第1章 循環型社会の実現に向けて



第1節 21世紀社会の環境施策

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1 環境問題の変容と進むべき方向
   21世紀が幕を明けた。
 20世紀の100年間を振り返ると,科学技術の急速な発展を背景として,生産活動が急激に増大し,「大量生産,大量消費,大量廃棄」という拡大型の社会経済システムが定着した世紀であった。そして,20世紀最後の10年間は,世界的に「情報化」と「グローバル化」が潮流となり,社会経済の構造変化の速度がさらに加速された。人々は「いつでも」「どこでも」欲求が満たされることを求め,コンビニエンスストアや携帯電話などが急速に普及し,私たちの生活は大変便利になったが,資源やエネルギーの需要は増加している。
 こうした消費型の社会経済システムは,環境へ大きな影響を与えており,深刻な地球環境問題をはじめ,廃棄物問題,さらには,ダイオキシンや内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)などの化学物質問題など,様々な環境問題が生じている。
 これからの21世紀は,産業革命以降続いてきた資源消費型社会から,資源とエネルギーの大量消費に依存しない循環型社会へ構造転換することが求められている。

2 今日の環境問題の特徴
   現在私たちが直面している環境問題はかつての産業公害と異なる様々な特徴を持っており,その特徴は,次のとおりである。
 地球温暖化や化学物質による環境汚染などのように将来発生するおそれのある被害で,被害の大きさや発生時期が明確でない。
 一人ひとりが直接受ける被害は小さいものの,問題の発生が地球的範囲に及び,その被害は甚大である。
 ほとんどすべての日常的な社会経済活動に関係して発生している。
 これらの環境問題は,被害が発生してからの対策では,改善・修復が困難な場合が多く,科学的知見の充実を図るとともに,先見性のある,予防的方策を含む政策展開を図ることが必要である。
 また,廃棄物問題のように,最終処分場の不足や処理困難物の増加等,廃棄物処理を巡る状況が厳しさを増し,環境面と社会経済活動の双方に多大な影響を及ぼす問題も生じている。
 このように,近年の環境問題で,特に,緊急性・重要性・被害の大きさから早急に取り組むべき課題として, (1)地球温暖化問題,(2)廃棄物問題,(3)化学物質問題がある。

3 取組が急がれる環境問題への対応
  (1)地球温暖化問題
 地球温暖化,オゾン層の破壊など地球規模の環境問題が,人類の生存基盤をもゆるがす問題として国際的な課題となっている。なかでも地球温暖化問題は,ほぼすべての社会活動が温暖化の原因となることから,その解決には全地球的な協力が必要となる。平成9年12月に京都市で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された京都議定書の早期の発効に向けて,国際的な目標やルールについて,交渉が続けられている。国内では,「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年10月)が制定されるなど対策の展開が図られており,本県においても,「広島県地球温暖化対策実行計画」(平成12年3月)を策定し,温室効果ガスの排出削減に取り組んでいる。

(2)廃棄物問題
 廃棄物の排出量は,昭和40年代以降急激に増大し,近年はほぼ横ばいで推移している。現在,大量の廃棄物の処理,焼却施設や最終処分場からの有害物質の排出,漏出などへの懸念から,より高度な廃棄物処理が求められていると同時に,廃棄物処理に係る経費の高騰,不法投棄の増大や最終処分場の逼迫が大きな問題となっており,このため,社会全体で廃棄物の発生抑制及び資源の循環的な利用を行うことによる環境への負荷が低い循環型社会の構築が重要となっている。
 こうした社会的要請に応えるため,平成12年6月,循環型社会の形成を推進する基本的な枠組みとなる「循環型社会形成推進基本法」や個別のリサイクル法が制定された。これらの法体系は,こちらのとおりある。循環型社会形成推進基本法は,天然資源の消費抑制と,環境への負荷低減を図ることを目的としており,循環型社会の形成に向けた基本原則,施策の基本事項などの枠組みを示している。また,廃棄物処理の優先順位として,(1)排出抑制,(2)製品・部品としての再使用,(3)原材料としての再生利用,(4)熱回収,(5)適正処理が初めて明定された。さらに,循環型社会形成推進基本法の個別法として制定された各リサイクル関連法は,それぞれが対象とする物に係る再生利用の促進を主な役割としている。また,グリーン購入法は,これまでの廃棄物・リサイクル行政に欠けていたリサイクル製品の普及促進を役割としている。循環型社会の構築に向けた法的枠組みができあがりつつあるが,循環型社会への移行は20世紀までの人類の生き方を基本的に変えるような一大変革であり,克服しなければならない課題も多い。
 本県としても,平成12年に国の承認を受けた「びんごエコタウン構想」の具体化や,構想の中核施設であるRDF発電施設の整備,市町村と連携したごみの減量化などの取組を始めているが,さらに,県民・事業者とも一体となって循環型社会の構築に向けた取組を進めていく必要がある。

循環型社会のイメージ図
循環型社会形成推進のための法体系

(3)化学物質問題
 ごみの焼却などに伴い発生するダイオキシン類などの化学物質や,環境ホルモンによる人の健康,生態系への影響が懸念されており,実態の解明が求められている。
 ダイオキシンについては「ダイオキシン類対策特別措置法」(平成11年7月)が制定され,平成12年1月から施行されている。また,多種多様な化学物質の環境リスクに対する関心が高まり,総合的な化学物質対策の一環として,平成11年7月に,「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)が制定され平成13年4月から施行されている。
 本県においても,県民が安心して暮らせるよう,国の動向を踏まえ,化学物質に対する取組を積極的に行っていく必要がある。