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T 幼児教育の現状と役割

 1 幼児を取り巻く現状と課題

 【一人たたずむ子どもや親】

 幼児は,よりよい環境の中で育てられてこそ,心身が健全に発達する。しかし,近年,幼児を取り巻く環境は,親の子育てについての考え方の多様化,少子化,核家族化,都市化,食生活の変化などに伴って多くの課題があり,けっして望ましい発達を促すために十分な状況とはいえない。
 こうした課題は,親と子の信頼関係をもとに,愛情としつけを通して人間形成の基盤を形成する場である「家庭」や,家庭外の多様な人とのかかわりを体験する「地域」という幼児の生活の土台を揺るがしている。

 例えば,少子化は保護者の過保護や過干渉,家庭や地域における同年代の子どものかかわりの減少などを引き起こし,孤立する子どもを生み出した。また,都市化は子どもたちから「遊び場」を奪い,「自然体験」を奪って子どもたちを家の中に閉じこめてしまった。とりわけ,祖父母からの育児伝承を困難にした核家族化は,親が孤立感を感じやすく「育児不安」という新たな課題を生み出している。まさに「家族」「地域」の中で,不安を持って一人たたずむ子どもや親が垣間見える。
 一方,多くの大人が最近の幼児について「子どもの表情が乏しくなった」「単語で返事をし,会話にならない」「ストレスを感じていて物にあたる」「集中力がない」といった印象を持っている。また,同様に幼稚園・保育所の教員等から「集団で遊べない」「雑巾が絞れない」「体力がない」「ずっと立っていられない」などの課題を聞くようになった。これらの背景にも,子どもを取り巻く環境の変化が見え隠れする。
 したがって,幼児を取り巻く家庭や地域社会の状況の変化をふまえ,「幼児と幼児のつながり」を深めるとともに,「親と親がかかわり合える場」を設定するなどの取組みが求められる。

【本県の幼稚園・保育所における教育】


 幼稚園・保育所における教育については,広島県教育委員会が,平成13年12月,「幼児期の教育(保育)に関する県民意識調査」を実施し,保護者・県民の考えや願いの把握に努めたところである。

 この調査の中の「幼稚園や保育所の取組みの現状」について,(図1)のとおり「3歳〜5歳のこどもの保護者」の52.7%が「満足している」「どちらかといえば満足している」と回答している。一方,33%が「不満である」「やや不満である」と回答している。
 
このことから,約半数の保護者は,期待に添った教育・保育が実施されていると受け止めているものの,不満であるとする保護者が約3割あることも考慮しなければならない。
 この教育・保育の内容の課題については,本検討会議においても重要なテーマとして議論され,例えば,子どもの主体的活動を促す理由から「ただ遊ばせているだけの保育」が,教員等の専門性や意図のない保育として問題視されたり,あるいは,小学校低学年におけるいわゆる「学級崩壊」にかかわって,小学校以降の基盤を培う幼稚園等における教育の不十分さが指摘されている。
 また,幼児期の発達が,その後の成長や発達にも大きな影響を与えることから,思春期における不登校,引きこもりなどの発達のつまずき,青少年の問題行動などと幼児期の教育とのかかわりも指摘されている。
 これらは,日々の保育における「遊びを通した総合的な指導」についての研究改善と,教員・保育士の専門性や指導力を高めるための「教員等の資質の向上」さらには,幼児期から小学校へと「育ちをつなぐ」ための相互理解や連携が重要な課題であることを示している。また,幼稚園・保育所の機能を生かし,保護者の育児不安や多様なニーズに対応した「子育て支援」の活動も一層の充実が求められている。