体験学習の場では、参加者が主体的に体験を通して学ぶことが必要で、そのベースとして「個人の人間的な成長は、自分を取り巻く人・状況とのさまざまな“関わり”を通じて起こる」という考えがあります。特に、人とのかかわりが希薄になっている現代においては、「自分を取り巻く人との関わり」は重要です。ここでは、対人関係を考える基本となる「ジョハリの窓」の概念について紹介します。
「ジョハリの窓」とは、人がかかわりあって共に成長していくプロセスをわかりやすく図解したものです。発案者は、ジョゼフ・ラフトとハリー・インガムの2人で、「ジョハリ」は、この2人の名前をかけあわせたものです。
「ジョハリの窓」では、人が関わりを持つ時、全体としての個人は、下図のような4つの領域を持つことを表しています。
<開放の領域> 自分にも他者にもわかっている「公の私」で、お互いに情報が共有されているので、防衛する必要もなく、自由に活動できる領域。 | ![]() ジョハリの4つの心の窓 | <気づいていない領域> 自分には気づいていない癖や行動などを通じて、他者が自分について直接的または推論的な情報を得る領域。 |
<隠している領域> I・開放の領域の「公の私」に対して、プライベートな私。 | <未知の領域> 自分にも他者にもわかっていない未知なる領域。 |
「効果的な人間関係への変革」が行われるためには、「II・気づいていない領域」が狭まる『フィードバック』と、「III・隠している、隠れている領域」が狭まる『自己開示』という働きが大切になります。
『自己開示』とは、自分の考え、感情、欲求など、自分について相手に隠したり隠れたりしている情報を、率直にあるがままに伝えることです。これは、「全てをさらけだす」ということではなく、今ここでの人間関係を、より真実なものにするのを阻んでいると思われる自分についてのことがらを勇気をもって言ってみるということです。参加者が相互に自己開示的になることは、自由で安全な雰囲気が醸し出され、信頼感や好意が増します。
一方『フィードバック』とは、逆に、相手に影響を与えている自分の行動についての情報を、相手から知らせてもらう働きのことを言います。この場合も、相手に対する「非難や攻撃」ではなく、あくまでも相手が受け止められる状態にある時に、情報提供として具体的・記述的に伝えることが大切です。