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つつが虫病について

つつが虫病はダニの仲間のツツガムシによって媒介される細菌の仲間つつが虫病リケッチアOrientia tsutsugamushi によって起こる感染症です。野外でリケッチアを保有する有毒ツツガムシの幼虫に「吸着」されることで感染します。
日本では古くから東北・北陸地方で夏季に発生する風土病として知られていましたが(古典的つつが虫病),戦後になって新型つつが虫病が出現し,北海道や沖縄など一部の地域を除いて全国で発生が見られるようになりました。

疫学

古くから知られていた古典的つつが虫病は主にアカツツガムシによって媒介され,東北・北陸地方を中心に夏季に患者が多発していましたが,戦後になって患者が増加した新型つつが虫病は,タテツツガムシやフトゲツツガムシ(図1)によって媒介され,春と秋に患者の発生がみられます。

広島県内の患者発生も春と秋〜初冬に集中しており,新型つつが虫病と考えられます。表1に県内のつつが虫病患者届出状況を示しました。県内では,主に安佐北区や安佐南区で多くの患者が発生していますが,その他の地域でも患者が確認されています(図2)。感染時の行動としては農作業やレジャーで山野に入った例が多く,患者は中・高年に多く発生しています。

臨床症状

10〜14日の潜伏期間を経て,頭痛や倦怠感,寒気などのかぜ様症状とともに発熱し,38〜40度の高熱が3〜4日続いた後,顔面や体幹部に米粒大や小豆大の紅斑が出現します。この紅斑に痛みやかゆみはありません。体中を注意深くさがすと皮膚にかさぶたを伴った特徴的なツツガムシの刺し口(図3)が見つかります(刺し口は臀部,外陰部,大腿部など,皮膚の柔らかい隠れた部分にある場合が多い)。発熱,刺し口,発疹が,つつが虫病の三大特徴で,患者の90% 以上に認められます。

つつが虫病は適切な抗菌薬を用いた治療を行わないと,症状が悪化して時には死に至る場合もあるので,早期の診断と投薬が重要な感染症です。


病原診断

患者の確定診断は,PCR法による患者血液・かさぶたからのリケッチア遺伝子の検出や,間接蛍光抗体法あるいは免疫ペルオキシダーゼ法による血清診断などにより行われています。

当センターでもPCR法による遺伝子診断および5種類のリケッチア株(Kato, Karp, Gilliam, Kawasaki, Kuroki)の抗原を使用した間接蛍光抗体法(図4)による血清中抗体価の測定などを実施しています。

なお,広島県では,つつが虫病と臨床症状がよく似た日本紅斑熱の患者が発生しています。そのため,日本紅斑熱についての検査も併せて実施しています。

治療と予防

つつが虫病の治療には,早期につつが虫病の可能性を疑って適切な抗菌薬を投与することが極めて重要です。治療にはテトラサイクリン系の抗菌薬が最も有効で,βラクタム系の抗菌薬は効きません。

感染予防にはダニの吸着を防ぐことが最も重要です。山野に立ち入ったり作業をする際にはなるべく皮膚の露出を防ぎ,地面に直接座り込まないなど注意を払いましょう。また,帰宅後は入浴して服を着替えるなどして,体に付着したツツガムシが吸着しないようにすることも重要です。

なお,山野に立ち入って10日前後で発熱・発疹などが認められた場合には,できるだけ早い時期に医療機関を受診して,つつが虫病感染の可能性を告げ,検査・治療を受けてください。

報告基準

つつが虫病は感染症法の分類で4類感染症全数把握疾患となっており,診断した医師は直ちに最寄の保健所に届け出る必要があります。報告の基準は臨床症状や所見からつつが虫病が疑われ,かつ以下のいずれかの方法により病原体診断や血清学的診断がなされたものとなっています。

  • 病原体の検出(血液からの病原体の分離など)
  • 病原体の遺伝子の検出(PCR法による検出など)
  • 抗体の検出(間接蛍光抗体法や間接免疫ペルオキダーゼ法によりペア血清でIgG抗体価が4倍以上上昇するか,IgM抗体の上昇が確認されるなど)

参考資料

  • 昭和62年広島県環境保健部監修「つつが虫病の診断にあたって」
  • 積山 幸枝ら (1991):広島県におけるツツガムシの分布,広島県衛生研究所研究報告,第38号,p17−p21.
  • 岩崎 博道ら(2001):広島県において見いだされたツツガムシ病多数例の臨床的および疫学的解析,感染症学雑誌,75巻,5号,p365−p370.
  • 渡辺 公登ら (1998):戸河内町国保病因における過去5年間に経験したつつが虫病15症例の検討,広島医学,51巻2号,p160−p162.

関連サイト