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登録日:2007年8月7日

世界遺産からのメッセージ「原爆ドーム」

原爆被害のシンボルとして
破壊の痕跡一つひとつを後世へと伝える

  1945(昭和20)年8月6日の原爆投下時,「広島県産業奨励館」は爆心地の北西約160メートルという至近距離にあったため,爆風により建物の屋根や床,壁のほとんどが崩壊。だが,爆風による力が上方からほぼ垂直に働いたため,建物の中心部分は倒壊を免れた。そして,頂上に残った円蓋鉄骨の形から,いつしか「原爆ドーム」と呼ばれるようになる。
 1949(昭和24)年に「広島平和記念都市建設法」が制定され,被爆10周年を迎える1955(昭和30)年には現在の平和記念公園一帯が形づくられた。広島市の復興が進む中,原爆ドームの存廃論議が持ち上がり,記念物として残すという考えと,危険建造物であり被爆の悲惨な思い出につながるので壊すべきだという意見に分かれた。論議の間にも小規模な崩壊や落下が続く中,次第に平和のシンボルとして保存を求める声が高まっていた。
 1966(昭和41)年,広島市議会が原爆ドームの保存を正式に決定。全国規模の募金運動を行い,1967(昭和42)年に第1回保存工事を実施。現状のままの保存を第一条件に,当時最先端の技術だったエポキシ樹脂を注入して亀裂部分を修復するなどの処置を実施した。その後も,平成元年度に第2回保存工事,平成14年度に第3回保存工事が行われた。また,第2回保存工事以降,平成4年度からは,概ね3年ごとに健全度調査を行い,経年劣化等の現状を把握している。
 そして,「人類史上初めて使用された核兵器の惨禍を如実に伝え,時代を越えて核兵器の廃絶と世界の恒久平和の大切さを訴え続ける人類共通の平和記念碑」として,1996(平成8)年,ユネスコの世界遺産に登録された。

原爆ドーム内部
楕円形のドーム内部は鉄骨で補強されており,雨水による劣化を防ぐため,庇と樋も設置されている。  

 その後も原爆ドームの役割と保存方法については議論が続けられ,劣化を食い止めるため,建物全体に覆いをかけたり,博物館に移設したりするという意見もあった。こうした中,昨年,広島市は「平和記念施設保存・整備方針」を策定し,視覚上の変更は原則行わず,オリジナル材や被爆の痕跡の保存に努めることとした。原爆ドームは爆心地にあってこそ原爆の悲惨さを伝えることができ,被爆したレンガなどの材料やそこに残る破壊の痕跡の一つひとつに後世に残すべき価値やメッセージが存在しているという考えからだ。今後は原爆ドームを間近で見学できる通路の設置など,被爆の惨状をよりリアルに伝えることのできる周辺整備について検討していく方針だ。

原爆ドーム保存工事

 

エポキシ樹脂の注入などにより,被爆し崩壊した状態のままでの保存が図られている。現在まで3度の保存工事が行われており,平成4年度以降,概ね3年に一度,経年変化等の現状を把握するため,健全度調査を行っている。
原爆ドーム全景 原爆ドームの元となる建物は,1915(大正4)年,チェコ人の建築家ヤン・レツルの設計により,「広島県物産陳列館(その後,産業奨励館と改称)」として竣工。地上3階,一部地下1階のレンガ及び鉄筋コンクリート造り,中央に5階約25メートルのドーム部がある建物だった。水辺を意識した当時としては斬新な設計で,広島県の物産の展示・販売の他,美術展や博覧会にも活用されていた。原爆で大きな被害を受けるが全壊は免れ,原爆による惨禍のシンボルとなった。1966(昭和41)年に保存が決定し,1996(平成8)年には世界遺産に登録。被爆したレンガなどの材料や破壊の痕跡がそのままの形で,後世へと残されている。

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