1部 広島県の環境政策
1 環境問題の動向
2 環境政策の方向性
トピックス
1 「広島県生活環境の保全等に関する条例」の制定について
2 「広島県地球温暖化防止地域計画」の制定について


1   環境問題の動向
 
  公害対策の展開
 
 本県では,昭和30〜40年代の高度経済成長期においては,瀬戸内海沿岸を中心に,大気汚染や水質汚濁などの産業型公害の発生や,開発に伴う自然環境の破壊が進行し,大きな社会問題となりました。こうした事態に対処するため,国における各種の公害関係法の制定とあいまって,本県においても,「広島県公害防止条例」や「広島県自然環境保全条例」などを制定し,これらに基づく施策を推進してきました。
 その結果,国,県,市町村及び事業者や県民の努力によって,激甚な公害の克服や優れた自然環境の保全については相当の成果をあげることができました。
 
  公害問題から環境問題へ
 
 この間,都市化の進展とともに大量生産・大量消費・大量廃棄を基調とした社会経済システムが定着し,自動車交通公害,生活排水等による水質汚濁などの都市・生活型公害は,依然として改善が遅れ,さらに,廃棄物排出量が増大するなど,環境への負荷を高めてきました。また,地球温暖化やオゾン層の破壊,海洋汚染,野生生物の種の減少,酸性雨など,地球的規模での環境問題が生じてきました。
 このような環境問題に対処するため,本県では,平成7年3月に環境の保全に関する基本理念,県民・事業者・行政の責務や施策の基本となる事項を定めた「広島県環境基本条例」を制定するとともに,平成9年3月には,環境基本条例に基づく「広島県環境基本計画」を策定し,環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進してきました。 
 計画策定以降,海砂利採取問題を契機とした瀬戸内海の環境保全対策や,びんごエコタウン構想の推進,一般廃棄物のRDF発電事業などの廃棄物対策に率先して取り組んできましたが,地球温暖化の進行,廃棄物処分場の逼迫,環境ホルモン等の有害化学物質問題や,ツキノワグマ,イノシシなどの野生生物の保護・管理など,新たにクローズアップされてきた課題もあり,状況の変化に応じた環境施策を講じていくことが必要となってきました。
 
  国の動向
 
 国のレベルでは,『循環型社会』の構築を目指して「循環型社会形成推進基本法」が制定され,「廃棄物処理法」等の改正とともに,個別物品の特性に応じた規制として「容器包装リサイクル法」,「家電リサイクル法」,「グリーン購入法」,「建設リサイクル法」,「食品リサイクル法」,「自動車リサイクル法」等が相次いで制定されました。また,都市域における自動車交通公害対策を強化するため自動車NOx法が改正され「自動車NOx・PM法」となったほか,瀬戸内海を含む3水域を対象とした「第5次水質総量規制」が実施されるなど規制の強化が進められました。
 自然環境の保全については,過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的とした「自然再生推進法」,生物多様性の確保を新たに盛り込んだ「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」が制定されました。
 地球温暖化問題への対応については,京都議定書の批准に伴い「地球温暖化対策推進法」が改正され,国民の取組を強化するための措置が拡充されるなど,一人ひとりのライフスタイルの見直しがより一層求められることになりました。
 また,持続可能な社会を構築する上で,自発的な環境保全等の取組が重要であることから「環境保全活動・環境教育推進法」が新たに制定され,各主体が連携し,環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に努めるよう求められています。
 
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2   環境政策の方向性
 
  持続可能な社会を目指して
 
 今日の環境問題の多くが,私たちの日常生活や通常の事業活動に起因するものです。私たちは,飛躍的な科学技術の進展と経済の発展により,資源やエネルギーを大量に消費しながら,便利で豊かな生活を享受してきました。しかし,このことが廃棄物問題や地球温暖化などの環境問題を引き起こしていることを理解しなければなりません。
 十分な対策を講じないまま放置しておけば,問題は深刻化するとともに,解決は一層難しくなり,ひいては人類の生存基盤をも脅かしかねません。
 今,私たちがなすべきことは,私たちの社会を持続可能なものに変えていくことです。これまでの資源・エネルギーの大量消費に依存した大量生産・大量消費・大量廃棄型のパターンから脱却していくためには,ライフスタイルや事業活動のあり方を見直していく必要があります。また,自然を尊重し自然と共生することにより,将来の世代に良好な環境を継承していく必要があります。
 
  環境政策の新たな展開
 
 本県では,持続可能な社会の実現をめざして,県民・事業者・行政のすべての主体が協動して環境に配慮する広島県をつくるため,次代のための環境づくりに取り組んでいます。平成14年度には,環境配慮の基盤づくりとして,「広島県環境基本計画」の改定や「広島県廃棄物処理計画」の策定を行いました。
 また,環境問題の構造の変化に適切に対応して持続可能な社会への転換を図るため,新たな政策手段を導入し,社会経済の環境配慮の仕組み,環境教育・環境学習及び情報提供など,あらゆる政策を組み合わせて,相乗的な効果を発揮させることが重要となっています。
 このため,平成15年度から,産業廃棄物の排出抑制・リサイクル促進の動機付け(インセンティブ)となる経済的な手法として「産業廃棄物埋立税」を導入し,その税収を「リサイクルの推進」「廃棄物対策の推進」「自主的な環境活動の支援」に充てています。
 また,新たな環境問題に広範に取り組むため「広島県公害防止条例」を全面改正し,従来の産業型公害に有効であった規制的手法に加え,県民・事業者の自主的な取組を促す手法を取り入れた「広島県生活環境の保全等に関する条例」を制定しました。
 さらには,県民総ぐるみで地球温暖化防止を推進するため,県民生活や事業活動等における省エネルギー・新エネルギー等の具体的な対策を盛り込んだ本県のマスタープランとなる「広島県地球温暖化防止地域計画」を策定しました。
 
  今後の取組
 今後は,環境基本計画や広島県生活環境の保全等に関する条例を踏まえ,
環境を良くすることが経済を発展させ,経済の活発化により環境も良くなっていく好循環を生み出す「環境と経済の両立」
規制よりも,県民・事業者・行政等の「各主体による自主的な取組の推進」
各主体との「パートナーシップの構築」
の3つの視点に基づき,「みんなで進める次代のための環境づくり」として,次の施策を展開していくこととしています。
(1) 地球環境保全対策の推進
(2) 循環型社会の構築の推進
(3) 自然との共生の推進
 また,これらの施策の実行性を確保するため,「自主的な環境配慮を実践する人づくり」を進めるための環境教育の充実・強化や,「エコビジネスの育成」による環境技術面からのアプローチの強化等による「環境保全と創造のための基盤づくり」を進めていくこととしています。
 
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  背景
 
 今日の環境問題は,工場などの生産活動に伴う産業型公害から,自動車排出ガスによる大気汚染や廃棄物問題などの都市生活型公害へ,さらには地球温暖化などの地球環境問題へと大きく拡大しています。
 県民の日常生活や通常の事業活動に起因した都市生活型公害や地球環境問題を解決していくためには,すべての県民・事業者が,日常生活や事業活動において,環境に配慮した行動をとるよう働きかけ,それぞれにおいて自主的な取組を進める必要があります。
 このため,昭和46年に制定された「広島県公害防止条例」を改正し,新たな環境問題へ広範に取り組むこととしました。
 
  経緯
 
 平成14年6月19日に「広島県公害防止条例のあり方」について広島県環境審議会に諮問し,これを受けて,環境審議会は,関係業界団体や市町村等から意見聴取を行うとともに,十分な審議を行い,平成15年3月27日に答申しました。
 この答申内容を踏まえ,「広島県公害防止条例」を全部改正し,平成15年10月7日に「広島県生活環境の保全等に関する条例(生活環境保全条例)」を制定・公布しました。
 
生活環境保全条例の概要
 
 公害防止条例で対象としていた大気汚染・水質汚濁・騒音・悪臭防止対策,屋外燃焼行為の禁止,環境保全協定の締結等に加え,地球温暖化防止・自動車排出ガス等の削減対策,有害物質の地下浸透の禁止,事故時の措置,土壌汚染・化学物質・廃棄物・リサイクル対策,環境教育・環境学習の推進の規定を追加しました。
 
追加した規定の内容
 
1 地球温暖化防止対策
 
(1) 県の地球温暖化防止対策に係る責務の明確化
(2) 県の地球温暖化防止地域計画の策定
(3) 事業者・県民による温室効果ガス排出抑制等のための取組の実施
(4) 一定規模事業者による温室効果ガス削減計画書の作成・公表,知事への提出
 
2 自動車排出ガス等の削減対策
 
(5) 自動車使用者等における効率的な使用,適性な点検・整備,低公害車等への転換の努力
(6) 自動車等の駐車時における原動機停止の実施,駐車場管理者による周知
(7) 一定規模事業者による自動車使用合理化及び低公害車等導入に係る計画書の作成・公表
(8) 自動車販売事業者による自動車購入予定者への環境情報の提供
 
3 水質汚濁対策
 
(9) 事業者による公共用水域の水質汚濁防止の努力
(10) 県民による公共用水域の水質保全の努力
(11) 特定事業者による有害物質の地下浸透の禁止
(12) 特定事業者による事故時の応急措置の実施,知事への報告
 
4 土壌汚染対策
 
(13) 一定規模以上の土地改変を行う者による土地履歴調査,汚染推定時の土壌汚染調査の実施,知事への報告等
 
5 化学物質対策
 
(14) 事業者による化学物質の適正管理努力
(15) 一定規模化学物質取扱事業者による化学物質自主管理計画書の作成・公表
 
6 廃棄物・リサイクル対策
(16) 県によるリサイクル製品の普及促進支援
(17) 一定規模事業者の産業廃棄物処理計画書の作成・知事への報告等
(18) 排出事業者による産業廃棄物処理委託時における受託者の処理能力等の確認
(19) 産業廃棄物処理業者による処理能力等の情報提供
(20) 県による産業廃棄物処理業者の情報の提供
 
7 環境教育等の推進
 
(21) 県,事業者及び県民による環境学習・環境教育の推進等
 
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  背景
 
 平成9(1997)年12月に京都で開催された「気候変動に関する国際連合枠組条約」の第3回締約国会議において,先進各国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある削減約束を定めた京都議定書が採択されました。
 この京都議定書は,平成20(2008)年〜平成24(2012)年の間に,基準年である平成2(1990)の温室効果ガス排出量から削減させる割合を定めており,わが国の削減割合は6%となっています。
 平成13(2001)年に開催された第7回締約国会議で京都議定書の細目が決定され,我が国では,「地球温暖化対策の推進に関する法律」の改正を経て,平成14(2002)年6月に京都議定書を締結しました。
 京都議定書の発効には,55カ国以上の批准と排出削減義務のある先進国のうち基準年となる平成2(1990)年における排出量の55%を越えることが条件となっており,ロシアが批准すれば,要件が満たされる状況になっています。
 しかしながら,我が国における平成13(2001)年度の排出状況は基準年度と比較して5.2%増加しており,目標達成は極めて厳しい状況にあります。
 また,本県でも同様に基準年度と比較して11.0%増加しており,県としても,地域の自然的・社会的条件に応じた温室効果ガスの排出抑制等の施策を積極的に推進していく必要があります。
 このため,産業・運輸・民生の各部門の置かれた状況を踏まえつつ,県民・事業者・行政等の各主体が総合的に温室効果ガスの削減対策に取り組むためのマスタープランとして本計画を策定,推進していくこととしています。
概要
1 目的
 
 地球温暖化問題が深刻化し,全国的に温室効果ガス排出量の削減に向けた取組みが進められる中で,本県においても,県民生活や事業活動等における温暖化防止の指針を策定し,県民総ぐるみで推進する仕組みを構築する。
 
2 計画の基本事項
 
対象地域 広島県全域
対象ガス 二酸化炭素,メタン,一酸化炭素,ハイドロフルオロカーボン,パーフルオロカーボン,六フッ素硫黄
基準年度 平成2(1990)年度
目標年度 平成22(2010)年度
 
3 温室効果ガス排出状況及び取組状況
 
(1)推移 (2)H13二酸化炭素排出量の部門別割合
 
(3) 平成13年度排出量に係る基準年度比較の増減率
区分 広島県 
産業部門 △5.1% +9.1%
本県の特徴
全国展開を図る企業の生産体制の見直しにより,効率性の高い本県工場への集約化
成長性の高い企業の工場新設等
運輸部門 +22.8% +23.4%
全国と同じ傾向
民生部門 +25.3% +12.7%
民主家庭部門は全国と同じ傾向
民主業務部門は減少傾向
全体 +5.2% +11.0%  
 
(4) 部門別の取組状況
区分 概要
産業部門
省エネ法に基づき,第1種エネルギー管理指定工場では,中長期的にみて,エネルギー消費原単位を年平均1%以上低減させる計画の策定及び取組みの実施
業界の自主行動目標に基づく削減
運輸部門
低公害車の導入(H15.3現在)
ハイブリッド車:1,518台(全国:90,875台)
CNG(天然ガス)車:229台(全国:12,376台)
アイドリング・ストップの実践
民生部門
環境家計簿による省エネの取組み(広島県地球温暖化防止活動推進センター(財団法人広島県環境保健協会)等で推進)
省エネ家電製品や太陽光発電の導入等
〔太陽光発電導入件数:2,621(H6〜H13年度)〕
 
4 削減目標
 
(1) 目標設定方法
経団連の「平成22(2010)年度CO2排出量を平成2(1990)年度水準以下に抑制するよう努力する」という統一目標を基に,平成2(1990)年度水準を設定する。
県民・事業者アンケートに基づき,目標を設定する。
 
[部門別削減の算出方法]
部門 削減量の試算
二酸化炭素 産業総部門
日本経済団体連合会の統一目標
全国展開を図る企業の工場集約分
運輸部門 家庭
県民アンケート(低公害車の導入等による推計)
業務
自動車関係は,日本経済団体連合会の統一目標
自動車以外の船舶等は,平成13(2001)年度実績を維持
民生部門 家庭
平成2(1990)年度水準(省エネ機器等の導入や日常生活での取組みに基づく推計)
業務
事業者アンケート(電気,ガス,灯油等の削減計画に基づく推計)
廃棄物部門
広島県廃棄物処理計画(平成15年3月)
メタン等その他の温室効果ガス
平成13年度水準を維持
  
(2) 目標設定
 
 各主体における対策の実行可能性や施策の展開を加味して,各部門における温室効果ガスの削減目標を設定し,県全体では,森林吸収源対策を含めて,計画の目標を設定します。
 
  目標年度:平成22(2010)年度
 
目標年度に向けて,12%(平成13年度比)削減します。
 
  [部門別の削減]
 
産業総部門 5%削減 運輸部門 26%削減
民生部門 13%削減 廃棄物部門 10%削減
 
    平成2年度(基準年度)に対して,2%削減します。
 
[部門別削減計画] (単位 排出量:万t‐CO2,比較:%)
区分
基準年度排出量
(H2)
H13年度 H22年度目標
排出量 排出量 H2比較 H13比較
二酸化炭素 産業部門 2,487.9 2,725.0 2,587.9 104.0 95.0
運輸部門 577.2 712.3 524.9 90.9 73.7
民生部門 605.6 682.7 595.1 98.3 87.2
廃棄物部門 28.3 33.0 29.8 105.3 90.3
その他のガス 188.1 161.9 161.9 86.1 100.0
小計 3,887.1 4,314.9 3,899.6 100.3 90.4
森林吸収源 0 △88.0
合計 3,887.1 4,314.9 3,811.6 98.1 88.3
 
5 地球温暖化防止対策の施策体系
 
 

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