道徳の時間が受け身的なものであった場合,子どもにとってそこで学んだことはただの知識として蓄えられることが多く,それを自分の生活の中で生かしていこうという実践へ結びつけていくことは難しい。子どもが主体的に道徳的実践力を身につけていくためには,道徳的価値を自己の内面から深く感じ,道徳的心情を養うことが不可欠である。価値を自己の内面から深く感じるとは,自己を見つめ,自己の体験を元にしたものの見方や感じ方,価値観を通して,道徳的価値の素晴らしさや大切さを心から感じることだと考える。そのために,人やものとのかかわりを深めていき,その自己の体験を道徳の時間の中で生かし,共感的に理解する授業を充実させていく。
登場人物の心情を考えたり,友だちの考えを知ったりするだけでは,道徳的心情は育てられない。登場人物や友だちの考え,自然などの偉大さとのかかわりを深め,共感,感動することが道徳的心情を養うためには必要である。そのために資料選定や展開,また指導者も共に考えていく共感的態度など,道徳の時間の授業づくりを工夫していく。
体験を生かしていくことの大切さを第(1)項で述べたが,その体験が心を動かすものでなければ,それはただの経験として終わってしまう。道徳的心情を養うためには,人やものとのかかわりを豊かにする中で,心を豊かにする体験を仕組んだり,体験から何かを感じることができるような感性を育てる手立てが必要である。心を豊かにする体験とは,主体的に人やものとかかわっていく中で,自分や友だち,自然,生命,家族,集団,社会などの素晴らしさを感じ,またその中で生きていくことの意義を感じられるものである。そのような体験を日常の中でできる限り多くすれば,自ずと道徳的心情も養われ,道徳の時間の中でより深く考えていくこともできると考える。
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