エボラウイルスによる熱性疾患である。
サル
出血斑が胸部,上腕内側及び大腿部に認められる。一般に,血小板の減少及び肝機能の高度の障害(GOT,GPT及びLDHの上昇)が認められる。また,解剖時には広範な出血病変及び実質臓器の壊死が認められ,病理組織学的には肝の巣状壊死,好酸性細胞質内封入体及び網内系の壊死が認められる。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,サル又はその死体についてエボラ出血熱の病原体診断又は血清学的診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同欄に掲げる検査方法の区分ごとに,それぞれ同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。
なお,ウイルスの検出感度は,末梢白血球及び肝臓が高い。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
電子顕微鏡でのウイルス粒子の検出による病原体の検出 | 血液若しくは唾液又は肝臓,脾臓その他の臓器 |
蛍光抗体法,免疫組織化学法又は抗原補足ELISA法による病原体の抗原の検出 | |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 | |
ELISA法又はウェスタンブロット法による病原体に対する抗体の検出 | 血清 |
(2)獣医師は,臨床的特徴若しくは疫学的状況からサル又はその死体がエボラ出血熱にかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。
定義SARSコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群である。
イタチアナグマ,タヌキ及びハクビシン
SARSコロナウイルスを実験的に感染させたハクビシンでは,発熱,元気消沈,攻撃性の消失及び白血球数の減少が認められ,また,そのうち少数の個体では,下痢及び結膜炎が認められる。イタチアナグマ及びタヌキの臨床的特徴は明らかではない。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,イタチアナグマ,タヌキ若しくはハクビシン又はこれらの死体についてSARSコロナウイルスの病原体診断又は血清学的診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同欄に掲げる検査方法の区分ごとに,それぞれ同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
ウイルス分離による病原体の検出 | 血液,糞便若しくは尿,鼻腔洗浄液若しくは咽頭拭い液等気道からの検体又は臓器 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 | |
中和試験又はELISA法による病原体に対する抗体の検出 | 血清 |
(2)獣医師は,臨床的特徴若しくは疫学的状況からイタチアナグマ,タヌキ若しくはハクビシン又はこれらの死体がSARSコロナウイルスにかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。
ペスト菌による全身性疾患である。
プレーリードッグ
プレーリードッグがペスト菌に感染した場合の潜伏期間に関するデータは存在しないが,ジリスに対する感染実験の成績から2日から7日程度と考えられる。当該実験では,接種部位の所属リンパ節に腫脹を呈する個体が認められている。また,鼻出血が認められる場合がある。プレーリードッグは,ペストに対して極めて感受性が高く,致命率はほぼ100%である。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,プレーリードッグ又はその死体についてペストの病原体診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるもののいずれかをも用いること。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
菌分離による病原体の検出 | 血液又は肝臓,脾臓,リンパ節その他の臓器 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
(2)獣医師は,臨床的特徴若しくは疫学的状況からプレーリードッグ又はその死体がペストにかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。
マールブルグウイルスによる熱性疾患である。
サル
特徴的な臨床症状は出現しない。解剖時には筋肉,胸膜下,心筋等における広範な出血病変が認められ,病理組織学的には肝の巣状壊死,好酸性細胞質内封入体及び網内系の壊死が認められる。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,サル又はその死体についてマールブルグ病の病原体診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。なお,ウイルスの検出感度は,末梢白血球が高い。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
電子顕微鏡でのウイルス粒子の検出による病原体の検出 | 血液又は肝臓その他の臓器 |
蛍光抗体法又は抗原補足ELISA法による病原体の抗原の検出 | |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
(2)獣医師は,臨床的特徴若しくは疫学的状況からサル又はその死体がマールブルグ病にかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。
定義赤痢菌による急性感染性大腸炎である。
サル
臨床症状は,人のそれに類似し,水様性,粘液性,粘血性又は膿粘血性の下痢及び元気食欲の消失を呈し,ときに嘔吐を呈する場合もある。発症した個体は,数日から2週間で死亡することが多い。病巣は大腸に限局しており,粘膜の肥厚,浮腫,充血,出血及びフィブリン様物質の付着又は糜爛が認められる。また,無症状で赤痢菌を保有するサルも存在する。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,サル又はその死体について細菌性赤痢の病原体診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
菌分離による病原体の検出 | 糞便又は直腸スワブ |
(2)獣医師は,臨床的特徴若しくは疫学的状況からサル又はその死体が細菌性赤痢にかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。
ウエストナイルウイルスによる熱性疾患である。
鳥類に属する動物
臨床症状は,一般的に無症状の場合が多いが,沈鬱,食欲不振,衰弱,体重減少等の特異的でない症状が見られる場合もある。鳥類に属する動物の中には,運動失調,振戦,転回,不全麻痺等の神経症状を呈するものもあり,カラス等のように感受性が高く,死亡する種類もある。臨床症状を呈する期間は,1日から24日の幅があるが,通常は1週間以内である。
血清学的所見及び生化学的所見に特異的なものは認められない。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,鳥類に属する動物又はその死体についてウエストナイル熱の病原体診断又は血清学的診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同欄に掲げる検査方法の区分ごとに,それぞれ同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
ウイルス分離による病原体の検出 | 総排泄腔拭い液若しくは口腔拭い液,血液又は脳,腎臓,心臓その他の臓器 |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 | |
中和試験による病原体に対する抗体の検出 | 血清 |
(2)獣医師は,臨床的特徴若しくは疫学的状況から鳥類に属する動物又はその死体がウエストナイル熱にかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断又は血清学的診断を待たず法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。
定義多包条虫及び単包条虫による慢性疾患である。
犬
感染した犬は,通常,症状を示さないが,まれに下痢を呈する。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,犬又はその死体についてエキノコックス症の病原体診断をした場合には,法第13条第1項の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるものを用いること。
なお,ELISA法による病原体の抗原の検出により病原体診断を行う場合においては,ELISA法により成虫由来抗原を検出した後,駆虫治療を行い,再度ELISA法による検査を実施した結果,抗原が検出されないときに限り届出を行うこと。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
虫体又はその一部(片節)の確認による病原体の検出 | 糞便 |
ELISA法による病原体の抗原の検出 | |
PCR法による病原体の遺伝子の検出 |
A/H5N1型インフルエンザウイルスによる感染症である。
鳥類に属する動物
一般に,感染した鶏,七面鳥,うずら等では全身症状を呈して大量に死亡する。その他の鳥類では種類により無症状又は軽い呼吸器症状から全身症状まで,様々な症状が認められる。
(1)獣医師は,次の表の左欄に掲げる検査方法により,鳥類に属する動物又はその死体について鳥インフルエンザ(H5N1)の病原体診断をした場合には,法第13条第1項(同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による届出を行わなければならない。この場合において,検査材料は,同表の右欄に掲げるもののいずれかを用いること。
検査方法 | 検査材料 |
---|---|
PCR法による病原体の遺伝子の検出 | 総排泄腔拭い液、口腔拭い液、血液又は臓器 |
ウイルス分離による病原体の検出 |
(2)獣医師は,臨床的特徴,血清学的状況若しくは疫学的状況から鳥類に属する動物又はその死体が鳥インフルエンザ(H5N1)にかかっている疑いがあると診断し,又はかかっていた疑いがあると検案した場合は,(1)にかかわらず,病原体診断を待たず法第13条第1項(同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による届出を行わなければならない。