働き方改革先進企業経営者ミーティング 第3回イベントレポート

タイトル

 「働き方改革先進企業経営者ミーティングHIROSHIMA」(第3回)を令和4年1月19日に開催し、広島県働き方改革実践企業(認定企業)の経営者層30名にご参加いただきました。
  ※第3回は、新型コロナウイルス感染拡大状況を踏まえ、オンライン開催となりました。

特別講演 (株式会社中川政七商店 代表取締役会長 中川 政七 氏)

300年企業の伝統と革新の組織づくり ~ビジョンとともに、はたらくということ~

プロフィール中川氏

  • 中川政七商店の歩みとビジョン

 創業300年の老舗企業 中川政七商店(本社:奈良県)は、麻織物の問屋として事業を開始。十三代となる中川氏は赤字が続く雑貨事業の立て直しに取り組み、工芸業界初のSPA(製造小売業)への転換等で、会社は急成長を遂げられました。中川氏は、その中で「利益追求だけでは会社も自分自身も走り続けられない。組織としての目標や存在意義が必要だ」と強く感じるようになり、数年の模索期間を経て、2007年に同社のビジョン「日本の工芸を元気にする!」を掲げたといいます。以来、同社のビジョン実現を至上目的とした経営手法とイノベーティブな事業戦略が注目を集めています。

  • ビジョンの役割と「働きがい」

 こうした同社の成長の加速や事業活動の拡大の原動力になっているのが「ビジョン」です。ビジョンとは、「会社にとっては、会社が目指す最上位概念であり、時に営業利益よりも優先すべきもの。経営者にとっては、経営者としての覚悟を表すもの。そして従業員にとっては、目指すべき『旗印』である」といいます。
 そして、ビジョンの有用性について5つポイントで説明がありました。その一つとして「採用に効くこと」を挙げて、「今の若い人は、お金だけで働きがいを感じることができなくなっている。会社の目指す姿(ビジョン)が社会性を帯び、(働く人が)自らコミットできるものであることが重要。」と、ビジョンへの共感が従業員の働きがいの源泉になることを示唆されました。

講演資料
(出典)株式会社中川政七商店 十三代中川政七「2022年1月働き方改革先進企業経営者ミーティングHIROSHIMA特別講演資料」

 また、企業の社会貢献のあり方がCSR(企業の社会的責任)からCSV(共通価値の創造)へと変化していることを指摘され、ビジョンは、CSVにおける『利益追求』と『自己実現』そして『社会貢献』という3つの価値創造を統合するピンとして、重要な役割を果たすとされました。
 更に、顧客の感じるブランド価値は、時代の流れとともに「商品の品質」から「ライフスタイル(憧れや共感)」に変わり、今後は 「ライフスタンス(どうありたいか・生きるか)」にシフトしていくと解説され、このことから、ライフスタンスを表す企業ビジョンの存在そのものが企業のブランディングにも役立つとされました。

  • ビジョンと事業との整合性、浸透のためのポイント

 中川氏は、ビジョンを立てた後に「言っていることとやっていることが違う」とならないように、「事業との整合性」を取ることと「組織に浸透させる」ことに取り組むことが大切であると説明されました。「事業との整合性」に関しては、ビジョンの文言を分解して定義づけ、取り組むべき事業を洗い出し、更に事業目標などの数字に落とし込む手法を紹介されました。 また、「組織への浸透(いわゆるインナーブランディング)」に関しては、メディア等を通じて客観性を持って社外に発信されたビジョンが社内に還元されることで浸透が進んだという自社経験も紹介しながら、経営トップが「やってみせる。言い続ける。」ことの重要性を伝え、講演を締めくくられました。 

スペシャルトークセッション  ~サスティナブルな企業経営のための働きがいの役割とリーダーシップ~

 広島県の湯埼知事による県内企業の働き方改革の現状と今後の方向性についての説明と、モデレーターの藤原氏による全3回のイベント内容の振り返りの後に、特別講演講師の中川氏、県立広島大学大学院の木谷教授と湯埼知事の3者によるトークセッションが行われました。

知事説明

【テーマ1】働きがいを高める重要性とそのための取組について

中川氏 ビジョンを浸透させ、働きがいを高める具体的な取組として、当社独自の人事考課・評価制度と「政七まつり」の開催があります。
 評価制度にはビジョンに対する貢献について評価項目を設け、定量的視点だけでなく、定性的な視点もしっかりと入れながら、個々がビジョン達成へ向けての貢献で評価する仕組みがあります。
 また、年1回開催する「政七まつり」は10年以上続く社員総会のようなイベントで、社員企画によるビジョンを自分事化するワークショップや講演、食事会、年間表彰式等を行っています。 

湯埼知事 中川さんのおっしゃるように、企業にとっての目的、すなわちビジョンを浸透させていくことは非常に重要ですし、ハード(制度づくり)・ソフト(効果的なマネジメント)・ハート(企業文化の醸成)の3つを組み合わせた取組が大事だと思います。広島県庁も「広島県職員の行動理念」を作成し、行動理念を浸透させる取組を10年以上続けています。

木谷教授 働きがいを高める上でビジョンやミッション、理念がいかに重要かということが良く分かりました。
 日本には200年企業が3000社ほどあるそうです。これは世界でも類を見ないことで、そういった企業に共通するのは、「非連続の革新(イノベーション)」、「地域に根を下ろし大切にする精神」、そして「従業員の働きがいを重視している」という3点ではないかと思います。そして中川政七商店さんは、まさにビジョンを持って、この3点に実際に取り組まれ、魂を吹き込んでいらっしゃると感じました。

【テーマ2】働きがいのある組織づくりに向けた経営トップのリーダーシップ、心構え

中川氏 ビジョンを掲げる以上は、絶対にやらなければならないですし、張りぼてにするくらいなら、言わない方が良いと考えています。なので、ビジョンにつながらないことは、儲かりそうな話でもやらないことにしています。 会社や経営者の行動は、社外からも見られていますが、社内の人にも見られています。ビジョンにコミットして入社してきている方に対してもビジョンに合致しない行動はすべきではないと思います。
 当社では2018年に社長の代替わりがあり、初めて中川家以外から社長を選出しましたが、社内での混乱やざわつきは全くありませんでした。これは「従業員は皆、社長ではなく、ビジョンに仕えている。社長が変わっても、ビジョンが変わらなければ、従業員にとってやるべきことは何ら変わらないんだ」と理解し、素晴らしいことだと思いました。

湯埼知事 私も首尾一貫することが非常に重要だと思います。組織に首尾一貫したシステムがあれば、納得性は高まりますが、ビジョンと組織の制度やマネジメントに矛盾が生じてしまっては問題です。県庁職員の採用時も、採用ガイダンスの時点で県職員の行動理念をお伝えし、これに共感できる方に応募いただくようお願いしています。それも首尾一貫の一つと考えています。

木谷教授 リーダーシップとは何かについて考える時、真のリーダーとは常に組織を引っ張り導く強い人物ではなく、会社のアイデンティティ(集う理由)を代弁する人物のことではないでしょうか。アイデンティティの代弁はリーダーにしかできないことだと思います。
 そして、組織を現状から次のステージへ押し上げる時には、組織の協調性よりも、経営トップの強いリーダーシップが求められると思います。

【テーマ3】参加者とのフリーディスカッション

 参加者に特別講演やトークセッションを通じて登壇者に聞いてみたいことを募りました。
 参加者からは、特別講演内での「ビジョンの明確化が採用にも効く」という話を受けて、「採用後の定着のためにどのような取組を行っているか」や、ビジョン浸透のための「政七まつり」の詳細について質問があり、中川氏から具体的な解説が行われました。

トークセッション02

参加者による「働きがい向上宣言」の発表

 イベントの集大成として、参加経営者ら30名から「働きがい向上宣言」と宣言に込められた想いを発表いただきました。参加各社が今後どのように働きがい向上に向けて取り組んでいくのか、多種多様な宣言や想いが全体にシェアされ、さらに多くの気づきや会場の一体感につながりました。登壇者3名からは各社の宣言に対する感想やエールが送られました。

宣言一覧

働きがい向上宣言発表の一部をご紹介します

『多様な働きがいに対応した制度と文化へのレベルアップ』/東洋電装株式会社

 働きがいとは、仕事そのもののやりがいだけではなく、様々な考え方や価値観があると考えており、それぞれの価値観に対応した「社内制度を整備」するとともに、「多様な価値観をお互いに認めあう文化」をつくっていきます。
 具体的な取組としては、評価制度の見直しや多様な働き方に対応する制度やルールの策定、働きがい基準の見える化、多様性に関しての研修の実施を検討しています。

『何のために働くのか。マインドセットを見つめ直して新次元へ!』/株式会社リョーコーテック

 制度整備によって働きやすい環境を整備したり働き方改革専門部会で自由に発言の機会を設けてもそれだけでは目指す成果には結びつかない。一人一人のマインドセット(思考態度:先入観や判断基準、無意識の思い込み)をしっかり見つめ直し、多様性を柔軟に取り入れる実践力を伴う新次元の習慣を定着させるに至らなければ目指す”働きがい”を見出すことは難しい。 会社と社員の双方のベクトルを合わせることで新たな社風を築きたい。

宣言一覧

全3回のイベントを終えての感想 (参加者アンケートから)

  • 一人ひとりの考え方が違うからこそ組織で取り組むことの重要性を感じました。何から取り組めばよいか悩んでおりましたが、特別講演の講師の方々の話がとても参考になり、出来る事から少しずつ取組み、継続していきたいです。(広洋工業株式会社  取締役・生産管理部長 藤原 寛揮 様)
  • 各社、経営トップの皆さんが意識高くお取り組みされていて刺激を頂きました。一方で、変化途中における実情とのギャップや従業員への伝達不足等が理由での悩みも多々あるようで、悩みは同じなんだなと感じました。想いをきれいごとで終わらせないために、取組を続けていこうと思います。(株式会社スグル食品 専務取締役 大塩 和孝 様)

第3回集合写真
第3回参加者と登壇者のみなさま

参加企業一覧 (五十音順)

参加企業一覧

イベントレポート (第1回)(第2回)

  •  第1回 特別講演:合同会社おもてなし創造カンパニー 矢部輝夫氏 「奇跡の職場のつくり方」
     意見交換:「従業員にとっての働きがいとは何か?」 
    第1回
  •  第2回 特別講演:カゴメ株式会社 有沢正人氏 「毎年進化するカゴメの生き方改革とこれからの人事制度の在り方」
     意見交換:「働きがい向上のために、今後何ができるか?」 
    第2回

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