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登録日:2008年10月14日

神楽 素晴らしき広島の伝統芸能

広島五大神楽

広島県は全国屈指の神楽どころである。
豪華な衣装を身にまとった神や鬼神・鬼女たちの華麗な神楽が県内全域で演じられている。県内各地にはこれとはまたちがういろいろな素晴らしい神楽もたくさんあって、広島県はまるで「神楽の宝庫」のようである。近世初期の神楽の姿をとどめる歴史ある神楽、住民一体でささえ守っている地域の神楽、中世世界を彷彿させる神秘的神楽、生活を反省させる味わい深い神楽、ハラハラドキドキするような神楽、笑いころげるおもしろい神楽もある。この神楽を県内全域でよく観察すると次の五種類に分類できると思う。
○「芸北神楽」(安芸北部)
○「安芸十二神祇」(安芸南部)
○「芸予諸島の神楽」(瀬戸内海の島と沿岸部)
○「比婆荒神神楽」(備後北部)
○「備後神楽」(備後南部)

 

芸北神楽 華麗な舞いと舞台の演出で神楽の愛好者を拡大
新舞演目「吾妻山」に登場する鬼
太田川と江の川の上流域に位置する芸北地区は、安芸高田市と三次市を中心とする東部、安芸太田町と旧芸北町から廿日市市吉和までを含む西部、北広島町の中部に分けられ、それぞれの地域で特色のある神楽が受け継がれている。
芸北神楽は歴史の観点から旧舞と新舞に区分される。また舞いや奏楽のテンポによって、高田神楽と呼ばれる、島根県阿須那地方から伝来した調子が早い八調子のもの、山県神楽と呼ばれる、島根県矢上の石見神楽をルーツとした調子のゆるやかな六調子のものという分け方もある。また第二次大戦後に安芸高田市で生まれたとされる、演劇性が高くスピード感にあふれる新作高田舞も加わっており、芸北神楽の様式は実に多彩だ。

ブラジル日本移民百周年記念神楽公演
 伝統の神楽が広島とブラジルをつなぐ架け橋に

日本からのブラジル移住百周年を記念して、2008(平成20)年6月20日、ブラジルのサンパウロで神楽公演が実現した。市内にあるアニェンビーコンベンションホールが会場となり、約2時間。演目は「紅葉狩」「滝夜叉姫」「八岐大蛇」の三つが披露され、迫力に満ちた舞いと巧みな演出に会場は集まった二千人の拍手喝采に包まれた。神楽が広島とブラジルをつないだ瞬間だった。

ブラジルでの公演の様子


 

安芸十二神祇 「無我の舞いと早い奏楽で十二の演目を奉納
将軍舞(伊勢神社神楽団)
広島県の南西部、広島市、廿日市市、大竹市に広がる地域には、安芸十二神祇と呼ばれる神楽が伝統になっている。十二の演目を舞う習慣は江戸時代から始まっていたとされ、清めを中心とした神事舞、神話や伝説・娯楽を中心とした能舞、王子神楽を発祥とする五行の神楽、祝福と託宣の舞に大きく分けられる。特に祝福・託宣を奉納する「荒平舞」と「将軍舞」は貴重な演目という。
安芸十二神祇の特色は、我を忘れるような早い調子の舞いと奏楽にある。中でも「将軍舞」は、廿日市市の伊勢神社神楽、広島市の阿刀神楽など、一部のみが受け継いでいる。

芸予諸島の神楽 島しょ部独特の風習と古式豊かな形を残す三宝荒神御縄(名荷神楽)

瀬戸内海の島に残る神楽は、県北の神楽と異なる特色を持ち、古い伝統が残るものが多く興味深い。内陸からの伝承だけではなく、水運を経て大陸の影響を受けた可能性もあり、今後の民俗学的な研究価値が高まっている。
その代表的なものが尾道市瀬戸田町に伝わる名荷神楽だ。広島県の無形民俗文化財に指定され、地元の名荷神楽団が今も守り続けている。江戸時代末期には現在の演目と同じ形式が整えられ、中でも藁人形を使い吉凶を占う「三宝荒神御縄」は、県内で最も個性的な神楽の一つと評価されている。

比婆荒神神楽 古式を伝える神秘的な鎮魂の儀式八幡(比婆斎庭神楽)

山陰と山陽を跨ぎ、中国地方の山懐に位置する庄原市の旧比婆郡地域。ここでは、神がかりの古式を伝える、比婆荒神神楽が奉納されている。また神職組織が大きく2つに分かれていた関係により、比婆斎庭神楽と呼ばれる形式も存在する。
旧高野町と旧比和町の神職によって伝承されてきた比婆斎庭神楽。斎庭とは「神を招くために斎み清められた場所」という意味で、そこに神の降臨を仰ぎ、神前で神楽を奏することからこの名称が付けられた。「清めの舞」と「能舞」の2種類に分けられる舞は、とても素朴で緩やか。衣装は厳かさを重んじ、面は能面に似た味わい深い雰囲気を醸し出す。

備後神楽 舞いよりも「語り」重視の物語性の高い神楽五行祭

備後地方の南部から県央・安芸地方東部で受け継がれる神楽は、一般に備後神楽と呼ばれている。きらびやかな衣装はなく、むしろ地味な印象の様式だが、江戸時代から大切に伝えられてきた。
特に舞いよりも語りが重要とされる五行祭は、「聞く神楽」と呼ばれ、備後神楽の伝統を現代に残している。その伝承に努めているのが、東広島市河内町の小田神楽保存会。戦前から存在した素人神楽団を母体とし、現在は10人の地域住民が参加。若い会員で40歳代という壮年集団だ。

 

神楽人

神楽の舞台は総合芸術。装いと舞いの美しい調和を紡ぐ。

 

かぐらや代表の管沢さん

本来の神楽は地域の神社で奉納される儀式。衣装も単純な色合いの染め柄が普通だった。その神楽が舞台として人々を引きつけ、観賞するものへ変わっていくにつれ、衣装は舞い手の存在感を高める演出の一つとなる。神楽の衣装は役割で、鬼、鬼女、神、武士、姫に大きく分けられ、それぞれの趣向を凝らし仕立てられる。その重要な要素が刺繍柄。舞台映えを左右する華麗な刺繍は、専門の職人が手がけている。広島市安佐北区で神楽衣装の製造販売を営む管沢秀巳さんもその一人だ。
管沢さん自身が神楽団の代表を務める宮乃木神楽団には、兄で顧問の面師・管沢良典さん、小道具職人の児玉敏之さんも在籍。神楽の衣装・面・小道具を作る職人が一つの神楽団に揃うが、三人とも本職は神楽職人で、他の神楽団からの注文を受けている。

華と艶のある舞いで魅せる。

練習の様子

 

 

多くの神楽団が集う山県郡北広島町。そこで個性を輝かせているのが雲月女性神楽同好会だ。その名の通り団員全員が女性。優雅さを感じさせる舞いを身上に、息の合った舞台を見せてくれる。
「子供が通っていた中学校の文化祭で、母親仲間と先生の8人で神楽を演じたのが始まり。舞えるのは男性だけと諦めていましたが、全員が子供の時からの神楽好きだったし、メンバーのご主人である神楽団員の後押しもあり、練習に励みました。ところが観るのと演じるのとは大違い(笑)。それでも舞台を創る達成感がありましたね」と代表の佐々木睦子さん。
現在のレパートリーは「胴の口開け」「鈴合わせ」「恵比寿」。少しずつだが増やしているという。

神楽とふるさとへの愛で育つ。

新庄保育所の園児

 

所長の岩見仁美さんが太鼓を叩き始めると、園児たちの視線と気持ちが一つになった。年長児から年少児まで23人の園児たちが、大人顔負けの舞いと台詞を決める。山県郡北広島町立新庄保育所は、20数年前から保育の中に神楽の郷土芸能を導入して取り組み、地道に活動を続けている。
「地元への愛情を忘れず、住み続けてほしいのはもちろんですが、成長して町を離れても、神楽を忘れずに戻って来る。それがうれしい」と岩見さん。演目は保育所オリジナルの「新・新・新紅葉狩」。新舞、新しいストーリー、そして子供が舞う新しさの意味を、三つの「新」に込めた約35分の舞台だ。鬼女がふるまう酒は「毒ミルク」にするなどアレンジもユニーク。小道具も手作りだ。一方、宮之庄神楽団の一員としても活動する岩見所長だけに、指導する時は専門用語をきちんと使用する。

 


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